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ヒュンダイ グレンジャー 3.3GLS新車試乗記(第402回)

Hyundai Grandeur 3.3 GLS

(3.3リッター・5AT・299万2500円)



2006年02月10日

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キャラクター&開発コンセプト

ヒュンダイの最高級セダン

今回の新型グレンジャーは、XG(本国名グレンジャーXG)の後継として、日本では2006年1月5日に発売された。実はグレンジャーとしてはすでに4代目に当たる。ボディサイズはソナタより一回り大きく、エンジンには3.3リッターV6を採用。日本国内ではウインダムやインスパイア、あるいはクラウンあたりまでカバーするアッパーミディアムセダンだが、北米ではUSカムリやUSアコードのV6モデルがライバルで、車名はアジーラ(Azera)となる。

グレンジャー(雄大、荘重。grandの名詞形)の名にふさわしく、「洗練された極上のバランス」がコンセプト。大陸的に伸びやかなスタイリング、V6エンジン、日本車に追い付きつつある品質、価格競争力が武器だ。生産は韓国の牙山(アサン)工場。日本での販売目標はソナタと同じ年1500台。グローバルで好調なヒュンダイは2005年に355万台(起亜自動車を含む)を販売して世界第7位の自動車グループとなったが、日本市場では2004年(1~12月)が2524台、2005年(同)が2295台と足踏み状態なのが悩みだ。

参考サイト:
ヒュンダイ・モーター・アメリカ(英語)
JAIA>2005年12月度 新規登録台数

価格帯&グレード展開

レザーシート標準で299万2500円

標準グレードの「3.3GLS」(299万2500円)でも電動レザーシートや8エアバッグなど装備は充実。さらにLパッケージ装着車(339万1500 円)なら、サンルーフ、17インチタイヤ、木目調ステアリング、スーパービジョンメーター、クルーズコントロール、電動リアサンシェードが備わる。

パッケージング&スタイル

北米では景色に溶け込みそう

全長4895mm×全幅1865mm×全高1490mmというサイズは国際的にはミディアムだが、日本ではクラウンを越えて堂々たるもの。一見コンパクトなソナタに比べて、アメリカ車風に伸び伸びと、そして平たく見える。似たようなセダンが溢れる北米では景色に溶け込んでしまいそうだが、それも狙いの一つだろう。

リアのコンビランプは今風にLED。6ライトのサイドウインドウも既視感のあるデザインだ。全体にマイナーチェンジ前のUSアコード(国内向けインスパイア)によく似ており、トランク周辺も世界中のメーカーが真似たBMWの「バングル・バット(Bangle butt)」だが、リアフェンダーが盛り上がる部分はユニークだ。

「アメリカン・ラクシャリー」風

天地も前後も幅方向も余裕たっぷりのインテリア。カムリやティアナを思わせる広さだ。内装色はベージュのほか、ボディカラーによってはブラックになる。マグネシウム製フレームをおごったシートは少々ルーズフィットだが、座り心地は良い。

センターコンソールにあしらったパンチングメタル風?の仕上げをはじめ、レザーやウッド調パネルの質感は大味ながら、日本車やアメリカ人の好みを徹底的に研究した感じがする。正直、北米のライフスタイルの中で見れば、何の不満もないだろう。標準装備の8スピーカー「Infinityプレミアムサウンドシステム」の音はなかなかのもの。インダッシュの6連奏CDチェンジャーの下に、いまどきカセット、というのは何だが、アナログ派にはありがたいかも。

フロントシート同様、クッションが柔らかく、大柄なリアシートは「アメ車」的に良い部分だ。後席にもサイドエアバッグとカーテンシールドエアバッグ、それに3人分の3点式シートベルトが付く。

左右も天地も絞り込んだテールから想像される通り、トランク容量はそこそこの469リットル。奥行きはあるが深さはやや不足気味。ただしリアシートの背もたれを倒して簡単にトランクスルーできる。

