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スバル フォレスター新車試乗記(第211回)

Subaru Forester

 


2002年03月09日

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キャラクター&開発コンセプト

初代のコンセプトをそのまま踏襲。インプレッサベースのクロスオーバーSUV

スバルは、その企業規模から数多くのプラットフォームを作れないことを逆手にとって、インプレッサ(先代)をベースに乗用車とSUVの中間的な新カテゴリーを創造した。それが初代フォレスターだ。発売当初こそ、そのコンセプトは理解されにくかったが、その使い勝手のよさが市場で知れわたるようになると人気が浮上し、今ではこういったクラスではNo1という呼び名も高い。

新型フォレスターの開発コンセプトは、「“BEST of BOTH”WORLDを追求したクロスオーバーSUV」。インプレッサ(現行)ベースで先代同様のSUVというコンセプトは変わらず、熟成に力が注がれているのが特徴だ。なお、「BEST of BOTH」とは「両方で最良」という意味でフォレスターの場合、オンロードとオフロード、ワゴンとSUVといった、2つのカテゴリーでベストという意味となる。

エンジンは2.0リッターのNAとターボの2タイプ。もちろんスバル独自の水平対向4気筒で、駆動方式はフルタイム4WDオンリー。ミッションは全グレードに4速ATと5速MTが用意される。なお、先代で後期に登場した2.5リッターの設定はない。乗車定員は5名だ。

価格帯&グレード展開

178.5~229.5万円。スバルもいよいよ価格競争力をつけてきた

グレードは価格の安い順に「X(5MTが178.5万円、4ATが185.0万円)」「X20(同188.0万円、195.0万円)」「XT(同219.7万円、229.5万円)」の3タイプ。前2つがNA車で、最後がターボ車となっている。どれぐらい割安感があるのかは、目下好調の三菱エアトレック(2リッター・4WD・4ATで185万円)を引き合いに出せば分かるだろう。ただしここで注意して欲しいのは178.5万円~という安さを武器にする「X」グレードの存在。実はエアコンとドアロックを除く快適装備はほとんど省かれており、バンパー、サイドクラッディングパネル、ドアミラー、ドアハンドルがグレーの無塗装。ホイールは鉄チン。「一体、誰が買うの? 」という客寄せパンダみたいな内容で(安全装備は一通り揃っている)、受注生産なのだ。

それゆえ実質的な販売の主力は「X20」から。こちらはフルオートエアコン、電動格納式ドアミラー、CD付きオーディオなどが標準装備となり、バンパーもしっかりカラードタイプとなる。価格はAT車で195万円と、結局、安かったりする。日産エクストレイルは「S(200万円)」でオーディオとLSDが付かないし、エアトレックの「20V(200万円)」はアルミホイールは標準だが、オーディオレス。スバルとしては珍しく価格競争力は圧倒的に高いと評価していいだろう。

「XT」は「X20」の装備に加えて室内では運転席パワーウインドウ挟み込み防止機能(フツー、後席とか助手席に付けるんじゃないの? )、外観ではマフラーの大径化、ルーフレールのカラー&シルバー化、タイヤサイズのインチアップとアルミホイールの標準化。AT車ではNコントロールとinfo-ECOモード(「基本性能」のところで説明)が付く。「X20」との差、34.5万円というのは実質的にはパワートレーンの違いによるものと考えていい。価格差は決して小さくはないが、エンジンスペックが83馬力/12.5kgmも違うわけだし、リセールバリューを考えても、「XT」の方が“買い”だと思う。ライバルと比較した時の唯一の欠点は、そうとう地味?なことぐらいか。

パッケージング&スタイル

顔はまるでレガシィ!?

ボディサイズは全長4450mm×全幅1735mm×全高1585mm。ホイールベースは2525mm。先代より全長が10mm、全高が5mm拡大されただけで基本プロポーションは不変。丸目になって不評を買ったインプレッサの反省ということもないだろうが、冒険は避けてキープコンセプトに徹している。「フォレスターの販売は北米で大ヒット、日本でも堅調。だからデザインで新規性を強調する必要はない」とのこと。それだけに新鮮味は薄い。とりあえずフロントまわりでは、グリルの外形が逆の正台形としているのが先代との大きな違い。レガシィ、インプレッサが用いる正台形グリルをファミリーフェイスとしてフォレスターに採用したわけだ。

でも、この正台形のグリル、丸目ならともかく、角目ランプだと収まりが悪いのも確か。ボンネット上にデンとのっかるエアインテーク(ターボ車のみ)といい、とてもじゃないがすっきりまとまっているとは思えない。まぁ、ツギハギっぽいのが「野性的でイイ」という人もいるわけだから、これも“アリ”の選択だろう。

一方、リア回りは全く新しい都会的なデザインが与えられている。テールランプを三角形としたことで、フォレスターならではのポイントともいえるブリスターフェンダーがより強調されており、バックウインドウ下部の“えぐり”は、スズキ・エリオのリアゲートを思わせる個性的なものだ。

