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アルファロメオ ジュリエッタ新車試乗記(第650回)

Alfa Romeo Giulietta

(318万~388万円)

伝統の名称が
四半世紀ぶりに復活!
新型ジュリエッタはドーダッタ?

2012年01月20日

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キャラクター&開発コンセプト

147の後継モデル


新型アルファロメオ ジュリエッタ (photo:FAGJ)

新型ジュリエッタは147の後継となる上級コンパクトカー。アルファ創立100周年の2010年ジュネーブショーでデビューし、同年に欧州で発売。日本では2012年1月5日に正式発表された(発売は2月4日から)。147のデビューは2000年(日本では2001年秋に発売)だったので、実に約10年ぶりのフルモデルチェンジになる。

駆動方式はもちろんFFで、「コンパクト」と称する新開発プラットフォームを採用。リアには147同様にマルチリンクを採用している。ボディタイプは今のところ5ドアのハッチバックのみだ。

 

初代ジュリエッタ スプリント(1954-62年)
(photo:FAGJ)

日本市場ではフィアット500やアバルト500が好調のフィアットグループだが、アルファロメオに関しては昨年に147、159、ブレラといった主力モデルの国内での販売が終了し、現行モデルはミトだけになっていた。またイタリア本国でもラインナップの厚みが失われていたのは否めないところ。そんなわけで、アルファロメオが新型ジュリエッタに掛ける期待は極めて大きい。

由緒ある名称が27年ぶりに復活


ジュリエッタ スパイダー(1955-62年)
(photo:FAGJ)

ジュリエッタ(Giulietta)という名称は、1954年に登場した初代ジュリエッタを受け継ぐもの。初代にはベルトーネ製クーペボディのスプリント、4ドアセダンのベルリーナ、ピニンファリーナ製の2人乗りオープンボディをまとったスパイダーなどがあり、いずれも大きな成功を収めた。

1962年に後継のジュリアが登場して、その名称はいったん途絶えたが、1977年にはアルフェッタがベースの小型4ドアセダンとして復活。しかし1985年にはアルファ最後のFRセダン「75」の登場を受けて再び途絶えていた。つまり今回の3代目は約27年ぶりの復活となる。

価格帯&グレード展開

「アルファ TCT」仕様は318万円から


エントリーグレードのジュリエッタ スプリント。ちなみに初代ジュリエッタやジュリアで「スプリント」と言えば2ドアクーペのこと
(photo:FAGJ)

イタリア本国にはフィアットグループが誇るディーゼルターボもあるが、日本仕様はガソリンのみ。主力モデルは1368cc ターボ マルチエア(最高出力170ps)と6速DCT「アルファ TCT」の「スプリント」、およびその上級グレード「コンペティツィオーネ」。スプリントより40万円高いコンペティツィオーネには、アダプティブ機能付バイキセノンヘッドライト(光軸を最大15度左右に可変)、17インチタイヤ、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー、スポーツサスペンション、パドルスイッチ、電動レザーコンビシート(赤いステッチ入り)などが装備される。

 

ジュリエッタ コンペティツィオーネ
(photo:FAGJ)

最上級モデルの「クアドリフォリオ ヴェルデ」は、戦前の名車(6C 1750)に因んだ「1750」の名を持つ1742cc 直噴ターボエンジン(235ps)と6速MTを搭載したモデル。アルファロメオでは高性能モデルの証である「四つ葉のクローバー」エンブレムをフロントフェンダーに備えるほか、フルレザーシート、18インチタイヤを標準装備する。以上は基本的に右ハンドルだ。

 

ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ。「1750」直噴エンジンと6MTを搭載
(photo:FAGJ)

■Sprint(スプリント)  318万円
 1368c ターボ マルチエア+6速DCT

■Competizione (コンペティツィオーネ) 358万円
 1368cc ターボ マルチエア+6速DCT

■Quadrifoglio Verde(クアドリフォリオ ヴェルデ) 388万円
 1742cc 直噴ターボ+6速MT

2台の導入記念限定車も同時発売


特別仕様車のジュリエッタ コンペティツィオーネ アルフィスティ
(photo:FAGJ)

さらに日本では新型ジュリエッタの導入記念車として、「アルフィスティ(Alfisti)」という名の二つの限定車を同時に発売する。アルフィスティとは、アルファファンのことだ。

