キャラクター&開発コンセプト
シャリオの冠が消えて、グランディスに
2003年5月17日に発売された新型「グランディス」は、従来のシャリオの後継車と言えるモデル。1983年にデビューした初代シャリオは日産プレーリーと並んで、このクラスのファミリーミニバンとしては元祖と言えるモデル。1997年の3代目で「グランディス」のサブネームが追加され、今回の言わば4代目で、苗字とも言うべきシャリオの名が消えた形だ。
三菱は新型グランディスの特徴として、「スポーティ&エレガンス」そして「ジャパニーズ・モダン」といったデザインを筆頭に挙げている。目標としたのは、「ミニバンとしての快適性」とスポーティさの両立だ。
エンジンは従来の直噴式ガソリンエンジン「GDI」を廃止し、可変バルブタイミング機構付き「MIVEC」に変更。基本的には、従来エンジン技術の応用・発展版となる。
起死回生の一台となるか
国内での業績と信頼回復の使命を担い、販売目標は月間3000台に設定。先代は発売当初こそ好調だったが、不祥事の発覚以降は見るも無残な成績。新型は発売から2週間で約7000台を受注したというが、目標の維持はたいへんだろう。トヨタがウィッシュ(5月:約1万5000台)やエスティマ(同6000台)で一人勝ちするほか、日産が6月に新型プレサージュ(目標5000台)を発売、秋には新型オデッセイも登場する。利益率が高く、台数が見込めるミニバンは、国内で最も熾烈な市場でもあるのだ。
また一方で、新型グランディスはアジアや欧州に輸出される世界戦略車でもある。海外での三菱ブランドのイメージは元々高く、しかも先の事件のようなブランドへのダメージもない。コルト同様、ダイムラー・クライスラーグループの一モデルとして開発された点も、新型グランディスの重要な側面だ。
価格帯&グレード展開
208.3~292.3万円(4WD含む)
基本的には2.4リッターモデル1種類。グレードは5種類あり、「スタンダード」(208.3万円)、「エレガンス」(227.8万円)、「エレガンス-X」(272.3万円)、「スポーツ」(233.3万円)、「スポーツ-X」(268.3万円)となる。全グレードで6/7人乗りが選べるほか、電子制御式の4WDも用意する(24万円アップ)。
コルトで導入された「カスタマー・フリー・チョイス」はグランディスも採用。外装色、内装色、シート仕様、装備類を自由に選ぶことができるシステムだ。
7人乗りが3/4を占める
三菱によると、発売初期の人気グレードは「スポーツ-X」(27%)、「エレガンス-X」(25%)、「スポーツ」(15%)。「エレガンス」(8%)の順。ただし販売店の見込み発注分も含まれるはずだから、実際にはもう少し低価格グレードがメインになるだろう。
7/6人乗りでは、やはり7人乗り(74%)が圧倒的に多い。このクラスのミニバンでは一般的な傾向だ。駆動方式では2WDが65%を占める。
「日本の四季や自然を表現した」というボディカラーが10色も用意されるが、人気色はウォームシルバー(30%)、ウォームホワイト(28%)、クールシルバー(16%)といった無難な色が続く。今回の試乗車はそのウォームシルバー。
パッケージング&スタイル
異彩を放つスタイル。ライバルはイプサムかオデッセイか
ボディサイズは全長4755mm×全幅1795mm×全高1655mmと、長さと横幅は堂々たるもの。現行エスティマやオデッセイとほとんど変わらない。しかし全高はエスティマより10センチ以上低く、オデッセイ並みに低い。ドアの開き方(4枚ともヒンジ式)から言って、直接のライバルはイプサム、オデッセイといったところだろう。
ダイナミックな外観は、ミニバンの中にあって個性的なことは確か。フロントの「スリーダイヤモンド」から始まる大胆なスタイルはコルト同様だが、サイズが大きい分だけ伸びやかで迫力がある。デザインはダイムラー・クライスラー出身のオリビエ・ブーレイがデザイン監修したということで、「日本」を強くイメージしたもののようだ。同じようなデザインアプローチは日産も同じだが、最近の日産車(ティアナとか)のデザインの方が、当の日本人にはしっくり来るような気がする。
