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フォード フォーカス スポーツ新車試乗記(第692回)

Ford Focus Sport

(2.0リッター直4・6速DCT・293万円)

新生フォードから生まれた
「真のグローバルカー」で、
世界のレベルを体感せよ!

2013年04月26日

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キャラクター&開発コンセプト

新生フォード渾身のグローバルカー


新型フォード フォーカス(3代目)
(photo:フォード・ジャパン)

フォードのCセグメントカー「フォーカス」は、エスコートの後継車として1998年に登場。初代は欧州フォードが開発し、時に販売台数でゴルフを上回りながら、2代目(2005年~)も含めて世界で1000万台以上を販売してきた。

今回試乗したのは、北米・欧州では2011年春に、日本では約2年遅れの2013年4月13日に発売された3代目。リーマンショック以後、体制を一新したフォードは目下、世界各地の組織を一体化して効率を高める「One Ford戦略」を推進中で、新型フォーカスは同社のコンパクトカーで「初めての真のグローバルカー」としている。これは、初代フォーカスがもともとは欧州モデルだったことや、2代目は欧州と北米で別々のモデルだったのと違い、3代目は初期段階から世界共通モデルとして開発されたことを意味する。

今や世界のベストセラー


車両協力:フォード名古屋

生産拠点もグローバルで、ドイツ(欧州向け)、ロシア(国内向け)、米国ミシガン州(北米向け)、タイ(アジア、オセアニア向け)、中国(国内向け)など7ヶ所に及ぶ。日本には2012年にタイ・ラヨーン県で稼働開始した最新鋭工場、FTM(フォード・タイランド・マニュファクチャリング)製が導入される。

新型はすでに世界120ヶ国以上で販売中。2012年には世界販売台数で102万台を達成し、単一車名別ではカローラを超えて世界で最も売れたモデルになった。

■過去の新車試乗記【フォード フォーカス関連】
フォード フォーカス (2000年4月更新)

 

価格帯&グレード展開

5ドア、2リッター直4+6速DCTで、293万円


追突軽減ブレーキ「アクティブ・シティ・ストップ」は標準装備。15km/h未満で追突を回避、15~30km/hで追突被害を軽減する

海外には4ドアセダンやステーションワゴンもあり、エンジンに関しても1.0リッター3気筒直噴ターボや2.0リッター直噴ターボの通称「エコブースト」エンジン、1.6/2.0リッターディーゼルターボなど多種多様だが、日本に導入されたのは5ドアで、自然吸気2.0リッター直4・直噴エンジン(170ps、20.6kgm)の「スポーツ」(293万円)のみ。

ミッションはフォード系で「パワーシフト」と呼ばれるゲトラグ・フォード製6速DCT。装備は充実しており、エアロパーツ、17インチタイヤ&アルミホイール、ハーフレザーシート、オートエアコン、9スピーカーのオーディオシステム、バイキセノンヘッドライト、そして低速域での追突回避・被害軽減をサポートする自動ブレーキシステム「アクティブ・シティ・ストップ」が標準装備になる。

また、販売店オプションとして、標準のオーディオユニットとごっそり差し替える形で装着する2DINのナビゲーションシステムも用意される。

 

パッケージング&スタイル

テーマは「キネティック」。サイズはDセグメントに迫る


派手なメッキグリルはないが、台形のラジエイターグリルがアグレッシブ

フォーカスと言えば、今でも初代や2代目の「ニューエッジ・デザイン」が印象的。当時のフォードは、三角形や半円など幾何学的なカタチをモチーフにしたデザインを、フォーカス、モンデオ、トーラス、Kaなどの主力モデルに採用して異彩を放った。今回の「キネティック・デザイン」は、そのニューエッジ・デザインの跡を継ぐもの。キネティック(kinetic、動的な)とは要するに、躍動感があってスポーティなデザイン、といったような意味。新しいモチーフである台形が、ヘッドライトやフロントグリルに使われている。

 

ボディカラーは、マスタード オリーブ(試乗車)、キャンディ レッド、ウイニング ブルー、フローズン ホワイト、パンサー ブラック、インゴット シルバーの計6色

全長は4370mmとCセグメントとしては少し長めで、全幅に至ってはDセグメント並みの1810mm。こういったサイズ感は、先代フォーカスの延長線上にあり、また先代で使われた「フォード C1プラットフォーム」の発展版を使う現行マツダ アクセラやボルボ V40にも通じるものがある。縁は切れても、血はつながっている、という感じ。

 

