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VW ゴルフ GT TSI新車試乗記(第452回)

Volkswagen Golf GT TSI

(1.4L・SC+ターボ・6速DSG・305万円)

ターボとスーパーチャージャーで
2段過給するエコエンジン、
「TSI」の実力を試す!

2007年02月23日

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キャラクター&開発コンセプト

直噴ターボ+スーパーチャージャー+6速DSG

欧州に遅れること約1年。2007年2月6日に追加されたゴルフの新グレード「GT TSI」は、世界初の直噴ツインチャージャーユニット「TSI」を搭載したモデル。ツインチャージャーとはターボ(排気式の過給器)とスーパーチャージャー(機械式の過給器)のことで、それら2つの過給器を直噴エンジンと組み合わせたものだ。その結果、ゴルフ歴代シリーズ最高の10・15モード燃費:14.0km/Lの低燃費と、GTI(200ps、28.6kg-m)に次ぐ170ps、24.5kg-mのパワーを得ている。

TSIは発売2週間で1200台を受注するなど販売は好調なようだ。発表直後の専用サイトへのアクセスや試乗件数も過去最高水準で、GTIの登場時に匹敵するという。もともとゴルフは日本で一番売れる輸入車で、その新型となれば注目が集まるのは当然だが、TSIにはそれを越えた話題性があるようだ。

過給器について簡単におさらい

過給器(一般的には左の漢字をあてて、加・吸・機は使わない)とは、スーパーチャージャー(Supercharger)の日本語訳。ただし一般的には、エンジン等から駆動力を取り出しタービンを回すものをスーパーチャージャー、排気圧でタービンを回すものをターボ(チャージャー)と呼ぶ。

昔から航空機分野でポピュラーだったスーパーチャージャーは、4輪車でも戦前のレーシングカーを中心に早くから採用されている。市販車への採用例は一時期のトヨタ、現在ではメルセデス・ベンツ、ジャガー、スバル(軽自動車)、BMW MINI(初代クーパーS)等になる。

ターボチャージャーを市販車で本格的に採用したのは1973年のBMW・2002ターボ(通称マルニターボ)が最初で、さらにポルシェ930ターボ(1975年)が続いた。1980年代に一気に大衆化が進み、ほぼ全メーカーが手掛けている。

TSIのようなターボ+スーパーチャージャーの前例は極めて少ない。有名なのはWRCのグループB用ホモロゲーション取得のために市販されたランチア・デルタS4(1985年)。身近な例では日産マーチ(K10型)に追加された「スーパーターボ」(1989年)がある。いずれも燃費というよりパワーをねらった過給だ。

価格帯&グレード展開

価格もパワーも、GTIとGLiの中間

「GT TSI」(170ps)は、グレード名に名残りがあるように、従来の「GT」(GLiベースの上級グレード)と入れ替わった形だ。変速機は6速DSGのみ。以下はゴルフの現行ラインナップだ(2007年2月現在)。

ゴルフ E 1.6NA(116ps) 242万円(6AT)
ゴルフ GLi 2.0NA(150ps) 282万円(6AT)
ゴルフ GT TSI ★ 1.4ターボ+SC(170ps) 305万円(6速DSG)
ゴルフ GTI 2.0ターボ(200ps) 329万円(6MT)
344万円(6速DSG)
ゴルフ GTX 2.0ターボ(200ps) 371万円(6速DSG)
ゴルフ R32 3.2NA(250ps) 423万円(6MT)
443万円(6速DSG)

なお、欧州向けの「GT」には2リッター直噴ディーゼルターボの「GT TDI」(170ps、35.7kg-m)もある。

パッケージング&スタイル

ハニカムメッシュ&ブラックアウトのないGTI

ボディサイズ(全長4225mm×全幅1760mm×全高1500mm)はGTIとほぼ同じで、車高(最低地上高)がわずかに5mm高いだけ(GLi比では-20mm)。バンパーも開口部の広いGTIと同じタイプだ。にも関わらずGTIよりTSIの印象が控えめなのは、バンパー前面のブラックアウト処理が無いこと、グリル部分がハニカムメッシュではなく、普通の横桟タイプであること、ホイールデザインが大人しいこと(タイヤサイズは同じ25/45R17)などのせいだろう。GTXよりスポーティだが、GTIほど派手じゃない、という微妙なサジ加減が、TSIのスタンスを表している。

