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日産 フーガ ハイブリッド新車試乗記(第616回)

Nissan Fuga Hybrid

(3.5L V6+モーター・7AT・577万5000円)

ハイブリッドカーの究極か?
ハイパワーFR車とEVの融合か?
その技術力の結晶に注目せよ!

2010年12月04日

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キャラクター&開発コンセプト

日産独自の1モーター・2クラッチ方式FRハイブリッド


新型フーガ ハイブリッド
(photo:日産自動車)

2010年11月2日に発売された「フーガハイブリッド」は、2代目フーガ(2009年11月発売)がベースのハイブリッド車。これまで日産のハイブリッド車には、2000年に100台限定で生産されたティーノハイブリッドのほか、トヨタから技術供与を受けて開発し、米国で販売しているアルティマハイブリッド(2006年-)があったのみで、国内向けとしては久々のハイブリッド車だ。

そのハイブリッドシステムは日産独自の1モーター・2クラッチ方式となる「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」と呼ばれるもの。駆動と発電を1つのモーターで行い、2基あるクラッチの一つでモーターとエンジンを切り離し、モーターのみで走行する。もう一つのクラッチは変速機の後方に置かれ、主に駆動ショックを緩和するようだ。

 

1モーター・2クラッチ式ハイブリッドシステムの説明図。前からエンジン、クラッチ、モーター、ミッション、クラッチ、プロペラシャフトの順で並ぶ
(photo:日産自動車)

変速機は既存の7ATがベースだが、トルクコンバーターを廃して伝達効率を高めた新開発の「ハイブリッドトランスミッション」。またハイブリッド用バッテリーには、新型EV(電気自動車)のリーフに用いられたラミネート構造のリチウムイオンを採用。エアコンは電動インバーター式だ。

これらの結果、10・15モード燃費はコンパクトカー並みの19.0km/Lを達成。ライバルであるGS450hの14.2km/h、クラウンハイブリッドの15.8km/Lを大幅に上回っている。さらに、これまでのハイブリッド車では出来なかった高速域でのEV走行も可能だ。

シーマ/プレジデントの後継という役割も


(photo:日産自動車)

販売目標は月間200台。受注台数は発売後約1週間で、5倍以上の1010台に達したという。ちなみに初期受注の内訳は50~59歳が30.6%、60歳以上が55.2%で、つまり50歳以上が85.8%以上を占めている。

なお、日産の旗艦セダンとして長年君臨してきたシーマ(4代目は2001-2010年)とプレジデント(3代目は2003-2010年)は2010年8月に生産を終えており、後継車もないことから、フーガが日産の新たな最高級セダンとなる。

またフーガは海外では「インフィニティ M」と名を変え、現在は3.7リッターV6の「M37」と5.6リッターV8の「M56」を販売中だが、北米では2011年春にフーガハイブリッドに相当する「M ハイブリッド(M35h)」を追加する予定だ。

 

※過去の新車試乗記 フーガ/シーマ関連】
■新車試乗記>日産 フーガ 350GT (2004年12月)
■新車試乗記>日産 シーマ (2001年3月)

※過去のニュース&新車試乗記 【FRハイブリッド関連】
■新車ニュース>メルセデス・ベンツ Sクラス ハイブリッド (2009年10月)
■新車試乗記>トヨタ クラウン ハイブリッド (2008年6月)
■新車試乗記>レクサス LS600hL (2007年6月)
■新車試乗記>レクサス GS450h (2006年4月)

価格帯&グレード展開

標準車は577万5000円。VIPパッケージは630万円


ボディカラーは計7色で、全車スクラッチシールド塗装。試乗車は「スーパーブラック」
車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

基本的にはモノグレードで、標準車の価格は577万5000円。注文時のオプションには、本革シートやエアコンディショニングシートをセットにした「本革パッケージ」のほか、セミアニリン本革シートや銀粉入り本木目パネル、スエード調ルーフ等を備えた「プレミアムインテリアパッケージ」(45万1500円)、BOSEサラウンドサウンドシステム(18万9000円)などがある。

また、豪華装備を最初からまとめて装備した「VIPパッケージ」仕様(630万円)も用意。これは前述の「プレミアムインテリアパッケージ」に加えて、後席パワーリクライニングシート(シートヒーター付)、リアセンターアームレスト内蔵コントロールスイッチ、リア電動サンシェード、コンフォートサスペンションなどを装備したもの。装備の充実ぶりを考えると、最初からVIPパッケージを選ぶのがお得だ。

