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レクサス GS350 “Fスポーツ”新車試乗記(第656回)

Lexus GS350 “F Sport”

(3.5リッターV6・6AT・680万円)

日本逆上陸から6年。
ついにここまで来た、
新世代レクサスに試乗!

2012年03月16日

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キャラクター&開発コンセプト

新世代レクサスの先陣を切る4代目GS


新型レクサス GS

2012年1月26日に発売された新型「レクサス GS」は、1993年に登場した初代GS(日本名アリスト)から数えて4代目。レクサスが2005年に開業した国内においては、今回が最初のフルモデルチェンジになる。「LS」と「IS」の中間に位置するミディアムクラスセダンということで、ライバルはメルセデス・ベンツ Eクラス、BMW 5シリーズ、アウディ A6など。

新型の使命は『LEXUSの新たなステージを切り開く』というもので、今後のレクサスを予告するようなクルマづくりが特徴。デザイン面ではレクサスで今後採用される新型フェイス「スピンドルグリル」を採用。走行性能については新開発の後輪操舵システム「DRS」を含む「LDH(レクサス ダイナミック ハンドリング システム)」をスポーティバージョンの「F スポーツ」に採用し、「感性に響く楽しい走り」を追求したという。

 

東京モーターショー2011にて。手前が新型GS450h、奥がGS250

また、先代にはなかった2.5リッターV6搭載モデルの「GS250」を新設定したほか、ハイブリッドの「GS450h」(3月19日発売)ではJC08モード燃費を先代450h比で約40%向上させ、18.2km/L(10・15モード燃費は20.5km/L)とするなど環境性能も強化。その他、量販車で世界最大という12.3インチ高精細ワイドディスプレイ、第2世代リモートタッチといったIT系装備の進化も見どころ。

生産はトヨタ自動車の田原工場(愛知県田原市)で、販売はもちろん全国のレクサス店。販売目標は月間600台だが、受注自体は発売後一ヶ月で10倍の約6000台に達している。

■外部リンク
・トヨタ自動車>プレスリリース>新型GSを発売(2012年1月26日)
・トヨタ自動車>プレスリリース>GS 受注状況について(2012年2月28日)

■過去のモーターデイズ新車試乗記
・レクサス GS430 (2005年9月更新)
・レクサス GS450h (2006年4月更新)

価格帯&グレード展開

「250」が510万円~、「350」が580万円~、「450h」が700万円~

パワートレインは2.5リッターV6、3.5リッターV6、3.5リッターV6+モーターの3種類。価格は「250」が510万円からで、「350」はその70万円高(Fスポーツのみ90万円高)。350のAWD仕様がさらに40万円高(FスポーツのAWDは20万円高)。そしてハイブリッドの「450h」が350の120万円高。目玉のFスポーツは全グレードに設定されている。


LEDヘッドライトはGS350とGS250の場合、オプション

■GS250
【2.5リッターV6「4GR-FSE」(215ps・26.5kgm)】
・ベースグレード:510万円(2WD)
・“I package”:550万円(2WD)
・“F SPORT”:590万円(2WD)
・“version L”:600万円(2WD)

 

ヘッドアップディスプレイは8万4000円のオプション。試乗中はほとんど見なかったが

■GS350
【3.5リッターV6「2GR-FSE」(318ps・38.7kgm)】
・ベースグレード:580万円(2WD)/620万円(AWD)
・“I package”:620万円(2WD)/660万円(AWD)
・“F SPORT”:680万円(2WD)/700万円(AWD) ※今回の試乗車
・“version L”:670万円(2WD)/710万円(AWD)

■GS450h
【3.5リッターV6「2GR-FXE」(295ps・36.3kgm)+モーター(200ps・28.0kgm) ※システム出力:348ps】
・ベースグレード:700万円(2WD)
・“I package”:740万円(2WD)
・“F SPORT”:800万円(2WD)
・“version L”:790万円(2WD)

パッケージング&スタイル

新世代を象徴する「スピンドルグリル」

デザイン面で何と言っても目を引くのは、フロントの「スピンドルグリル」。スピンドルとは糸をつむぐための「紡錘」のことで、レクサスでは逆台形のアッパーグリルと台形のロアグリルを組み合わせたグリル形状を指す。トヨタは新型GSから始まるとしているが、実はすでにCT200hでそれらしきフロントフェイスが控えめに採用されている。

 