フロントグリルにはモーター駆動でブラインドカーテンのように開閉する「アクティブグリルシャッター」を装備

標準装備のリアスポイラーはかなり大型。空力性能に貢献

Cd値(空気抵抗係数)は先代の0.341から0.298に向上している
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW ゴルフ 7 (2013-) 4265 1800 1460 2635 5.2
メルセデス・ベンツ Aクラス (2013-) 4290-4355 1780 1420-1435 2700 5.1
BMW 1シリーズ (2011-) 4335 1765 1440 2690 5.1
2代目フォード フォーカス (2005-08) 4350 1840 1485 2640 5.6
ボルボ V40(2013-) 4370 1785(1800) 1440 2645 5.2-5.7
フォード フォーカス(2013-) 4370 1810 1480 2650 6.0
マツダ アクセラ スポーツ(2009-) 4460 1755 1465 2640 5.1
トヨタ プリウス(2009-) 4460 1745 1490 2700 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

気分はナイトライダー


立体感のあるダッシュボードの造形。暗くなるとLEDのアンビエンスライトが要所を照らす

インテリアはアメリカ車風というか、グローバルカー風というか、質感は素っ気ないが、形状はダイナミック。メーターや情報表示モニター、操作系なども独特だが、世界で年間100万台も売るクルマだけに、慣れてしまえば問題ないと思う。なお、ウインカー位置は日本車と同じで右側。これは生産地のタイが右ハンドル・右ウインカーの国だかららしい。

フロントシートはグローバルカーらしく大柄だが、小柄な人でもピタッとしたホールド感が得られる。また、チルト/テレスコ、シートリフターで、ポジションも自由自在。フロントガラスはかなり寝ているが、圧迫感はなく、視界も悪くない。

 

レザー/ファブリックのコンビシートを標準装備。ホールド性は見た目以上に良好

また、スマホや携帯デジタルプレーヤーをコネクターやBluetooth等で接続すれば、マイクロソフトのソフトウエアプラットフォーム、Windows Embedded Automotiveを使用したフォード独自のシステム 「SYNC」によって、ステアリングスイッチや音声による操作ができる。

音声は英語にしか対応していないが、基本コマンドは「Phone(電話)」「USB」「iPod」などと単純で、これらは100%認識してくれた。また、英語名なら、アーテスト名やアルバム名で楽曲を呼び出したり、ハンズフリーで電話を掛けることもできるという。車両側も多少英語で喋ってくれるので、TVドラマ「ナイトライダー」のナイト2000みたいでちょっと楽しい。

 

メーター中央の情報表示パネルは、4項目を同時表示できて便利

ステアリングスイッチは豊富。親指ではなく、中指を使うと操作しやすい

シフトレバーをSにすると、ノブ側面のマニュアルシフトスイッチが有効になる
 

機能を真面目に追求


空間面ではまったく不満のない後席。ヘッドレストが頭に当たるのが少し気になる

足もとから頭上まで、後席の空間も十分。ヒール段差もしっかり確保されていて、疲れにくい姿勢がとれる。少し気になるのは、後席ヘッドレストが頭に当たり、だらけた姿勢を取りにくいことだが、これはもちろんムチ打ち対策。Euro NCAPは当然ながら5つ星を獲得している。その他、リアシートを従来通りダブルフォールディング式としている点など、欧州フォード由来の真面目さが伝わってくる。

 

荷室容量は316リッター。後席を畳んだ時は最大1101リッター

床下には手堅くテンパースペアを搭載する

給油口はキャップレスで、給油フィラーを入れるとシャッターが開くタイプ
 

基本性能&ドライブフィール

自然吸気2リッターと6速DCTで、軽やかに走る


始動ボタンはステアリングの左。

試乗したのはマスタード オリーブのボディが鮮やかな一台。スマートキーは標準装備で、最近のトヨタ車のようにドアノブに指をかければ自動で解錠し、ステアリング左側の「PowerStart ボタン」を押せばエンジンが始動する。

エンジンは通称「デュラテック」と呼ばれる自然吸気の2リッター直4。従来はポート噴射だったが、これは最新の直噴バージョンで、言ってみればエクスプローラー等で定評のある2リッター直噴ターボ「エコブースト」からターボを取ったもの。最高出力170ps、最大トルク20.6kgmとチューニングはやや高めで、指定燃料もハイオクになる。また、PowerShiftこと6速DCTは、ボルボ車などと同じゲトラグ フォード社製だが、クラッチはロスの少ない乾式タイプとのこと。

 