メルセデス・ベンツが最初に採用したドアミラー組み込み式のウインカーをグランディスも採用。リヤコンビネーションランプともども、光源にはLEDを使用する。
デザイン力が質感をカバー
インテリアも大胆だ。大きくラウンドしたインパネに、茄子や焼杉の色をモチーフにしたという紫系の色を選び、そこにツヤ消し木目調パネル(エレガンス内装の場合)を配する。ざっくりした触感のシート生地はソファっぽい感じで、寛ぎ感がある。
ただし、一見するだけでも質感はあまり高くない。例えば、ダッシュやドアトリム上縁はハード樹脂。先の木目調パネルは見方によってはホームセンターで売っている家具のようだ、とも言える。ドアの取っ手にも革風の素材が張られているが、どこかビニールっぽい。本物志向の人には訴求しにくいだろう。しかし総合的に見れば、デザインがこれら質感の低さを十分に補っている、と言えるだろう。
張り出したインパネと低い全高のせいか、室内の広々感はさほどない。センターコンソールも出っ張っていて、サイドウォークスルーもやりにくい(もちろんシートを下げれば楽になるが、女性ユーザーはシートを前に出しがちだ)。ただしセンターコンソールの問題をのぞけば1列目と2列目の行き来は障害物がなくやりやすい。
セカンドシートの座面の角度が、3段階に変えられるのが新しい。また、助手席の座面を前に跳ね上げて荷物が置けるようにした「ユースフルシート」は、便利な装備だ。バッグなどを転がる心配なく置くことが出来る。
サードシートは左右分割式に
3列目は、シートの造りが良く、横幅もあるからなかなか快適だが、やはり足元が狭い。3列目を使う場合は、1列目と2列目の人がちょっとだけ窮屈な思いをして、シートを少しずつ前に出す必要があるだろう。シート高もないから膝は立ち気味になる。
このクラスのミニバンで重要なのが、普段はほとんど使わない3列目シートをいかに簡単に収納できるかという点だろう。床下収納は初代オデッセイのアイデアだが、グランディスはさらに左右分割を可能にしている。背もたれを倒し、ひもを引くと座面ごと手前にひっくり返ってくるという仕掛けで、ヘッドレストを外す必要もなく、力もほとんど要らない。荷室はこれでほぼフラットになる。
基本性能&ドライブフィール
不満のない乗り心地
試乗したのは「エレガンス-X」の2WD(272.3万円)。走りの上での大きな特徴は、当たりの柔らかい乗り心地だ。低速時はカーペットの上を走るかのようにスムーズ。それでいてロールやピッチングも小さい。オデッセイは明かに操縦性に振ったハードな足まわりが特徴で、最近のトヨタ車も操縦安定性重視の傾向にあると思うが、グランディスは日常的な低速域の乗り心地を重視した感じだ。ミニバンとしては不満がない乗り心地といえるだろう。
ただ、荒れた路面や高速域ではもう少し重厚感があるといいと思った。また、オデッセイは言うに及ばず、現行エスティマあたりと比べてもビシッとしたドライブフィールはあまりない。そういった「分かりやすさ」のなさが、人によっては曖昧な印象を与えるかもしれない。
女性ユーザーを意識
あちこちで「軽過ぎる」と評されているパワーステアリングについては、確かに「ひょっとして電動?」と思うような軽さだが(グランディスは油圧)、気にはなるほどではなかった(すでに対策済みか?)。一部の軽自動車や小型車の電動パワステようにクルクル回るだけでフィールに乏しい、ということはない。
運転席シートは一番下にしてもやや高め。足まわりや軽めのステアリングもそうだが、女性ユーザーを意識したことが感じられる。1795mmと幅の広いクルマだが、取りまわしは悪くない。最小回転半径は16インチタイヤ仕様で5.5メートル。実際の寸法より、ボディが小さく感じる。
やはり女性ユーザーを意識したのだろう、試乗車には前後コーナーセンサーに加えて、見通しの悪い場所で左右が見える「ノーズビューカメラ」(トヨタ車などでおなじみ。グランディスでは前バンパー左右にカメラが付く)や「リヤビューカメラ」が付いていた。クルマの使用環境によっては手放せない装備になるだろう。もちろん男性にも役に立つ装備だ。
GDIが去り、MIVECが復活!
