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クライスラー グランドボイジャー ツーリング新車試乗記(第516回)

Chrysler Grand Voyager Touring

(3.8リッターV6・6AT・460万9500円)

ミニバンの基本はクライスラーに聞け!
登場から4半世紀、
元祖ミニバンが5代目に進化した!

2008年06月27日

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キャラクター&開発コンセプト

内外装を一新。6ATを採用。「Stow'n Go」も

2008年5月17日に日本で発売されたグランドボイジャー(Grand Voyager)は、1983年にデビューした初代ボイジャーから数えて5代目となるモデル。

新型では内外装を一新。改良型3.8リッターV6・OHVエンジンと6速ATを採用し、サスペンションもアップデート。新装備もしくは改良装備も30点以上導入されたという。もちろん先代途中から採用されたクライスラー・ミニバンの十八番「Stow'n Go(ストウン ゴー)」(2列目・3列目床下収納システム)を引き続き採用。上級グレードにはグランドボイジャー初の電動格納式3列目シートも採用している。「グランド~」はロングホイールベース版を意味する。

日本向け新型グランドボイジャーの生産は、今回からクライスラーおよびダッジのミニバンやダッジ・ラムと同じ、米国ミズーリ州フェントンのセントルイス サウス組立工場(St. Louis South Assembly Plant)で行われている。

「元祖ミニバン」ボイジャーとは?

クライスラー社のプリマス・ボイジャーおよびダッジ・キャラバンは1983年に登場。それまでポピュラーだったフルサイズバンより二回りは小さく、さらに当時一般的だった後輪駆動(FR)ではなく前輪駆動(FF)とすることで、広い室内、低くてフラットな床を実現した。これがルノー・エスパス(1984年)と並び、ミニバンの元祖と言われる所以である。後にクライスラー版のタウン&カントリーも登場。1991年にビッグマイナーチェンジを実施し、一般的にはこれをもって2代目とする。

1996年には3代目が登場。日本ではクライスラー・ボイジャー/グランドボイジャーとして正規輸入された。

 

先代(4代目)クライスラー・ボイジャー(2001~08年)

2001年には4代目に進化。このモデルから米国ではプリマスブランドが消滅、さらに途中からクライスラー・ボイジャーが消滅し(欧州やアジアでは継続)、現在本国では同タウン&カントリー/ダッジ・グランドキャラバンとして存続している。少々ややこしい展開だが、これは目下クライスラー社が車種の統合作業を行っていることも関係している。これら「クライスラーのミニバン」は1984年の登場以来、2008年の時点で累計販売1200万台を達成したという。

なお、ボイジャー(Voyager)とは、voyageをする人、つまり航海者のこと。1977年に打ち上げられた米国の無人惑星探査機の名称でもある。

価格帯&グレード展開

ベーシックな「ツーリング」が460万9500円、「リミテッド」が546万円

今回導入されたのは3.8リッターV6+6ATのFF仕様。ベーシックグレードの「ツーリング」(460万9500円)と装備満載の「リミテッド」(546万円)の2種類となる。

「リミテッド」は、ディスチャージドヘッドライト、HDDナビシステム(7インチタッチモニター付)、レザーシート、1インチアップの225/65R17タイヤ、ロードレべリングサスペンション(リア油圧式)を装備。外装には各種クロームメッキのモール、ドアハンドル、ルーフレールが備わる。さらに電動ガラスサンルーフを15万7500円高で用意。

グランドボイジャー ツーリング  460万9500円 ※今回の試乗車
■グランドボイジャー リミテッド  546万円

パッケージング&スタイル

クリーンなデザイン。ロング&ワイドで、背は低い

先代(4代目)の雰囲気をキープする新型のエクステリアデザイン。試乗車は「ツーリング」で、外装色はストーンホワイトである。ボディサイズは全長5145mm×全幅2005mm、ホイールベース3080mm。全長は先代比で+35mm、全幅は+10mmと大差ないが、資料によればルーフ幅は152mmも拡大。先代よりも室内が広そうに見えて、よりアットホームなデザインとなっている。