新開発の2.0リッター直噴 Duratecユニット。これにターボを装着すると、

大ざっぱに言ってパワートレインの感触は、先代ボルボ C30/S40/V50の自然吸気2リッター直4+6速DCT仕様によく似ている。ただし、エンジンは全域でパワーやトルクが上乗せされた感じだし、DCTの方も発進がスムーズだったり、坂道発進で落ちなかったり、といった点で進化している。予備知識がなければ、普通のトルコンATかと思うくらい、全体にスムーズ。

自然吸気ということで、直噴ターボのようなトルク感はないが、それゆえパワーの出方は滑らか。この点は、ややピーキーな1.6ターボエンジン(180ps、24.5kgm)を積む現行V40 T4とまったく違うところ。どちらかと言うと、新型Aクラス(A180)の1.6ターボ(122ps、20.4kgm)に、数値だけでなくパワー感も近い。同時に、電動パワステが軽くてクルクルと回ることも、全体のスムーズさを強調する。

シャシーは完全にDセグレベル


Powershiftことゲトラグ・フォード・トランスミッション製の6速デュアルクラッチトランスミッション

走り始めて100メートルも走らないうちに体感できるのが、乗り心地がやたらにスムーズなこと。路面の凹凸をほとんどまったく感じさせず、ウソのようにフラットに走るところは、Dセグメントのレベル。このクラスだと、リアサスペンションまわりが多少ゴトゴトするのは普通だが、フォーカスの場合は先代から定評のあるリアの「コントロールブレード・マルチリンク・サスペンション」の恩恵か、路面を滑らかにトレースする。今回日本に導入された「Sport」は、スプリングとダンパーを約15%硬めた仕様で、確かに姿勢変化はスポーツカーのように抑えられているが、通常の舗装路の場合、突き上げやゴツゴツ感は一切ない。

ワインディングでも、滑らかさとスタビリティが身上。ステアリングギアレシオは先代の16.1から14.7:1にクイック化されているらしいが、ハンドリング自体は特にクイックではない。それでも、ESPによるブレーキ制御を使って回頭性を高める「トルク・ベクタリング・コントロール」の効果もあってか、タイトコーナーでもステアリングをエイっと切り込めば付いてくる。ただ、シフトダウンしたい時に、シフトノブ側面のシフトスイッチが使いにくいのは難点。

 

アクティブ・シティ・ストップのレーザーセンサー。前走車や障害物を検知し、30km/h以下で自動ブレーキを踏む

また、ボディ剛性が高いため、舗装の荒れたところも得意。普通なら思わずアクセルを緩めてしまう段差でも、軽い突き上げだけで何事もなくやり過ごす。専用開発の17インチタイヤ(ミシュラン プライマシー LC)は、どちらかというとエコ重視という感じで、ブレーキもガツンと効くわけではないが(ブレーキダストは日本車並みに少なかった)、とにかく安心感が高い。フォーカスはもちろんFFだが、何となくスバルの現行インプレッサ(2リッター自然吸気のAWD仕様)の走りも思い出した。

シャシーの良さは街中でも分かるレベルだが、やはり最も真価を発揮するのが高速道路。100km/h巡航は約2200回転。スタビリティは完璧で、乗り心地はフラット。静粛性も高いので、真っ直ぐ走っているだけで気持ちいい。高速道路ヘビーユーザーに、このシャシーは魅力。

一つだけ物足りないのはエンジンパワーだが、6速DCTをスポーツモードにして170ps/6600rpmを引き出せばそれなりに速いし、速すぎないという点でもストレスはない。最高速(発表値)は210km/hとのこと。

試乗燃費は9.4~9.7km/L、JC08モード燃費は12.0km/L

今回は約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道から高速道路、ワインディングまで、いつものパターンで走った区間(約90km)が9.4km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が9.7km/L。そして、やや極端な状況だが、信号がほとんどない郊外の道を走った区間(約40km)が12.0km/Lだった。高速道路なら流れに乗って、だいたい10km/L前後か。いずれにしても、運転パターンによる影響はかなり少ない。

なお、JC08モード燃費(FF車)は12.0km/L。タンク容量は55リッターなので、実質的な航続距離は500kmくらいと思われる。指定ガソリンは前述の通りハイオク。

 

ここがイイ

シャシー性能、パワートレイン、デザイン、SYNC

さすが、世界で一番売れてるクルマだと思わせるシャシー性能。ゴルフはもちろん、メルセデス・ベンツのAクラスあたりもベンチマークにしたのではと思える完成度。しなやかな足の動きは、たいしたものだなあと言うしかない。