ボディカラーは全11色。写真はその名も単に「ブラック」と呼ばれる漆黒で、洗車しがいがある

いずれにしても、これとエッジ立ちまくりのフロントバンパーとが相まって、第一印象はかなりアグレッシブ。Eクラス、5シリーズ、A6あたりが控えめな路線にシフトしている今、少々トレンドに逆行している感はあるが、それゆえ独自性はあり、押し出しも強い。これまでのレクサスにあった、仕上げは確かだが線は細い、といった印象から、大きく踏み出している。

先代と大差ない大きさ。小回りは得意

ボディサイズ(先代比)は全長4850mm(同)×全幅1840mm(+20)×全高1455mm(+30)。トレッドはフロントで+40mm、リアで+50mmも拡大され、特にこのFスポーツでは19インチアルミホイールと超偏平タイヤのおかげで、より精悍に見える。

とはいえ、ボディの大きさはミディアムクラスセダンのほぼど真ん中か、少し小さいくらい。クラウンより45mmワイドな1840mmの全幅も、トヨタによれば多くの百貨店や立体駐車場に対応できるサイズだという。特筆すべきは最小回転半径が5.3メートル、後輪操舵付のFスポーツでは5.1メートルに抑えられたこと。取回しで意外と困らないのはこのため。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
トヨタ クラウン
アスリート
4870 1795 1470 2850 5.2
レクサス 先代GS 4850 1820 1425 2850 5.2
レクサス
新型GS350
4850 1840 1455 2850 5.1~5.3
メルセデス・ベンツ
Eクラス(W212型)
4870 1855 1455 2875 5.3
BMW 5シリーズ
(F10型)
4910 1860 1475 2970 5.5
アウディ A6
(C7型)
4930 1875 1465 2910 5.7
トヨタ クラウン
マジェスタ
4995 1810 1480 2925 5.3

インテリア&ラゲッジスペース

新しさ、独自性、高級感を両立


ダッシュ上部に張られるのはステッチ入りのソフトレザー(合皮)

水平基調のダッシュボード、量販車で世界最大という12.3インチのワイドディスプレイ、第2世代になった改良型リモートタッチ、レクサス初のアナログクロック(自発光式の指針とアルミ製文字盤を持つ)、ドライブモード選択ダイアル(ドライブモードセレクト)などなど、新しさが感じられるインパネまわり。中でもパーキングブレーキを電動・自動化しただけでなく、手動スイッチを目につきにくいところ(ステアリング左下)に追いやったのは、とても画期的だと思う。

 

パーキングブレーキはほぼ完全に自動化。リモートタッチも新型になった

試乗車はレーダークルーズコントロールやヘッドアップディスプレイなど、装備を満載した仕様。これだけ多機能だとスイッチも多いが、使用頻度の高いものは使いやすい位置に、あまり使わないものは目につかない場所に、という具合にレイアウトや表示はよく整理されている。

 

前席ニーエアバッグ(運転席&助手席)は全車標準

また高級感も十分。試乗したFスポーツは独特のヘアライン入りアルミパネルを備えるほか、Fスポーツ専用色であるガーネットのレザーシートが派手過ぎず、普通過ぎず、いい感じ。工作の良さだけでなく、レクサス独自のテイストが感じられる。

 

後席サイドエアバッグ(グレードによって標準装備もしくはオプション)を含めて、エアバッグは最大10個

ホイールベースは先代と同じだが、全高は30mmほど高くなり、ヘッドクリアランスは前席で+約30mm、後席で+約25mm拡大されるなど、居住性を改善。パッケージングに劇的な変化はないが、広さだけでなく、座り心地(シートを新開発)、乗降性(ドア開口部の拡大)、高級感なども正常進化している。実用セダンとして考えれば、Eクラスや5シリーズ、A6同様に、これで何の不足もないはず。

荷室容量は大幅アップでクラス最大級に


トランクスルーはアームレスト部分の貫通のみで、背もたれは倒れない

トランク容量は530リッター(床上)/566リッター(パンク修理キット選択時の床下収納を含む)。このクラスのFRセダンでは500リッター前後が一般的なので、「クラストップ」の言葉に誇張はない。先代は430リッターだったので、100リッター以上アップしたことになる。

またハイブリッドのGS450hでは駆動用バッテリーの2段積みによって、先代比で約1.5倍の465リッター(床上)/482リッター(床下含む)を確保。先代は300リッターで、ゴルフバッグも2個までだったが、新型はGSハイブリッドの悲願であったゴルフバック4個積みを可能にしている。

 

