キャラクター&開発コンセプト
名車ヨンマルをリスペクト。4年遅れで日本でも発売
2010年11月25日に国内で発表され、12月4日から発売された「FJクルーザー」は、海外では2006年から販売されていた個性派SUV。当初は北米専用車として開発され、2007年にはその北米で6万4000台(全世界では7万台)を販売する大ヒット車に。一方、日本では国内生産車にも関わらず、一般業者による逆輸入車としてしか購入できない状況が続いていた。
リーマン・ショック後の2009年には北米での販売台数が1万4000台に落ち込み、南米、中近東、中国、アフリカなどを合わせても2万2000台という水準に。逆に日本では、昨今の円高・ドル安を受けて大量のFJクルーザーが“逆上陸”していた。4年遅れとなった今回の国内投入は、そんな中での出来事だ。
ベースはプラド/ハイラックスサーフ
プラットフォームはランドクルーザープラド、ハイラックスサーフ(国内では昨年に販売終了)、タコマ(海外のみ)と共通だが、その外観デザインは往年のランドクルーザー「40系」(通称ヨンマル)を現代風にアレンジしたもの。「FJ クルーザー」という車名も、北米で人気のあったガソリン車の形式名が「FJ40」だったことに由来する。ちなみに日本国内で主力だったディーゼル車の形式名は「BJ40」だ。
エンジンはプラドと共通の4リッターV6ガソリン「1GR-FE」(276ps、38.8kgm)で、変速機は海外には6MTもあるが、日本向けは5ATのみ。駆動方式は海外の6MT車用にはフルタイム4WDもあるが、日本向けはパートタイム4WDとなる。
その他、日本仕様では右ハンドル化のほか、左フロントフェンダーへの補助ミラーの追加、リアナンバー位置の変更(リアゲートからバンパーへ移動)、20インチタイヤ(245/60R20)の設定、ハイラックスサーフ譲りのサスペンション機構「X-REAS(エックス・リアス)の設定といった改変が行われている。X-REAS=X-Relative Absorber Systemとは、右前輪と左後輪といった対角線上に位置する車輪のダンパーを第3のダンパーとなる中間ユニットを挟んで連結した「相互連携ショックアブソーバーシステム」だ。
生産は日野自動車の羽村工場
販売チャンネルは、クラウンシリーズやランクル200、プラド等を扱う「トヨタ店」。非公式ながら「月間200台~300台の販売は目指したい」としていた販売目標に対して、立ち上がり1ヶ月(12月4日~1月3日)の受注台数は約2100台に上り、トヨタは「大変好調な立ち上がり」と受け止めている。
生産はこれまで通り、日野自動車の羽村工場(東京都)が担当。同工場では商用トラック等のほか、プラドや4ランナー(ハイラックスサーフ)の生産も行っている。なお、日本仕様と同じ右ハンドル車は、今春からオーストラリアやニュージーランドでも発売される。
※過去の参考記事
■新車ニュース>トヨタ、FJクルーザーを国内で発売 (2010年11月)
■新車ニュース>トヨタ、ランドクルーザープラドをフルモデルチェンジ (2009年9月)
■新車ニュース>トヨタ、ランドクルーザーをフルモデルチェンジ (2007年9月)
価格帯&グレード展開
基本的にモノグレードで、314万円からスタート
パワートレインは4リッターV6・5AT・パートタイム4WDの1種類。基本的にモノグレードだが、標準車(314万円)をベースに、本革ステアリングやボディ同色ドアトリム等を追加した“カラーパッケージ”(324万円)、そしてビルシュタイン製モノチューブダンパーやリアデフロックを標準装備した“オフロードパッケージ”(332万円)が用意されている。
タイヤ&ホイールは全車265/70R17+スチールが標準だが、20インチ(オフロードパッケージを除く)や17インチアルミも工場オプションで選択可能。リアデフロック(5万2500円)も単体で選ぶことができる。このあたりは「自分好みにカスタマイズできるMy FJ」という謳い文句通りだ。
■ 標準車 314万円
■“Color Package” 324万円 ★今回の試乗車
■“Off-road Package” 332万円
パッケージング&スタイル
顔はヨンマル、スタイルは未来的
ヨンマル風の丸目ヘッドライトやグリルが可愛いらしいFJクルーザー。通常のトヨタマークに代わる「TOYOTA」ロゴも誇らしく、そして男らしく、これだけでグッと来る人は多いだろう。さらにホワイト塗装のルーフやリアクォーターウインドウが後ろまで回り込むデザインも、ヨンマルをリスペクトしたものだ。
スタイリング全体は、FJクルーザー独自の極めて現代的なもの。スクエアなフォルムはハマーやジープ・ラングラーにも似たミリタリールックだが、同時に10~15年くらい前に流行ったネオレトロ風でもある。実用性より「見せる」ことを重視したコンセプトカー的なデザインだ。
デザイン重視の最たるものが、2ドア風に見せるための観音開きドアで、これもマツダのRX-8やホンダ・エレメント等々、10年くらい前に流行ったものだ。これが普通の4ドアだったら、一気に平凡な印象になったと思われる。
