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フィアット グランデ プント 1.4 16V スポーツ新車試乗記(第432回)

FIAT Grande Punto 1.4 16V Sport

(1.4L・6MT・209万円)

3代目プント、あらため
「少し大きめ」を狙った
“グランデ”プント
そのポイントとは・・・

2006年09月22日

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キャラクター&開発コンセプト

新型は「少し大きめ」

欧州では2005年9月、日本では2006年6月10日に発売された「グランデ プント」はフィアットの主力コンパクトカー「プント」の後継モデル。プントはウーノの後継として登場した初代(1993年)および2代目(1999年)の2世代で、600万台以上を世界で販売したというベストセラー車。日本では1997年の導入以来、約1万500台を販売したという。

今回のグランデ プントは、その名の通り先代プントより「少し大きめ」なのが特徴だ。結果的にBセグメント(VWポロクラス)でありながら、Cセグメント(VWゴルフクラス)並みのボディサイズとなったわけだが、同時により上級指向となったところも見逃せないポイント。特に初代プント同様、イタルデザインの手になるスポーティなスタイリングが最大の売りとなる。なおプント(punto)とは「点(point)」を意味するイタリア語。生産は主に南イタリアのメルフィ(Melfi)工場で行われる。

価格帯&グレード展開

まずは3ドア・6MTを導入。遅れて5速セミATも

手始めに発売されたのは、今回試乗した3ドア・6MT仕様。遅れて今秋には、5ドア・5速セミAT「デュアロジック(Dualogic)」の4車種が追加されて、以下の計5車種になる。

「1.4 16V スポーツ」(6速MT、209万円)。
「1.4 8V デュアロジック」(5速セミAT、179万円)
「1.4 8V デュアロジック メガ(Mega)」(5速セミAT、192万円)
「1.4 8V デュアロジック ギガ(Giga)」(5速セミAT、209万円)
「1.4 8V デュアロジック テラ(Tera )」(5速セミAT、224万円)
メガ、ギガ、テラの各グレードで異なるのはデュアルゾーン式オートエアコンや電動ダブルサンルーフ 「スカイドーム」といった快適装備の有無だ。

日本仕様のエンジンはどれも1.4のガソリンで、6MTモデルはDOHC・16V(95ps)、デュアロジックはSOHC・2バルブ(77ps)になる。なお、欧州仕様でもガソリン車は1.2(65ps)と、これら1.4のみ。主力はターボディーゼルで1.3(75psと90ps)および1.9(120psと130ps)となかなか高性能だ。

パッケージング&スタイル

全長は4メートル超だが、5ナンバー幅はキープ

一見「ついにプントも3ナンバー幅か?」と思わせるスポーティな外観だが、ボディサイズは全長4050mm×全幅1685mm×全高1495mmと5ナンバー枠に収まった。とはいえ、これは90年代のVWゴルフ(ゴルフIII)と同等の大きさ。ホイールベースの2510mm、車重1150kg(車検証数値)も、かつてのCセグメントカー並みだ。

ハッチバックもカッコが命

クーペ風のデザインはジウジアーロ率いるイタルデザインの手になるもの。同じくジウジアーロがデザインしたマセラティ・クーペ風のノーズはコンパクトカーでは異例なほど突き出ており、先端のクラシカルなメッシュ調のグリルがプレミアム感さえ漂わせる。

それに比べるとリアは普通だが、それでも天地の薄いリアウインドウ、掟破りの高いバンパーライン、生意気に突き出たマフラーエンド、そしてフェンダーリップを追加して何とか収めた17インチタイヤがイタリアンスポーツをアピールする。この「カッコ命」のデザイン力こそ、イタ車の独壇場だ。

新しい意匠や工夫がいっぱい

内装も新しい意匠や工夫に満ちている。例えば「ヘアライン加工風」のダッシュボードはメタル調塗装のように見えて、おそらくは樹脂そのものにヘアライン風の表面加工が施したものだ。コスト的に有利なのはもちろん、アルミパネルと違って形状やサイズに関係なく加工できるのもメリットと思うが、そもそもアイディアが面白いし、メタル調塗装のようなウソっぽさがないのもイイ。その左端の赤い点(punto)が付いた「P」の文字もポップ。見方によっては人のカタチにも見える。

シートにもpuntoが付く

ドアを開けて最初に目を奪われるのは、シート地の「点(punto)」だろう。点の部分はビニール製。シート座面と背もたれのシート地に溶着してあるようで、押すと有機的な触感がある。指圧効果は?だが、すごくイタリア的で楽しい。オプションのレザーシートだと、この「点」はない。