パンク修理キットに代えて、無償でアルミホイール付のテンパースペアタイヤも選択可能

電動トランクリッドもオプションで選択可能。ただし他のトヨタ製高級セダン同様、鍵が開いていても、スマートキーを携帯していなければ直接トランクにアクセスすることは出来ない。これは主に防犯のためだと思われるが、慣れていないと面倒に感じられる。トランクを開ける方法は、スマートキーを携帯してトランクリッド裏のボタンを押す、スマートキーのボタンを押す、運転席にあるオープナーボタンを押す、の3通り。

基本性能&ドライブフィール

エコ、ノーマル、スポーツS、スポーツS+の四変化


D-4S搭載のおなじみ「2GR-FSE」。これは樹脂製エンジンカバーを外したところ

試乗したのは350の「Fスポーツ」(2WD)。エンジンは改良型の3.5リッターV6直噴「2GR-FSE」で、最高出力は234kW(318ps)、最大トルクは380Nm (38.7kgm)。この諸元は先代(315ps、38.4kgm)と大差なく、トランスミッションも先代と同じ6速ATの改良型になる。

 

スバルのSI-DRIVEと同じ操作感のドライブモードセレクト。ただしS♯は、S+(プラス)になる

4段階ある「ドライブモードセレクト」から、まずは燃費優先のエコモードを選択。その場合、エンジンの力感は「2.5リッター並かな」といったところだが、今時のエコカーにも通じる平穏な走りで、これはこれで今風では。それでもアクセルを床まで踏み込めば、パワーウエイトレシオ:約5.3kg/ps(1690kg/318ps)の加速を見せてくれる。

こんな具合に、エコモードに入れっぱなしでも全く困らないが、GS350の性能をよく味わうなら、ダイアルを上から押して「ノーマル」モードを選択すべし。アクセルをやんわり踏むだけならエコモードと大差ないが、深く踏み込めば、これぞ3.5リッター。50を期待すれば50を、100を期待すれば100を返してくれる。なるほど確かにこれが「ノーマル」だ、という感じ。

 

「スポーツ S」選択時

そしてダイアルを右に回せば、「スポーツ S」。メーター背景が赤く染まると共に、スロットルレスポンスが鋭くなり、パワー感もぐっと増す。回転上昇は一気に速くなり、切れ味も十分。吸気系に採用されたサウンドジェネレーターや重低音を響かせるサウンドマフラーの効果もあって、音もV6としては最高レベル。大排気量V8のような怒涛のパワー感はないが、その分だけ気楽に絶頂感が味わえる。また、この「スポーツ S」ではパドル操作によるシフトダウンで遠慮なくブリッピングを行い、回転合わせもしてくれる。このあたりはIS Fの世界をV6エンジンで実現した、みたいな感じ。

しかしどうせスポーツを選ぶなら、さらにもう一回ダイアルを回して「スポーツ S+(プラス)」を選びたい。エンジン特性は「スポーツ S」のままのようだが、+ではステアリングの操舵レスポンスが鋭さを増すなど、シャシー制御もスポーツ方向に変身する。

ある時はクイックに、またある時は安定方向に


「スポーツ S +」選択時。上のイラストにステアリングとダンパーが加わっているのに注目

パワートレインの話が先行したが、このFスポーツで最も印象的なのが鋭いステアリングレスポンス。ドライブモードに関係なく、最初の一切りはドキッとするほどクイック。中でも「スポーツ S+」モード時のハンドリングは、研ぎ澄まされたようにダイレクトで、不用意なステアリング操作は慎むよう、自分に言い聞かせる必要がある。

これは言うまでもなく、ステアリングギア比を可変するVGRS(バリアブル ギアレシオ ステアリング)や後輪操舵の「DRS(ダイナミック リア ステアリング)」、電子制御ダンパーのAVS(アダプティブ バリアブル サスペンション)、エンジン制御、ブレーキ制御などを統合制御する「LDH(レクサス ダイナミック ハンドリング システム)」のおかげ。中でも一番効いていそうなのがDRSで、後輪を最大+-2度ステアしてくれる。

 

フロントブレーキは18インチ2ピースローターや高摩擦パッドを採用。ハブ取付部のハット部はアルミ化されている。ブレーキダストは多め

ちょっとした「危うさ」すら快感?の「スポーツ S+」だが、実は電子制御に守られている、という安心感も伝わってくる。裏を返せば、ここまで反応をクイックに出来たのも、いざとなれば各種制御を安定方向にも使えるからでは。その証拠に、かなりクイックな動きを与えても、その後に余分な動きやゆり戻しは発生しない。またプリクラッシュセーフティシステム装着車(全車オプション)では、危険回避制御にもVGRSや後輪操舵が動員されるという。

