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日産 グロリア新車試乗記(第107回)

Nissan Gloria



2000年01月21日

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キャラクター&開発コンセプト

外観デザインだけでなく、技術も評価したニューカー・オブ・ザ・イヤー・カー

クラウンと肩を並べる日本を代表する高級車、セドリック/グロリアが現行型にフルモデルチェンジしたのは昨年の6月。伝統に安住するクラウンとは対照的に、「見るたびに乗るたびに新しい感動がある新世代高級パーソナルサルーン」という開発テーマのもと、全く新しいスタイルとコンセプトを提唱した。中でも目玉となったのが、後に新搭載されることになった世界初のトロイダル式CVTの「エクストロイドCVT」だ。これこそが、RJCニューカー・オブ・ザ・イヤーを受賞することになった最大の理由といっていいだろう。

エクストロイドCVTのウリは、変速ショックのない滑らかな走りと燃費の大幅な向上。そして従来のベルト式CVTでは成立できなかった、大型車やスポーツカーへの搭載だ。

価格帯&グレード展開

エクストロイドCVT装着車は本革シートの抱き合わせで61万円高

エクストロイドCVTが搭載されるのは280馬力の3.0リッターV6ターボを搭載する「アルティマ-Z」(セドリックはVIP-Z)グレードのみ。価格は「アルティマ-Z」が555万円、ラグジュアリー指向の「Vパッケージ装着車」が471万円。セドリックは「VIP-Z」が555万円、「Lパッケージ装着車」が477万円。

通常の4速ATを搭載する「アルティマ」に比べて61万円高くなるが、エクストロイドCVT搭載車は本革シートがセットで標準化されているので、装備内容から考えれば、エクストロイドCVT自体はそれの約半分の値段といったところだろう。

パッケージング&スタイル

夢の変速機! 発明以来120年ぶりの実用化を日産が実現

ベルト+プーリーを使う従来のベルト式CVTに対し、トロイダル式CVTはディスク+パワーローラーの組み合わせが最大の特徴(下記リンク参照)。ちなみにトロイダルとは円環状という意味。大きな円錐状のものがディスクで、一枚が入力用、もう一枚が出力用。それに挟まれているお椀型のものがパワーローラーだ。エンジンから動力を受けた入力ディスクの回転を、パワーローラーを介して出力ディスクに伝達。このパワーローラーの傾きが連続的に変わることで、入力/出力ディスクのそれぞれの回転速度を変化させ、リニアな変速を可能としたものである。そのディスクとパワーローラーは直接接触させているのではなく、油膜を介して接触している。日産はこのシステムを2つ直列に並べたダブルキャビティ方式を採用し、トロイダルとエクセレントを掛け合わせて「エクストロイドCVT」と銘々したわけだ(リンクはニッサン公式ホームページより)。

イラストを見ても分かるとおり、構造自体は非常にシンプルで、原理自体は120年も前の1877年に発明されていた。でも、自動車用として実用するとなると問題は山積みで、例えば金属と金属が擦れ合うために、強い力を与えると高熱を発してしまい、たちまちオーバーヒートとなってしまう。実際、様々なメーカーが実用化に向けて実験したようだが、あまりもの精密さと丈夫さを要求するされる仕事だったために結局、どこも手に負えず諦めていた。それでも果敢に挑み、実用化に成功したのが日産なのであるである。技術の高さには定評のある日産でさえ、開発期間に10年とも20年ともかかったといわれている。この努力の結晶に、イヤーカーをあげたくなるのも当然だろう。

トロイダル式、ベルト式に関わらずCVTの利点といえば、変速ショックのない滑らかな走りと、駆動効率の良さから生まれる低燃費の両立だろう。でも、ベルト式は強度の問題から大パワーの入力に耐えられないために、2リッター以上の大排気量エンジンには使えない。さらにシステム自体が長く、縦置きエンジンの後輪駆動車には構造上、搭載することができない。ベルト式はFFの小型車でしか成立できないのだ。

それに対してトロイダル式は大パワーの入力に耐えられるし、システム自体がコンパクトだから、縦置きエンジンとでも組み合わせられる。つまりFR駆動のスポーツカーや高級車にも載せられるわけだ。かくしてグロリア/セドリックの「280馬力」ターボ車に初搭載となったのである。なお、今回のエクストロイド式CVTは、トルクコンバーターを別に備えているのでクリープ現象があり、付加価値としてプログラムによる切り替え可能な6段変速モードを採用している。シフトゲージは「P-R-N-D-Ds」となっており、Dsは通常モードより変速比を低くした、いわゆるエンジンブレーキモードとなっている。

まぁ、ユーザー側の理解としては結局のところ、高出力エンジン対応の無段変速機というぐらいの知識で十分だと思う。

外観上はほとんど区別がつかない

エクストロイドCVTを搭載するモデルは、フロントフェンダーにある「EXTROID CVT」エンブレムが、外観上唯一の識別点となる。ただし内装のシート縁にパイピングを施したアイボリーレザーシートは、専用アイテム。木目調パネルとの組み合わせは抜群で、シリーズ中最も、ラグジュアリーなムードを醸し出している。