ブースト計を装備

GTIのDSG仕様に近いインテリアだが、TSIならではの装備がタコメーター横のブースト計だ。通常の水温計に代えて装着されるもので、赤い針がアクセルを踏み込む度にビュンビュン振れるのはなかなか面白い。これを見るだけで、実際以上に「速く」感じるのだ。

GTIのステアリングは下の部分が平らになったD型で、握りも部分的に太かったが、TSIはサラッとした革で包んだオーソドクスなタイプ。昔のナルディ・クラシックやMOMOの細身タイプを思わせるもので、こちらの方が好みというドライバーも多いだろう。

全体に玄人好み

標準のファブリックシートは、GTI専用のセミバケットシート(格子柄のファブリックが標準で、オプションで革仕様がある)より、サイドサポートを少し抑えたタイプ。特にショルダーからヘッドレストにかけての形状が大人しい。全体の印象としては、価格に比例してGTIよりスペシャル感は控えめなものの、かえって昔のドイツ車(ゴルフ)らしい玄人好みとなっている。

3年経ってもベンチマーク

後席や荷室については、過去のゴルフV 試乗記と同じ。過不足ない後席スペース、トランク容量(350L)など、使い勝手の良さはデビューから3年経った今も、このクラスのベンチマークだ。

基本性能&ドライブフィール

2段加圧する「TSI」ユニット

1.4リッター「TSI」ユニットは欧州向けゴルフの1.4リッターを鋳鉄ブロックとし、そこにイートン製ルーツ式スーパーチャージャーとKKK製ターボチャージャーを装着して170ps/6000rpm、24.5 kg-m/1500-4750rpmをひねり出すもの。圧縮比が9.7と一昔前の自然吸気エンジン並みに高いのは、言うまでもなく直噴によるシリンダー冷却効果によって異常燃焼が起きにくいからだ。

さて、以下はメーカーの資料を元に、エアクリーナーから入ったフレッシュエアを2つの過給器で加圧する手順を追ったものだ。

、クランクシャフトから電磁クラッチを介してベルト駆動するスーパーチャージャーは1000回転以下から作動を開始。カタログによれば「アイドリング直後に大気圧の1.75倍」、すなわち大気圧を除いて0.75barで過給を始める。
、1500回転で最大過給圧の1.5barに達し、最大トルクの24.5kg-mを発生。この時点までは、主にスーパーチャージャーが過給を行っている。
、同時に1500回転あたりからターボの過給が加わり「ツインチャージャー」状態がスタート。スーパーチャージャーで加圧された吸気を、さらにターボで加圧する。
、2400回転以上になると、電磁クラッチによりスーパーチャージャーの駆動を停止。またフラップ制御によってフレッシュエア流入経路のバイパスが可能とする。さらに3500回転でスーパーチャージャーは完全に切り離され、ここから4500回転あたりまでは、ターボのみで最大過給圧を維持する。
、4500回転あたり以上は、主に高回転化でパワーを稼ぎ、最終的には6000回転で170psを出力する。

実際の感覚ではスーパーチャージャーがいつ終わり、ターボがいつ始まったかは判別できないが、上のような予備知識があれば、発進時にスッとクルマが出る力感や「キュン!」というかすかな作動音、大排気量NAのような低速トルクなどはスーパーチャージャーによるもので、パワフルな3000回転以上の加速はターボチャージャーによるものと推測できる。

GTIに及ばずとも、十分にパワフル

馬力や最大トルクといった数値自体はGTIに譲るものの、動力性能はTSIでも十分と言えるレベルだ。以前試乗したGTI(DSG)では、無造作にアクセルを踏むと盛大にホイールスピンしたものだが、TSIの場合はタイヤが冷えている時に一瞬「キュキュン」と鳴くくらい(いずれもタイヤは同サイズで同銘柄)。この点でもTSIは、大人向けのサジ加減になっている。これは、GTIの2リッター・シングルターボに対して、TSIの1.4リッター・ツインチャージャーというメカニズムの差もあるはずだ。参考までに諸元を並べておく。

