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スバル フォレスター STi バージョン新車試乗記(第308回)

Subaru Forester STi Version

(2.5リッターターボ・6MT・295万円)

2004年03月06日

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キャラクター&開発コンセプト

フォレスターの皮を被ったWRX STi

1997 年に初代が発売されたフォレスターは、水平対向4気筒エンジンと4WDシステムを搭載しオンロードの走りを重視した、スバル言うところの「クロスオーバー SUV」。2002年2月に2代目に進化したが、スタイルやキャラクターは初代を踏襲した。ベースはいずれも新旧インプレッサだ。

そして今回、2004年2月3日のマイナーチェンジで新たに追加された「STi Version」は、「ピュアスポーツSUV」を目指して開発された高性能モデル。国内初採用の2.5リッター水平対向4気筒DOHCターボエンジン(265ps、 38.5kgm)、6速MT、225/45R18のブリヂストン「POTENZA RE030」タイヤ、ブレンボ製ブレーキなど、「STi」(スバル・テクニカ・インターナショナル)の名にふさわしい内容を備える。インプレッサでおなじみの「WRブルー・マイカ」(写真)も用意。まさに「フォレスターの皮を被ったWRX STi」だ。

価格帯&グレード展開

WRX STiとほぼ同価格


普通のフォレスターはシリーズ全体で178.5~249.5万円だが、対して「STi Version」は295万円と段違い。しかし、動力性能や専用高剛性ボディ、足まわり、ブレンボ製ブレーキを見れば「安い」と感じる人も少なくないのでは。なにしろフォレスターSTiのエンジンはWRX STiより500cc多く(ピークパワーは下回る)、タイヤも1インチ大きい18インチで、価格は8000円安い。当然、室内はフォレスターの方が広いし、居住性も積載性も優れる。家族がいる人はどっちを買うかで迷う可能性あり。詳しくは後述するが、実際に運転した時の「高性能感」で、両車にほとんど差はないと思う。

パッケージング&スタイル

いわば背の高いインプレッサ

ボディサイズは全長4445mm×全幅1735mm×全高1550mm。WRX STi(4415mm×1740mm×1425mm)と比べると、全高(+125mm)以外ほとんど変わらない。ホイールベース(2525mm)もまったく同じ。一方、最低地上高はWRX STiより30mm高く、普通のフォレスターより30mm低い170mmだが、この点は従来からあるオンロード重視グレード「CROSS SPORTS」と同じだ。

 

試乗車はWRXでおなじみの「WRブルーマイカ」。専用前後バンパー、ボンネット上に突き出たエアインテーク、巨大な 18インチホイールやそこかしこのピンクの「STi」ステッカーのせいか、タダモノじゃない雰囲気が漂う。ボンネットはアルミ製だが、STi だけでなく、何とフォレスター全車が採用する。ホワイトやシルバーのボディ色もあり。

回転計を中央に配置

ダッシュまわりを黒系の樹脂が覆うインパネ。スイッチの配置はものの見事にオーソドクスで、操作に迷う余地なし。欲を言えば、もう少し華が欲しいところ。普通のフォレスターでは右側の回転計がSTiでは中央に配置され、目盛りも8000から9000回転にスケールアップ。WRX STiと違って、イグニッションONで針が一斉に振り切れる演出は省かれる。

 

WRX STiとほぼ同じと思しき、アルカンターラ(人工スエードの一種)を張った座り心地のいいフロントシートは、ホールド性こそ特に高くないが、フォレスターの性格には合っている。乗り降りで引っかかることもなく、座った瞬間の固さもない。助手席の女性やお年寄りからも不満は出ないはずだ。

ちなみに、アルカンターラ(アルカンタラ)は、基本的に東レのエクセーヌと同じ製法のもの。名称に関しては、単に商標(アルカンターラはイタリアのアルカンターラ社)の違いだけだが、2003年から東レも自動車用に関してはエクセーヌではなく、アルカンターラの名称を使うようになった。ご存知のとおり、アルカンターラは自動車業界ですでに高いブランドイメージを確立しているからだ。ただし実際の風合いや性質は製品によって様々なようだ。

