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トヨタ ハリアー ハイブリッド “Lパッケージ”新車試乗記(第363回)

Toyota Harrier Hybrid

(3.3リッターV6+2モーター・441万円)

2005年04月23日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ハイブリッド兄弟

2005年3月に同時発売されたハリアーとクルーガー両ハイブリッドはいわゆる兄弟車。シャシーやパワートレインを共有し、出力や燃費といった性能面の諸元もまったく同じだ。なので、概要は前々回のクルーガーハイブリッドの記事をご覧いただきたい。

さて、トヨタではハリアーハイブリッドを「高級と洗練」、クルーガーハイブリッドを「スポーティと精悍」と色分けしている。具体的にはまず外観デザインの違いだが、中身についてはハリアーハイブリッドが5人乗り、クルーガーハイブリッドが3列シートの7人乗りとなる。内装はハリアーの方がクルーガーより凝っていて、遮音対策もハリアーでは徹底されているという。

日本では非レクサス?

もう一つ大きな違いは、米国でハリアーハイブリッドは「レクサスRXハイブリッド」、クルーガーハイブリッドは「トヨタ・ハイランダーハイブリッド」となる点だ。電気式4WD「E-Four」のみのレクサスRXハイブリッドに対して、後輪モーターのない前輪駆動版を用意するなど、ハイランダーハイブリッドにはハイブリッドの普及版としての役回りが与えられている。ただし、8月から日本で始まるレクサス店に、現行ハリアーが並ぶ予定は今のところない。

価格帯&グレード展開

価格差は少ないが、内容は

日本では上下関係が明確ではないハリアーとクルーガー。価格でもハリアーハイブリッドが409万5000円~462万円、クルーガーハイブリッドが399万~436万8000円と標準グレードなら10万円、最高グレードでも26万円しか違わない。

しかし、ハリアーハイブリッドにはサードシートがないので、実際の価格差はもっと大きい。その差額を使って、ハリアーハイブリッドは遮音性の高い中間層のある高遮音性ガラスや、スマートキー、プッシュボタンスタートシステムを装備。遮音材も追加される。本革シート付きの最上級グレード「プレミアムSパッケージ」もハリアーだけの設定だ。

パッケージング&スタイル

ハイブリッドらしい未来的デザイン

ボディサイズは全長4755mm×全幅1845mm×全高1690mm。普通のハリアーとの違いはバンパーやアルミホイールのデザインなどわずかで、バッジを見ないと判別は難しい。写真のハイブリッド専用カラー「ライトブラウン・マイカメタリック」も、注目を集めるほど個性的な色ではないし。

それでも、無音で走るせいか、通りすがりの歩行者にじっと見られることが何度かあった。最初からハイブリッド化を見据えたような未来的デザインだった、とも言える。

レクサスクオリティ

クルーガーより質感が高く感じられるインテリア。全体の仕上げだけでなく、始動時のプッシュボタン(ハイブリッドでは「パワースイッチ」と呼ばれる)やスマートキーが嬉しい。バネ仕掛けなのに、開けるのも閉めるのもボタンを押すだけの小物入れも面白い。

機能性は普通のハリアー

バッテリーをリアシートの真下に配置したことでヒップポイントは2cm上がったらしいが、機能性や居住性は普通のハリアーと何ら変わらない。つまり中型高級セダン並みに豪華で、それよりずっと快適だ。ハイブリッド化によって犠牲になった部分は見当たらない。

荷室はクルーガーがサードシートを入れるくらいだから広大だ。床下には収納スペースが設けられている。作りは丁寧だし、リアゲートは電動で開閉可能。荷室もレクサスクオリティだ。

基本性能&ドライブフィール

レクサスらしく静か

試乗車は中間グレードの“Lパッケージ”。前々回のクルーガーハイブリッド(G パッケージ)とのスペック上の違いは、まず車重が車検証数値で40kgほど重い(前軸で+30kg、後軸で+10kg)、タイヤが225/60R17から235/55R18とワンサイズ上がって偏平になった、ことくらい。装備の増加はあったとしても、後席を省いて40kg増えたのは、遮音材を奮発したからだろう。一般に遮音/制振材は重いものの方が効果が出やすい。

ということで、ハリアーの方が静かなのは乗り比べればすぐに分かる。クルーガーの場合、加速時の粗いエンジン音がハイブリッドの未来感を薄めていたが、ハリアーの場合はノイズがちゃんと濾過されていて気にならない。

80→100km/hの加速が素晴らしい

加速感は日産のVQ35DE並み。1970kgの車重はかなりのヘビー級だが、それをものともせず軽々と加速する。特に、パワーメーターの針が200kWの最大値めがけてグーンと上がる80km/hから100km/hの加速が気持ちいい。乾いた路面でも加速中に前輪片側がホイールスピンするところも、クルーガーハイブリッドと同じだ。これについては、単にタイヤのグリップが低いせいか、モーター出力の特性か、VDIMが多少ホイールスピンを許す設定なのか、開発スタッフに理由を聞いてみたいところだ。