また、軽量化に力が注ぎ込まれている点にも注目したい。先代とほぼ同じ寸法の中に最新の衝突安全性能をしっかり取り込んでいるのにも関わらず、車重は20~30kg軽くなっているのだ。ちなみにターボモデル「XT」4ATの車重は1410kg。これは同エンジンの「レガシィツーリングワゴンGT-Bより100kg以上も軽い数値だ。

後席の安全対策を見れば分かる! スバルの本気

室内は乗用車の落ち着きとSUVの開放感を両立している。センターコンソールあたりは依然チープさが残っているものの、インパネやドアパネルに施されたディンプル処理や、シナモンブラウンの内装色(一部グレードのみ)といった洒落っ気は、いままでのスバルには見られなかったもの。またドリンクホルダーや灰皿は、ダンパー機構を改良することで、眺めただけでは分からない質の高さにこだわっている。カーナビのモニターは6.5インチワイドと大型で、インパネ最上部にビルトイン。視線移動が少ないベストな位置に設置される。華やかさはないが、スバルらしく機能本位に仕上げられている。初めて乗る人でも、全く気負いすることなくスンナリと運転できるはずだ。

地上から600mmのヒップポイントが生み出す高いアイポイント、それによる見晴らしの良さと開放感といった先代の美点はこの新型にもしっかりと受け継がれている。前席シートリフレクターのリフト量は従来比2倍にあたる50mmを確保したことで、ドラポジの自由度が高まったのは嬉しいところ。またボディサイズ、ホイールベースは先代のままなのに室内長は40mm長くなっており、その分は主に後席の膝元スペースに宛がわれている。先代は可能な限りインプレッサとパーツを共用していたため絶対的な後席の居住スペースが足りなかったが、新型ではその不満を解消しているわけだ。安全に対する取り組みは真面目一本槍のスバルらしく、後席のシートベルトは3名分すべて3点式。さらに左右2名分は前席同様、高さ調整を可能としている。これは日本車としては初。安全基準に後席は含まれていないとはいえ、こうした対策は他メーカーもぜひ見習うべき。

基本性能&ドライブフィール

ターボ車は20馬力のパワーダウンだが、扱いやすさは向上

エンジンはインプレッサにも搭載される2リッターのNAとターボの2タイプ。もちろん水平対向4気筒。先代にあった2.5リッターは北米仕様だけで、国内仕様は消滅。NAエンジンはDOHCではなく、先代が搭載していたリーンバーンでもない素のSOHC16バルブ。137馬力/19.0kgmというスペックは同じ。低フリクション化を図るなどで、リーンバーン時代を超える燃費データ13.6km/lを達成している。主役とも言えるターボエンジンは220馬力/31.5kgmを発生。なんと先代よりも20馬力のパワーダウン。これはカタログ数値信仰から実用域での扱いやすさを追及した結果だ。排ガス・レベルはターボながらNAと同じ★1つを取得している。ガソリンタンクはターボ車が60リッター、NAが50リッター。これはなぜ?

ミッションはNA、ターボともに4速ATと5速MTのいずれかが組み合わせられる。NA車のMTは定評のデュアルレンジ(副変速機)が備わる。目新しい機能としてはターボ車のATのみに採用される「info-ECOモード」が挙げられる。これはシフトスケジュールやアイドリング時の点火時期制御が燃費重視のモードになるというもの。メーター内のECOランプが点灯するように走らせることで燃費が向上するのだという。また、Dレンジでの停止時に一定の条件下でニュートラル状態へと移行させるNコントロールも採用されている。

駆動方式は4WDのみで、全車リアビスカスLSDが標準装備される。4WDシステムに先代からの大きな変更はなく、AT車が前輪駆動(前60/後40)をベースに、電制多板クラッチで必要に応じて後輪にトルクを配分する「アクティブトルクスプリット4WD」、MT車がセンターデフにビスカスカプリングを組み合わせた「ビスカスLSD付センターデフ方式4WD(50対50のトルク配分)」。ATのターボモデルは、オプション装備として「VDC-4WD」も選択可能だ。VDCとはスバル独自の横滑り制御機能のことである。

足回りは基本的にインプレッサと同じで前後ストラット・サスペンションを採用する。タイヤサイズはターボ車が215/60R16、NA車が205/70R15となり、ブレーキはターボ車が4輪ディスク式なのに対してNA車はリアがリーディングトレーリング式、つまりドラム式となる。走りをウリとするクルマだけに、NA車も4輪ディスクを採用して欲しかった。

ターボ車はインプレッサ譲りの快速を見せつける

フォレスターの4WDシステムとパワートレーンの低重心レイアウトは、クルマの安定性、危険回避性能など、走りのポテンシャルを高める大きな要因となっている。SUVといわれるカテゴリーのクルマは、アンダーステアを強めに設定しているため、ステアリング操作に対してクルマの反応が鈍く、曲がりにくいといった印象をドライバーは受けがちだ。しかしフォレスターの場合、低重心であることを生かして、このような意図的な強いアンダーステアを感じることなく、きびきびとした気持ち良いコーナーリングを楽しむことができる。ロールは適度に発生するものの、パワステの感触も含めてユルイところが一切ない。つまりドライバーとクルマの一体感ある走りを楽しめることこそが、フォレスターの一番のキャラクターと言ってもいいだろう。

