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VW ゴルフ TSI トレンドライン新車試乗記(第523回)

Volkswagen Golf TSI Trendline

(1.4Lターボ・7速DSG・248万円)

1.4直噴ターボと7速DSGで
走りよし、燃費よしの質実ゴルフが登場!

2008年08月29日

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キャラクター&開発コンセプト

過給はターボ1基で。DSGは7速&乾式クラッチ式に

ゴルフシリーズに2008年6月17日に追加された「TSI トレンドライン」は、新開発の1.4リッター直噴ターボエンジンと7速DSGを搭載したエントリーグレード。従来のエントリーグレードである「ゴルフ E」(1.6リッター直噴ノンターボ+6AT)に比べて、燃費は20%向上。一方でトルクは2.0リッター並みに高められ、それでいてゴルフで一番安いというモデルだ。

同社の過給器付き直噴エンジンは現在 「TSI」と呼ばれ、特に排気量1.4リッターのものは、「ゴルフ GT TSI」(2007年2月日本発売)等の「ツインチャージャー」(ターボチャージャー+スーパーチャージャー)があるが、今回のエンジンは排気量や基本構造はそのままに、一基の小径ターボで過給をする「シングルチャージャー」ユニットである。

またVWでは「DSG」と呼ぶ、デュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)が今回7速化されているが、これは横置きエンジン(すなわち一般的なFF車)としては世界初。エンジン縦置き用では、同じVW傘下で開発されたブガッティ・ヴェイロン(2005年)のほか、最近ポルシェやBMWなどが続々と7速DCTの採用を決めており、7速化が今後の流れとなりそうだ。なおこのゴルフ用の7速DSGは、従来DSGのような湿式多板クラッチではなく、DCTとしては初の乾式単板クラッチ式で、伝達効率の向上や軽量化を図っている。ただしトルク許容量が少ないため、今のところ上級グレードへの展開予定はないようだ。

価格帯&グレード展開

ゴルフEの3万円アップとなる248万円

「TSIトレンドライン」の価格は248万円で、従来のゴルフE(116ps、15.8kgm、10・15モード燃費:12.8km/L)に比べて馬力で5%、トルクで30%、10・15モード燃費は20%も向上。一方で、価格アップは3万円(約1%)に過ぎない248万円で、ひとつ上のグレードより41万円も安い。

なお、今回から日本向けゴルフのオートマチック車はすべてDSGとなった。新ラインナップは以下の通り (表内の燃費数値はいずれも10・15モード燃費)。

ゴルフ TSI トレンドライン
※今週の試乗車
1.4L ターボ(122ps、20.4kgm) 15.4km/L 248万円(7速DSG)
ゴルフ TSI コンフォートライン 1.4L ターボ+SC(140ps、22.4kgm) 14.2km/L 289万円(6速DSG)
ゴルフ GT TSI 1.4L ターボ+SC(170ps、24.5kgm) 14.0km/L 312万円(6速DSG)
ゴルフ GTI 2.0L ターボ(200ps、28.6kgm) 12.8km/L(6MT)
12.6km/L(6速DSG)
337万円(6MT)
352万円(6速DSG)
ゴルフ R32 3.2L NA(250ps、32.6kgm) 10.8km/L(6MT)
10.2km/L(6速DSG)
432万円(6MT)
452万円(6速DSG)
 

ヴァリアントにも同じ仕様。こっちもお買い得


(photo:フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

また、2008年8月22日には、ステーションワゴンの「ゴルフ ヴァリアント」にも、ゴルフと同じエンジンのエントリーグレードが追加されている。ラインナップは以下の通り。

 
ゴルフ ヴァリアント TSI トレンドライン 1.4L ターボ(122ps、20.4kgm) 15.2km/L 259万円(7速DSG)
ゴルフ ヴァリアント TSI コンフォートライン 1.4L ターボ+SC(170ps、24.5kgm) 14.0km/L 299万円(6速DSG)
ゴルフ ヴァリアント 2.0TSI スポーツライン 2.0L ターボ(200ps、28.6kgm) 11.2km/L 340万円(6速DSG)

パッケージング&スタイル

外観で新しいのは「TSI」のエンブレムのみ

エントリーグレードらしい樹脂のホイールキャップも含めて、外観は従来の「ゴルフE」とほとんど同じ。異なるのはリアの「FSI」エンブレムが「TSI」に変わったことくらいだ。だからこのエンブレムを見ないと、従来のゴルフEとの判別はできない。