主要諸元
  エンジン 馬力
(ps/rpm)
トルク
(kgm/rpm)
車重
(kg)
馬力荷重
(kg/ps)
10・15
モード燃費
GT(従来車 6AT) 2.0L NA 150/6000 20.4/3500 1380 9.2 11.4km/L
GT TSI(DSG) 1.4L ターボ+SC 170/6000 24.5/1500-4750 1410 8.3 14.0km/L
GTI(DSG) 2.0L ターボ 200/5100-6000 28.6/1800-5000 1460 7.3 12.6km/L
動力性能(メーカー発表値) 
  0-62mph
(0-約100km/h)(秒)
最高速度
(km/h)
GT TSI(DSG・英国仕様) 7.7 218
GTI   ( ↑ ) 6.9 233

手が届きやすくなったDSG

トランスミッションは6速DSGのみ。今までは344万円のGTIが「DSGのエントリーモデル」だったから、一気に39万円も安くDSG搭載車が買えるようになったわけだ。

そしてあらためてDSGに感心したのが、発進時の滑らかさとダイレクト感。二律背反するこの感覚が同時に味わえる変速機は、今のところDSGしか無い。

またシフトレバーを「S」モードに入れれば、低めのギアを維持する変速プログラムとなり、かなり鋭敏なレスポンスが得られる。さらにステアリング連動式のパドルシフトの操作性も素晴らしい。マニュアルモードでも自動シフトアップするので、シフトダウンに専念して走らせるのが速くて確実だ。

今回は撮影と高速走行を含みつつ、街乗りを中心に約200km走行して、試乗燃費はトータルで約8km/Lとなった。低燃費を売りとする割には伸びなかったが、GTIに迫る動力性能を思えば妥当なところか。いずれにしても、燃費よく走ろうと思うなら、ブースト圧を上げない走りを心がける必要がある。

ここがイイ

ものすごく精密精巧複雑なメカニズムでありながら、違和感がほとんどまったくないところ。知的興奮が味わえ、いかにも機械が動いているという感覚は、兵器や時計などにも通じる機械マニア垂涎のもの。まさにドイツ車のイメージどおりのクルマだ。

リニアなスーパーチャージャーの過給ははっきり体感できないが、ターボの過給が始まると結構ドカンと来て、ターボ車らしい走りとなるのが面白いところ。「S」モードでは高回転を維持し続けるため、ターボ過給による力強い走りが持続する。シフトダウン時も「フォン」といい音を奏でる、ほどよい演出が好ましい。ハンドリングは安定志向で、ヘビーウェットでも安心してとばせるなど高速安定性もたいへん良い。ステアリングスイッチはカッチリと剛性感が高く、同種のものでは1、2を争う出来。エコというより、とにかく走って楽しいクルマだ。

ここがダメ

ホールド性のいいシートはタイトで、膝回りの空間が少ないため、乗るときに左の膝がステアリングコラムにあたる。日常的に乗り降りするのは結構面倒。

なぜか変なルート案内をする純正ナビ。スイッチが煩雑なのも気になる。オーディオ操作では回転式ボリュームが欲しいところ。AVまわりは総じて使いにくい印象。

凝ったメカニズムの割に、あっさりした外観。せめて「TSI」のバッジくらい付けたくなる。

燃費と言いながら、車重は1410kgもあること。日本のようなゴーストップの多い土地で、この重さは実燃費に厳しい。また、アクセルを踏めば、確かに動力性能はフォルクスワーゲンの言う「自然吸気の2.4リッターエンジン並み」(例えば先日試乗したトヨタ・ブレイド)だが、燃費もそれと同等になってしまう。ブレイドの10・15モード燃費は13.4km/Lと、その差は0.6km/Lに過ぎない。

ダメとは言えないレベルだが、同価格の国産車から乗り換えれば、乗り心地には不満が出るはず。乗り込むと馴染んでくる可能性は高いが、荒れた路面では(ゴルフらしく)ゴトゴトと不整を伝えてきて気が休まらない。

総合評価

ドイツ車好きには、機械式時計好きが多いようだ。機械式時計の場合、メカニズムが、というより、複雑な歯車が噛み合って動いている様を「想像する」ことがとても楽しいという。クオーツ時計の電子的な、目に見えない動作より、実際にバネ駆動でメカが動いていることに安心感を感じるとも。こうした機械としての面白さと、歴史と伝統に裏付けられたブランド力が、今だ衰えない機械式時計のブームを支えている(自動車雑誌の広告を支えている、とも)。