ただし、グリップ力が劣るオールシーズンタイヤを履いているため、限界性能はそれほど高くない。ちょっとしたワインディングに持ち込んだだけで、いとも簡単にタイヤが鳴き始める。素性がいいだけに、これはちょっともったいない。不満がある人はサマータイヤに履きかえることをオススメする。コーナリング性能は飛躍的に良くなるはず。あとは保険としてVDC(ターボ車のみにオプション設定)もチョイスしたいところだ。

乗り心地は、SUVとしてはかなり高いレベルにある。一般的のSUVの場合、コーナリング性能を高くしようとすると乗り心地はどうしてもゴツゴツと固くなってしまうのだが、フォレスターにはそれがない。というか低重心ゆえに足をガチガチにさせる必要性がないのだ。構造上、ストロークが長くとれるため、段差の吸収も良く、乗り心地はフラットで快適。最小回転半径が5.4mから5.3mへ改善されているのも見逃せない点だ。唯一惜しいのはゲート式シフトレーバーの操作性だろう。これはフォレスターに限らずスバル全般に言えるのだが、D-N間はロックがなく、3-2間は横の動きが加わるため、積極的にマニュアル的な操作ができないのだ。

先代と最も大きく変わったのは加速のフィーリングだ。今回試乗したターボモデルは、スペック上でこそパワーダウンとなっているが、実際には日常のシーンで使うことの多い4000回転以下のトルクがグンと増しており、扱いやすくなっている。ターボラグはわずかに感じられるものの、先代よりはかなり「おりこうさん的味付け」となっている。ボディが軽くなったこともあって、アクセルを踏んだ直後の“体感的な力強さ”は新型の方が明らかに上だ。馬力低下によるマイナス要素は、恐らく150km/h以上でさらにアクセルを踏んだ時の反応が鈍くなることぐらいだろう。それ以外はあらゆる面で先代を凌駕している。燃費も10.6km/lから13.0km/lと格段にアップ。走りにうるさい人が乗るスバルのSUVだけに、もう少し刺激が欲しいところだが、その要望はいずれ登場する「STi」が応えてくれるだろう。

ここがイイ

スバルらしい質実剛健さは誰もが認めるはず。細かいことだがサンバイザーの裏にカード入れが2つあり、ペンホルダーもあるのは便利。特にペンホルダーってなぜ他メーカーは付けないのだろう。リアの足元も広くなったし、600mmのシート高は乗り降りしやすい。視界が大変広く、後方視界の死角も少ない(スバル独自のテスト基準で調整されている)。

ここがダメ

スタイルは見事に地味だ。レジャーカー的な要素のあるこのクラスゆえ、もう少し何とかならなかったものか。唯一特徴的なリアスタイルもスズキエリオにあまりに似てしまった(向こうが先に出してしまった)。フロントグリル周りでは、グリルとライトの間の逆三角地帯がどうにもヘン。スバルはすばらしいハードウェアをデザインで生かしきれていない。昔からの伝統ではあるが。

総合評価

アメリカではおそらく主婦層の毎日の足として使われるのだろう。逆に日本ではアウトドア好きの若者やお父さんがオーナーとなるのだろう。2大市場におけるこのユーザー層の違いがNAとターボという二つの性格を反映している。毎日ガシガシ乗るNA、休日メインのターボというわけだ。ではどちらがフォレスター本来の姿かといえば、NAだと思う。ターボは日本市場向けのスペシャリティモデルといえそうだ。

そんなターボだが、心おきなくとばしたら大変燃費がきつかった。満タンで測定していないから正確にはわからないが、6km/リットル程度。ハイオク指定だ。エコモードでエコランプを付けるように気をつけて走らないとカタログ値には遠く及ばないようだ。オールシーズンタイヤの走りはいまいちゆえ、走りを求めるならインプレッサを買えばいいだろう。となると道具としてのワゴンならNAで十分ではないだろうか。

ではこのターボ車の存在意義は? これはまさにマイノリティのためのマシンといえる。スバルというニッチなメーカーの中の、ニッチな車種。いわゆるSUV(Xトレイルはこちらに近い)ではなく、といって都会派のワゴン(エアトレックはこちら寄り)でもない。独自のメカニズムを持つ独自の位置付けのRV。ターボでトルクフルかつ快速で走り、オフロードもOK、しかも5ナンバーにこだわった適当なサイズ。これだけの要素があれば惹かれる人はそこそこいるはず。そんな人をより満足させる完成度を5年目のフルチェンジで獲得したというわけだ。アメリカでは別のコンセプトで売れるのも、結果的にスバルにとってありがたいはず。

自動車業界ではニッチなスバルのような企業にとって、こうした展開は正しいだろう。アイデンティティを持たない企業は消えるのがグローバリゼーションの定め。こうしたクルマを出せるスバルは、「大丈夫」だと思う。

●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/forester/

 
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