コンペティツィオーネ アルフィスティ」(写真)は、「コンペティツィオーネ」をベースに、アルファ TCTではなく6速MTを搭載したモデルで、外装色はアルファ レッドのみ。価格はベース車より10万円安い348万円で、限定75台。

クアドリフォリオ ヴェルデ アルフィスティ」は、「クアドリフォリオ ヴェルデ」をベースに、左ハンドル、専用18インチアルミホイール、同社のスーパースポーツ「8C」と同じ3層仕上げメタリックの特別外装色「コンペティション レッド」を採用したもの。こちらはベース車より10万円高い398万円で、限定50台。

パッケージング&スタイル

新世代のアルファデザイン


日本仕様のLEDデイライトは日本の保安基準に合わせて改修したもので、常時点灯が可能(車両設定でオフにも出来る)

アルファスタイリングセンターが手がけたスタイリングは、リアドアの存在が巧妙に隠され、2ドアのように見えることもあり、一見「大きなミト」という感じ。楕円形のヘッドライトもミトっぽいが( 8Cっぽいとも言える )、ジュリエッタのそれはLEDを多数内蔵してゴージャス。また例の「盾」型グリルもメッキモールでしっかり三角形に縁取られ、アルファ言うところの「全く新しい解釈を施した」デザインになっている。LEDデイライトと新型の盾型グリル、この二つが新型ジュリエッタのチャームポイントだ。

 

写真はコンペティツィオーネ。ホイールの意匠やブレーキキャリパーで判別できる

一方でビシッとしたエッジと穏やかな抑揚のあるバンパーやボディパネルには、イタ車ならではのセンスが光る。複雑な凹凸面が交錯した流行りのデザインではなく、デザイナーやモデラーの手仕事を感じさせるような質感がアルファらしい。またプロポーション自体もFF車にしてはロングノーズ風で少々古典的だ。ただ、リアバンパーに空気の流れを断ち切る空力デザインを施すなど、ちゃんと今風の要素も入っている。Cd値は0.31。

 

ボディカラーはアルファレッド、アイスホワイト(写真)、エトナブラック、アンスラサイトグレーの全4色
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm)
■アルファロメオ ミト 4070 1720 1465 2510
■アルファロメオ 147(前期型) 4170 1730 1420 2545
■VW ゴルフ(現行型) 4210 1790 1485 2575
■シトロエン DS4 4275 1810 1535 2610
■BMW 1シリーズ(現行型) 4335 1765 1440 2690
■アルファロメオ ジュリエッタ 4350 1800 1460 2635
■マツダ アクセラスポーツ(現行型) 4460 1755 1465 2640

インテリア&ラゲッジスペース

スプリントはカジュアルな雰囲気


スプリントのインパネは、ボディカラーに合わせて赤、白、グレーの3パターンになる

インテリアでもアルファロメオ節は全開。まず「スプリント」で印象的なのが、フィアット500のようなボディ同系色のダッシュパネル。ボディカラーが赤なら赤、白なら白、黒ならグレーになる。同時にスプリントの場合、シートはシンプルな手動・ファブリック仕様で、上位2グレードのような赤いステッチも入らない。全体にカジュアルな雰囲気だ。

上位2グレードは硬派な雰囲気


コンペティツィオーネのインパネ
(photo:FAGJ)

一方、「コンペティツィオーネ」と「クアドリフォリオ ヴェルデ」のインパネは、ダッシュパネルがダークブラッシュドアルミニウム仕様になり、スポーティかつ大人っぽい雰囲気。レザーに赤いステッチを施したステアリングやシートなどは少々暑苦しいほどだが、それゆえに「アルファに乗っている」感が濃厚。素材を含めて内装は好み次第だが、質感は圧倒的に、これら上位グレードの方が高い。

意外にも?実用的な後席


エアバッグは計6個。2010年のEuro NCAPでクラス最高得点と最高評価の5つ星を取得

147には3ドアと5ドアがあったが、ジュリエッタは5ドアのみ。後席は狭いかな、と思いきや、意外にヘッドルームからフットルームまで空間に余裕があり、背もたれ角度も適切。サイドウインドウもしっかり下まで降りる。

荷室容量は350~1045リッター


アームレスト部のトランクスルーも可能。背もたれは6:4分割で倒せる

荷室容量はVWゴルフと数値的には同等の350リッター。さらにリアシートを倒せば、最大1045リッターまで拡大できる。床下にはテンパースペアタイヤが全車に搭載される。

基本性能&ドライブフィール

【スプリント】 TCTは少しセレっぽい?


