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ホンダ フィット アリア新車試乗記(第251回)

Honda Fit Aria

(2WD 139.8万円)

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2003年01月11日

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キャラクター&開発コンセプト

ホンダの最小セダン

2002年12月20日に発売されたフィットアリアは、その名の通りフィット・ベースの小型セダンだ。だが、最大の特徴は東南アジアで生産されるという点だろう。スバルのミニバン、トラヴィックのようにタイで生産されてから日本に輸入され、スバル車として売られるケースはあったが、トラヴィックはご存じの通りもともとオペル・ザフィーラ。純粋な日本車としてはフィットアリアが初めてと言っていい。

メイド・イン・タイランド

新聞的には「ついに自動車産業も空洞化か」と書きたくなるが、ホンダはあくまでも、「部品調達、生産を世界の最適な拠点で行ない、最適な市場へ提供する“メイド・バイ・グローバル・ホンダ”」の一環であると説明し、低い生産コストが理由である、とは言わない。確かにフィットアリアのメイン市場はアジア各国であり、米国生産のアコード(一部日本に輸入された)と同じレベルのもの、と言えなくもない。

生産はタイ・バンコク郊外のアユタヤ工場。'92年から稼動しており、現在の従業員数は約1900人、生産能力は年7万台。CR-Vの生産も始まるという。ちなみにタイには、トヨタ、マツダ、GM、フォード、BMW、メルセデス、ボルボなど多くの自動車会社が工場進出しており、別名「アジアのデトロイト」と呼ばれる。当然、部品工場も現地に数多く展開する。フィットアリアの現地部品調達率は約70%。日本から供給されるのはサスペンションのアーム類、エンジンのムービングパーツ、CVTユニットくらいだ。

現地では「シティ」

フィットアリアは、実はホンダが東南アジア向けに開発したアジアンカー、「シティ」(懐かしい名前だ)の2代目。アジアでは今でもセダンが主流なので、タイ製シティもフィットと同じプラットフォームを使いながら3ボックス化されている。シティと言えば3ドアという気がするが、所変われば品変わる、ということか。

日本での目標は2000台/月。つまり年間2万4000台で、アユタヤ工場の生産能力の34%に当たる。日本での売れ行きはタイの人たちにとっても気になるところだろう。販売はベルノ、クリオ、プリモのホンダ全チャンネル。CFに使われるのはもちろん、バッハの「G線上のアリア」だ。

価格帯&グレード展開

フィットの上級バージョン

タイ製ということで「価格破壊か」と思いそうだが、実際の値札に特別な割安感はない。価格は119.8~139.8万円。プラス19.5万円でホンダでおなじみの「デュアルポンプ式」つまりオン・ディマンド式4WD(滑った時に初めて四駆)となる。フィット(106.5万円~)にトランクと上質な内装が付いたことを考えれば、妥当なところだ。メイド・イン・ジャパンのフィットより高い値付けで、「タイ製だから安い」というコンセプトではないことが分かる。

1.3Aと1.5Wの2グレード

標準グレードの1.3A(119.8万円)のエンジンはフィットと同じ。1.3Aには「Lパッケージ」と呼ばれるパッケージオプション(8万円)が付く。内容はHIDランプ、ボディ同色電動ミラー、プライバシーガラスなど。

上級の1.5W(139.8万円)は1.5リッターエンジン&7速モード付ホンダマルチマチック(CVT)を装備。オートエアコン、木目調パネル、Lパッケージの装備などが標準。Lパッケージ付の1.3Aとの価格差はたった11万円だ。

パッケージング&スタイル

見た目はホンダのプリウス

スタイルは文字通りフィットにトランクをくっつけた感じだが、基本的には新デザインだ。サイズは全長4310mm×全幅1690mm×全高1485mm。現行カローラより55mm短く、プラッツより130mm長い。全長はプリストと全く一緒で、全高もほぼ同じ(プリウス:1490mm)。だからか印象としてはホンダ製プリウスという感じ。ホイールベースはフィットと同じ2450mm。ちなみにプリウスは2550mm、カローラは2600mmもある。

屋根は4センチ下げたが

フェリオは日本では保守的かつ平凡に見えてしまうが、アリアは狙い通りショートノーズ、ビッグキャビンでちょっと先進的。セダンならではのスタイリッシュさもある。ボディ前半はフィットそのものに見えるが、ルーフは40mmダウン。ミニバン的なフィットをセダン化するのに、デザイナーはそうとう苦心したらしい。普通ならにルーフを下げ、それに合わせてシートも下げたいところだが、前席下に燃料タンクがあるフィットの車台では限界があるからだ。