5代目もやっぱり「ゴルフ」だった

全長4205mm×全幅1760mm×全高1520mmのボディサイズもデビュー当時から変更なし。この4年間で日本車も含めて周りのクルマがみんな大きくなったせいか、なんだか以前よりコンパクトにすら見える。最小回転半径も、例えば似たようなサイズのトヨタ・オーリス(4220mm×1760mm×1515mm)が5.2メートルであるのに対して、ゴルフは5.0メートルだ。デビュー当時「ゴルフらしさが薄まった」と感じられたゴルフ5だが、今こうして見ると「やっぱりこれもゴルフだな」と思えてくる。

「質実剛健」、ここにあり

内装もウレタン製ステアリングやマニュアルエアコン(正確にはセミオートエアコン)といった具合に簡素だが、逆にこの簡素さが昔のゴルフ1から3あたりまでの「質実剛健」なフォルクスワーゲン車らしい、とも思える。

一方で、燃費を売りとするTSIトレンドラインには、平均/瞬間燃費計や航続距離などが表示できる「マルチファンクションインジケーター」が標準装備されている。これはまさしく値千金の装備だ。

エントリーグレードにして8エアバッグ標準

装備は簡素でも、安全装備まで貧相にしないのは、さすがゴルフ。ESPはもちろん、エアバッグは前席フロント×2、前席サイド×2、後席サイド×2、カーテンエアバッグ×2の計8エアバッグを標準装備する。相変わらず各シートの作りや着座感にもドイツ車らしい道具感がある。

 

容量350Lのトランクも形状といい、シングルフォールディング(背もたれをパタンと倒すだけ)の拡大操作といい、スタンダードな作り。ゴルフ1台あれば、小家族の普段使いにはまず不足ない。

基本性能&ドライブフィール

スーパーチャージャーを省いて 「シングルチャージャー」 に

1.4リッター 「シングルチャージャー」 エンジンは、簡単に言えばゴルフ GT TSI やゴルフ・トゥーランの 「ツインチャージャー」 ユニットからスーパーチャージャーを省いたもの。細かいところではかなり改変されており、例えば低回転域の過給を担当していたスーパーチャージャーがなくなった分を、三菱重工製の小径ターボでカバー。また加圧時に高温となった吸気を冷やすインタークーラーは、インテークマニフォールドと一体型の水冷式となっている (もちろん通常のエンジン冷却水を共用)。この方が空冷式インタークーラーを車体正面に置く一般的なタイプより、吸気経路が短くてレスポンスが良くなるらしい。

シングルチャージャーで十分。2リッター超クラスの力強さ

走り出しての第一印象は、「今までのツインチャージャーユニットとほとんど一緒」 というもの。 最高出力 122ps/5000rpm、最大トルク 20.4kgm/1500-4000rpm という数値は、上級「TSIコンフォートライン」の低出力ツインチャージャー(140ps/5600rpm、22.4kgm/1500-4000rpm)より1割ほど低いが、高回転まで回さなければ違いは分からないし、そもそも回さなくても驚くほど力強い。こうなると正直 「(ツインチャージャーの)スーパーチャージャー、要らないんじゃない?」 と思えてくる。なにしろこのシングルチャージャーですら、交差点の立ち上がりでアクセルをラフに踏むと、キューンと内輪を空転させるほどだ。レスポンスも鋭く、ターボラグも皆無である。

とにかくこのトルクの力強さは1.4リッターという排気量を考慮しなくても驚異的。22.4kgmの最大トルクや0-100km/h加速は、従来の2.0リッターFSIエンジンを上回るというが、感覚的には排気量2.4リッター以上の力感だ。

7速DSG&乾式クラッチでさらに効率アップ

実はこの力強さ、DSGの7速化に伴って1速のギア比を大幅に下げてあるせいもある。1速のオーバーオール比は140psバージョンの14.25に対して16.70と20%弱もローギアードなのだ。しかもこの方が従来の6速DSGより発進時のクラッチ負担は少なく、メーカーによれば「車両寿命に相当するクラッチの耐久性を確保」(25万kmくらいらしい) できたという。