立派な後席

後席にはマイナーチェンジでスライド式リクライニング機能が備わった。背もたれ中央と座面クッションが連動して動き、リラックスした姿勢をサポートする。立派な別体ヘッドレストや大型アームレスト、余裕ある足元や天井スペースなどは、インプレッサとは比較にならないしっかりした作りで、両車のキャラクターの差がはっきり出ている。

全長4.4メートル程度と短いが、荷室スペースはなかなか広い。多くのステーションワゴン同様、バンパーレベルまで上げ底にした床下には小物入れが設けられる。

基本性能&ドライブフィール

剛性感あふれる操作系

まず印象的なのが、WRX STi用をベースにギア比を変更した6速ミッションの操作感、剛性感の高さだ。ストロークも驚くほど短く、クラッチは重めでガシッとした踏み応えだ。これ以上を望めば、ラリーカーのようなレース用のドグクラッチにするしかないと思わせる。バックに入れる時は、レバー下のアルミ製リングを引き上げて行う。

WRXではかなり視界を遮っていたボンネット上の冷却用エアスクープは、視点の高いフォレスターだと、そうは気にならない。意外に小回りが効かないので、後でカタログを見たら最小回転半径が普通のフォレスターの0.3m増し、インプレッサ(全車)の0.2m増しの5.6mだった。もちろん大径タイヤを付けたせいで、前輪切れ角が取れなくなったせいだ。

低回転から爆発ダッシュ

WRX STiの2.0リッターターボ(280ps/6000rpm、40.2kgm/4400rpm)に対して、フォレスターSTiの2.5リッターターボ(265ps/5600rpm、38.5kgm/3600rpm)は、絶対パワーで劣るが、より低回転で力を発揮する。違いはアクセルを踏めば明らかだ。 3000回転以下で少し待つWRX STiに対し、フォレスターSTiはいつでもどこでも加速する。高回転の盛り上がりはないが、飛ばさなくてもパワーが味わえていい。

全開加速の2速シフトアップ時に一瞬加速が落ち込むのを除けば、ターボラグはほんの一瞬。0-400m加速はWRX STiに多少遅れをとったとしても14秒前半か、ひょっとすると13秒台?と思わせる。車重はWRXから50kg増しの1490kgに過ぎない。

スバル製小型カイエン

ワインディングも一応走ってみた。前後・左右の姿勢変化がビシッと抑え込まれ、アクセルを踏もうがブレーキを踏もうが、さらにはステアリングを切ろうが、ボディは感覚的に水平を保つ。この「視点の高いスポーツカー感覚」は、いきなり価格が違うが、ポルシェのカイエンにかなり近いと思った。これほど走りがしっかりした「SUV」は、この2つ以外にそうそうない。

このパワーにしてトラクションコントロールやESC(横滑り防止装置)などの電子制御デバイスはなし。あるに越したことはないが、雨に濡れたワインディングでも、とりあえず必要は感じなかった。18インチのポテンザRE030のグリップと4WDのトラクション性能は完璧で、コントロールを失うことは、よほどムチャをしない限りあり得ない。

金色に輝く前後のブレンボ製キャリパーと前後17インチ(!)ブレーキディスクは、名前や見た目だけでなく、タッチも効きもすごくいい。「最高を目指して磨いた」というカタログの文句にウソはない。その代わり、ゆっくり止まる時には「キー」と小さくブレーキ鳴きする。よく見るとカタログの隅に「高性能なブレーキキャリパーとブレーキパッドを採用し、ブレーキ性能を高めたため、ブレーキの鳴きやブレーキダストが出やすい傾向があります」と但し書きあり。

WRX同様、前後の「シュアトラック」LSDが強力に差動制限してステアリングを切った方向にグイグイ加速するところは同じ。サーキットでタイムを出すには必需品だろうが、山道で軽く飛ばす分には、WRX同様ちょっと緊張感があった。ステアリングギア比はWRXの「13:1」から少し落とした「15:1」。クイック過ぎず、的を得た設定だ。

