キャラクター&開発コンセプト
大人のプラド、若者のサーフ
ハイラックスサーフは、海外では「4ランナー」の名でおなじみのSUV。2002年11月15日に発売された4代目は、フレームシャシー、パートタイム4WD、リジッドサス(リア)という基本構造をランドクルーザー・プラドと共有し、新車発表も10月7日にまとめて行われた。
豪華かつ本格4WDのイメージと機能を備えるプラドに対して、サーフは「スタイリッシュ&パワフル」なスタイリングと、オンロード寄りの性格が特徴。アウトドアスポーツを趣味とする若者や、そうじゃない都会派の若者にもアピールする。テレビCMにはスノーボードの映像を使い、キャッチコピーは「遊びのスケールが違う」だ。
なお、1984年デビューの初代ハイラックスサーフは、ハイラックストラックの荷台にFRPの屋根を付けた四駆駆動車としてスタート。よって当時から梯子(はしご)型フレームにリジッドサスという構造だ。
国内の5倍以上を北米で
プラドはトヨタの田原工場(愛知県)で生産されるが、サーフは従来通り日野自動車の羽村工場(東京都)で生産を行う。目標販売台数は月間2000台(プラドは2500台)。プラドは欧州、アフリカ、オーストラリア向けだが、サーフは「4ランナー」として主に北米に月間1万1000台が輸出される。つまり圧倒的に海外、というか北米の比重が高い。
価格帯&グレード展開
全車5ドア、4AT。3種類のエンジンはプラドと同じ
プラドには3ドアもあるが、サーフは全て5ドア。ただし全て4WDとなるプラドに対して、サーフには2WDモデルもある。エンジン構成はプラドと同じで、V6・3400ガソリンと、直4・2700ガソリン、直4・3000直噴ディーゼルターボの3種類。全車4ATで、マニュアル車はない。
グレードは「SSR-X」(232~312万円)と上位グレード「SSR-G」(301~340万円)の2種類。オーディオは全車オプションとなる。プラドより50万円ほど安く見えるが、それはサーフに2WDの廉価版がある一方で、プラドに本革&ウッド調内装の豪華仕様があるからだ。
アメリカにはV8仕様もあり
「SSR-X」に設定された「アメリカンバージョン」は、バンパーとフェンダーがメタル調(要するに2トーン)、アルミホイールをスチールに変更し、サイドステップ照明を省略した仕様。要するに廉価版だが、ワイルドなイメージはむしろ強い。ただし「アメリカンバージョン」とは言うものの、北米にもちゃんと同色仕様がある。なお、北米仕様は、4.0リッターV6(245ps)と4.7リッターV8(5AT)の2本立てだ。
消えたライバル
日産テラノなど、かつてのライバル車が軒並み販売終了となった今、国内に直接のライバルはいない。現実にはFFベースのライトクロカン系が競合するだろう。一方、北米ではフォード・エクスプローラーを筆頭に、シボレー・ブレイザー/トレイルブレイザー、ジープ・グランドチェロキーなどの人気車がひしめく。
パッケージング&スタイル
デザインはキープコンセプト
外観は完全にキープコンセプトで、主にアメリカ市場を意識したデザインだが、サーフ(というか4ランナー)のユーザーは劇的な変化を望んでいないということか。タイヤを強調した腰下、小さく薄いキャビン、というアメリカ人が昔から好む形だ。
外寸は全長4770mm×全幅1875mm×全高1790mm、ホイールベースは2790mm。プラド同様、ホイールベースが115mmも長くなり、その分全長も伸びた格好だ。また全幅に関しても、従来は5ナンバーサイズのボディにオーバーフェンダーでワイド感を出したが、新型はキャビンそのものが拡大されている。ずんぐりと塊感のあるプラドに対して、サーフは伸びやかでロー&ワイド。Cピラーはプラドではブラックアウトされて目立たないが、サーフでは太く強調されている。
スポーティで遊びのある内装
内装色は「ストーン(グレー系)」と「フォーン(ベージュ系)」の2種類。クオリティはプラドと同レベルのはずだが、試乗車の「ストーン」はちょっと地味だ。シート地の織り方も独特で、好みが分かれるだろう。26万5000円で本革仕様が選べる。
先代サーフの室内はまさに「乗用車っぽい」もので、その分面白さには欠けたが、新型は「6角ナット」形のメーター枠や、ユニークな形状の空調ボタンなど各パーツのデザインや仕上げに工夫がある。プラドは上質感にこだわり、サーフはスポーティさや遊びを大事にしたという感じだ。
4WDモードの切り替えはダイアル式に
新型プラドでは残された「四駆の象徴」であるレバー式副変速レバーは、サーフではダイヤル式になってインパネに配置された。何となく電子レンジのタイマーを彷彿とさせる操作感、形状だが、こちらの方が機能的で、見た目もスマートだ。ただし、ダイアルの文字をよく見ないとモードが分からないのはちょっと不便(インパネに表示は出るが)。パーキングブレーキは足踏み式に変更。センターコンソールに残る操作系はもはやシフトレバーのみだ。
