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ホールデン SS ユート新車試乗記(第315回)

Holden SS Ute

(5.7リッターV8・4AT・399万円)

   

2004年04月24日

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キャラクター&開発コンセプト

セダンベースのピックアップ

南半球オーストラリアのGM系メーカーであるホールデンの「ユート(Ute)」は、大型セダン「コモドア」のFRシャシーを使ったピックアップ。同じシャシーでスポーツクーペ「モナロ」、米国向け兄弟車の新型ポンティアック GTOも作られるから、それらクーペモデルのピックアップ版とも言える。ユートは豪州では50年以上にわたって親しまれているポピュラーな車種で、おそらく"Ute"とは Utility(多用途、万能)から来た名前だろう。

2001年に10年ぶりにフルモデルチェンジし、さらに2003年のマイナーチェンジでぐっとスタイリッシュなデザインを得たユートは人気急上昇。セダン譲りの快適性に加えて、高性能V8を得たことも大きく、03年には過去最高の1万7211台の販売台数を記録。豪州ではユートを使ったシリーズレースも開催されており、これも人気があるようだ。

日本に上陸したユート

今回試乗したのは、株式会社オートプレステージ(本社:愛知県)が日本に輸入して2003年11月から発売した車両。ユートのようなユニークなクルマの存在を知った同社が、国土交通省との一年余の交渉を行った末、晴れて今回の輸入販売にこぎ着けた。ホールデンの新型車の輸入がなかったのは、米国・欧州・日本の間で衝突安全基準等の互換性があると見なす合意が、豪州地域との間にはなかったからという。トヨタや三菱など日本メーカーの現地生産車が多い豪州車が基準を満たすのは当然だが、ここでもお役所仕事の壁が立ちはだかっていたようだ。

豪州「ホールデン」の歴史

1856年に馬具の製造メーカーとしてスタートしたホールデンは、1910年代にクルマやサイドカーのボディ製作を開始。1925年には早くも北米と欧州を除く地域で、最大のボディ組み立てメーカーになった。トレードマーク「丸い石を転がすライオン」の原型は1928年から使われているという。

1931 年にGM傘下になり、GM系の米国車もしくは英国車の組み立てを開始。第二次大戦後は政府の要請と保護の下で、「豪州車」の大量生産を始めた。基本設計は米国もしくは英国車のものを流用しながら、豪州独特の土地柄や好みに合わせた作りを武器に、国内トップメーカーとして成長。現在はGM系メーカー(オペル等を含む)のバッジエンジニアリング車に加えて、自社オリジナル車も生産・販売している。ある意味、オーストラリア大陸固有の動物である有袋類(コアラやカンガルー)のように、閉鎖的な市場で独自の発展を遂げたメーカーと言える。

近年好調のホールデン

2003 年度の豪州全体の自動車販売台数は約91万台。ホールデンの販売台数は17万5412台で、国内シェアは約20%、国内第2位だ(1位は18万6370台のトヨタ)。また、豪州で昨年一番売れたのはホールデンの主力セダン「コモドア」で、これは8年連続首位という。一方、同社はオセアニアや中東地域への輸出も盛んに行っている。フォード、トヨタを相手に戦うGMにとって、今や重要な戦力と言えるだろう。

ラインアップに、ドイツのオペル(ベクトラ、アストラ、ヴィータ等)、日本のスズキ(クルーズ)、いすゞ(ロデオなど)のバッジエンジニアリング車も揃える一方、独自モデルと言っていい個性的なモデルも多い。今回試乗したUTE(ユート)もその一つだ。

「セダンピックアップ」の再来

かつて米国車には「セダン・ピックアップ」というクラスが存在した。文字通りセダンに荷台を付けたもので、元祖は1957年のフォード・ランチェロ。日本車でも、かつてコロナマークⅡなどのセダンピックアップがあった。最も有名なのは59年に登場したシボレー・エルカミーノ。ベース車はフルサイズセダンもしくは中型セダン(インターミディエイト)で、マッスルカー・ブームが訪れた60年代後半には強力なV8モデルも登場。カマロ等と同じ「SS」というグレード名が与えられた。日本でもマニアの間で人気があり、70~80年代に並行輸入されたエルカミーノを見たことがある人は多いだろう。

こうした高性能モデルは70年代の排ガス規制等の影響で次第に勢いを失い、 80年代にはセダンピックアップそのものが米国では完全消滅した。一方、その系譜を海の向こうで受け継ぐのがユートであり、今回のSS ユートはエルカミーノSSの再来とも言えるものだ。

価格帯&グレード展開

日本に上陸したのは2モデル

手始めにオートプレステージが輸入販売するホールデンは、セダンピックアップのユートシリーズの2モデル。

一つは今回試乗した5.7リッターV8(333ps、47.4kgm)を積むトップグレード「SS ユート」(399万円)。コルベットと同じGM製V8エンジンに4ATもしくは6MTを組み合わせ、スポーツサスペンションや17インチアルミホイール、エアロパーツを装備する。