もちろんハイブリッド車なので、新車購入時の自動車取得税と自動車重量税は100%免税される。

 

「VIPパッケージ」車には左右Cピラーにエンブレムが付く

【3.5リッターV6(306ps・35.7kgm)+モーター(68ps・27.5kgm)・7AT】
10・15モード燃費:19.0km/L
JC08モード燃費:-km/L

■フーガ ハイブリッド(標準車)     577万5000円
■フーガ ハイブリッド VIPパッケージ   630万円  ★今回の試乗車

パッケージング&スタイル

外観はガソリン車とほぼ同じ

モーターデイズ試乗記では初出(しょしゅつ)の2代目フーガ。ざっと外観からパッケージングまで見てみると、ボディサイズは現行フーガの純ガソリン車と同じで、全長4945mm×全幅1845mm×全高1500mm、ホイールベースは2900mmだ。

 

大きいことは大きいが、最高級セダンとして考えると、これはむしろコンパクトな方で、サイズ的にはレクサスLSとGSの中間、あるいはクラウンマジェスタと同等。また最小回転半径は5.6メートルとまずまず小さく、ボンネット上にはポルシェ911風の峰が見えるので、意外と車両感覚はつかみやすい。さらには日産お得意のサイドブラインドモニターもあるので、大きいクルマに不慣れな人でも割とすんなり運転できると思う。

 

HYBRIDバッジとアルミホイールの表面仕上げがハイブリッドの目印

外観でハイブリッド車と分かる部分は、ごくわずか。左右フロントフェンダーとリアの「HYBRID」バッジを除くと、18インチアルミホイールに施された「クロームカラーコート」や外装色にチタン・メタリック塗装の「エターナルスノーホワイト」があることくらいだ。実際に街で出会った時は、見た目よりも独特の走行音でハイブリッドと気付くことが多いだろう。というのもフーガハイブリッドはリーフ同様、低速走行中にモーター風の走行音をスピーカーで発生させるからだ。ヒュィ~ンという音で、車内ではほとんど聞こえない。

インテリア&ラゲッジスペース

豪華・ハイテク装備はもちろん、「タコメーター」も装備


試乗車は銀粉を本木に手作業ですり込んだウッドパネルやセミアニリン本革シートを備えた「プレミアムインテリアパッケージ」付

装備は非常に豪華だが、インテリアもガソリン車と大差なし。変わらない点で最たるものがタコメーターの存在だ。というのも、モーターのみで発進・走行が可能なハイブリッド車でタコメーターを装備する例は、今までほとんど例がなかったからだ。

これが便利なのは、走行中にエンジンが止まっているかどうかを一目で確認できること。またこれによってフーガハイブリッドでは、タコメーターが「0」を差した状態でも、発進、加速、巡航するという、新鮮な体験ができる。

 

写真は「エネルギーモニター」を表示したところ。左下にあるのが「アシスト/チャージゲージ」

またメーター中央の液晶パネルには、平均燃費、エネルギーの流れを示す「エネルギーモニター」、EV走行時間などを表示する多機能液晶モニターを配置。トヨタのハイブリッド車でおなじみの「アシスト/チャージゲージ」も小さめだが付いている。

ナビモニターに地図、エネルギーモニター、燃費を同時表示できる


三画面同時表示を行ったところ

もちろんHDDカーウイングスナビは全車標準で、こちらの画面にもエネルギーモニターや平均燃費などを表示できる。中でも画期的なのが、今までありそうで無かった「三画面同時表示」。よく使う地図画面、エネルギーモニター、平均/瞬間燃費を同時に表示できる機能だ。ただ、他の画面、例えばテレビ画面などと組み合わせることは出来ない。

ちなみに今回、取材中に困ったのは、どこをどう押せば「三画面同時表示」モードになるのか、取扱説明書を読んでも分からなかったこと。ほとんど挫折しかけたが、最後に何とか探り当てた方法は、以下の通りだ。

 

・1、モニター左下の「設定」ボタンを押す。
・2、画面上の「ナビゲーション」をコマンダーで選択。
・3、画面上の「地図ビューの設定」をコマンダーで選択。
・4、画面上の「常時表示設定」をコマンダーで選択。
・5、画面上の「常時燃費表示」をコマンダーで選択。