サスペンションはかなり引き締まっていて、タイヤもフロントが235/40R19、リアが265/35R19の超偏平サイズ。見た目はパツンパツンだが、乗り心地は大雑把に言えばクラウンアスリート並で、特に問題なし。むしろ心配なのはキャッツアイや縁石にリムが当たらないか、ということ。いちおうタイヤにリムガードは付いているが。

電子制御に身を任せて

こんなわけで、「スポーツ S+」モードを選択し、V6の高回転サウンドを聞きながらワインディングを走るのは、なかなか刺激的。一方でIS Fほどのパワーはなく、ヒヤヒヤしないで済むのは安心材料。正直言って舗装の荒れたところでは「スポーツ S+」ではなく、一つ戻した「スポーツ S」の方が安心して走れた。

ただ現行LS460がマイナーチェンジした時(2009年)に追加設定された「バージョンSZ」のように、リアタイヤを打ち負かすほどのトルクはなく、またATがLS460のような8速ではなく、6速であるせいか、シフトダウンを拒まれる(パワーバンドから外れてしまう)ことも多かった。つまり古典的にトラクションをグイグイかけて走るのではなく、電子制御されたシャシー性能に身を任せてコーナーを抜ける、という走り方の方が都合がいい。このあたり、メカ的にはぜんぜん違うが、方向性としてはCT200hに少し似ていると思えた。

 

100km/h巡航は6速トップで約1700回転。そこからの全開加速は、大排気量V8や最近の過給器付V6にトルクの細さで一歩譲るが、このデッドスムーズな加速感こそレクサスらしい、と言えばらしいかも。高速域での走行安定性は、ワインディングでのクイックな動きからすれば意外なほど高いが、ライバルとなるドイツ勢のようなドッシリとした重厚感には欠ける。それがレクサスらしいと言えば、やはりらしい。ただIS Fで感じたような細かいピッチングはなく、基本的には快適志向。確かに「グランドツーリング セダン(GS)」。

試乗燃費は7.0~8.8km/L

今回はトータルで約390kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道や高速道路を日常的に使った区間(約130km)が7.0km/L。いつもの一般道と高速道路を走った区間(約90km)が7.2km/L。一般道を渋滞の中、エコモードで大人しく走った区間(約30km)が7.8km/L。さらに郊外の空いた道路を大人しく走った区間(約30km)が8.8km/Lだった。

 

一般道を大人しく試乗中の燃費モニター。こんな感じを維持すれば8km/L台も可能

なお、10・15モード燃費は10.0km/Lで、JC08モード燃費は9.8km/L。指定燃料はプレミアムで、タンク容量は66リッターと大きい。 ガソリンが再び高騰する今、満タンにしたら(約59リッターを給油)、9500円が飛んでしまった。

ここがイイ

サイズ、走り、快適装備。特に後輪操舵システム

「クルマ」としての基本的なハードウェアすべて。のんびり走る時も、その気になった時も、ロングクルーズも、チョイ乗りも、どんなシーンでもマルチにこなせて、どんなシーンでもその性能に不足なし。この排気量にして燃費も悪くないし、いわゆるハイテク装備はテンコ盛り。もちろん快適装備もテンコ盛り。ボディサイズは大きすぎないので使いやすいし、トランクも広くなった。

素早いステアリング操作には超クイックに反応するが、普通に乗ればまったく違和感のない後輪操舵システム。いわゆる4輪操舵システムは昔からホンダ・プレリュードの4WSとか、日産のHICASとかで実用化されてきたが、ここに来て各種の電子制御システムとの組み合わせが可能になり、再び陽の目を見た、というところか。小回りは効くし、操縦安定性にも効くということならば、このクラスでやらない手はない。また交差点などで思った以上にインに切れ込んだり、駐車時に動きが意図とずれたりしないのもいい。

細かいことを言えばオプションのステアリングヒーターがよかった。欧州車には昔からあるものだが、国産車で、しかも寒い時期に試せたのは今回が初めてかも。ステアリングリムの右側(2時~3時くらい)と左側(9時~10時くらい)を電熱でほんのり温めてくれる。こういう優しい装備は高級車ならずとも装備してもらいたいと思う。