16インチタイヤ&ホイールのスプリント

今回はパシフィコ横浜を発着点とした試乗会に参加。それぞれ短時間ではあったが、日本に導入される3グレード全てに乗ることが出来た。

最初に試乗したのはエントリーグレードの「スプリント」。エンジンは1.4リッター直4の「マルチエア」ターボ。吸排気バルブのリフト量や開閉タイミングを油圧で連続可変制御するもので、低負荷時には吸気バルブを小さく「2度開け」するという芸達者なエンジン。最高出力は170ps/5500rpm、最大トルクは「アルファD.N.A.システム」のノーマルモードで23.5kgm/2250rpmを発揮する。

変速機はミトで先行採用された「アルファTCT」。TCTとはTwin Clutch Technology、いわゆるDCTのこと。これは6速の乾式クラッチタイプで、フィアットグループのFPT(フィアット パワートレイン テクノロジー)社が開発したという。

 

スプリントはボディ同色パネル。パドルスイッチはこのスプリントにはない

まずはアルファD.N.A.システムに備わる三つのモード(D:ダイナミック、N:ノーマル、A:オールウェザー)から「ノーマル」を選んでスタート。DCT自体は今や珍しくないものの、今回はイタリア物ということで期待と不安が半々?だったが、実際にはどうということはなく、緩いクリープと共にスムーズに走り出せる。当然ながら変速も滑らかで、シフトショックもない。何はともあれ、アルファロメオの2ペダル車で「普通に走れる」のが感慨深い。

ただし変速レスポンスはDCTにしては割とおっとり。セレスピード風に、というと大げさだが、少なくとも電光石火という感じではない。また低速トルクがVWアウディの直噴ターボほど力強くないことも、レスポンスをマイルドに感じさせる一因かも。

 

シフトレバー奧にあるのがアルファD.N.A.システムのスイッチ。長押しすると切り替わる
(photo:FAGJ)

とはいえ横浜市街を走るうちに、そんなこともいつしか気にならなくなる。「スプリント」は大人しいノーマルサスペンションと205/55R16タイヤの組み合わせで、乗り心地は良く、それでいてキビキビも走る。静粛性もそれなりに高い。そして信号待ちでは「START&STOPシステム」によってパタンとエンジンが止まる。ついにアルファもアイドリングストップする時代なんだなぁ、と再び感慨深い。ただ、エンジン再始動時の音はやや大きめ。アウディA1をちょっと思い出した。

クルマに慣れたところで「ダイナミック」モードを選択。途端にアクセルへのツキが良くなり、トルクもグググッと厚みを増す。最大トルクは1割弱増えて25.5kgm/2500rpmだが、体感的には2~3割増。車重は1400kgと軽くないがパワーは十分で、0-100km/h加速は7.7秒、最高速は218km/hらしい。

 

アイドリングストップ中

ただしこの「ダイナミック」モード、少々どっかんターボ気味というか、レスポンスが鋭すぎるというか、トルク変動が大きすぎて、街中では乗りにくい。だからこそ「ダイナミック」なのだろうが、普段はほとんどノーマルモードで走ることになりそう。今回の試乗でも早々にノーマルに戻してしまった。

とはいえ、シャシー関係の安心感は高い。新開発のデュアルピニオン式電動パワステは操舵感が自然で、しかもオーバーステア時にはVDCと協調制御してカウンター方向にアシスト力を発生するという最新世代。プラットフォームやリア・マルチリンクサスも新開発で、少なくとも初期のミトより2ランクくらい上の路面追従性を発揮する。簡単に言えば、ドイツ車のように扱えるようになった。