 

トヨタの新型アルファード(2代目)

参考までに同じFFミニバンの新型アルファードと比較すると、全長は+295mm、全幅は+175mm、ホイールベースは+130mmと段違いに大きい。逆に全高は1755(-135)mmと低く、エスティマ(全高1730mm)並みとなっている。このあたりは、グランドボイジャーもかなりの低床構造であることを意味する。

居心地、視界、操作性の良い前席。ドラポジも良好

インパネまわりは切り立ったセンターコンソール、ウッド調パネルとメタル調パネル、白い文字盤のメーターとアナログ時計など、クライスラー系でおなじみのもの。デザインをこねくり回した形跡がなく、気持ちがいい眺めだ。2DINサイズのオーディオは最上段に配置。「リミテッド」に標準のHDDナビゲーションシステムもここに収まる。また、これは日本製ミニバンにも増えてきたが、後席の乗員を全体を写す凸ミラーもバックミラーとは別に備わる。

 

クライスラーが日本仕様車向けに開発した例のサイドビューカメラも標準装備。ダッジ・ナイトロやジープ・パトリオット同様、左ドアミラーに埋め込まれたカメラで前輪と路肩のあたりを真上から捉え、助手席ドアのモニターに映し出す。本来は日本固有の基準で装着しなければいけなくなった補助ミラーを免れるためのものだが、左いっぱいに寄せる時などはこのモニターの方が見やすい。ただ、モニターサイズと位置の問題で、走行中の確認は難しい。

エアコンの調整は左右とリアの「スリーゾーン」フルオート式。ステアリング調整はチルト(上下)のみだが、全車標準の電動シートをもってすれば、小柄な人でもドライビングポジションは決まり、視界も良好。ペダルレイアウトも自然で、足も無理なく届く。特にブレーキペダルは左右に長く、たいへん踏みやすい。

「Stow'n Go」でセカンドもサードも床下収納

グランドボイジャー最大のウリは、先代から採用された「Stow'n Go」。すなわち2列目・3列目シート床下収納システムだ。シートを床下にしまって(stow)、すぐに出発できる(go)というカラクリである。

例えば、2列目のキャプテンシートはおおむね次のような手順で、床下にすっぽりと収まってしまう。

 

1、フロントシートを一番前に出す。
2、床のふた(3つ折りになっている)を開ける。
3、セカンドシートの背もたれを畳み、シート全体を反転させながら床下に収納。
4、ふたを戻す。

 

という感じ。これ以外に事前にフロアマットをどける、ヘッドレストを収納する、といった作業や、ちょっとしたコツも必要だが、慣れれば1つのシートにつき1分も掛からないだろう。いずれにしてもシートを車外に取り外すタイプよりは、はるかに簡単だ。

なお、シートの作りはクルマの大きさに比べると小ぶりで、クッションも多少平板だが、座り心地はまずまず。アームレストも備わるし、この収納性を見れば十分に納得できるレベルだ。

両側電動スライドドアを装備。ただしドアノブ操作では手動

天井には、アメ車によく見られる旅客機風のオーバーヘッドコンソールを設置。しかも収納部分は4連で、後席用テレビモニターの設置も可能なようだ。さらにLEDの角度可動式リーディングランプも4つ備わる。コンソールの周囲には、メーター照明と同じグリーンのアンビエントランプ(間接照明)が灯る。

両側スライドドアはもちろん電動で、運転席のスイッチ、リモコンキーのスイッチ、スライドドアの室内側スイッチと、3つの方法で電動開閉できる。ただし誤作動防止の考えからドアノブでの操作時は電動ではなく手動だ。最近の電動スライドドアに慣れていると最初は戸惑うが、いちいち開くのを待つ必要がないという点では使いやすい。