シフトを運転席側に倒すとマニュアルモードとなり、同時にメーター内のシフトポジションインジケーターもマニュアルモード用に切り替わる。シフトチェンジはシフトの上下操作の他、ステアリングの+/-スイッチでも可能だ。ポルシェのティプトロ同様の操作だ。

基本性能&ドライブフィール

今回、エクストロイドCVTが組み合わせられたのは、LEV対応でありながら最高出力280ps/6000rpm、最大トルク39.5kgm/3600rpmを発生する、3.0リッターV6「NEO」エンジンだ。ギア比は通常の4速ATよりもワイドレンジとなっており、2.857~0.660となる。6段マニュアルモードでは6速がオーバードライブの役割となる。また、ノーマルモード、パワーモード、スノーモードの3つのモードも備えている。

まずはDレンジでの走行。トルコンを用いているのでブレーキを放せばクリープがあり、普通(トルコン式)のATと何ら変わりない。そしてちょこっとアクセルを踏めば、若干、エンジン回転が下がりCVTと直結する。微妙な感覚なので、よほど気を付けていなければ、そのショックは分からないはずだ。あとは、アクセルの開度によってエンジンの回転数が変わり、シフトショックなしで加速する。当然、トルコン式のように滑らせる領域がないので、一瞬のタイムラグの後に唐突にシフトダウンするといった不快感に見舞われることもない。

アクセル全開ならタコメーターはきっちり5500回転を維持し、スピードだけが伸びていく。エンジン回転だけ先に上昇して後から加速するといった感触はほぼない。加速の仕方に段付感があるのはCVTではなく、ターボのせいだ。

さらにはこのエクストロイドの優れた点は、ベルト式CVTにありがちな金属音がほとんどないこと。ベルト式とは完全に一線を画し、アクセルに忠実に反応して実にスムーズな走りをしてくれるのだ。

次にシフトノブを右に倒し、マニュアルモードで走ってみた。当たり前のことながらMT車のようにペダル操作どころかエンジン回転に気を使うことはない。ただひたすらアクセルペダルを踏みつけて、必要だと思ったときに、シフトノブもしくはステアリングのシフトスイッチで変速すればいいだけだ。ただ、シフトスイッチはくぼみがついているものの、乾燥肌の人には滑りやすくてやや使いにくいと感じるだろう。

マニュアルモードの変速は、レッドゾーン6500回転よりわずか手前で自動的にシフトアップする。変速の速さは瞬時で、ショックは非常に弱い。実に高級車らしい味付けだ。特に6速から5速に落とした時など、まるで実感がない。できれば、ドライブの面白味を増すためにも、もう少しダイレクトな感触があってほしいところ。まあそうはいっても、飛ばしておもしろい性格のクルマではないので、結局はすぐに飽きてしまうことには変わりないだろう。

ここがイイ

多くの課題を他に先駆けてエクストロイドCVTを実用化させたこと。シフトショック皆無、燃費向上(カタログ上では10・15モードで9km/lが9.7km/l)、リニアなレスポンスと全く違和感なしの完成度に加えて6速マニュアルモードのおまけ付き。さすが日産の技術力はたいしたもの。

ここがダメ

まだ値段が高い。ステアリングのシフトスイッチは普通に握る9時15分の位置では押しづらく、8時20分くらいまで下げないといけない。その点でポルシェより良くないが、トヨタの表裏ボタン式より数段良い。

総合評価

「世界初の新技術」「夢の変速機」といわれるエクストロイドCVT。技術的にも素晴らしいし、トルコン式ATに変わる将来性のある商品だ。今後、日産としても量販体制に入って単価を落とし、幅広い車種に展開していくはずだ。でも、今回の試乗に限っていえば、そのスムーズさは高級車ゆえ正直、一般の人には分かりづらいな、と思ってしまった。多くのユーザーは「今までの変速ショックだってそう気にならなかったし、CVTだから何だっていうの、よくワカラン」と思うだろう。20年もかけて開発された成果が、これではあまりにも悲しすぎる。

辛口になるが、そもそも変速ショックというのは、現在の良くできたトルコン式でも全然不満はないし、燃費が向上したといっても10%に満たない。新技術だけに止む得ないかもしれないが、値段も高い。これではユーザーに訴求するにはやや弱いのではと思う。グロリアは前回の試乗でも書いたとおり、かなり未来的で、意欲的な高級車像を打ち出しており、エクストロイドCVTでそれは極まったと思う。ただ、搭載されたのがセドグロという事で、この手のクルマのユーザーの心は打たないような気がする。

これが新型フェアレディあたりで、7速MT操作可能の未来スポーツカーとかであれば強烈な印象を残すはずだ。新技術のアピールがヘタというか、まじめというか。まぁ、ルノーグループにとっては大きな財産が手にはいったことだけは確かだ。

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
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