観音開き化でリアドアが短くなった分、Cピラーは一気に太くなり、これもボディ後半の力強さと非日常感を強めている。前後フェンダーパネルの膨らみもセンスを感じさせる。
リアビューもなかなかカッコいい。SUVの場合、リアゲート回りは実用性を重視して、みんな似たようなデザインになりがちだが、FJクルーザーの場合はリアゲートを小さめにして、ショルダー部に横長のリアコンビランプを配置。いわゆる戦隊モノに出てきそうな未来感があり、オトナの子供心をくすぐってくる。
インテリア&ラゲッジスペース
質感よりも道具感
インテリアは「高級感よりも道具感」というタイプ。オーディオ(ヘッドユニット)は全車オプションで、エアコンもマニュアル式と装備はシンプル。ドアハンドル、シフトレバー、副変速機レバーのほか、ヒーターコントロールのダイアルも大型で、さらにシフトレバーや副変速機のグリップはラバー調で、握りやすいものとなっている。
またドリンクホルダーや前席シート間にあるセンターコンソールの小物入れも、「大物入れ」と呼びたくなるくらいザックリした作りで、中の仕切りを外せば何でも入りそう。よく見ると質実剛健と呼ぶには、プラスチッキーでオモチャっぽい部分もあるが(特に空調吹き出し口のあたり)、それも確信犯だろう。
そんな車内を明るく彩るのが、ボディ同色のインテリアパネル。特に“カラーパッケージ”の場合は、ドアトリムもボディ同色になるので、その効果は大きい。ただしそれが目立つのはボディカラーがブルーとかイエローといったビビッドな場合で、モノトーン色を選ぶと良くも悪くも目立たなくなる。
横長のフロントウインドウ。ワイパーは計3本
キャビン自体は特に広々というわけでないが、全幅は前述のように1.9メートルもあるので、ドライバと助手席パッセンジャー間の距離は十分。印象的なのはフロントウインドウの天地が狭く、左右いっぱいに広がるところだ。
よく見るとワイパーは3本も並んでいて、お前はトラックか!とツッコミを入れたくなる。ちなみにFJクルーザーと同じ日野自動車が生産する自衛隊の高機動車やそれの民生版であるトヨタ・メガクルーザー(1996~2002年)のフロントワイパーも3本だった。
シート地は撥水・防水仕様。フロアもゴム引き
全車ブラックとなるシートの生地は、いわゆる撥水加工ではなく、ゴアテックスのような透湿フィルムを中にはさんだ撥水・防水仕様。ステッチにも本格的なアウトドア衣料のように撥水加工が施されている。
それ以上に嬉しいのが、フロアカーペットは荷室と同じラバー調素材の防水仕様であること。砂や泥などはそのまま掃き出せるので、掃除もしやすかった。ここだけ見ても、かなりこだわって開発されたことが分かる。
後席:観音開きドアゆえ乗降性はそれなり。居住性は良好
リアドアは観音開きなので、後席へ乗り込む場合は、最初にフロントドア、次にリアドアという順に開けて、その後は誰かにフロントドアを閉めてもらう必要がある。また降りる時はその逆で、まずは誰かにフロントドアを開けてもらわなくてはいけない。
といったわけで、通常の4ドアからすると後席の乗り降りは面倒だが、「2ドアよりも後席へのアクセスはしやすい」とポジティブに解釈すべきだろう。
一見狭そうな後席だが、足もとスペースやヘッドルームは十分で、まったく狭さは感じない。座り心地に関しても最初は「背もたれの角度が微調整できたら」と思ったが、慣れたら気にならなくなった。横方向の視界は確かに良くないが、これも意外と気にならない。後で触れるが、静粛性が高く、乗り心地がいいので、快適性はゴルフクラスのハッチバック車や4ドアセダンに匹敵すると感じた。
荷室も防水仕様。後席はダブルフォールディングで畳める
荷室は凹凸加工を施したラバー調素材でフロアを完全に覆った防水仕様。日産エクストレイルでもおなじみの手法だ。後席使用時の荷室寸法は、奥行きが925mm、幅が最大1405mm(ホイールハウス部分で1085mm)、開口部高さが878mm(いずれもメーカー発表値)。おおむねハイラックスサーフ的というか、ステーションワゴン的な空間だが、フロアが高いので重い荷物は積みにくい。
さらに後席の背もたれを最近では少数派?のダブルフォールディングで畳めば、最大奥行きが1505mmとなり、スノーボードなどを積むことが出来る。また背もたれの部分は若干斜めになるが、大人でも対角線上に寝れば、横になることが出来る。さらに後席の座面は取りはずすことも可能だ。さすが北米仕様、合理的だ。
リアゲートは横開き。ガラスハッチ機構あり
背面スペアタイヤなので、リアゲートは当然ながら横開き。さらにガラスハッチ機能も備えており、背面スペアタイヤを巧妙に避ける形でリアガラスがポップアップする。・・・・・・はずだったが、最初はどうやって開けるか分からず、取扱説明書を参照した。答は「鍵をリアゲートの鍵穴に差して回す」だ。
そのガラスハッチ、実際には開口部が高いため、相当な大男でもないと荷物の出し入れは難しいが、その遊び心は全面的に支持したいところ。