【コンペティツィオーネ】 パドルスイッチが嬉しい


コンペティツィオーネには225/45R17タイヤとブレンボ製4ポッドブレーキが備わる

その後に乗った「コンペティツィオーネ」は、パワートレインが「スプリント」と同じで、そこに17インチタイヤ(BSのトランザ)、ブレンボ製アルミモノブロック対向4ポッドキャリパー(フロント)、前後大径ブレーキディスク、スポーツサスペンション、パドルスイッチなどを装備した上級グレード。事実上、これが売れ線グレードだ。

乗った感じは「スプリント」に近いが、サスペンションは確かに締まっていて、動きはクイック。ただ、すごくクイックかというとそうでもない。おかげで乗り心地は良好で、快適性は「スプリント」に遜色ない。

 

「コンペティツィオーネ」にはパドルスイッチが備わる
(photo:FAGJ)

「コンペティツィオーネ」で嬉しいのはパドルスイッチがあること。使用頻度は高くないにしても、ステアリングから手を離さず、即座にシフトダウンが出来るのは、やはりありがたい。まあ、このパドル操作に対する反応も、そんなに鋭いわけではないのだが。

【クアドリフォリオ ヴェルデ】 確かにパワフルだが・・・

最高出力235psの1742cc直噴ターボエンジンと6MTの「クアドリフォリオ ヴェルデ」には30分ほど試乗できた。直噴ターボだけに低速トルクはしっかりあって発進は割とイージー。それでもクラッチペダルの踏み込み感が独特なこともあり、油断するとエンストしそうになるが、昔からアルファのMTに乗っている人なら大丈夫だろう。クラッチの踏力は軽く、シフトストロークもまずまず短い。


「クアドリフォリオ ヴェルデ」には新開発の6MTを採用。メーター内には燃費向上のためシフト操作を促す「GSI」(ギアシフトインジケーター)が付く

とはいえ、走り出してすぐに面食らったのが、左足もとの狭さ。クラッチを踏んでいない時に左足を休ませるには、つま先を斜めにし、センタートンネルとクラッチペダルの間にねじ込まなくてはいけない。これはドライビングシューズ風の細い靴でも同じだ。慣れれば何とかなるが、ちょっと気になる。

パワーに慣れたところで、ダイナミックモードを選択。すると最大トルクはノーマルの30.6kgmから34.7kgmに跳ね上がり、ノーマルモードでは「速いなぁ」くらいで済んだものが、今度は「ウホッ」と声が出るくらいの加速になる。ちなみに排気量1リッターあたりのパワーは135psで、これはアルファの量産エンジン史上、最高値とのこと。パワーウエイトレシオは6.1kg/psで、0-100km/h加速は6.8秒、最高速は242km/hに達するらしい。

これだけパワフルであるにも関わらず、トルクステアは最小限。電子制御デファレンシャルロックがかなり効いていると思う。またコーナーでの安心感も高い。過去のFFアルファは上手く走らせるのにちょっとしたコツが必要だったが、新型ジュリエッタに特別なテクニックは不要だ。

ただ、この「クアドリフォリオ ヴェルデ」でも、ダイナミックモードはパワー特性が急激過ぎて神経を使い、早々にノーマルモードに戻してしまった。リラックスして走るなら当然ノーマルモードの方で、もちろん燃費もその方がいい。

ここがイイ

普通に乗れること。普通のドラポジなど

アルファ TCTによって、セレスピードとは比較にならないほど「普通に乗れる」こと。トルコンATの「Qトロニック」のようなパワーロス感もないし、燃費もいいはず。

アルファ好きの間では賛否が分かれるのかもしれないが、シャシーがドイツ車的にしっかりしたこと。好みはともかく、一般的には明らかに歓迎すべき進化だと思う。

アルファD.N.A.システムの「オールウェザー」モード。試乗では確認できなかったが、天気の悪い日におとなしく走れるモードは、最近の「よく走る」クルマには必要なものだと思う。時と場合によってはローパワーの方が乗りやすいからだ。

 

「クアドリフォリオ ヴェルデ」のフルレザー内装
(photo:FAGJ)

イタ車ながらシートポジションの自由度も高い。小柄な人でも、以前のイタ車に比べればかなり自然なドライビングポジションがとれる。それは電動シートではないスプリントでも大丈夫だった。

販売店オプションにアルファらしい5ホールデザイン(156などに付いていたタイプ)の大径アルミホイールがあること。これに替えれば一気にいつものアルファっぽくなる。またナビがないのも今となってはイイことだ。無駄なお金を払わなくて済む。