意外にも?ちゃんと座れるサードシート

3列目のシート構造・形状も独特だ。収納は座面後端を支点に180度後ろにひっくり返し、荷室床下に収納するタイプ。ホンダの初代オデッセイとよく似ている。座面がかなり後ろに傾斜しており、最初は「これでちゃんと座れるのか?」と思ったが、実際に座ってみると割と違和感はなく、気になるのはクッションの薄さくらいだ。空間的には大人2人なら余裕で、窓際には立派なドリンクホルダー付きの棚(テーブル?)もあり、圧迫感はまったくない。

 

リアクォーターウインドウは電動でスイングし、換気を行うことができる。エアバッグは前席に4つ(前面×2、サイド×2)で、2列目と3列目はサイドカーテンエアバッグ(かなり前後に長い)が保護する。当然ながら全乗員分の3点式シートベルトが標準装備される。

シートを外さなくても巨大な荷室

2列目・3列目を床下に収納した状態が右の写真。からくりを知らなければ、誰だってシートを取り外したと思うだろう。この状態の最大荷室容量は4500Lだが、これはメルセデス・ベンツのミニバン、ビアノ(2003年日本発売)と同値。ただしビアノの場合は、セカンドとサードの、あのチョー重いシートを外した時の数値だ。

ベンチや懐中電灯など楽しいオマケも

荷室にも工夫がいろいろあって楽しい。6:4分割式の3列目シートをそのまま後ろに90度倒すとベンチに変身。ここも初代オデッセイと同じで、なんだか懐かしい。

リアゲートはリモコン等で電動操作も可能。開口部左上のボタンを押すと、しばしの警告音のあとにゲートが閉まり始める。ボタンを押した後はゲートに挟まれないよう、速やかにそこから離れるなどちょっと注意が必要。

 

荷室右側の壁に備わるのは、クライスラー車で定番のフラッシュライト。これは高輝度LEDを2個使ったもので、ジープ・パトリオットではカーゴランプも兼用していたが、これは取り外した後にスイッチを入れて使うタイプ。元に戻せば再び充電される。

なお、3列目を床下収納するなら、スペアタイヤはどこか? 答は助手席の真下(吊り下げ式)。これはトヨタの2代目イプサム(2001年)と同じだ。現行(3代目)エスティマは2列目の下に吊り下げる。

基本性能&ドライブフィール

OHVと6ATのコンビで緩急自在

試乗したのはベーシックグレードの「ツーリング」だが、日本仕様のパワートレーンは共通だ。先代の3.3リッターV6に代えて採用されたのは、新開発をうたう3778cc・V型6気筒・OHVエンジン(193ps/5200rpm、31.1kgm/4000rpm)。先代同様に今や貴重な「オーバーヘッドバルブ」だが、ピークパワーや絶対的な効率を除けば、低回転でのトルク感、耐久性、信頼性、整備性の高い形式と言える。変速機は先代の4ATに代えて、初採用の6AT。車重はカタログ数値で2030kg、車検証数値で2050kgとある。

参考までに比較対象として先月試乗した2代目アルファード350Gのスペックを引っ張りだすと、エンジンは3.5リッターV6・DOHC(280ps/6200rpm、35.1kgm/4700rpm )と高回転・高出力型。変速機は同じく6AT、車重は標準仕様で2030kg、オプション込みで2050kgと奇しくもまったく同じ。前後重量配分まで、ほとんど同じだ。

というわけで動力性能に関する部分で一番違うのはエンジンパワーと特性だが、これは数値を比べなくてもアクセルを踏み込んだ瞬間に分かる。グランドボイジャーは低回転から力強いトルクを発揮し、ズオーンと巨体を軽々と走らせる。豪快というほどパワフルではないが、力感は十分。むしろ6ATがこまめに変速しながら、低・中回転域のトルクをうまくつなぎ、時にはゆったり、時には俊敏にと緩急使い分けた走りができる。大排気量OHVユニットと最新6ATのよく出来たコラボレーションといったところ。