試乗した「スポーツ」グレードのシートはセミバケット形状で、ホールド性もまずまず。生地の縫い合わせ方や縫い目はランチア・イプシロンのファブリック仕様を思わせる(あちらの方が上質で凝っているが)。ステアリングはチルトおよびテレスコ付。全体の質感としてはそう高くはないが、よく頑張っている方だろう。

「グランデ」だけど乗車定員は4人

リアシートは2人掛け。つまりグランデ プントの乗車定員は4人だ。安全性の点からもデザイン(サイドウインドウを寝かせてクーペ風に見せたい)の点からも、横2人がベストと割り切ったようだ。エアバッグは計6個で、Euro NCAPはもちろん5つ星。シート形状は立体的で、座り心地も悪くない。一方で足元のスペースは平均的で、1世代前のCセグと比べても明らかに狭い。

「グランデ」荷室の使い勝手はクーペ風

荷室容量は257L。こちらもBセグとしては普通、Cセグ(300Lくらい欲しい)としては狭い。リアシートの折畳み方法は、ある意味フィアットらしく、パンダみたいな左右一体式だ。シンプルだが、左右のロックを外すのが面倒だったり、「3名乗車+荷物」というレイアウトも選べない。ヘッドレストは収納式なので、この点は楽だが。

それ以上に使い勝手をスポイルしているのが「レンジローバーみたいに上下ニ分割?」と思ってしまうリアゲート敷居の高さ。大物の積み降ろしはやりにくそうだが「そんなことよリカッコの方が大切でしょ?」という声がトリノから聞こえてきそうだ。

もう一つ不便なのがリアゲートにオープナーが備わらないこと。つまりキーレスのスイッチか、室内(プントでは外から手が届きにくいダッシュボード中央)で開けるわけだ。さらにイグニッションが入っていないと、このスイッチが効かないなど面倒なことが多い。

床下にはスペアタイヤの代わりに応急パンク修理キット(電動エアポンプと水溶性シーラント)を標準で備える。こんなところも最近のクーペモデル風だ。

基本性能&ドライブフィール

非力だが、よく回る

試乗したのは6速マニュアルの「スポーツ」。拍子抜けするほど軽いクラッチペダルを踏んで、そこそこ重そうなフライホイールの慣性を感じながら発進する。坂道発進ではヒルホルダーシステム(自動的に約1.5秒間ブレーキを掛けて後退を防ぐ)を上手に利用するのがコツだ。

1.4リッターDOHCエンジンは95psと12.7kg-mを発揮。車重は1150kgで、パワーウエイトレシオは12kg/psとスペック的にはやや非力な印象だ。エンジンは欧州車では珍しい高回転型で、イタリアンと言えばイタリアンだが、個人的には10年ほど前のホンダ・シビックにあった1.3リッターを思い出した。よく回るのだが、回してもそんなに速くない。基本的にはフラットトルクで、エンジン音も抑揚のないタイプ。よって6速マニュアルの恩恵はあまり感じれらない。

一方で、シフトミスしにくいギアボックス、軽いクラッチ、軽い電動パワーステアリング(現行パンダやイプシロン同様、さらに軽い「CITY」モードもある)に慣れれば、かなりのイージードライブが可能だ。マニュアル車としては、ということだが。強力な1.8リッターエンジンと重めのクラッチで手応えのあった先代プントのHGTアバルトとは、まったく異なる性格だ。

下りではドイツ車が追いまわせる?

乗り味は予想通り重厚で、同じフィアット・グループのアルファ159に似たような進化を遂げている。タイヤは205/45R17インチのBS ポテンザRE050A(Made in Franceと刻印)で、それに合わせた足回りでもあるせいか、乗り心地は少々固め。トーションビーム式の欧州車でたまにあるリアサスからのゴトゴト音もあるが、これは乗り込むと消えることがままある。前後ディスクのブレーキは低速ではややカックンブレーキだが、最新のESPを組み込んだもので旋回中の減速も安定してこなす。

コーナリング性能はなかなかのもの。下りのワインディングでは正確でクイックなステアリングと濡れた路面でも磐石のポテンザに助けられて、アウディやBMWが相手でも追い回せるのでは?と思えるほどよく曲がる。レーザー溶接されたモノコックの剛性感も今時の最新欧州車レベル。これで先代プントの1.8リッターエンジンがあったら上りでも・・・・と思う瞬間だ。

100km/h時のエンジン回転数は2600回転くらいと低く、NVHの遮断も優れているので、高速巡航は快適にこなせる。速度計は220km/hまで刻まれるが、力感的には160km/h台で伸び鈍りそう。メーカー公表の最高速度は178km/hとある。

ここがイイ

素晴らしいスタイリング。現車を見てこれほど惹かれたのは久々。背は高いのにシャープで薄く見えるフロントまわり。ウェッジシェイプで鋭く流れるサイドライン。積載性よりも、デザイン重視のリアスタイル。素晴らしい。さすがジウジアーロ。こういう小さなイタリアンホットハッチを待っていた、という人は多いのでは。