実際、デザインは際どいところでバランスを保つが、屋根を下げたしわ寄せはヘッドルームにしっかり出てしまった。傾斜の強いAピラーは今時珍しく頭部を圧迫するし、視界の点でも少しわずらわしい。また、前・後席ともにフィットに比べて乗降時に頭がつかえやすい。

明るいベージュ内装。でも木目は…

インパネ上半分はフィットとほぼ同じ。下部は棚がなくなった代わりにセンタコンソールが追加された。室内はベージュ基調。黒基調のフィットはシート地も人工的な感じだったが、アリアは手触りの良いトリコット地で、暖か味のある和み系。ただし1.5Wの木目調パネルはかなりプラスチッキーな印象。国を問わず「木目」は人気があるらしいが、この仕上がりでは逆効果に思える。

トランク容量はEクラスに匹敵

ウエッジシェイプを強調するウエストライン(ボディサイド窓枠の下側のライン)をフィットから受け継ぐ関係上、トランクはかなりハイデッキとなる。これによって、アリアは500リッターという、とんでもなく巨大なトランクを得た。これはカローラ・クラスをぶっちぎり、もはやメルセデス・ベンツEクラスに匹敵するもの。新型アコードより巨大だ。その代わり、後方視界はかなり悪い。試乗車にはオプションのバックガイドモニターが付いていて重宝した。

シートアレンジはフィットと同じ

後席ファンクションは基本的にフィットと同じ。「ダイブダウン」モードでは、後席背もたれが座面と連動して沈み込み、トランクと一緒になってさらに巨大な空間を形成する。最大奥行きは2000mm。一方、「チップアップ」モードは、後席座面を後方に跳ね上げて、高さのあるものを収納する。観葉植物や車輪だけ外したマウンテンバイクを積む際に便利だ。

基本性能&ドライブフィール

動力性能は十分だが、静粛性はもう少し

試乗したのは1.5リッターエンジン(90PS/5500rpm、13.4kgm/2700rpm)搭載の1.5W。同じL15Aながらフィット1.5TのSOHC・4バルブではなく2バルブ。出力も20ps低い。ボンネットを開けると、そこには「MADE IN THAILAND」のプラックが見える。

ホンダがシビック以下の小型車に大々的に採用するマルチマチック(CVT)はクリープも自然で滑り感もほとんどなく、違和感はない。先代シビックに初搭載された頃に比べるとかなり手慣れた感じで、1060kgのボディをいかにも効率よさそうに引っ張る。

気になるのは、フィットやモビリオ同様、全開加速時の駆動系ノイズ。遮音材の追加やドア・シール二重化など静粛性には留意したとのことでゆっくり走れば確かに静かだが、「ホンダミュージック」とはちょっと言えない音質なので、もう少し遮音して欲しい。

乗り心地重視

フィットの弱点としてよく言われるのが固い乗り心地(最近のものはかなり改善された)だが、アリアではバネレート、スタビライザー、ダンパー減衰力、ブッシュを最適化。当たりは確かにソフトになり、跳ねるような印象は一切なくなった。もっとも、乗り心地を優先した分、フィットに比べてキビキビ感やしっかり感は薄れた。タイヤはサイズ、銘柄ともフィットと同じだが、電動パワステを大きく素早く切った時の反応もおっとりしている。

山道を飛ばす時はSモードが一番イージーで速いが、7速モードも遊びとしては面白い。クルマ自体がスポーティとは言えないのでそれほど意味はないが、付加価値としてこういうものがあってもいいだろう。ただし、マニュアルモードとは言え自動的にシフトアップしたりダウンして欲しい時にも落ちてくれなかったり、ということはある。

欧州流じゃない

100km/h巡航は2500回転。CVTの特性を生かしてパワーの割に低めだ。上に書いたようにアクセル全開では5000回転以上の一定回転域を使って騒がしくなるが、踏み込みさえ加減すればそれなりに静か。高回転までよく回るので最高速は伸びる。シャシー自体はそれほど高速型ではなく、法定速度プラスαまででバランスをとった感じ。日本での交通事情やアリアの性格には合っているかもしれない。