もう狭い思いはさせません
後席の居住性は、プラドに比べると天地が狭い分だけゆったり感はないが、室内幅は先代比+120mm。「ボディは大きいのに、中に入ると窮屈」という、先代までの印象は新型にはもう当てはまらない。サーフの後席と言えば、スキーやキャンプの行き帰りでユサユサ揺られながら足を折り曲げて耐える、という状況を思い出す人も多いかと思うが、それも昔話だ。
伝統のリア電動ガラスは残った
リアゲートはプラドの横開きに対して、サーフは跳ね上げ式。サーフ伝統の電動リアウインドウガラスももちろん継承された。背面タイヤは今回から完全に廃止され、スタイリングに、もはや泥の匂いはない。
基本性能&ドライブフィール
スポーティなドラポジは従来通り。広々感は先代とは別モノ
試乗したのは上級グレードのSSR-Gで、3.4リッターV6ガソリンエンジン搭載モデル(317万円)。DVDナビやJBLサウンドシステムなどのオプションが付き、合計375万7000円の車両だ。
乗り込んですぐ気付くのは、サーフならではの足を前に投げ出す乗車感覚。シートが柔らかいのは、アメリカ向けだからか。上にも書いたように、従来サーフに比べて横方向に圧倒的に広くなり、FFベースのミニバンから乗り換えても狭い感じは受けないと思う。フロントウインドウの向こうに長いボンネットがスーッと前に伸びるあたりが異国育ちを感じさせる。
加速感はプラドと大差なし
先日試乗したプラドより100kgちょうど軽いものの、搭載エンジン(185ps/4800rpm、30.0kgm/3600rpm)がまったく同じゆえ、加速感もほとんど同じ。1910kgのボディを、ごく普通のセダンなみに加速させる。ドュルルルル……というV6らしい音も変わらない。踏み込むとけっこう上までシュンシュン回転を上げて、と言っても5000回転くらいだが、パワーを稼ぐ。ギアリングはほぼ一緒だが、2WDモードの最終減速比のみ0.2高く、わずかに高速型となる。
このV6は低速トルクもあって、振動も少なく、回した時もわりと静か。プラド同様、サーフもこのエンジン自体の印象が強い。逆に言えば、2.7リッターの4気筒ガソリン(3RZ-FE)や3.0リッター4気筒直噴ディーゼルターボ(1KD-FTV)では印象が大きく違うはずで、少なくともクロカンコースで乗ったこの2台のアイドリング振動やノイズは、明らかに大きかった。またディーゼルエンジンは関東・関西・中部の都市部で規制が始まっており、東京・大阪・名古屋ではすでに登録が難しくなっている。
ちなみに車載燃費計が表示した今回の試乗燃費は5.0km/Lとプラドとほとんど同じだった(満タン法による参考燃費も同じ)。レギュラー仕様でタンク容量が87リッターある点もプラドと同じだ。
1.9トンながらスポーティな操縦性(プラド比)
フレーム付きながら、大幅に剛性を上げたシャシー、前ダブルウイッシュボーン、後トレーリングリンク付きリジッドという足回りは、プラドと基本的に同じだが、操縦性はサーフの方が明らかにスポーティだ。プラドに搭載されるVSCやアクティブTRCの代わりに、サーフはマルチモード4WD(2WDとフルタイム4WDの切り替えが可能)や「X-REAS(リアス)」と呼ばれるシステム(対角線上の車輪のダンパーを、中間ユニットを挟んで連結。SSR-Gのみに装備)を採用している。サーフのシステムは、よりオンロードを意識したものだ。
この「X-リアス」がどの程度効いているかは分からなかったが、記憶の中の「TEMSをスポーツモードにしたプラド」よりもロールやピッチングは少ない。ワインディングの走りもクルマの性格を考えればなかなか軽快だ。2WDモードの1速なら、17インチのリアタイアを流すこともその気になれば可能なほど。プラドだと常に2トンの重量を意識したが、サーフだとそれほどでもない。
急速に進歩した乗り心地は
乗り心地はプラドに準ずる。つまりとても快適だが、足が締められた分、ソフトでラグジュアリーな感じは薄まっている。しかし従来モデルのように、ボディがワナワナすることも足回りからのノイズが侵入することもなく、その劇的な進化は明らかだ。あとはモノコックボディのハリアーやクルーガーなどの快適性レベルと、オフロード走破性&タフなイメージをどう天秤にかけるかだろう。プラド同様に、高速走行は快適だし、オフロードコースなら従来通りの走破性をみせる。
ここがイイ
カメラマンに最適な使い勝手
基本的な部分はプラドと同じだから、サーフならではの装備を挙げたい。まずリアハッチの電動ウィンドウ。この使い勝手の良さは使った人でないと分からないだろう。知り合いのカメラマンは旧サーフに乗っているが、機材の出し入れに便利この上ない。
リアの荷室にあるダブルデッキは、スライドさせて持ち上げると、床が二段になる仕掛け。下段に三脚類、上段にカメラを載せれば、電動ウィンドウの使い勝手はさらに高まる。カメラマンは大喜びのはず。