後席は絶対的な広さこそないが、快適豪華

全長4.9メートル超、ホイールベースが2.9メートルもあるクルマだが、後席はシーマやプレジデント、あるいはレクサスLSやLSロングなどと比べてしまうと、少々タイト。あくまでフーガはオーナードライバー向けのミディアムクラス車で、しかもルーフやサイドウインドウを上方で絞っているからだ。

また乗降性についても、ヒップポイントが高い割に、ルーフがやや低いため、乗り込むときに頭がつかえやすいほか、サイドシルが高いため(フットウエルが深い)、足運びに気を付ける必要がある。

 

「VIPパッケージ」仕様の後席は、電動リクライニングも可能。背もたれと座面が連動して動く。座面の低反発ウレタンも標準車より10mm厚い

ただ、いったん座ってしまえば、高めのヒップポイントによって自然な着座姿勢になるし、見晴らしも良好。ドイツ製高級セダンの場合、ヘッドルームを稼ぐためにヒップポイントが低く、小柄な日本人では閉塞感を覚えるものが多いが、その点ではフーガが優れる。またVIPパッケージ車には、アームレストにオーディオや空調のコントロールスイッチが備わるほか、左右席それぞれが電動でリクライニングするなど(背もたれと座面が同時に動く)、最高級車並みの装備が一通り揃わる。

トランクはGS450hより広く、クラウンHVやLS600hと同等か?


開口部は広く、形状もスクエアなトランク。ゴルフバッグが4つ積めるという

トランク容量は手元の資料では不明だが、後席背もたれの後方にハイブリッド用バッテリーを搭載するため、奥行きはない。ただしリチウムイオンの強みでバッテリーを小型化したせいか、9インチのゴルフバックが最大で4個、何とか入るようだ。荷室には積み方を指示するイラストが貼ってある。

 

一方、ライバル車となるGS450hのトランク容量はこれより小さい292リッターで、ゴルフバッグは2つまで。米国のインフィニティ公式サイトには、「GS450hよりトランクが広い」と名指しで記述があった。ただしクラウンハイブリッドのトランクは、もともとクラウンのそれがGSより大きいため、376リッターとなり、ゴルフバッグも4個積める。ちなみにLS600hもマイナーチェンジでゴルフバッグが4個積めるようになったようだ。

 

床下にはテンパースペアタイヤを搭載。右隅にジャッキが収まる

基本性能&ドライブフィール

発進から高速走行まで、驚くほどEV走行

フーガハイブリッドのエンジンは3.5リッターV6の「VQ35HR」(306ps、35.7kgm)で、その後方に電子制御クラッチを介して一基のモーター(68ps、27.5kgm)を置く。システム最大出力は、公表されている北米仕様を参考にすれば、フーガの3.7リッターV6純ガソリン車(333ps、37.0kgm)を上回る360psだ。

まずは走行モードを「エコ」にしてスタート。諸条件が合えば、モーターだけでスルスルと走り出す点はプリウスと同じだ。エンジンがいったん暖まってしまえば、発進はほぼモーターだけで行い、いったんエンジンが掛かっても60km/h以下ならタコメーターの針がストンと0まで落ち、あっけなくEV走行に移行する。今の3代目プリウスもよくEV走行してくれるが、フーガハイブリッドはその比ではなく、これまで経験したハイブリッド車の中で最もEVで走ってくれるクルマだ。

 

80km/hで走行中も、タコメーターはご覧の通りゼロを指す

さらに80km/h巡航でも、意識してアクセル踏力を抜けばEV走行。100km/hでも巡航というか、惰性で走るような感じなら、エンジンが止まってくれる。話によると、SOC(バッテリーの充電状態)さえ良好なら140km/hでもEV走行するらしい。こうなるとまるで巨大なi-MiEV、いやリーフだ。

面白いのはガソリン版のフーガにも採用されている「ECOペダル」と呼ばれる機能。ペダルを踏みすぎると、アクセルペダルに電動アクチュエーターで反力を発生させて、ペダルを「押し戻す」というものだ。もともとハイパワー車だから、それでも十分速いが、ここまでストイックなエコモードも珍しい。

ただ走行中に時折、駆動系から「ゴツン」と軽微なショックが出ることはあり、最初は少しびっくりする。坂道などモーターのみで駆動力が足りない場合に、エンジンを掛けて例のクラッチをつなぐ時のショックだと思われるが、構造上のものだと分かっていれば、そうは気にならない。ある意味、1モーター2クラッチ式ハイブリッドであることが実感できる瞬間だ。