ここがダメ

右ハンドル・6MT仕様のペダルまわり。その他こまごま

本文でも触れたように、右ハンドル・6MT仕様における左足先スペースの狭さ。これを知ると、なぜインポーターが導入記念限定車に同モデルの左ハンドル・6MT仕様を選んだか分かろうというもの。

エントリーグレードの「スプリント」にパドルスイッチは付けて欲しかった。逆に上級グレードでは、ボディ同色インパネを選べるようにして欲しかった。またセンターパッドが巨大なステアリングのデザインはもう少しスマートに出来なかったものか。アイドリングストップからのエンジン始動も、始動音の面で更なる洗練が欲しい。

誰でも普通に乗れる新型ジュリエッタだが、では走りの上で「アルファらしさ」はあるのかと問われると、少し答えに詰まるものがある。ダイナミックモード時の過激なパワー感がアルファらしい、というだけではちょっと厳しいかも。シャシーについても147や156にはあったアルファ独特のヒネヒネ感がなくなり、かなりドイツ車っぽくなっている。残るはデザインがアルファらしいかどうかだが・・・・・・。

総合評価

ユーロ時代の新世代イタリア車

アルファロメオといえば初代ジュリエッタの後継となるジュリアが懐かしい。あれは確か1980年代半ばのこと、友人の1960年代製ジュリアのボディにサビで穴が開くのを笑ったものだ。「土に還りつつあるなあ」なんて。わずか20年落ちのボディが「腐る」というのは、昨今では考えられないことだが、60年代のイタ車はそんなものだった。そんな時代からのクルマ好きだと新型ジュリエッタを見るにつけ、「なんて良くなったんだ」と思いつつ、ちょっとした寂しさを感じるだろう。こんなにしっかりしたイタ車なんて、イタ車といえるのか、と。

新型ジュリエッタはドイツ車と互角に戦おうというイタ車だ。アルファを傘下に持つフィアットグループも、さすがにイタリアの巨人のままではいられないのがユーロ時代の現実。クライスラーを子会社化してしまったフィアットグループにとって、グローバル経済の中での勝ち抜き自動車合戦では一刻の猶予もなくなってきた。ドイツ車、特にVWグループ車の出来の良さはグローバルにクルマを見た場合、あまりに明確だ。プジョーなどのフランス車ですらがここ10年、かなりドイツ車を意識したクルマになっている。そしていよいよイタリア車もその流れに突入することになり、ジュリエッタが出来上がったということだろう。

完全に「今の時代のクルマ」

アルファの新車といえば、ため息が出るほど美しい、あるいは「かなり変」など、いずれにしてもまずルックスで人目を引いたもの。ジュリエッタはその点、一見では割と中庸なデザインに見え、驚くほどのインパクトはない。これは日本の軽自動車のような法規制ではないものの、「Cセグメントのハッチバック」という、現実的には似たような「枠」が存在するからだろう。ライバルたちと戦うため、大きくなりすぎずに居住空間、積載性、衝突安全性などの要件を満たそうとした場合、革新的なデザインとするのは難しい。特に美しさ、あるいは「かなり変」は、縦横比を変えないと表現が難しいだけに、Cセグメント各車がどこか似たようなスタイリングになるのは致し方ないことだろう。その点、BMW・1シリーズはFRゆえに妙なスタイリングとなって個性が出たのだが、FFであり、普遍的な美しさを追求したいジュリエッタとしては、それも難しいということ。アルファといえども革新的なスタイリングを作り出せるまでには至らなかったということか。

とはいえスタイリングはそれなりにまとまっており、量販するにはこれくらいがいいのかもしれない。曲線を多用したボディラインには、やはり他のどのクルマにもない美しさがあり、フロントのグリルとライト(LEDも含めて)が作る顔つきも十分に個性的だ。実用性を確保してこのスタイリングなのだから、それは認めるべきだろう。

 