ここがダメ

6速のままのAT、アイドリングストップの不備、操作性に不満が残るIT装備

強いて言えば、ATを8速化せず、先代の6速をキャリーオーバーしたこと。トルコンATでも7速や8速がスタンダードになりつつある今(BMWは1シリーズですら8速ATだ)、6速という段数は少々物足りない。実際のところもステップ比が大きいため、思ったようにシフトダウンできないことがままあった。

アイドリングストップ機能がポルシェのパナメーラのような高級車にまで普及しつつある今、それを新型GSが純ガソリン車で採用しなかったことは、「今回は見送った」という印象を受ける。既存パワートレインに組み込むのが難しかったのかもしれないし、それほど燃費メリットはない、という判断かもしれないが、できれば採用して欲しかった。嫌ならオフにすればいいわけだし。

 

量販車で世界最大という12.3インチの巨大ディスプレイは素晴らしく見やすい位置にある。まるでトラックポイントのようなリモートタッチも使いやすい(右ハンドルは左手での操作になるので、ちょっとやりにくいが)。と、本来なら「ここがイイ」に入れるべき装備だが、当然ながらスマホやタブレットPCのようなフリック操作はできず、素晴らしい画質の地デジは走行中に映らず、もちろんインターネットにもつながっていない。試乗中、初代iPadをカップホルダーに立てかけて置いていたが、これの方が地図を見るのにも場所を探すのにも、圧倒的に使いやすかった。クルマの世界で最先端かつ超高額な装備が、数万円のデジタルガジェットに負けてしまう現実をそろそろメーカーも直視すべき時ではないだろうか。多くのレクサスユーザーは様々なIT装備やサービスもほとんど使っていないようだし。レクサススマートGリンクでできることも、メンテ時期などの車両情報やセキュリティ、そして一部の車両設定程度で物足りない。

 

なお、降車時には乗降性を高めるため、運転席シートが後ろにスライドするのだが、小柄な人の場合はデフォルト設定だと乗車時にブレーキを踏めないほどスライドしてしまう。試乗中に最も気になったことだが、これも実はナビ画面から、スライドのオンオフやスライド量の設定を変更できるほか、レクサススマートGリンクというオーナー用スマホ向けテレマティックサービスを使って、スマホからでも簡単に設定変更できる(写真参照)。

総合評価

いい意味で二面性がある

このクルマはいいなあ、としみじみ思う。今回はハイブリッドの450hではなく、350での試乗だったわけだが、ガソリン車のハードウェアとしては、ほとんど満点をつけていいだろう。名古屋なら中古のマンションだって買えそうな価格なのだから、それも当然なのだが、クルマにあれこれ文句ばかりつける人には、このクルマを買って満足せよ、と言っておきたいw。

試乗車はFスポーツだったこともあって、ごくスポーティにも、ごく快適にも走れる二面性を備える。こういうところが最近のクルマのいいところだ。走りだけを純粋に楽しむのであれば、たぶん86あたりの方がプリミティブで楽しいだろう。でも86ではここまでの高級感や快適性は味わえない。GSはその二面性を持つため、86の2倍の価格であっても別にかまわないのじゃないか。

 

むろん、室内の豪華さ、広さ、装備の良さは、86とは比較にならない。4人がゆったり乗れるから、スポーツカーとセダンの2台持ちをしなくてもよく、維持費は一台分で済むという点では、割安とも言える。多くの立体駐車場に収まるサイズもありがたいし、街中でもこれくらいなら大きくは感じない。実際に小回りもきくし。LSでちょっとコンビニまで、という使い方は無理っぽいが、GSならそういったことも気にせずできそうだ。高級感に加えてカジュアル感もあるので、この点でもGSには二面性がある。

プレミアムブランド力の確立は容易ではない

スポーティ車として、実用車として申し分ないのだが、さて課題は肝心カナメのプレミアム感だろう。明治維新以降の舶来崇拝がいまだ幅を効かせる日本では、製品の善し悪しではなく舶来モノであることへの執着は根強く残っている。ことに高級車に関しては、ほとんど信仰にも近い感覚が残っており、「レクサスのおもてなし」をいくらされても、その信仰は簡単には揺らがない。実際に話を聞くと、ディーラーの現場も苦労しているようだ。レクサスのもてなし感を体現しているのが例えばパワーウインドウ。サーッと上がって、閉まる少し前に速度が落ちて、しっとり閉まり切るという、和のテイストが演出されている。それは確かに素晴らしいのだが、いわゆる輸入車好きの心にはたぶん響かないだろう。