「スポーツ」モードでの全開加速は5リッターV8並み


エンジンは既存の「VQ35HR」だが、もちろんハイブリッド専用に再設計されたもの

もちろん走行モードを「ノーマル」にすれば、割と普通に走る、というか、相当速い。その名の通り、運転感覚はこのモードが一番自然で、EV走行やアイドリングストップする点を除けば、一般的な高級セダンみたいだ。

さらに「スポーツ」モードを選択すれば、間違いなく国内外の最新5リッターV8セダン並みのパワーが開放される。システム全体の最大トルクは未発表だが、体感的に50kmg台はありそう。トルク感はかなり強烈で、交差点の立ち上がりで不用意に踏むと、モーター的なトルク感がグワッと盛り上がり、オオッと慌ててしまうほどだし、直進時でもタイヤが白線に乗っただけでトラクションコントロールが介入する。その気になれば100km/hまでは一瞬で、リミッターが作動する180km/h超までも数瞬で達するはず。このあたりは微妙な違いこそあれ、GS450hやクラウンハイブリッドと似た世界だ。

 

もちろん、基本的には最高級セダンにふさわしく、快適性重視。VQ独特のV6サウンドも小さく、V8かと思うほど静かで、スムーズに走る。こもり音を逆位相のスピーカー出力で消すアクティブノイズコントロールも採用されている。

また試乗車は「VIPパッケージ」で、専用のコンフォートサスペンション仕様。ダンパーには路面からの入力周波数に応じて2つのピストンで減衰力をコントロールする「ダブルピストンショックアブソーバー」が採用されている。メカ式なので、エアサスや電子制御ダンパーのように、状況に合わせてスポーティに、ということは出来ないが、乗り心地はコイルバネ仕様としては最高だと思えた。

ナビ協調制御で、コーナー手前ではペダルを押し戻す

かようにコンフォート仕様ではあるが、ハンドリングは日産のFR車だけあって、よく曲がり、インフォメーションもあるなど、ドライバーのやる気を削がない。試乗車の車重は1900kgで、リアにはバッテリーもあるし、パワーもあるしで、いろいろ大変そうなのだが、運転している時はほとんどハンディを感じなかった。

ただ基本的には、徹底的に安全志向。すごいのは前走車との車間距離が詰まり過ぎたり、ナビ情報でコーナーが接近した場合に、アクセルペダルを例のアクチュエーターで押し戻す「インテリジェントペダル」機能だ。

 

例えばワインディングで、アクセル全開をくれても、コーナー手前の直線で思ったようにパワーが発揮されない場合は、これのナビ協調制御の仕業。じゃまだと思えば、設定画面でオフにすれば良いが、これだけのハイパワー車なので、これはこれで安心。そもそもナビ協調制御オンの状態でも、加速中にはトラクションコントロール(TC)の作動ランプがひっきりなしに点滅して、パワーが絞られる。

ただ、スポーティな走りを楽しむという点では、パドルシフトがない上に、マニュアルモード時には自動シフトアップせず、加速時に変速操作が必要など、少々面倒ではある。

ちなみに回生ブレーキ協調制御を行う「電動制御ブレーキ」は、サーボを電動化したもの。専門誌には違和感があるという指摘もあるようだが、少なくとも我々が乗った試乗車ではそうでもなく、あったとしても慣れてしまえる範囲だった。ちなみに、ふだんのブレーキングでは回生ブレーキの割合が相当大きいようで、今回200kmほど試乗した後でもブレーキダストのホイールへの付着はほとんどなかった。

驚異的な燃費性能。試乗燃費は10km/L。高速巡航は18km/L台。10・15モードは19km/L

そんな感じで、EV走行モードからパワー全開モードまで、振れ幅の大きいフーガハイブリッド。恒例の試乗燃費は、いつもの一般道・高速道路の混じった区間(約90km)で、前半こそ飛ばしてしまい7km/L台だったが、後半はエコ運転に努めた結果、トータルでちょうど10.0km/Lとなった。

 

空いた一般道を走った時のモニター。エンジン稼働時は10km/L前後だが、EV走行時にはガソリン消費を一気に抑える

さらに空いた郊外の一般道を、無駄な加速を控えて走った区間(約30km)では、ガソリン車のフィットも驚く12.5km/L。さらに高速道路を80~100km/hで巡航した区間(約30km)では、ウソかと思うかもしれないが18km/L台を維持してしまった。