乗り心地は特急電車みたい

高速走行はお手のもの。ロードノイズも低く、なかなか快適。ボディが前後・左右に傾かず、やや固い足回りで微振動が出るだけなので、まるでトップスピードに達した特急電車みたいに快適だ。

100km/hは6速トップで約2200回転。この回転だとエンジン音は聞こえないが、瞬発力も弱い。5速(約2800 回転)でもまだまだ。4速、そして3速まで落とせば、追い越しは瞬間芸だ。インプレッサのような高回転型ではないので落ち着いて走れるが、スピードがあっけなく出る点は要注意。

ここがイイ

ドッカンターボではなく、どの回転からでも力が出て、抜群の加速力をみせる。その分刺激に乏しいが、ツーリングカーとして使えるフレキシビリティがある。ボディスタイルに合った性格が好ましい。ファミリーカーとしても問題ない快適性を併せ持つ「実用的」なSTiだ。

職人気質あふれるシャシー、ブレンボのブレーキ、カチカチ決まる6MTは所有の喜び、走りの喜びを感じさせてくれる。シートもカッコいい。もちろん実用性も高い。

ここがダメ

同じ6MT、過給器付き、メーカー製チューンドモデルながら、性能でも実用性でもまったく比較の対象にならない先週のクーパーS(260万円)が、より魅力的に思えてしまうところ。素晴らしいクルマでありながら、スバリストでないとどうにも買いたい気持ちにまでなれない。「STi」ブランドはスバリストには分かるが、普通の人には今ひとつわかりにくい。もう少しわかりやすい記号性があれば、もっと売れるだろう。

総合評価

水平対向4気筒のポルシェ・カイエン

オンロード性能重視のSUVを早い時期に実現した点でスバルの先見性を評価するが、2年前のフルモデルチェンジでもフォレスターの外観は大きく変わらなかっただけに、今やノーマルのフォレスターは少々地味に見える。しかしSTiは違う。圧倒的な動力性能、素晴らしいハンドリング、なのになぜか快適な乗り心地、十分なユーティリティと、クルマとしての重要な要素が、かなり高い次元でバランスしているのだ。素晴らしい性能で特化しながら、どこか子供っぽいインプレッサ。ステイタス感があるものの、ありがちなワゴンらしさを体現するレガシィに較べると、フォレスターSTiには確かに唯一無二の存在感がある。こりゃもう4気筒のポルシェ・カイエン(しかもカイエンはV型だが、こっちはちゃんと水平対向だ!)と呼んでもいいほど。小型のSUVを作らせたらポルシェもきっとこんな感じのものを作るでしょう、という印象で、ハードウェアは完璧だ。

スバルは、昔から一部愛好者に熱狂的に受け入れられてきた。同時に、STiのようなモデルを時々出すことによって、愛好者を満足させながら愛好者を新たに少しずつ増殖させ、メーカーとして今の評価を確立してきた。フォレスターSTiもスバリストに熱く受け入れられ、さらには一般の「ごくわずかな人数」をスバリストへ引き込む役割を担うことになるだろう。その役割を果たすだけの実力を備えていることは間違いない。

好きなクルマは車名でなく「スバル」と言えるスバリストを持っていることが、富士重工の財産であり幸せなところ。そして好きなクルマを自信を持って所有できるスバリストも幸せ者だ。メーカーとユーザーの幸せな関係をさらに強固にする新たなツール、というのがフォレスターSTi の役割といってもいいだろう。

試乗車スペック
スバル フォレスター STiバージョン
(2.5リッターターボ・6MT・295万円)

●形式:TA-SG9●全長4445mm×全幅1735mm×全高1550mm●ホイールベース:2525mm●車重(車検証記載値):1490kg (F:870+R:620)●エンジン型式:EJ25●2457cc・DOHC・4バルブ・水平対向4気筒ターボ・縦置●265ps(195kW) /5600rpm、38.5kgm (378Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L●10・15モード燃費:10.0km/L●駆動方式:フルタイム4WD● タイヤ:225/45R18(ブリヂストン POTENZA RE030)●価格:295万円(試乗車:295万円)●試乗距離:約200km ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/forester/stiversion/index.html

 
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