リアサスはリーフからコイルに

いつものワインディングでは、ワイドトレッド、ロングホイールベース、それに比べて低めの重心という効果で、安定した姿勢のまま225/65R16サイズのタイヤを使い切ることが出来る。アルファードの3.5リッターは1インチ径の大きい215/60R17サイズ(銘柄はたまたまだろうが同じヨコハマ Aspec)を履くが、こちらも背の高さとトレッドの狭さ、パワフルなエンジンに関わらず無難に走ってしまうという点ではすごい。とはいえシャシー側のバランスはグランドボイジャーの方が良好と思われたのは、言うまでもなく車体寸法(ディメンション)の要件が大きいはず。なお新型グランドボイジャーのアクスルビーム式リアサスペンションは、先代のリーフスプリングから、ついにコイルスプリング式に変更されている。これによる乗り心地の良さは、新型で大きく進化したポイントの一つだ。

なお、シフトレバーを「D」のさらに下に落としたところがマニュアルモード。ダイムラー・クライスラー時代の名残か、左右にシフトするタイプだ。2速ホールドで走る時やエンジンブレーキを効かせるのにはいいが、シフトレバーがフロアに近いところにあるので、手がちょっと届きにくい。とはいえ、あまりマニュアルシフトが要求されるクルマではないので、問題はないが。

試乗燃費は約5.8km/L

今回はトータルで115kmを試乗。参考ながら車載平均燃費計はいつもの試乗コース(約100km)で約5.8km/Lを表示。街中を雑に走ってしまうと5km/Lくらいで、無駄な加速を控えても6km/L台に乗せるのは難しかった。ちなみに先々々回の試乗記でとり上げたアルファード 350Gは200km走って6.1km/Lだったが、パワーと飛ばした時のペースが異なるので、これでもアルファードには不利と言える。10・15モード燃費はグランドボイジャーは6.8km/L(メーカー参考値)、アルファード(350G)が9.1km/L。いずれも指定燃料はプレミアムとなる。

ここがイイ

取り回しのよさ、ゆったり感、そしてもちろん「Stow'n Go」

パッと見、意外にコンパクト。やはり背が低いことが効いている。乗っても見晴らしがよく、ボディの見切りがいいので、あまり大きさを感じない。左側が見られるカメラとモニターも有効。さすがに狭いところへは入ってゆきたくないが、想像以上に小回りも効き、街中から郊外までの試乗では、ボディサイズによる不都合はあまり感じなかった。

そんなに力があるわけではないが、その分逆にのんびりゆったり走れる。高速巡航も120km/hあたりでユルユルと流していると、頭の中にアメリカのフリーウェイを走ってるかのごときイメージが湧いてくる。ワインディングでもあまり飛ばす気にはなれないが、その分だけ安全かも。乗用車みたいな、あるいはスポーツカーみたいな昨今の日本製ミニバンの対極であり、これがミニバン本来の姿だと思う。

 

同様に日本製ミニバンにはない「Stow'n Go」はもう最高。操作の簡単さはもちろん、収納した時のすっきり感が素晴らしい。リアシートが後ろ向きのベンチになるあたりも、使う使わないは別として、「ウンウン、これこれ」 という感じだ。コラムシフトではないが、シフトレバーが低い位置にあるので、運転席からのウォークスルーもしやすい。シートアレンジと併せて、室内空間をとにかく自在に使いこなせる。車外にシートを持ち出さなくてすむので、その点でも広いガレージを持たない人にはうれしい装備だ。

2列目のキャプテンシートは小振りだが、快適性は十分。見た目が豪華なシートは世に多いが、シンプルなこのシートの掛け心地がいいのはちょっと皮肉。天井の物入れ、ピンスポットライト、エアコンの吹き出し口など必要なものはすべてそろっており、しかもプラスチッキーゆえ、あまり気を使わず道具的に操作できる。