10・15モードは前述の通り19.0km/Lで、これはホンダ・フィットや日産ジュークなど、国産コンパクトカーの1.5リッター車に匹敵する。いずれにしても、パワフルな走り、豪華装備、1.9トンの車重などを考えれば、この燃費性能は驚異的というしかない。

ここがイイ

EV走行の多さ。最先端のハイテク安全装備。一級の快適性とコンパクトカー並みの燃費

とにかく、バリバリEV走行してくれること。2年前に乗ったクラウンハイブリッドの試乗記では、「ここがダメ」の筆頭に、「なかなかEVモードに入らない。(中略)こんなにパワーは要らないから、もう少しモーターだけで走って欲しい」と書いているが、これがフーガハイブリッドでは完璧に解消されている。また、同試乗記では「アイドリング時の車外騒音が大きい」、「エンジンが始動した瞬間にかなり大きな振動が出る」と書いたが、この点もフーガハイブリッドでは気にならない。そのハイブリッド車らしさは明らかに現行プリウス以上で、おおげさに言えば「EVの高級車」というものを疑似体験させてくれる。

さらに、追突やコーナーへのオーバースピードでの侵入を予測して、アクセルペダルを押し戻すという「インテリジェントペダル」、全車速速追従機能付のレーダークルーズコントロール、前方車両接近警報(FCW)、プリクラッシュセーフティシステムなどなど、現時点でほぼ最高レベルの安全装備が揃っていること。さらに3画面表示機能付の大型ナビモニターもいい。

そして乗り心地の素晴らしさ、静粛性の高さ、内装の豪華さといった高級セダンに求められる性能を一級品としながら、燃費はコンパクトカー並み。これをすごいと言わなかったら、バチが当たる。

ここがダメ

リーフへの注目。足踏みパーキングブレーキ、トランクの狭さなど


シフトレバー手前にある走行モード切り替えスイッチ

メカニズムがあまりに凄すぎて、一般ユーザーにはいまいち伝わりにくい点。そしてフーガハイブリッドに罪はないが、今のご時世、リーフにばかり注目が集まること。

パーキングブレーキが電動化されず、足踏み式であること。全体の超ハイテク感に比べると、ここだけが取り残されてしまった感がある。電動化しておけば、スバルのアイサイトのような自動ブレーキ機能も装備しやすかったのでは、と思うのだが。

またドライブモードセレクターは、ダイアルリングの左側に書かれているに「エコ」モードに、「ノーマル」や「スポーツ」モードから入れる場合、右にリングを回さなくてはならないが(「ECO」の文字を矢印のあるセンター位置にするため)、感覚的には逆だ。

トランク。ゴルフバッグが4個入るとはいうものの、多分まだ多くの人は小さいと言うだろう。電池がある以上は致し方ないのだが。

出来ればシーマの代替え需要にも期待したいところだが、フーガではサイズ的にもクラス的にも、その代わりになりにくいこと。オーナードライバー向けにはいいが、カンパニーカーとして考えると、後席に絶対的な広さがないこと、後席の乗降性、トランクの狭さなど、躊躇する要素が多い。そこを乗り越えて、日産ファンにはぜひ買って欲しいが・・・・・。

総合評価

現行ハイブリッド車では最高のもの

これはすごいなあ、こんなにEV領域で走るクルマは初めてだ。素直に感動した。エコモードにしておけば、交通の流れにもモーターだけでついていける。高速巡航だってEV。その結果、車重約1.9トンの最高級車にして画期的な燃費。その気になればデイズにある営業車の初代プリウス(7年落ち)並みの燃費も出せそうだから、営業車にしようかな(笑)。経費節約を気にしながらも、高級車に乗りたい中小企業のオーナーにはぴったりのクルマでは。取得税や重量税などの減税で最初に30万円くらいは優に浮くだろうし。

とはいえ、燃費がコンパクトカー並みなら高級セダンも悪くないな、などと思って買う人は、多分そうはいない。このクラスを買う人は、豪華なものが欲しい人であり、エコを求める人ではない。まして大衆車オーナーのように燃費を特に気にする人ではない。価格もガソリン車より100万円ほど高いし、値引きも渋いだろうから、減税があってもハイブリッド分の価格を取り戻すには、かなりの走行距離が必要だ。さらに、このスタイリング、このサイズのクルマが今や日産の最高級車とは・・・・・・とネガティブに捉える人もいるのでは。フーガハイブリッドもまた、セダン人気があり、インフィニティで売られる北米向けのクルマが日本でも売られるという、いつものパターンかと思うと、ちょっと切なくなる。