肘掛けをひっくり返すと小さな縁つきテーブルになるのも便利だ。撮影用のフィルムをころがしておきたいところ。リアシート前、センターコンソールにはゴミ袋を引っかけておけるホルダーがある。フィルムの空き箱(ゴミ)を放りこむのに良い。コンソールボックスの中には、AC100Vコンセントもあり(SSR-G)、デジカメの電池の充電に重宝する。
あと、サイドステップに照明があるのも、夜間は重宝した。
ここがダメ
このクルマでコーナーを攻めることはないと思うが、やはりグラリと来る感覚はオフロード四駆らしい部分。ライトクロカンと違って、この点も本格派の四駆だ。
発表会の試乗車で見た荷室ピラーの左右にあるリアサイドビューミラーは、リアの死角がバッチリ見えるアイデアものだったが、試乗車はスピーカーになっており残念。その分、ナビにバックモニターがあるのだが、アナログミラーも捨てがたい。
総合評価
カメラマンが買い換えるなら、勧めたいクルマだ。頑丈そうだし、四駆だし。プラドのようなサブシフトレバーがなく、ボタン一つで4WDになるのは、クルマは道具と考えるアウトドア撮影の多いカメラマンに歓迎されるだろう。遠くの山々へ撮影に行く道中の高速走行は快適そのものだし、フラットな荷室長は1742㎜もあるから、小柄な人なら車中泊も快適。荷室でカメラを構えてシャッターチャンスを待ち、リアのスライドウィンドウを下げて撮影というシチュエーションも可能だ。
こうなるとアイドリングでヒーターやクーラーを効かすことも多くなるので、燃費のいいディーゼルが欲しくなるが、カメラマンが多く住む都市部では自動車Nox・PM法のため購入することができない。おそらくそこが一番のネックだろう。この法自体に不満はないが、仕事によってはアイドリングせざるを得ない場面もある。高速道路のサービスエリアで仮眠するトラックもその一つだろう。ハイラックスはスキー場での仮眠に使われることも多いはず。メーカーにはエンジン停止状態でも使えるヒーターやクーラーを開発して、ぜひオプション設定して欲しいところだ。ついでにサブバッテリーも欲しい。
まあ、逆にいえばカメラマンとか、そういう類の人たちじゃなければ、あんまりこのクルマを買う意味はなくなる。フロア高は25mm下がっているものの、依然としてステップを使わないと乗り降りしにくいし、街中ではボディの大きさを持て余し気味になる。4WDモードで走らなければならないシチュエーションもそうはないし。スキーに行っても、最近はほとんど4WDの必要性を感じることはない。荒野が広がる米国でアウトドアライフをこなすなら、このクルマが必要だろう。しかし日本では…。
10年ほど前、ハイラックス・トラックでオフロード走行を楽しんだ河原も、4WDブームの中で事故が起き、入れなくなってしまった。試乗会の行われた愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」のような本格オフロードコースも全国にそう多くはなく、本格四駆の性能を生かすチャンスは少ない。オンロードのサーキット同様、性能に見合った「走れる場所の少なさ」は、四駆も同じ。それを見越してか、新型サーフにはV6、直4共に2WD(FR)が用意してある。
スポーツカーといい、本格SUVといい、クルマの性能が現実の道路状況を上回りすぎているゆえ、売れないと思う。走れるインフラを整えない限りこれらのクルマは消え去ってしまう可能性が高い。クルマ好きとしてはゆゆしき事態だ。膨大な新車開発費用や広告料金と比べれば、サーキットやオフロードコースを作り、運営することは、そんなにお金がかかる話ではないと思うので、インフラとクルマをセットで売る、なんてことをそろそろ考えてもいいのではないだろうか。クルマの性能はもう十分なところまで向上しているのだから。
現実のインフラ(と経済状況)にあったクルマは、コンパクトカーであることは明白で、これが売れるのは納得できるところ。しかし安いコンパクトカーばかりが売れても、メーカーとしてはうまみが少ないと思うのだが。
試乗車スペック
トヨタ ハイラックスサーフ SSR-G
(V6・3.4リッターガソリン・4WD・4AT)
●形式:TA-VZN215W●全長4,770mm×全幅1,875mm×全高1,790mm●ホイールベース:2,790mm●車重:1,910kg(F:1,040+R:870))●エンジン型式:5VZ-FE●3,378cc・DOHC・V型6気筒縦置き●185ps/4,800rpm、30.0kgm/3,600rpm●駆動方式:センターデフ付きパートタイム4WD●10・15モード燃費:8.3km/L●タイヤ:265/65R17(BS DUELER H/T)●価格:317万円(試乗車:375.7万円 ※オプション:ルーフレール 3万円。電動サンルーフ 9万円。DVDナビ&JBLサウンドシステム&バックモニター 38.7万円。サイド&カーテンエアバッグ 8万円)
公式サイトhttp://toyota.jp