1.5Wの10・15モード燃費は20.0km/Lと、フィットの1.5とまったく同じ。出力が落ちた分、50kgの重量差をカバーしたようだ。試乗中の燃費は付属の燃費計によると、混んだ街中で7.7km/L、空いた郊外で12.0km/L、トータルで10km/Lを割る程度(満タン法でも同じ)だった。

ここがイイ

小型セダンとしては究極とも言えるパッケージングは、フィットのプラットフォームの優秀さを物語るところだろう。日本だってアジア。狭い国土には本来はこういう高効率の小型セダンが似合っているはず。事実、その昔はこんなサイズのクルマばっかりだった。いつのまにかセダンは3ナンバーが当たり前になっているが、不況の日本人はもう少し謙虚になって、こういう小型セダンに乗るべきだろう。今やハッチバックやミニバン(のようなもの)では小さい方がエライ。いまだに大きさを誇っているのはセダンだけなのだから。

ここがダメ

パッケージング的には実に優秀なフィットのプラットフォームだが、足回りの固さが根本的に解決できないのは、何処かに問題があるように思える。足を柔らかくした分、操縦安定性も低下しており、ワインディングを走って楽しいクルマではない。足で売るアコードを作ってる会社としてはどこかチグハグ。またAピラーが太くハイデッキだから、前も後ろも視界がイマイチ。

総合評価

ボディパネルのチリあわせを見ていくと、日本製でないことがはっきりわかる。ボディパネル間の隙間が均一ではないのだ。また室内のプラスチックパーツ類の縁を指でなぞっていくと、わずかにバリが感じられる。さらにドアオープナーの木目パネルは上から張ってあるだけで、浮いているようにみえる、など意地悪くタイ製のアラを探してみた。ま、これは米国製のトヨタ車やイタ車などでもよくあることで、逆に日本製のクルマの異常なまでの高品質感を改めて感じるところだ。

とはいえ、ユニクロ商品の縫い目の荒さなど誰もアラ探ししないように、大衆消費財はアジア産であっても一定の水準さえクリアしていれば、日本人は誰も文句を言わなくなった。アリアは大衆車であり、プレミアムカーではない。であればなんの不満があろうか。「この不況下で何をや言わんか」である。

道具としてのセダンであれば、素のアリアで十分。試乗した1.5Wなどは完全に過剰装備といえるほどで、1.3Aこそが本来の姿だ。アリアのCVTにマニュアルモードをつける必要はない。どうせやるならフィットクーペなんてのを作り、ライトウェイトCVTスポーツ(ニューCR-X?)でも作って欲しいところだ。

ベーシックな実用セダンとしてはアリアに大きな不満はない。ただし、セダンである以上「ステイタス感」は重要なポイント。中国でも売られるアリアは、アジアにおいては大きなステイタス感を伴っているが、日本ではゼロに等しい。小さいセダンがエライという時代は来そうにないから、ステイタス感を少しでも気にする人(おそらく大半の日本人)には、「ちょっと高くても、買うならアリアよりアコードかフェリオにしておいたら」と言うしかない。

いずれにしろ、アリアにおいて何より重要なことは、いよいよアジア産のクルマが日本に入ってきたと言うことだ。先日も某楽器メーカーの人間から、中国で工場を立ち上げ、高級ブランドの生産を始めると聞いたが、あの業界では高級ブランドだけは日本で作る、などという時代はとうに終わりを告げている。そしてクルマもいよいよそんな時代に入りつつある。業界的には否応なしにこの方向へ進むはずだが、日本人のクルマ嗜好が「アジア製でも十分」という方向へ進むとは思えない。今後、消費者のアリアへの評価で、そのあたりのことがかなりみえてくるだろう。

試乗車スペック
ホンダ フィット アリア 1.5W(2WD)

●形式:LA-GD8●全長4310mm×全幅1690mm×全高1485mm●ホイールベース:2450mm●車重:1060kg(F:670+R:390)●エンジン型式:L15A●1496cc・SOHC直列4気筒横置●90PS/5500rpm、13.4kgm/2700rpm●10・15モード燃費:20.0km/L●タイヤ:175/65R14(ヨコハマ ASPEC)●価格:139.8万円(試乗車:203.28万円 ※オプション:DVDナビオーディオ 26.6万円、アルミホイール 6.4万円、トランクスポイラー4.5万円など) ●車両協力:本田技研工業株式会社

公式サイト http://www.honda.co.jp/Fit-ARIA/

 
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