ここがダメ

MTしかないこと。その割に乗っていて楽しくはないこと。コーナーでもそれなりに速いのだが、なんだか楽しくはない。ステアリングのインフォメーションが不足気味というか、軽いのだ。CITYモードはさらに軽すぎて違和感がある。また、前述したとおりの荷室の使い勝手の悪さ。特にリアゲートにオープナーが無いのは、いくらセキュリティ重視でも不便だ。

総合評価

このクルマはトルコンATがないことをどう考えるかが課題。グランデプントには今のところATはないのだが、それゆえ販売的に大変苦しいであろうことは、想像に難くない。このクルマのスタイリングが素晴らしいということは多くの人が認めるはずだし、走りにしても1.4リッターならば、街乗りで大きな不満はない。なのにMTであることで、せっかくのルックスやイタ車という付加価値を商品力に変えるに至っていない。反面、イタリアンホットハッチに思いを寄せる人にとっては6MTだから意味がある、高回転域で引っ張って走るから意味がある、のだろう。

ATについて思いをはせる。例えば今から30年も前にアメリカ車の8割以上がAT車と聞いても、そんなATの時代など日本のクルマ社会にはやってこないだろうと思ったもの。25年くらい前にやっとATは商品力を持ち始めたが、主流はまだ3速の時代。走りを考えればとても乗る気になれなかったものだ。ところがそれから急速にATは進化・普及し、20年ほど前に4速が普及し始めたころからAT車が主流を占めるようになった。やがてポルシェがティプトロニックを発表(89年)してマニュアルモード付ATが登場し、スポーツカーもATの時代へ突入。そのポルシェで言えば現在は8割以上がATで、最新式のターボなど加速タイムでは完全にAT車の方がMT車を上回っている。フェラーリも日本ではすでに半分以上がF1仕様となっているし、ギアの数で言えばメルセデスは7速、最新のレクサスLSは8速だ。

つまり、もはやAT車でも速く、AT車でも変速が楽しめるという時代。その中でフィアット(とアルファロメオ)だけはMTにひたすらこだわっているように思える。いやそれは確かにこだわりなのだろう。まもなく投入されるATモード付シーケンシャルトランスミッション「デュアロジック」も基本的にマニュアルだ。イタリアではMTが主力だし、北米へもフィアットは輸出されないからATに積極的ではないのはわかるが、トルコンATをかたくなに拒否する理由は今ひとつわからない。プントはかつてCVTを載せていたこともあり、シフト操作にこだわっているわけでもないようにも思える。

グランデプントはおそらく、都会の30歳前後の女性が一番のターゲットとなるはずのクルマ。独身でそこそこ収入もあり、晩婚時代ゆえまだ結婚しないような女性だ。「生活道具と言うより遊びに使うためにクルマでも買おうか」と考えたとき、サイズも値段も、そして国産車とは違うオシャレさもピタリとはまるはず。となれば、ごく普通のATさえあれば、もっともっと売れるクルマだと思う。デュアロジック車ならAT限定免許で乗れるから、グランデプントのルックスに惚れた女性には売れる可能性はあるが、顧客満足度は低いと思う。

最近はMTをマニアックな楽しみの道具として、一種の付加価値としてとらえる傾向もあり、世界的にはMT設定車は増えてきた。その流れでグランデプントも「イタ車は非力なエンジンをマニュアルで乗りこなすもの」という「いなせさ」にひかれるマニアックな男の子には売れるだろう。でもフィアットもアルファもランチアも、ATなら乗りたいという、いなせじゃない人は日本に多い。クルマ業界を楽しくするフィアット系のクルマたち。なんとかもうちょっと売れて欲しいゆえトルコンATをぜひ載せてもらいたいものだ。

試乗車スペック
フィアット グランデプント 1.4 16V スポーツ
(1.4L・6MT・209万円)

●形式:ABA-199141●全長4050mm×全幅1685mm×全高1495mm●ホイールベース:2510mm●車重(車検証記載値):1150kg(F:720+R:430)●乗車定員:4名●エンジン型式:199A6●1368cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置●95ps(70kW)/6000rpm、12.7kg-m (125Nm)/4500rpm●カム駆動:タイミングベルト●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/45L●10・15モード燃費:- km/L(未公表)●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:205/45R17(BRIDGESTONE POTENZA RE050A)●試乗車価格:209万円(含むオプション:なし)●試乗距離:約120km●試乗日:2006年9月 ●車両協力:アルファロメオ西名古屋

公式サイト http://www.fiat-auto.co.jp/showroom_grandepunto_index.html

 
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