ワインディングも楽しい

試乗車は18インチタイヤを装備しながら、スポーツサスが付かない"Lパッケージ"。姿勢変化が大きい割に素直な操縦性はクルーガーと共通。タイヤが同じマッド&スノーでもワンサイズ大きいせいか、コーナリングスピードは予想以上に速い。多少オーバースピード気味でも、ステアリングを切った方向にグイグイ曲がってゆくし、VDIMの制御も走りに水をささない。リアのスリップアングルがズズッと増すような走り方も可能だ。最上級グレードの"プレミアムSパッケージ"が履く同サイズのPotenza RE031なら、さらに踏ん張りが効くと思われる。

エコランなら12km/Lも可能

100~115km/hにクルーズコントロールをセットして巡航した時の燃費は、燃費計で約11.6km/Lを達成(1名乗車、エアコンON)。クルーズコントロールをフルに使うという条件で、東名くらいのアップダウンなら10km/Lを割ることはないはずだ。また、この速度域だとサスペンションの固さがちょうどよく、文句なしに快適。静粛性も高いので、音から来る疲労も少ない。室内が広い分、同乗者にとっての快適性は(コーナーやうねりが少ない道なら)高級大型セダンと競るだろう。

いつもの通勤路(片道30kmの一般道、深夜で40分ほど)で余分な加速を控えて走ったら12km/Lを達成。これはすごい。問題は、いい気になってアクセルを踏んでしまうと途端に7km/L台まで落ちてしまうこと。「いつもアクセル全開!」なイタリアンな人だと、飛び抜けて良い燃費は望めない。昼間の市街地なら10km/L前後が我慢なしで走れる現実的な線と感じた。

最高速は速度計を振り切ってリミッターが緩やかに効くところ。米国トヨタのホームページで見つけたハイランダーハイブリッドの最高速度(メーカー発表値)もリミッター作動時の112mph(180km/h)だった。次期GSのハイブリッド(GS450h)も含めて、欧州仕様の最高速をどこで線引きするかは、ちょっと興味があるところ。一般的に欧州の高性能車(一部のスポーツカーを除く)は250km/hでリミッターが作動する。

ここがイイ

クルーガーハイブリッドと比べると、まず何といってもスタイリングがいい。街に氾濫しているハリアーだが、改めて見直してみるとスタイリッシュなデザインは秀逸。ハイリフトされたシャープなスポーツモデルというのは、ホンダのHR-Vあたりもそうだが、未来的スポーツカーのスタイリングとして、一時かなり有望視されたもの。こうしたスタイリングにハイブリッドのパワートレインはイメージが見事に一致している。最先端のパワーユニットがよく似合う先進的なハリアーのスタイリングを再評価したい。

内装の上質感もクルーガーとは大きく異なっていて、とてもいい感じ。さすが北米ではレクサスブランドで発売されるだけのことはある。フロントウィンドウガラスに高遮音性を持つ中間膜を綴じ込んだ日本初の高遮音性ガラスの採用、ドアミラー形状などを見直した風切り音の削減、ボディ細部の徹底したシール構造などで、確かに室内はクルーガーより静かに感じられる。静かゆえにかえって気になるはずのエンジン音も、もはやほとんど気にさわらない。こうした静粛性や質感の高い内装が、上級の、しかも先端のクルマに乗っていることを気持ちよく感じさせてくれる。

走りの方はクルーガーより足回りのしっかり感が高かった。試乗車はクルーガーの17インチ225/60に対し18インチ235/55サイズのタイヤ(共にM+S)をはいていたが、これが効いていると思われる。VDIMが制御するパワー感とタイヤがほぼマッチして、ワインディングでの安定感が高く、腰砕け感がない。オールシーズンタイヤでこんなに速くていいの、という走りはVDIMがもたらすものだろう。

その他、細かいことだが、カーナビの地図がかなり新しい、パワーリアゲートが便利(開くとかなり高い位置なので小柄な女性はこれがないと閉められないかも)、ウォッシャー液を出した後、ワイパーが自動で3回動いてからしばらく間をおいてもう一度自動で動くこと(すごく便利。実にかゆいところに手が届いている)、カップホルダーに置く取り外し式灰皿がイルミネーションで淡く光る、なんてあたりもよかった。

ここがダメ

形がSUVなのでオフロード性能も試してみたいものだが、Bモードにしてもエンジンブレーキはほぼ効かず、急な下り坂をゆるゆる降りるといったオフロードの基本的な走り方は不可。さらに上りの坂道ではアクセルを離すとずり下がる(オンロードでも坂道発進には注意が必要)。