しかし本文に書いたとおり、このクルマは現行のハイブリッド車としては、最高のものと言い切ってもいい。燃費性能から各種ハイテクまで、兎にも角にもイイところのテンコ盛りだ。

キーはリチウムイオン電池


(photo:日産自動車)

何よりキーになるのはリチウムイオン電池の搭載だろう。ニッケル水素電池との圧倒的な差が、フーガの性能を驚異的なものにした。トヨタ(レクサス)の高級ハイブリッド車はすでに3年ほど前のクルマであり、何より電池が弱い。リチウムイオン電池を載せれば、うちだってこれくらいのことは出来ますよ、とトヨタの技術者がつぶやくのが聞こえてきそうだ。コストのバランスはあるが、今後小さなHV車にリチウムイオン電池が載れば、驚異的な燃費になるだろうし、むろんそれはプラグインにもできるだろう。つまりフーガハイブリッドは、リチウムイオン電池の載ったプラグインハイブリッド車がものすごく良くなるであろうことを、いみじくも示してしまっている。

 

12月20日から国内で発売される日産 リーフ
(photo:日産自動車)

そしてこれはある意味、リーフのようなEVを否定することにもなりかねない。EVで世界制覇を狙う日産の戦略はこのところ、とみに喧伝されているが、現時点ではまだハイブリッド車のほうが実用的なことは誰の目にも明らかだ。ましてフーガのような高級セダンでも、リチウムイオン電池を載せれば素晴らしい燃費が出せるということは、EVの商品性を貶(おとし)めることにもつながりかねない。こんなに素晴らしいフーガHVが、ほとんど宣伝されることもなく、ひっそりと売られているのは、そんな理由からではないかと、うがった見方もしたくなる。

2010年のイヤーカーはこれ

年末ゆえ、今年乗ったクルマで何がベストかと考えていた。CR-Zかスイフトか、と思っていたのだが、ここに来てフーガハイブリッドがその中に入ってきた。フーガハイブリッドは、日本の自動車メーカーが作った世界最高水準のハイテク車であり、リチウムイオン電池がもたらすモータリゼーションの素晴らしさを予感させる、世界を一歩リードした「日本の誇り」だ。大衆車では韓国勢に追い上げられ、今後コンパクトカーでは中国車とも戦わなくてはならなくなる日本車にとって、独自性を発揮できる最後の砦がこの分野。モーターデイズ2010年のイヤーカーはフーガハイブリッドで決定としたい。

試乗車スペック
日産 フーガ ハイブリッド
(3.5L V6+モーター・7AT・577万5000円)

●初年度登録:2010年11月●形式:DAA-HY51 ●全長4945mm×全幅1845mm×全高1500mm ●ホイールベース:2900mm ●最小回転半径:5.6m ●車重(車検証記載値):1900kg( 990+910 )※VIPパッケージ&Boseサウンドシステム装着車 ●乗車定員:5名

●エンジン型式:VQ35HR ● 3498cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:95.5×81.4mm ●圧縮比:10.6 ● 306ps(225kW)/6800rpm、35.7kgm (350Nm)/5000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L

●モーター形式:HM34 ●モーター種類:交流同期電動機 ●定格電圧:-V ●68ps(50kW)/-rpm、27.5kgm(270Nm)/-rpm ●バッテリー:リチウムイオン電池

●システム最大出力:360ps(265kW)/-rpm ※海外仕様の参考値 ●システム最大トルク:-kgm(-Nm)/-rpm ●10・15モード燃費:19.0km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前 ダブルウィッシュボーン(+コイル)/後 マルチリンク(+コイル) ●タイヤ:245/50R18( Dunlop SP Sport MAXX TT )●試乗車価格:648万9000円( 含むオプション:VIPパッケージ<セミアニリン本革シート、前席エアコンディショニングシート、スエード調ルーフ、銀粉本木目フィニッシャー、後席パワーリクライニングシート、後席シートヒーター、リアセンターアームレスト内蔵コントロールスイッチ、リア電動サンシェード、コンフォートサスペンション、後席テンションリデューサーELR付3点式シートベルト等> 55万5000円、Bose サラウンドサウンドシステム 18万9000円 )●試乗距離:200km ●試乗日:2010年12月 ●車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

 
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