レクサスなら、豪華な店舗で教育の行き届いたスタッフから、購入時もメンテ時も、輸入車ディーラーよりタップリとおもてなしをされるわけだが、それより街中で常に他人から見られる「輸入車に乗っているという優越感」の方が価値があるということか。割高感のある輸入車の価格ですらが、高い=高級=優越ということになるのかもしれない。もうすぐ日本開業から7年になるレクサスも、残念ながらそこを崩せていない。逆にHS250hなどという売れる「大衆車」クラスが加わったことで、子供がレクサス店内を走りまわるなどという光景すら出現しているわけで、高級感の演出と経営とのバランスはなかなか難しい状況になっている。そして新型GSがそれを変えるとまでは言えない。

 

GSのスピンドルグリルはトヨタの祖、豊田佐吉が自動織機を作った時に使われた糸巻きの形をリスペクトしており、トヨタは歴史ある会社、長い伝統を持っている会社であることを象徴するものだ。すでにこの迫力グリルには欧州の高速道路でレーンを譲られる効果があることが「実証」されているらしいが、それ以上のイメージ向上効果は、今後に期待するしかない。ことに日本市場では、プレミアムブランド力がわずか7年で確立できるほど甘くないことは確かで、そこがレクサスにとっての正念場。ハイブリッドモデルでは特別なプレミアム感をかなり確立しつつあるように思うが、ガソリン車の場合は容易ではないだろう。

道路は出来たが、意識は変わらず

新東名がまもなく開通する。トヨタとしては本来、GSならそこを150km/hで安全かつ快適に走って、豊田市から東京までわずか2時間で行ける、と華々しく高性能とプレミアム感を訴えたいはず。おそらく20年前のトヨタは、20年後の日本でそう言えることを想像してクルマを開発していたと思う。しかし今、そんなクルマはできたものの、インフラや社会環境(社会意識?)は整っていない。設計速度140km/hの道は完成したのだが、50年以上前の速度規制は結局変わらないまま。GSは50年前のクルマに比べたら、とんでもない進化を遂げているが、世の中の意識は何も変わっていない。GSという素晴らしいクルマにとっては、そしてトヨタにとっては不幸というしかない。

 

となれば、走るところのない高性能な高級車は、よりプレミアムな「雰囲気を楽しむ」ためのクルマとなるしかないだろう。例えばレクサスには、よりプレミアムなボディスタイル、つまり「ワゴン」が必要だ。メルセデス Eクラス ステーションワゴンが、アウディ A6 アバントが圧倒的な人気を得ている中、素晴らしい出来のGSにワゴンがあれば、プレミアム度は、そして人気は一気に高まると思う。まあそうなるとグランドツーリングセダン(GS)ではなく、GWという車名としなくてはならないがw。レクサスには今こそワゴンが必要だと、GSに乗ってより強く思った次第。

試乗車スペック
レクサス GS350 “F スポーツ”
(3.5リッターV6・6AT・680万円)

●初年度登録:2012年1月●形式:DBA-GRL10-BETQH ●全長4850mm×全幅1840mm×全高1455mm ●ホイールベース:2850mm ●最小回転半径:5.1m ※LDH装着車。非装着車は5.3メートル ●車重(車検証記載値):1690kg(890+800) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:2GR-FSE ●排気量・エンジン種類:3456cc・V型6気筒DOHC・4バルブ・直噴・縦置 ●ボア×ストローク:94.0×83.0mm ●圧縮比:11.8 ●最高出力:234kW(318ps)/6400rpm ●最大トルク:380Nm (38.7kgm)/4800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/66L ●10・15モード燃費:10.0km/L ●JC08モード燃費:9.8km/L

●駆動方式:FR(後輪駆動) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン+コイル/後 マルチリンク+コイル ●タイヤ:前 235/40R19 / 後 265/35R19(Dunlop SP Sport MAXX 050) ●試乗車価格:781万5350円  ※オプション:プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール+レーンキーピングアシスト 35万7000円、後席サイドエアバッグ 2万1000円、LEDヘッドランプ+ヘッドランプクリーナー 15万2250円、クリアランスソナー 5万2500円、ヘッドアップディスプレイ 8万4000円、ステアリングヒーター 1万0500円、マークレビンソン プレミアムサウンド サラウンドシステム 28万0350円、パワートランクリッド 5万7750円、応急用スペアタイヤ -円(無償) ●ボディカラー:ブラック ●試乗距離:約390km ●試乗日:2012年3月 ●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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