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VW ゴルフ GT新車試乗記(第324回)

Volkswagen Golf GT

(2.0L・6AT・328万6500円)


 

2004年07月03日

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キャラクター&開発コンセプト

30年間で2300万台!

2003年10月に欧州でデビューし、翌2004年6月9日に日本で発売された新型ゴルフは、6年振りのフルモデルチェンジだ。1974年の初代から数えて5代目なので、通称ゴルフV(ファイブ)と呼ばれる。言うまでもなくゴルフはVWを代表する主力モデルで、累計生産台数は30年間で約2300万台という、途方もないベストセラーカーだ。日本に限っても10年連続で輸入車販売台数1位であり続けるなど、もっとも身近な輸入車。前輪駆動+ハッチバックというパッケージングや操縦性の良さは、70~80年代の日本のメーカーにも大きな影響を与えた。

直噴エンジン、6速AT、マルチリンク

ビートルの実質的な後継車として登場したゴルフは、当初は紛れもない大衆車だった。それがモデルチェンジの度に大きく、豪華に進歩。今回の新型はボディを大きくして室内を広くするだけでなく、新世代の直噴エンジン「FSI」やアイシンAW製6速AT、マルチリンクの独立式リアサスといったスペックを採用し、完全に1クラス上に足を踏み入れた。基本コンポーネンツは先にデビューしたアウディA3と同じだ。

価格帯&グレード展開

1.6と2.0リッターで、240万4500円~

エンジン2種類の4グレード展開。1.6リッター(116ps)の「E」(240万4500円)、2.0リッター(150ps)の「GLi」(278万2500円)、それにスポーツサス等を与えた「GT」(299万2500円)、レザーシートを加えた「GT レザーパッケージ」(328万6500円)となる。

実は日本では、ゴルフVがベースの7人乗りミニバン「ゴルフトゥーラン」が2ヶ月早く発売されている。シャシーの基本部分やパワートレインはほぼ同じで、価格帯(271万9500円~313万9500円)もほぼ同じ。こちらの目標販売台数は3600台(2004年度)だが、ゴルフは今年下半期(6月~12月)だけで1万台を予定する。

パッケージング&スタイル

お約束通り一回り大きく

サイズは全長4205mm(先代比+50)×全幅1760mm(+25)×全高1465(+30)mm。先代より一回り大きくなるのはシリーズの伝統か。ゴルフを擁護すれば、高級車と言っていい内容で、これだけコンパクトなのは、国産車も見習いたい点だ。

従来は角度によってどこか変わったか分からないことが多かったゴルフのモデルチェンジだが、今回は前も後ろも横もかなり違う。また、歴代ゴルフにあった実直さがさらに薄まり、良く言えば今風になった。

まるでパサート

内装の質感はIVですでに同クラス車を圧倒するレベルだったからか、進歩の度合いが分かりにくい。それでも、IVでは取って付けた風だったメッキ処理が、Vではサマになるなど、よく観察すると全体に進歩している。試乗車は最上級グレードのレザーパッケージで、電動シートや左右独立フルオートエアコンなどが標準装備。まるでパサートに乗っているような錯覚に陥る。ドリンクホルダーは不安定なセンターパネル内蔵式から、運転席と助手席の間の固定式に変更。その仕切りは、取り外すと栓抜きに使える。さすが、ビールの国ドイツ。

 

夜になると高級感が一層増す。ブルーのメーター照明はIVと変わらないが、天井からLEDでセンターコンソール周辺を赤く照らす演出は、「これがゴルフ?」という妖しい雰囲気だ。さらに、ドアミラー内蔵の照明で足下を照らすランプなど、光りモノには力が入っている。

広くなったが、クッションは薄くなった?

60mmも長くなったホイールベースの延長分はほとんど後席の足下に使われたらしく、「狭くもないけど、余裕もない」先代と違って、十分余裕あるものになった。

試乗したレザー仕様は文字通りゴルフであることを忘れる豪華さだが、空間自体はゴルフらしいもの。つまり高い天井と座面、太いCピラーに囲まれて、安心感が高い。意外なのは、座面が食堂の椅子のように固めなこと。ただ、短時間ながら走行中の座り心地はそれほど悪くはなかった。

ついにダブルフォールディング廃止!