また乾式クラッチは伝達効率の高さだけでなく、オイル冷却(オイルクーラー)もオイルメンテナンスも不要で、軽量・低コスト。さらに変速制御用アクチュエーターも、オイルポンプによる油圧制御ではなく電動油圧式となり、さらにロスが少なくなっている。いやもう何から何まで、理詰めの設計だ。

なお、車両を借り出して最初に戸惑ったのが、マニュアルモードにしてもメーター中央のシフトインジケーターに「1-2-3-4-5-6」と6速までしか表示されないこと。最初は思わず 「間違えて6速DSG仕様のTSIコンフォートラインを借りてしまったか?」 とアタフタしてしまった。実は車速が上がると7速が現れて、「2-3-4-5-6-7」という表示になる。7速に入るのは「D」レンジでもマニュアルモードでも約60km/h以上であり、逆に60km/hを割ると7速に入っていても自動シフトダウンが行われる。

なお、車重は TSIコンフォートラインより80kgも軽い1310kg。 GT TSI 比で100kg、GTI (6速DSG仕様)では 150kgも軽い。これはスーパーチャージャーの省略、デュアルクラッチの乾式化による軽量化(93kgから70kgへと23kgの減量)、エンジン単体の14kg軽量化など、いろいろなところで軽いようだ。GT TSIと比べると車検証上では前軸で60kg、後軸でも40kg軽い。

エコタイヤのおかげで、とにかくテールハッピー

標準装着タイヤの「エココンタクト3」(195/65R15)は、燃費重視の低転がり抵抗タイヤ。日本向け140psの「TSI コンフォートライン」や、欧州向けゴルフで最も二酸化炭素排出量の少ないモデルという「ゴルフ BlueMotion」も同じタイヤを履く。びっくりしたのは乾燥路でのグリップがかなり低いこと。とにかく踏面が「硬い」感じだ。

そんなわけでワインディングでは「こんなんでいいの?」というくらいテールハッピー。ステアリングの最初の一切りで「ツツツツ」と絶妙にリアが流れ、面白いように向きが変わる。不安定な動きは一切なく、思わずコーナリングを楽しんでしまったが、状況によってはドキッとしそうなところ。もちろん、最終的にはESPが介入してくる。なお、以前試乗したGT TSI(170ps)やGTI(200ps)のタイヤは、同じコンチネンタルでもハイグリップ系の「スポーツコンタクト2」(225/45R17)だった。

中間加速の力強さに打ちのめされる

100km/k巡航は約2100回転ほど。7速トップのオーバーオールギア比は6速DSGの2.80に対して、パワーで劣るにもかかわらず2.57と、8%ほどハイギアードだ。そこからアクセルを踏み込めば、間髪を入れず6速以下にシフトダウンし、すぐさま加速体制へ移行。力感は下手な大排気量車並みで、またしてもツインチャージャーの存在意義が疑問に思えてくる……。最高速度は170psの「GT TSI」の218km/h、140psの「TSIコンフォートライン」の203km/hに対して197km/hだが、誰しもはトップエンドの速さ以前に、中間加速の力強さに打ちのめされるだろう。

試乗燃費は9~11km/L台

気になる試乗燃費は、車載平均燃費計によればいつもの試乗区間(約120km)で、9.2km/Lを表示。一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)では、11.5km/Lとなった。少なくとも10・15モード燃費が12.8km/Lの「ゴルフE」より、実燃費でも優秀なのは間違いなく、高速道路を法定速度で淡々と流せば、10・15モード燃費の15.4km/Lに迫れるかもしれない。指定燃料はプレミアムガソリン。タンク容量は55Lである。

ここがイイ

1.4リッターとは思えない走り。エントリーグレードゆえの道具感

1.4リッターの小排気量にして、圧倒的ともいえるトルクの力強さ。「ガソリン車の近未来はターボだ」 と思わせる驚異的な性能と言える。これに燃費ねらいのDSGが組み合わされると、今年のイヤーカーと言いたいほどの秀逸な出来。燃費ねらいなのに走りが忘れられていないあたりはドイツ車の意地か。素晴らしい。

プレミアム感が売りのゴルフだが、見事に地味でチープですらあることが、かえってゴルフ本来の道具感を強調している。となるとベストチョイスとしてはさらに機能性の高いヴァリアントか。デビュー当初は、あまり好感を持てなかったゴルフ5だが、モデル末期になって見事に帳尻を合わせてきたという感じだ。