それに絡んでだが、オフロードでの低速ギア、オンロードでのマニュアルモード(出来ればパドルシフト)といった疑似のギアが欲しいと思う。。THS IIはCVTとは違うだけに、簡単にはできないのかもしれないが、もしスポーツモデルを出すとなったら必要なのでは。

リアビューカメラやAFSはあるものの、レーダークルーズコントロールやサイドビューカメラ(ノーズのサイドアンダーミラーはなんとか早く無くして欲しいところ)など、価格は高くなってもいいから、さらなるハイテクの搭載を望みたい。それこそ最先端カーという付加価値を高めるものだと思う。

総合評価

クルーガーハイブリッドでひとしきり興奮した後なので、ハリアーハイブリッドには比較的冷静に試乗できた。ポルシェカイエンV8とほぼ同じという加速性能も、静かで全く暴れないだけにそれほど凄いと感じさせないし、ワインディングでもVDIMが全くムリをさせてくれないので、ハイペースで走っているにもかかわらず涼しい顔でいられる。これがいいのか悪いのかは人によって異なると思うが、ことSUVならこれで正解だろう。クルーガーの試乗時と同様に、純粋なハイブリッドスポーツモデルが待ち遠しくなったことは間違いない。

ところで先日、愛知万博会場で行われている水素・燃料電池実証プロジェクトで、燃料電池自動車へ水素を供給する「水素ステーション」を見てきた。愛知万博会場には2つの水素ステーションがあるが、一つは製鉄所のコークス炉ガスから生成されたものをタンクで運んできて置いてあるタイプ、もう一つは都市ガスを改質して取り出すのに加え、タンクで運んできたものと合わせてハイブリッド供給する国内最大級のタイプ。施設サイズ的には普通のガソリンスタンド規模のものだが、将来的にはこれを今のガソリンスタンド並にたくさん作らなくてはならないわけで、燃料電池自動車の普及はまだまだ先という感が強い。

2002年末に発売されたクルーガーの形をしたFCHV(燃料電池自動車)が万博会場にあったが、これのスペックは109ps/26.5kgm、最高速度155km/h、航続距離300㎞。性能的にはとてもクルーガーハイブリッドに及ばない。今は億の単位の車両価格らしいが、たとえ安く市販が始まったとしても、クルマ好きが楽しめるまでには、さらに時間がかかりそうだ。ハイブリッド車にしても初代プリウスからかれこれ8年ほどかかって、やっと走りが楽しいと言えるハリアーハイブリッドが出てきたのだから。

FCHVはもちろんハイブリッド車より環境に優しい、と言いたいところだが、様々な条件を検討したトヨタの試算ではそうでもないらしい。逆に、ガソリンエンジン車でも今や街中の空気よりきれいな排気ガスを出すものがあるくらいで、さらに技術が進めばハイブリッド車もまだまだ、環境性能を高めていけるだろう。気になるディーゼルとの比較でも、100㎞/h巡航ならCO2排出量はハイブリッドの方が少ないという。新車シェア50%に届かんとするトヨタ車が全てハイブリッドになれば、日本の新車のほぼ半分がハイブリッドになるわけで、環境には劇的な効果があるはず。燃料電池車の市販化と比べれば、確かにその方が現実的だ。ハイブリッド技術がトヨタの独占状況となるのは諸手をあげては喜べないが、クルマという愛すべき存在を生きのびさせてくれるのであれば、讃えないわけにはいかない。

試乗車スペック
トヨタ ハリアー ハイブリッド “Lパッケージ”
(3.3リッターV6+2モーター・441万円)

●形式:DAA-MHU38W-AWKGKL●全長4755mm×全幅1845mm×全高1690mm●ホイールベース:2715mm●車重(車検証記載値):1970kg(F:1140+R:830)●乗車定員:5名 ●エンジン型式:3MZ-FE●3310cc・V型6気筒DOHC・横置●211ps(155kW)/5600rpm、29.4kgm(288Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L●フロントモーター形式:1JM●167ps(123kW)/4500rpm、34.0kgm(333Nm)/0~1500rpm●リアモーター形式:2FM●68ps(50kW)/4610~5120rpm、13.3kgm(130Nm)/0~610rpm●電池形式:ニッケル水素●10・15モード燃費:17.8km/L●駆動方式:電気式4輪駆動●タイヤ:235/55R18(MICHELINENERGY MXV4)●価格:441万円(試乗車:480万600円※オプション:SRSサイド&カーテンシールドエアバッグ 6万3000円、G-BOOK対応DVDボイスナビ
32万7600円)●試乗距離:約300km

公式サイトhttp://toyota.jp/harrierhybrid/

 
 
 
 
 

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