スペース効率を追求したゴルフの自慢の一つだったダブルフォールディングはついに廃止され、背もたれを倒すだけのシングルフォールディングになった。日頃、ゴルフIIIで面倒な思いをしている試乗記担当者の身として、Vのシングル化は支持できる。ただ、このおかげでゴルフの良い点だった分厚い後席クッションが薄くなったとなると、考え物だが。

 

荷室の広さはゴルフIIあたりから劇的には進歩していない。逆に言えば、広さはもともと十分で、スクエアな形状は使い勝手もいい。Vになって20L増えた容量は350Lと、クラストップだ。リアゲートの開閉は「VW」のエンブレムを反転させて取っ手として使う。

基本性能&ドライブフィール

劇的に近代化したエンジン

試乗したのは2.0リッターの「GT」(のレザーパッケージ)。アウディA3と同じ直噴「FSI」エンジン(150ps、20.4kgm)を搭載し、アイシンAW製の6速ATで前輪を駆動する。ちなみに1.6リッターでもATは同じ6速と豪華だ(最終減速比のみ違う)。

ゴルフのエンジンと言えば、IIIまでの、良く言えば打てば響くようなトルク感あふれる、悪く言えば「グオー」という盛大なノイズでローテク感あふれるところが特徴だった。先代のIVになって一度5バルブの近代的な1.8リッターエンジンになったが、これはどうやら不評だったらしく、日本仕様は再び基本設計の旧い2.0リッターに戻った経緯がある。

 

で、新型の直噴エンジンだが、かつてのローテク感はもちろんみじんもない。高回転まで低ノイズ・低振動でスムーズに回る様子は、他メーカーの最新・同クラスのエンジンと比べても遜色ないと言える。車重が1380kgもあるから加速感はそれほどないが、高級車みたいなオルガン式のアクセルを踏み続けるといつの間にかけっこうなスピードが出ていて驚く。

動力面で気になるのは、直噴エンジンの特性なのか電子制御スロットルの設定なのか、A3(2003年11月試乗)ほどではないが、低回転からの加速で時々もたつきが出ること。燃費との兼ね合いもあると思うが、交差点からの再加速など街中でよく出る現象だけに、ちょっと気になった。

ティプトロニックでスポーティ&イージードライブが可能に

日本の自動車メーカーをさしおいて、アウディが先行採用したFF用のアイシンAW製6速ATは、従来の旧態然とした4速ATを化石のように思わせる完成度。ステアリング付近にボタンやパドルは付かないが、シーケンシャルマニュアルモードの「ティプロニック」モードを備える。レッドが始まる6500回転で自動シフトアップするが、コツさえつかめばかなりスポーティな走行が可能だ。アウディ同様、MTモード時は使用ギアが表示される。

A3並みの抜群のハンドリング

先代比80%アップのボディねじれ剛性とマルチリンクのリアサスで、操縦性も近代的になった。これまでのゴルフは、ボディを前のめりにロールさせ、たっぷり前輪荷重をかけて時には3輪走行しながらグイグイ曲がるのが持ち味だった。それでいて安定感もあったが、限界域では乗り手を選んだのも確か。新型はリアサスのマルチリンク化で想像できる通り、ステアリングを切った方向に素直に曲がるオン・ザ・レール感の強いハンドリングになった。

A3と同じく、電動パワステのフィールも文句ない。というか、据え切りの軽さを除けば、油圧パワステに遜色なく、試乗中も電動なのを忘れていたほど。ただ、バチバチのスポーツサスに17インチタイヤでウルトラシャープなハンドリングのA3(2.0 FSI Sport)に比べると、かなり性格は穏やか。16インチの省燃費タイヤでグリップレベルは低く、ESC(横滑り防止装置)は面白いように介入する。もちろん、介入の仕方は絶妙で、そうした状態でも安心感はたいへん高い。操縦性はDセグメントカー(国産ならアベンシス、アコード、アテンザあたり)と比べて、引けをとらないレベルと感じた。

一方、高速巡航では静かな室内、何ら問題ない直進性で快適なクルージングを楽しめる。とはいえ、もはやこのクラスではごく当たり前のことであり、日本の道路行政が劇的に変わらない限り、過剰性能と言ってもいいのは他車同様だ。

ここがイイ

正直、ゴルフというクルマに今まであまり感銘を受けたことがなかったのだが、今回のVにはたいへん強烈な「好印象」を得た。レーザー溶接が多用されたというこのクルマの場合、感性までチューンしたかと思うほど明快な、おそらく誰もが簡単に感じることができるボディ剛性感がまず素晴らしい。ZF製の電動パワーステアリングは資料を読むまで気づかなかったほど自然で、ハンドリングも軽快。アイシンAW製6速ATのつながり、シフトプログラムも秀逸。GTと言いながら、さほどでもないパワー感ゆえ、ティプトロを使ってエンジンを高回転キープしながら山道を駆け回ると、いつものコーナーが2割アップのペースで走れてしまう。何じゃこりゃと言うほどの安定化、どこまでも続くニュートラルステアで、アルファGTほどファンではないが、十分楽しく走り回れる。タイヤがよく鳴くのもプリミティヴな演出でいい。

ボディサイズは拡大したが、シートを含め、タイトな運転席まわりは大柄な人には窮屈なくらいだろう。センターコンソールも大きく張り出しており、そこに左膝を預けられるため、一層のタイト感がある。それゆえクルマとの一体感が高く、ボディはさらに大きくなったが、体感としてはコンパクトクラスであることが強く感じられる。ルーズな表皮の革シートは出来がたいへんよく、小柄でも大柄でもポジションが全く不満なく決まるのもいい。