パワースライドドアが手動で開け閉めできるのは、乗り降りするときに自分のペースでドアを開けられる分、自由度が高い。電動ドアが開くのを待っているのに違和感がある人は多いはずだから、日本車も見習って欲しいところ。

ここがダメ

運転席まわりで気になったのは、ドリンクホルダーがセンターコンソール後方に1つ、そしてドアポケット以外には見当たらないこと。ペットボトルをゴロンと転がしておくスペースも、ありそうでない。このあたりはあちこち空きスペースに小物入れを作りまくる日本車の方がやはり便利だ。

アメ車やラテン車に乗る度に書いている気がするが、給油口が今も鍵式。しかも今回の試乗ではメインのブロック型キーだけを渡されたので、そこに内蔵された金属キーを使って開けることになった。防犯性は高いと思うが、日本車やドイツ車に慣れた身にはやはり面倒に思える。逆に言えばこれこそ慣れの問題かもしれないが。

前席や2列目ならほとんど分からないが、3列目では荷室の右側床下あたり(サブマフラーが位置するところ)から「コォー」という独特の排気音が加速時に侵入してくるのが気になる。また120㎞/hを超えたあたりからミラーまわりに大きな風切り音が発生していた。そんなに出さなければいいだけの話だが。

総合評価

シートアレンジ、ここ10年の変遷

「ミニバンに求めるもの」が、ここ10年ほどの大ブームの中で微妙に変化してきているのが日本の現状だ。それをシートアレンジから少し考えてみたい。

そのさらに昔、ミニバン登場以前のキャブオーバーワンボックス時代は、全席フルフラット、リア回転対座シートが定番だった。床は高いが(そして天井は低い)、室内全体がひとつの部屋になるという発想。実に四畳半的。ここで子供と遊んだり、車中泊したり、というのがファミリーの夢だったわけだ。ただ実際にそうやって使われたかは、はなはだ疑問。走行中に子供を寝かせておくという、今では到底考えられない危険な行為には、かなり使われていたようだが。ただ、全席がフラットになることでシートの上には荷物が結構積め、積載能力がそこそこあったことは確かだ。

シートアレンジよりも豪華で快適なこと

初代ステップワゴンのような初期の和製ミニバンが登場してきた1990年代後半も、やはりキャブオーバーワンボックス同様にフルフラット対座シートが主流だった。ただ、はね上げて畳める2列目シートや、取り外しができるシートなど、シート自体にもだんだんと工夫が施されていった。やがて運転席・助手席回転シートなども登場し、室内をより広い部屋にしようという試みは続いた。ただし外したシートをどこに置くかや、手順が面倒で結局使わないといった問題があり、消費者側があまり高い評価を下さなかったもの事実。そのため、やがてシートはアレンジ性の高さより、シートとしての快適性や豪華さへと方向を変えていく。

その最たるものが先日試乗したアルファードだろう。豪華この上ないという「見た目」にこそ最重要点が置かれている。また、たいへんな売れ行きが示しているように、それこそが日本におけるニーズであったようだ。ミニバンを乗用車として使うのが当たり前になってきた昨今、シートアレンジよりも豪華で快適という乗用車としての価値観が求められるようになったわけだ。ミニバンとはいえアウトドアレジャーで使うことは少なく、日曜大工の大荷物を積むことなどもめったにないのだろう。セダンの役割がミニバンに変わっただけなので、シートアレンジなど、ある意味どうでもいいわけである。もちろんサードシートをはね上げたり格納したりすることは簡単になっているから、セダン以上に荷物を載せることはできるわけだし。

つまり2列目シート(セダンでいうところの後席)を豪華にすることが、昨今の日本ではミニバンに最も求められているわけだ。2列目シートを畳むとか、無くすなど、とんでもないことのわけである。