同様にメカ部分も、アルファTCT、3モードのアルファD.N.A.、小排気量ターボのダウンサイジングエンジンなど、これまたライバルと同等の印象だ。リアサスはマルチリンクで接地性に優れ、乗り心地もいいし、アイドリングストップも用意されている。何より右ハンドルの2ペダル車ゆえ、日本でもごく普通に乗れる。さらに走行モードを変更できるのも今風だ。ふだんはN(ノーマル)モードで燃費重視、その気になればD(ダイナミック)モードでスポーティに、というあたりはもう完全に「今の時代のクルマ」だ。

という訳でインターナショナルな市場を目指す以上、味付けも形も似てくるという傾向から逃れきれなかった感は強いが、それでも全体にそこはかとないアルファらしさをとどめているあたりがジュリエッタの魅力だろう。つまりは誰でも、いつでも、どこでも乗れるおしゃれなイタ車だ。左側通行で、道路事情も特殊な国(日本のことね)でも日常使いができるアルファロメオだ。もはや錆びることもないだろうし。

「売れるイタ車」になりえる

これからのクルマは大衆性と趣味性という相反する永遠のテーマを抱えて、どちらへ振るかということになるだろう。今回のジュリエッタは打倒ゴルフとばかりに大衆性へ振ってきた。フィアット500の大ヒットで、イタリア車も日本で完全に市民権を獲得した。ジュリエッタもその意味で「売れるイタ車」となるだろう。2011年の日本における外国メーカー車販売は前年比13.1%増の20万5857台と2ケタの伸びとなっているわけで、これは輸入車がマニアックなものから、ちょっと個性のある普通のクルマになっている証拠といえる。日本車が普通すぎて、ただの足となりつつある昨今、一般の人がちょっとだけクルマにこだわりを持ちたい時に選択できる輸入車が増えており、そこにジュリエッタもはまりそうだ。

 

まあ、趣味に走りたいのならノスタルジックな中古車が豊富にあるのだから、それで楽しめばいい。新車で買うなら、あくまで毎日の足として乗り回せるクルマが欲しいはずだから、ジュリエッタの存在を歓迎したいところ。年々熟成されていくのが欧州車という点でも、ジュリエッタは本国デビューから1年以上たっているから、さすがに熟成は進んでいるはず。出たばかりのミトに乗った時には、足回りに不満を感じたものだが(さすがに今はもう改良されているようだ)、今回のジュリエッタではそんなことは感じなかった。もはや買って苦労しなくてもいい(ハズ)のイタ車なのだから、フィアット500に続いてヒットを狙えると思う。競合他車と比較して特に高いわけではないし、何より日本車より「ちょっとだけ高い」ことこそ、輸入車の「こだわり」の重要な要素なのだから。

試乗車スペック
アルファロメオ ジュリエッタ スプリント/コンペティツィオーネ
(1.4リッター直4ターボ・6速DCT・318万円/358万円)

●形式:ABA-94014 ●車重(車検証記載値):1400kg(890+510)●エンジン型式:940A2 ●排気量・エンジン種類:1368cc・直列4気筒・4バルブ・マルチエア・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:72.0×84.0mm ●圧縮比:9.8 ●最高出力:125kW(170ps)/5500rpm ●最大トルク:230Nm (23.5kgm)/2250rpm ※Dynamicモード:250Nm (25.5kgm)/2500rpm ●タイヤ:スプリント=205/55R16(Michelin Energy Saver)/コンペティツィオーネ=225/45R17(Bridgestone Turanza ER300)

試乗車スペック
アルファロメオ ジュリエッタ クアドリフォリオ ヴェルデ
(1.74リッター直4ターボ・6MT・388万円)

●初年度登録:2011年12月●形式:ABA-94018 ●車重(車検証記載値):1440kg(-+-)●エンジン型式:940A1 ●排気量・エンジン種類:1742cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置●ボア×ストローク:83.0×80.5mm ●圧縮比:9.2 ●最高出力:173kW(235ps)/5500rpm ●最大トルク:300Nm (30.6kgm)/4500rpm ※Dynamicモード:340Nm(34.7kgm)/1900rpm ●タイヤ:225/40R18(-)

【両モデル共通項目】
●全長4350mm×全幅1800mm×全高1460mm ●ホイールベース:2635mm ●最小回転半径:5.5m ●乗車定員:5名 ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/60L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル●試乗日:2012年1月 ●車両協力:フィアットグループ オートモービルズ ジャパン株式会社

 
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