穏やかなパワートレイン。直噴ターボのようなパワフルさはないという点では、物足りなさもあるが、普通に乗る分にはこれくらいのパワーがちょうどいい。燃費がもうちょっといいと良いが、それでも10km/L弱は走るので、排気量2リッターのクルマとしては不満のないレベルでは。12.0km/LのJC08モード燃費と実燃費の差が国産車ほど開かないのは良心的だ。

カッコイイかは微妙だが、個性はちゃんとあるエクステリア。インテリアも同様で、気に入るかどうかは別として、運転席は囲まれ感の強い個性的なもの。質感も高く、タイ製であることは一切気にならない。また、今やこのクラスの欧州車では当たり前とはいえ、衝突軽減ブレーキをふくめ、電子装備が充実しているのもいい。メーター中央の情報表示パネルに、平均/瞬間燃費や航続可能距離など4項目が同時表示されるのはとても便利だった。

フォード期待のテレマティックス 「SYNC」は英語のままで(つまり何も日本向けに変更されていない)、さすがにちょっと分かりにくかった。とはいえ学習すれば、かなり使えるようになるだろう。オプションでナビも用意されているが、SYNCに対応するオーディオまわりを残すなら、スマホナビということになる。スマホですべてを済ませるという意味では楽しい。スマホの置き場所には困りそうだが。

ここがダメ

小回り性能、シフトスイッチなど

小回りが、あともう少しのところで効かない。最小回転半径はゴルフやAクラスが5.1~5.2メートルなのに対して、フォーカスは6.0メートル。これはタイヤサイズとの兼ね合いもありそうで、例えば純正18インチホイールをオプション装備する場合は、前輪切れ角を抑えるステアリングラック・リミッターが別途必要になる。まぁ、慣れでカバーできない範囲ではないが。

シフトノブ側面のシフトスイッチ(シボレーソニックにも似たようなものが付いていた)が使いにくいこと。コーナリング中に片手を離して小さなスイッチを瞬時に押す、というのは難しい。もう少し工夫するか、いっそパドルにして欲しいところ。

出来るなら2.0リッター直噴ターボの「エコブースト」エンジンを試してみたかった。これだけ優れたシャシーには、やはり最新のターボパワーがふさわしいと思う。

ライバルのゴルフ7は先行予約サイトを見ると、279万円からとなっている。となると価格はもうちょっと安くないと辛いかもしれない。

総合評価

ワン フォード戦略の結実

デイズの駐車場には5年ほど前のマスタングがある。ウチのスタッフの愛車だが、4.6リッターV8の走りは乗ってみると古き良きアメ車の印象そのもので、クルマ的にはなんだかなと思うのだが、これぞアメ車の味という意味では実に魅力的なクルマに映る。とはいえ、これが世界に広く通用するわけなどない。フォード車で世界に通用するのは欧州フォードのクルマというのが一昔前の認識だったが、米国企業らしく、リーマンショック以降のグローバリズムに対応するため、欧州フォードではなく、ワン フォード(One Ford)として舵を切って再生を図っている。その結実が、この3代目フォーカスということになるわけだ。

そんな背景の中で、フォーカスは打倒ゴルフを担うクルマだ(販売台数では抜いているかもしれないが)。ドイツ車的なアクをさらに抜いて、ワールドワイドでゴルフを超えるクルマにしようというものだろう。それは今のところ成功しているようで、昨年は世界で最も売れたクルマになっている。世界で最も売れているクルマが、日本ではほとんど走っていないというのが問題なのだが、それは後で書くとして、とにかく世界の人々はこのクルマがいい、と思って買っているわけだ。世界で認められるクルマがどんなものか、それだけでもこのクルマの試乗は期待が膨らむところだ。

 

その昔乗った初代フォーカスはいいクルマだとは思ったが、強い印象はない。あまり個性が強くては世界で売れないからか、中庸な作りだった記憶が。それでも当時の試乗記を読み直すと、国産車よりいい印象を持ったようだ。そんな印象のまま乗った最新のフォーカスは、はたしてこれは素晴らしいものだった。とにかくシャシーがいい。しなやかで、静かで、それでいてスポーティ。想像する欧州車の理想みたいなものが体現されている。つまりはクルマ好きが好むシャシーそのものだった。