ドアがモジュール化されていて、外板だけ交換できる。これは素晴らしい。この方式、なぜもっと採用されないのか。ユーロNCAPで5つ星の衝突安全性が試されることはそうないが、ドアがへこむことは何度だってあるのだから。

ここがダメ

どことなくプジョーを思わせるスタイルは、賛否が分かれるだろう。どこから見てもゴルフという無骨なアイデンティティはついに崩れたと思う。これは窓枠がブラックアウトされたことに大きな原因があるはずだ。ゴルフならここは塗らない方がいい。斜め後ろからは太いCピラーとそれがボディ下部まで続くラインにゴルフらしさが確かに残っているのだが。

インテリアの質感はそこそこ。これも他と比べて見劣りするものではないが、先代までの過剰なまでの上質感はかなり影を潜めている。コンパクトカーとして普通になったという意味では悪くはないのだが、競争力としてはちょっと弱いだろう。

アクセルを踏み込んだときのエンジンのストール感は、A3よりマシだが気分が良くない。GTゆえか、街乗りでの乗り心地、しなやかさはいまいち。

総合評価

ゴルフVは、良いと悪いの評価がデイズ内では分かれた。結論から先に言えば、これまでゴルフに乗ってきた人にはゴルフらしさが影を潜めたという点で、首をかしげる部分が多いようだが、ゴルフに思い入れがない人には、現代のクルマとして大変よくできている=割と普通のクルマ=グローバルスタンダードに近づいた、という風に感じられる。つまりプジョー307がフランス車風味をそうとう失ったように、ゴルフVはかつてのドイツ車らしさをIVよりさらに薄めて登場してきたということだ。

初代ビートルを超える2300万台を30年間で売り、ハッチバックのスタンダードを標榜してきたゴルフに、最近のライバル車達は追いつき、あるものは追い越している。加えてハッチバック車がメインストリームから外れつつある現状でゴルフの生きる道を考えた場合、全方向へクォリティを高めていくということ自体はまちがいではないだろう。

ただ、その結果、もの凄くいいクルマになったにもかかわらず、ドイツ車たる強い個性は薄まった。高い次元での性能は、時に個性を打ち消しかねない。今回のゴルフにはそんな印象が強いのだ。逆に言えば、ゴルフという名を無視して純粋な新型車として乗ってみると、これは驚くべき高性能車で、楽しくて、安全で、便利で、かなり欲しいクルマの一つ。誤解を恐れずに言えば、良くできた日本車みたい。素晴らしくバランスが取れたクルマで、イヤーカーにしてもいいほどだ。

愚直なまでの質実剛健というゴルフの伝統は、ゴルフVにも生きていると思う。しかしそれが世の主流と同じになってきているがため、クルマ好きのイメージする古き良き質実剛健と乖離してしまったことが問題だ。つまり、製品の出来がブランド力を追い越してしまったという稀な例ではないだろうか。この際、ネオ・ゴルフとかゴルフ・ネクストとかのサブネームを付けた方がよかったのではないかとも思う。

 

高価となったゴルフにライバルは多い。この価格帯ならセダンからRVまで選択肢はいくらでもあるし、あえてプレミアムコンパクトを求める人には、個性的なアルファ147やルノーメガーヌのような選択肢もがある。もちろんそういう人ほど「出来の悪い子ほどかわいい」という屈折した思いを持っているはずだから、「出来のいい」ゴルフVは、微妙な立場だ。聞くところでは、ドイツでは販売的に苦戦中らしい。出来のいいクルマ=売れるクルマ、ではないことはモーターデイズでも繰り返し書いてきたが、それはどうやらグローバルな傾向のようだ。次期ゴルフではそのあたりが課題になるだろう。

ただ、日本ではナンバーワン輸入車ブランドとして安心して買え、出来も素晴らしくいいゆえ、確実に数が出るはず。買えば不満もまずないだろう。そして、へそ曲がりな輸入車好きはゴルフVのことをとやかく言わず、もっとヘンなクルマを探して買えばいいのだ。

試乗車スペック
フォルクスワーゲン ゴルフ GT レザーパッケージ
(2.0L・6AT・328万6500円)

●形式:GH-1KAXW●全長4205mm×全幅1760mm×全高1465mm●ホイールベース:2575mm●車重(車検証記載値):1380kg(F:ー+R:ー)●乗車定員:5名●エンジン型式:AXW●1984cc・DOHC・4バルブ直列4気筒・横置●150ps(110kW)/6000rpm、20.4kgm (200Nm)/3500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L●10・15モード燃費:11.4km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:205/55R16(MICHELIN ENERGY)●価格:328万6500円(試乗車:同じ ※オプション:ー)●試乗距離:約100km ●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧

公式サイトhttp://www.volkswagen.co.jp/

 
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