エンジンは可変バルブタイミング機構付きの2.4リッター・MIVECエンジン。NOx(窒素酸化物)低減が難しいGDIシステムは、新型ではついに廃止されてしまった…。特に目新しい点はないエンジンだが、低回転から高回転までスムーズにソツなく回る素直なエンジンだ。車重1620kgに165ps、22.1kgmだから、動力性能は必要十分。バルブタイミングは連続可変でなく3500回転で切り替わるが、段付き感はまったくない。オートマチックは4速だが、5速に比べてハンディはまったく感じなかった。
細かいことを言えば、アイドリング時の振動やエンジン音がやや気になる。先代にあった3.0リッターV6モデルが今回から廃止されたので、もう少しこうしたノイズ/バイブレーションは抑えたい。ただ、これも他社の4気筒と比べてみないと分からない微妙な話だ。
ここがイイ
街乗り重視のソフトな乗り心地と操縦安定性を両立したところ。大胆なデザインと豊富なカラーバリエーション。左右独立してうまくたためる3列目シートや助手席の座面下に荷物が置ける「ユースフルシート」(コルト同様)。こんなあたりが目立って良いところだが、トータル的にもミニバンとして不満のない作りになっている。高速巡航でもその快適性は不満がない。最近のミニバンはどれもすでに完成の域にあり、テイストの差の時代に入っている。
ダンパーで立ちあがるフロントシート背面のセカンドシート用テーブルもうれしい装備。1万円で装備できる100Vのパワーサプライもまたうれしい。
ここがダメ
そのテイストという点で、今ひとつ、質感や乗り心地の詰めが甘いように感じてしまう。質感は使い始めれば気にならなくなるだろうし、乗り心地も経年劣化で変化するから、あくまで新車時の話ではあるが。フォローするとインパネ形状がかなり斬新でオシャレだから質感問題はカバーできるかもしれない。
コルトを含め、三菱アイデンティティを作りつつあるフロントフェイスだが、これ、かなり「怖い顔つき」に思えるのだが。女性ユーザーを意識したという点ではややズレがあるように思う。クライスラーのミニバンのフェイスにも通じる「アメリカ顔」は、親会社の意向だろうか。
総合評価
大きなボディだが一見ではさほど大柄に見えず、女性が乗るにも抵抗は少ないだろう。どうしても物理的に狭い道路や駐車場を利用しなくてはならない人以外は、慣れてしまえばボディサイズはあまり気にならないものだ。となればこれくらいのサイズの方が、デザイン的にも、居住空間的にも自由度が高い。
結果、未来的なボディーワークが光る個性あるエクステリアとなり、さらに広々感こそ少ないが十分な広さを持ち、3列目シートも実用的と言える。そもそも今人気の5ナンバーミニバンは、けっこうチマチマしているから、「ミニバンに乗るならやはりこれくらいのサイズでないと」と標準語で、「ミニバン買うならこれくらいのサイズに乗らんかい」と関西弁で、「ミニバン乗るならこれくらいのサイズにしな、いかんて」と名古屋弁でおすすめしたい。もちろん乗り心地がいいのも気に入った。
さて、MMCS(三菱マルチメディアコミュニケーションシステム)ではナビのディスプレイで様々な設定ができる。例えばドアミラー格納を、リモコンキーに連動させる・乗車降車に連動させる・30km/hで自動的に開くなどが選べるが、多くの人(特に女性ユーザー)はこれらを自分で設定することほとんどないだろう。音声でコントロールできるようになればまだしも、タッチパネルで選ぶのはハードルが高いように思える。とはいえ、こうした仕組みを取り入れたことは高く評価したい。
次にフロント左右が見られるノーズビューカメラだが、左右に2個カメラがあるため大変解像度が高く、トヨタの1カメより見やすい。バンパー埋め込みのため、水滴の影響も受けにくいようだ(トヨタは水滴でとても見にくくなる)。リアビューカメラも良好。不満は速度に連動してナビと切り替わるため、停止状態ではナビが見られなくなること(もちろん設定を切ればいいのだが)。停止したときこそ、現在位置や交通情報を知るためちらりとナビが見たいのだが、そのためにはいちいち切り替える必要がある。
今後、ボディ周辺を写すカメラは必ず標準化されていくはず。これを有効にするためには、ナビ以外にもう一つディスプレイが欲しい。一番いい方法はメーターディスプレイを液晶化することだ。通常はメーターを画像表示し、止まるときはカメラの左右表示に切り替えればいい。停止時にはスピードメーターは必要ないのだから。ドライバーの正面にあるのだし、その他の情報も表示できるだろう。メーターパネル全面を液晶化することは、今後の課題だと思う。例えばカメラが5つ、6つと増えた場合、メーターパネル上にマルチ表示されると便利だ。カーナビディスプレイはDVDを見ている場合もあるはずだから独立させておきたい。
試乗車スペック
三菱 グランディス エレガンス-X
(2.4リッター・2WD・272.3万円)
●形式:UA-NA4W●全長4755mm×全幅1795mm×全高1655mm●ホイールベース:2830mm●車重(車検証記載値):1620kg(F:-+R:-)●エンジン型式:4G69●2378cc・SOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●165ps(121kW)/6000rpm、22.1kgm (217Nm)/4000rpm●使用燃料:レギュラーガソリン●10・15モード燃費:11.4km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:215/60R16(Yokohama ASPEC)●価格:272.3万円(試乗車:同じ) ●車両協力:中部三菱自動車販売株式会社
公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/grandis/index.html