基本性能&ドライブフィール

快音を発する3.3リッターV6

北米仕様は3.8リッターだが、日本向けは全て3.3リッターV6、通称「Λ(ラムダ)」エンジン(234ps、31.0kg-m)。カム駆動はチェーンで、イリジウムプラグを使用する。スターターを「クククク」と回してエンジンを掛けると、まずアイドリングの静かさが印象的。無音とは言わないが、風量最弱のファンノイズと同じくらいの音しか聞こえない。振動はほとんどない。

車重は1640kgと特に軽くはないが、もちろんパワーは十分。少し回転を引っ張った時が気持ちよく、クォーンという快音を立ててスムーズに加速する。日産のVQ35DEほどトルクは分厚くなく、豪快なパワーもないが、それゆえにスポーティで上品だ。 ATは先代XGと同じ5速で、ギアリングもほとんど同じ。シフトレバーのゲートが左ハンドル用のままで、マニュアルモードにするときはDから左に倒さなければいけない。

乗り心地は固め。ESPの貢献大

アメリカンな雰囲気に反して、乗り心地はやや固め。速度を上げると乗り心地はフラットになるが、飛ばし過ぎると今度は直進安定性が覚束なくなってくる。ブッシュなのかダンパーなのか、試乗車が履くHANKOOK製16インチタイヤのせいなのか理由は分からないが、足回りには煮詰める余地がある。

前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンクのサスペンションは先代XGと同じ。大柄なボディの割に、いつもの山道でもバランスよく走ったが、それは実は、警告音なしでブレーキ制御やスロットル制御を終始行うESPの存在が大きい。このESP、ハードなコーナリングを行なったり、意図的にパワーを掛けたりすると、いきなりスロットルを絞るが、普段はほとんど介入を意識しないで済む。ただ、TRCの作動はかなり頻繁だから、Lパッケージの17インチタイヤは意味がありそうだ。

10・15燃費9.1km/Lだが、レギュラーでOK

大柄なボディで最小回転半径は5.8メートルと小さくないのに、運転は意外にしやすい。ボンネットが低くまっ平らで、見晴らしがいいせいだろう。ただしステアリングはけっこうスローで、切り返しではクルクル素早く回す必要がある。

10・ 15モード燃費は9.1km/Lと、クラウン(ロイヤル3.0:11.8km/L)やインスパイア(3.0:11.4km/L)、ティアナ(350: 9.8km/L)に比べて見劣りするが、この中ではグレンジャーとインスパイアだけがレギュラー仕様。燃料タンクも75Lと大きめだ。

ここがイイ

典型的なアメリカン・アッパーミドルクラスの世界。右ハンドルでなければ、アメリカでプレミアムクラスのレンタカーに乗ってるみたい。かなり大きなクルマであることを忘れてしまったのは、高く座れるシートのせいもある。視点が高いので運転しやすい。

後席のサイドエアバッグなど安全装備がすべて標準で付いている。これは素晴らしい。室内が広いのもいい。豪華さはあまり感じないものの、ステッチの効いた革シートはやはり魅力。シートヒーターがあるのも心地よい。リア革シートは日本車にない柔らかさで、ソファー感覚がこれまた心地よい。

インフィニティのオーディオの音は不満なしで、これも標準装備なのは素晴らしい。インパネの大部分をオーディオが占めるのに伴い、ダッシュにモニターを取り付けるためのステーがオプションで用意されているから、ナビもいい感じに収まりそうだ。

アイドリング静かで、パワフルなエンジン。さすがに力不足はまったく感じない。そのパワーをうまくセーブするESP。5速ATの変速プログラムは日本の交通事情でも違和感がなく、スムーズでシフトショックもない。全体として不満のないつくりになっている。

ここがダメ

コンソールのアルミ素材がちゃち。ダッシュの質感も低い。木目パネルは悪くないのに、ドアからダッシュへのトリムがスムーズにつながっていない。間にスチールのモールがあるが、これも何だか違和感がある。

ソナタ同様、オーディオのボリュームつまみが助手席側にあること。今回も、何度も間違えてラジオの周波数やCDの曲順を変えてしまった。グレンジャーの場合、ステアリングスイッチがあるからそれを使えばいいのだが。