ここがダメ

DSGゆえのクリープの弱さ、エントリーグレードゆえの内装質感の低さ

DCT(デュアル クラッチ トランスミッション)に共通する問題として、やはりクリープが弱いこと。これは国産CVT車に多い発進用トルコンによるものではなく、電子制御クラッチによる擬似クリープである。ヒルホルダー機能はあるのだが、坂道でも一度ブレーキを踏まないと作動せず、スルスルと抵抗感なく下がり始めるし、ペダルを踏み変えた時のアクセルワークにも気を使う。女性や運転初心者で自宅のガレージに傾斜がある場合は、ある程度の学習が必要だ。微速域でのギクシャク感も、気にすれば気になるところ。それからステアリングコラムの下部が丸く下に出っ張っていて(モーターでも入っている?)、乗り降りの時に結構そこで膝を打ってしまった。

実際に乗ってみて、冷静に結果を判断すると、国産エコカーに比べて抜群に実燃費がいいわけでないこと。10・15モード燃費でも実燃費でも、日本の使用環境ではホンダのフィットやフリーダあたりの方が低燃費だし、もちろんプリウスにも適わない。あくまで走りっぷり(トルクの力強さなど)を含めた総合的な性能で評価したときに優秀といえる。

メカ的なことを除外すれば、輸入車としては質感や装備が相当貧相。「ここがイイ」で書いたように、だからこそ好感を持てるという人を除くと、ひとつ上のグレード(コンフォートライン)のレベルが欲しいと思うはず。特にウレタンステアリングは悲しい。しかもモデル末期であり、すでにニューゴルフの情報も流れ始めている。旧型でこの性能なら、ぜひ新型ゴルフを見てみたい、と思ってしまうのだ。

総合評価

DSG 対 CVT

テレビのCMを見ていて、のけぞった。大きなリスが走っている。大きなリス、オオリス、オーリス、そうトヨタ・オーリスのCMだ。オーリスって欧州車をむこうに回して正面勝負するハッチバック車だったんじゃ? それなのにこれは? 家人が「カワイイからイイじゃない」と言うとおり、これを見てオーリスという車名をやっと覚えた日本人は多いだろう。新車名として、まずはそこからということなのだろうか。オーリスという名は「オーラ」から来ているのだが、これじゃオーラも何もあったものじゃ……。

 

それはさておき、日本を代表するCセグメントの一台であるオーリス。そのライバルはもちろんゴルフだ。そしてオーリスがCVTであるのに対して、ゴルフはDSGである。以前にも書いたかしれないが、その昔、トヨタがまだCVTを持たない頃、トヨタの首脳に 「トヨタはCVTの開発が遅れているようですが」 と問いかけたところ、「ウチは優秀なATがあるから、コストの高いCVTなど使わなくても」 と答が返ってきたことがある。時は移ってそんなトヨタも今や燃費対策の柱はCVTだが、ここに来て世界の潮流はDSGなどのデュアルクラッチ式に移りつつある。特に力を入れているフォルクスワーゲンはついに燃費スペシャルというべき7速を投入してきた。さて今後、トヨタはどうするのだろうか。

 

試乗車スペック
フォルクスワーゲン ゴルフ TSI トレンドライン
(1.4Lターボ・7速DSG・248万円)

●初年度登録:2008年6月●形式:ABA-1KCAX ●全長4205mm×全幅1760mm×全高1520mm ●ホイールベース:2575mm ●最小回転半径:5.0m ●車重(車検証記載値):1310kg( 830+480 )●乗車定員:5名●エンジン型式:CAX ● 1389cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:76.5×75.6mm ●圧縮比:10.0 ● 122ps(90kW)/ 5000rpm、20.4kgm (200Nm)/ 1500-4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L ●10・15モード燃費:15.4 km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 4リンク ●タイヤ:195/65R15 ( Continental ContiEcoContact3 ) ●試乗車価格:249万3000円( 含むオプション:フロアマット 1万3000円 )●試乗距離:200km ●試乗日:2008年8月 ●車両協力:ファーレン名古屋中央株式会社(フォルクスワーゲン本山・小牧)

 
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