エンジンは小排気量ターボかと思うほど、出だしのトルク感が薄い一方で、3000回転以上で力強くなり、ついつい回したくなる。しかし考えてみればそれが自然吸気のガソリンエンジンというもの。低回転のトルクをターボで補なう昨今の直噴ターボがそれほど良くなっているわけだ。たぶんフォーカスも本命はトルクフルな直噴ターボや直噴ターボディーゼルで、今回の日本向けエンジンがこのクルマのベストではないと思うが、逆にエンジンを回して気持ちいい170psという、ほどほどのパワーを味わい尽くせるのだから、文句は言うまい。これで燃費が悪いとまずいが、ラフにアクセルを踏んでも、ほぼ10km/Lは走ったし、モード燃費との差もごくわずか。ハイオクでなければ更にいいのだが。

年収500万円のモノ作り

先入観として一番気にしたのは、タイで作られているということ。これまで乗ったタイ製の日本車は、はっきり言ってチープな印象が否めなかった。アメリカ車でタイ生産となれば、どうしても不安が出るものだ。ところが、その仕上がりは問題ないどころか、上質といえるもので、昨今の欧州生産車と何ら差異はないと感じられた。ワン フォードによるタイの最新工場は、生産国による品質の差を完全に払拭しているようだ。タイはすでに年間250万台を生産する自動車生産大国で、日本のメーカーもどんどん進出している。自国に大手メーカーがなくとも「世界の工場」となることで、高品質なクルマが作れるようになっている。日本のように高い人件費をかけなくても、高品質なクルマがいよいよ作れるようになっているわけだ。

ユニクロの柳井会長が、グローバリズムの中では100万円の年収と1億円の年収の人に分かれていくのは仕方ないなどと発言して叩かれているが、例えば年収100万円のタイの人が、年収500万円の日本の人と同じか、それ以上の品質の製品を作れるとしたら、それに対抗するには日本人の年収を100万円にしなければならないわけで、今回の発言はそういうことを言っているのだろう。フォーカスの出来の良さを見ていると、年収500万円の人が作る日本のモノ作りに関して、憂いを持たざるをえない。

そして何よりフォーカスが世界で最も売れているクルマでありながら、大変素晴らしいクルマだったということが重要だ。むろん、今後の信頼性や耐久性といった点も考慮しないと、トータルにいいクルマかどうかは判断しづらいが、少なくとも新車の状態では、同じクラスで対抗できる日本車はごく少ないのではないだろうか。そして、そんなクルマが世界で最も売れており、日本人はそのクルマをまったく知らないまま、日本車を買っている。日本独自のガラケーならぬガラ軽は素晴らしい進化を遂げているが、このクラスの日本車は、日本でしか通用しないガラケー化しているようにも見える。こうなると日本車はガラシャか。またいつもの話だが、このままではガラシャも、テレビやスマホが辿った道を行くように思えてならない。

 

アジア生産がこれまでのように、「安かろう悪かろう、でもこれで十分」ではなく、タイ製フォーカスのように「高かろう良かろう、もうこれで満足」になってきている事実に、冷や汗が流れてしまった。また日産はGT-Rの開発者である水野和敏氏を手放してしまったが(この春に退社)、水野氏は「雇われればヒュンダイでもGT-Rを超えるクルマを開発してみせる」という趣旨の発言をしている。こうした人材が流出して、やがてはアジア製の、比較的安くて、素晴らしい性能のスポーツカーが日本の道路を走る日がやってくるのだろう。それが年収100万円でも買えるのであれば、それはそれで幸せかもしれないが、さすがにそれは無理だろう。ヒタヒタと背後に迫るアジア車の猛追を受け、日本車はリタイアせずゴールを目指すことができるのだろうか。

 

試乗車スペック
フォード フォーカス スポーツ
(2.0リッター直4・6速DCT・293万円)

●初年度登録:2013年3月●形式:ABA-PBMGD ●全長4370mm×全幅1810mm×全高1480mm ●ホイールベース:2650mm ●最小回転半径:6.0m ●車重(車検証記載値):1380kg(840+540) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:MGD ●排気量・エンジン種類:1998cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・横置 ●ボア×ストローク:87.5×83.1mm ●圧縮比:12.0 ●最高出力:125kW(170ps)/6600rpm ●最大トルク:202Nm (20.6kgm)/4450rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:12.0km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソン・ストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル ●タイヤ:215/50R17(Michelin Primacy LC) ●試乗車価格(概算):-円 ※オプション:- -円 ●ボディカラー:マスタード オリーブ ●試乗距離:約200km ●試乗日:2013年4月 ●車両協力:フォード名古屋株式会社

 
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