グランドボイジャーは基本に忠実なミニバン

しかしミニバンというものは、シートを無くすと実に多様に利用できる空間を持っている。商用バンのようにもなるし、足もとが異常に広いVIPカーにもできる。マルチユースを考えたら2列目は本来、無くす(収納する)に限るのだが。その点でグランドボイジャーはまさに基本に忠実なミニバンそのものといえる。2列目シートの位置付けこそ、同じ大排気量ミニバンであるグランドボイジャーとアルファードの大きな違いだ。

ミニバン本来の姿であるマルチユースな生活車なのか、乗員重視の大きな高級車なのか。マルチユース生活車を求めるのであれば、グランドボイジャーのある種安っぽい内装も許せるはずだが、500万円も出して買う高級車を求めるのであればちょっと辛い。たっぷり荷物を載せたり、2列目を畳んで1列目と3列目で広い室内空間を利用するのであればグランドボイジャーが最高だが(事実上、日本ではこのクルマ以外に選択肢はない)、人に立派なクルマですねえと誉められたいならアルファードがいい。そこで考えるのは、日本でこそ高級車クラスの価格となるグランドボイジャーだが、アメリカでは日本のヴォクシー/ノアクラスに相当するミニバンのはずということ。であれば豪華さよりも実用性を問われるのも納得できるところだ。

「ミニバン」は日本で独自の乗り物になりつつある

いずれにしても、重要なのは日本車ではまったくできないシートアレンジができるということ。この一点を評価する人にとって、グランドボイジャーは大変貴重なクルマだろう。年間1000台程度という目標販売台数は、アルファード(ヴェルファイアを含む)の月間目標6000台、初期1ヶ月でその6倍にあたる3万6000台を受注という数字に比べてあまりに少数派だが、ぜひそれを売り切り、日本でもこういうニーズが一応存在しているということを示して欲しいと思う。願わくば日本車にも一台でいいからこういうシートアレンジのできるミニバンが存在して欲しいものだ。マーケティングは非情で、そんなことは許さないのだろうけど、少数の声にも耳を傾ける姿勢こそ、新しいアイデアのタネになると思う。

日本のミニバンはこのブームの中で、実に日本的な進化を遂げている。かつて4ドアハードトップというものが日本独自のクルマとして存在したように、日本のミニバンももはや日本独自の乗り物になりつつあるのではないか。元祖ミニバンのグランドボイジャーに乗ると、そんなことも考えてしまう。とはいえ、日本でもホームセンターはたくさんあるし、ミニバン一台をマイカーとするなら、荷物がたくさん載った方が便利だと思うのだが。まあ、日本人でDo It Yourselfな人は、軽トラという日本独自の素晴らしいクルマを買ったりするのかもしれない。

試乗車スペック
クライスラー グランドボイジャー ツーリング
(3.8リッターV6・6AT・460万9500円)

●初年度登録:2008年5月●形式:ABA-RT38 ●全長5145mm×全幅2005mm×全高1755mm ●ホイールベース:3080mm ●最小回転半径:6.0m ●車重(車検証記載値):2050kg( 1140+910 ) ※ カタログ数値は2030kg ●乗車定員:7名●エンジン型式:8 ● 3778cc・V型6気筒・OHV・2バルブ・横置 ●ボア×ストローク:96.0×87.0mm ●圧縮比:9.7 ● 193ps(142kW)/ 5200rpm、31.1kgm (305Nm)/ 4000rpm ●バルブ駆動:プッシュロッド ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/75L ●10・15モード燃費:6.8km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット(コイル)/後 アクスルビーム(コイル) ●タイヤ:225/65R16 (Yokohama Aspec ) ●試乗車価格:460万9500円( 含むオプション:-)●試乗距離:約120km ●試乗日:2008年6月 ●車両協力:中京・愛知クライスラー株式会社

 
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