ゴルフGT TSIは、そんな機械式時計を思わせるクルマだ。機械式スーパーチャージャーとターボチャージャーで非力な小排気量エンジンに過給してパワーを絞り出し、機械式オートマチックで動力を伝えて走る。裏では様々な電子制御が動いているはずだが、その仕組みはアナログ的に分かりやすい。「想像する」ことができるのだ。機械好きの男の子をくすぐるものがTSIにはあり、クルマ好き=ドイツ車好き=機械好き=いい意味でブランド好き、という図式に見事にはまる。それがこのクルマに対する一般からの熱い視線の原因だろう。いわゆるクルマ好きがみんな気にしているクルマだ。

もちろん、実際のところはメカそのものを楽しむためのクルマではなく、小排気量エンジンで燃費を稼ぐという環境対策が狙いのはずだ。むろん、いくら燃費がよくても、走りが情けないのでは売れないので、そのために過給器をつけてパワフルにした。燃費を追うならスーパーチャージャーで低回転域を過給するだけでいいと思うが、ターボで高回転をもフォローして、アクセルを踏めば全域でパワフルになるよう仕立てたわけだ。もちろん過給しまくっていれば当然燃費は悪くなる。そこで、エコ運転なら燃費を稼ぐことができ、燃費を気にしないなら速く走れるという二つの性格を提供して、あくまでドライバーにその選択をゆだねている。

 

こういった考え方は、誰が乗っても燃費がいいことを狙うトヨタあたりと異なるところで、個人主義に立脚したドイツ流の発想だろう。伝統的な機械仕掛けと理詰めで作り上げた機器を、分かっている人が使いこなして結果を出すという考え方と、手段は問わずに新しい方式を取り入れ、その代わり誰でもがアベレージ以上を出せるようにする、という考え方の差だ。「あくまで人が機械を使って結果を出す」と「機械に任せて楽に結果を出す」では、結果が同じでも機械の作り方、機械の使い勝手は大きく異なる。そういう点で、ゴルフTSIはやはり日本車の対極にあるクルマと言えるだろう。

しかし実際のところ、人はそうお利口ではない。TSIでは、エコな走りを心がけるより、ついつい「S」モードに入れっぱなしにして走りを楽しみ、燃費を悪化させてしまいがちだ。また、「D」でエコランしようとしても、ついアクセルを踏みがちになる。過給域に入れば燃費は悪化すると分かっていても、なかなか自制はできない。その意味でTSIは人を試すクルマだ。

フォルクスワーゲンとしてはエコは建前で、実はバリバリ走る「機械」車を作りたかったのかもしれない。走りのターボ車は最近流行だが、燃費は当然悪い。そこでおとなしく走れば燃費がいい、というカモフラージュをして「走るクルマ」を作ったわけだ。エコを旗印にすれば走るクルマでも言い訳が立つ。そこまで考えてのことなら、たいしたものと評価するしかない。TSIは羊の皮を被った狼ならぬ、エコの革を被ったスポーツカーだと思う。どんな時代になってもクルマ好きとしては「走るクルマ」が欲しいのだから、これは評価してもいい。

 

TSIは「D」か「S」かで、走りの性格が一変する、2つのキャラを持ったクルマといってもいい。これは3つのキャラを持ったスバルレガシィあたりにも近い。過給器があれば、1台で複数の性格を持ったクルマにすることができるのだ。指摘されることはあまりないが、TSIはそういうタイプのクルマだと思う。となれば「D」や「S」以外に、あまり過給しないエコポジションを作ってもらいたかったところ。個人を信じるドイツ人にそんなことは出来ないのかもしれないが、TSIを買う世界中の誰もが自制して走れるわけではないのだから。

試乗車スペック
フォルクスワーゲン ゴルフ GT TSI
(1.4L・SC+ターボ・6速DSG・305万円)

●形式:ABA-1KBLG ●全長4225mm×全幅1760mm×全高1500mm●ホイールベース:2575mm●車重(車検証記載値):1410kg( F:890+R:520 )●乗車定員:5 名●エンジン型式:BLG ● 1389cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・ターボ+スーパーチャージャー・横置●170ps(125 kW)/6000rpm、24.5 kg-m ( 240 Nm)/1500~4750 rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55 L ●10・15モード燃費:14.0 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:225/45R17 ( Continental SportContact2 )●試乗車価格:331万5000円( 含むオプション: MMS:マルチメディアステーション 25万2000円、フロアマット 1万3000円 ) ●試乗距離:約200km ●試乗日:2007年2月 ●車両協力:フォルクスワーゲン本山・小牧

 
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