ペットボトルでも並みのサイズではガバガバで役に立たないドリンクホルダー。

アメ車っぽい雰囲気に似合わない、妙に固い足回り。山道でプッシュすると、キックバックをもろに伝えてきて剛性感のないステアリング。

高速走行では風切り音が100㎞/hあたりから高まってきて、ロードノイズも気になってくる。それ以降は直進性もおぼつかなくなってくる。これはもしかするとタイヤのせいかも。

エンブレが効かない感じはソナタと同じ。下り坂ではスロットルオフでも思ったほど減速せず怖いことも。ATの降坂制御の問題か。

総合評価

2004 年は318万台、05年は355万台と世界市場では飛躍を続けるヒュンダイ。中でもグレンジャーはカムリキラーとなるべく開発されているようだ。日本や韓国では高級仕様だが、北米ではカムリもグレンジャーも大衆車として売られるのだろう。そのため、例えばクラウンのように緻密な、あるいは日本的な高級感は、旧カムリ同様にグレンジャーには感じられない。特にインパネの樹脂の質感は少し安っぽい印象。日本ではそのあたりを気にする人が多いはずで、せっかくの300万円を切る割安感がうまくアピールできないのでは、と心配になる。旧カムリやアメリカ製のアバロンなどが日本で売れなかったのも、そのあたりが原因だと思うからだ。価格を考えると全体としてよくできているだけに惜しい。

スタイリングもまったく悪くないのだが、残念なことに個性が弱い。ソナタや新型TBも同様で、最近のヒュンダイ車には、心をときめかすデザインワークがないのは残念。ヒュンダイクーペあたりはかなりカッコいいのに。これも北米でたくさん売るための無難なデザインなのだろう。

ただ、日本ではこのサイズでは高級車の一つとなるわけで、もうひと味欲しい。北米ではカムリも外車、グレンジャーも外車なわけで、土俵は同じだが、日本ではカムリは日本車、グレンジャーは外車だから、グレンジャーの場合はもっと外車っぽさを打ち出した方がいいのでは。いっそ左ハンドルとか。

昨年の東京モーターショー・プレスデーで見かけたトヨタの渡辺社長は、様々なプレミアムブランドブースを横目に、ヒュンダイブースをじっくり眺めていた。日本でも北米でも大衆車メーカーとして大成功を納めてきたトヨタも、レクサスなどプレミアムカーも作る総合メーカーにいよいよ変わりつつある。一方、大衆車市場ではヒュンダイの影がヒタヒタと忍び寄ってきているわけだ。かつてのトヨタの成功路線をヒュンダイが取って代わろうとしているように見える。そんなヒュンダイだってあと10年もすると、今度は中国車に追われることになるのかもしれないが。

世界的に見れば、クルマはまだ嗜好品というより実用品という側面が強い。成熟したクルマ社会である日本では実用品であることは当たり前で、それより嗜好品的な要素を大衆車であっても求められる。嗜好品とまでいかなくても、様々なギミックに近い装備やデザインがあってこそ購買意欲が刺激されるわけだ。聞けば 300万円を切るグレンジャーの価格は日本向けの戦略価格らしく、他のエリア向けよりかなりのディスカウントとのこと。しかしこのサイズとなると、求めるべきは価格ではないと思う。ハードウェア的にはもはや日本車に負けないので、「300万円でこれだけの装備が買えるのはお買い得、とわかる人にはわかる」ではなく、誰もがちょっと気になる「何か」を加えて欲しい。そこが惜しい。

試乗車スペック
ヒュンダイ グレンジャー 3.3GLS
(3.3リッター・5AT・299万2500円)

●形式:ABA-TG33●全長4895mm×全幅1865mm×全高1490mm●ホイールベース:2780mm●車重(車検証記載値):1640kg (F:1030+R:610)●乗車定員:5名●エンジン型式:G6DB●3342cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●234ps (172kW)/6000rpm、31.0kg-m (304Nm)/3500rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/75L●10・15モード燃費:9.1km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:225/60R16(HANKOOK OPTIMO K406)●試乗車価格:299万2500円(オプションなし)●試乗距離:180km ●試乗日:2006年2月

公式サイト http://www.hyundai-motor.co.jp/

 
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