もう一つは、ホールデンの純正チューニング&カスタムカー部門のHSV社(ホールデン・スペシャル・ヴィークルス)が手がけた高性能モデル「HSV MALOO(マルー) R8」(603万7500円)。例えるなら、スバルにおけるSTiのようなモデルだ。SS ユートのV8をさらにチューンして387ps、52.0kg-mを達成し、0-400mをスーパーカー並みの13.5秒で駆け抜ける。足まわりやブレーキも大幅に強化される。まさに、ピックアップになったコルベットといえるモデルだ。こちらも4ATと6MTがある。

この押し出し、仕上がり、性能にして、シボレー・コルベット(692万7900円~)より大幅に安く、しかも同じくらいパワフル。ある意味、ものすごくお買い得なモデルであり、本国オーストラリアで人気の秘密もそこにあるだろう。

保証は1年または2万km

保証は1年または2万kmで、24時間のロードサービスが付く。消耗品のストックを用意するのはもちろん、本国バックオーダーでも船便で20日ほどで入手可能という。今のところ、販売・メンテナンスを行うのは愛知県日進市の店舗が主になる。

荷台付きなので、原則として1ナンバー登録(貨物車、新車登録時2年車検、以後一年ごと)。自動車税が年間8000円と圧倒的に安く、同じ排気量だと年間8万8000円にもなる3ナンバーとの差は大きい。

パッケージング&スタイル

(クーペ+ピックアップ)÷2

サイズは全長5049mm×全幅1845mm×全高1484mm。ピックアップにしては異様に低く、スマートだ。試乗車がかなりローダウンしていたせいもあるが。マッシブでマッチョな米国製トラックからすると、奇妙なくらいスタイリッシュに見える。前から見るとスポーツクーペ、横から見ると「何だこりゃー」。ちなみに本国には4ドアピックアップの「クルーマン」シリーズもある。こちらもそうとうカッコいい。

トラックであることを忘れる

トラックっぽい外観や豪州製というイメージを完全に裏切る、まったくもって今風クーペ的なインテリア。セダンベースだから当たり前と言えば当たり前だが。クオリティは高く、日本車に見劣りする点はまったくない。現地でトヨタ車がライバルという事情が納得できる品質だ。

豪州なので当然右ハンドル。ウインカーレバーも右になる。スイッチ類やメーターの機能性も優れている。ヘッドライトはオートで、もちろんクルーズコントロール付き。任意のスピードに設定できる速度警告アラームも装備する。これはなぜ国産車にあまり例がないのだろう? FMラジオは日本向けにコンバートされていて使用可能だが、周波数の表示値は通常と異なる。

 

バケットシートの作りも悪くない。というか、下手な国産スポーティカーよりずっといい。大柄な作りなのでサポートは緩めだが、ゆったりした座り心地で長時間座っても嫌にならない。スライド幅も十分で、長身の人でもポジションは自由に取れる。後ろを見ないと、トラックであることを完全に忘れる。

気になったのはドアを閉めた状態だと、ドアとシートとの間に手が入らず、背もたれ&ランバーサポート調節用のダイアルが回しにくい点。全幅は1845mmもあるのに、室内幅はやけにタイトだ。下手すると5ナンバーサイズくらいに感じるが、それが逆にスポーティさに結びついているのも確か。一番前の窓枠(Aピラー)はかなり寝ているように見えるが、圧迫感はない。

バイクから農機具まで

荷台の面積は、2193mm×1477mm。サーフボードはもちろん、オートバイや小型の水上バイクでも積めるはず。荷台床の高さが低いから積み下ろしも楽だ。カタログに明記される最大積載重量は乗員を含めて650kg(AT車)、ないし660kg(6MT)。現地では、ここに脚立やら農機具なんかも積むらしい。

試乗車のキー付きハードトノカバーはオプション(18万9000円)。荷台内に張られる黒い樹脂製のカーゴエリアライナーは8万9250円のオプション。

基本性能&ドライブフィール

トラックの形をしたコルベット

試乗したユートは、トップグレードの「SS」。通称「LS1」と呼ばれるGM製5.7リッターOHV・V8エンジンは、C5型シボレー・コルベットとほぼ同じもの。333ps/5600rpm、47.3kgm/4400rpmのスペックは、コルベットの標準モデル(355ps、49.8kgm)と大差ない。車重も 1568kgと想像以上に軽く、凝った構造のスチールフレームに樹脂パネルを被せたコルベットの1480~1500kgに比べて、大人一人分重いだけだ。

なので、その走りはまさにトラックの形をしたコルベット。試乗車は非純正マフラーが付いていたため、アイドリングからチューンドV8らしい不穏なサウンドを響かせる。アクセルを踏み込むと、国産や欧州車のスムーズなV8とは違う、アメリカンな(オージーな?)大トルクを爆発させて猛ダッシュ。さすがLS1 だけあって、5000回転あたりからレッドが始まる5500回転までの高回転?もけっこうシャープだ。スバン!という感じで吹け上がる。

街中では1000~1500回転程度でユルユル回るだけ。こうやって流すだけでもけっこう楽しい。パワーモードにすると、シフトアップポイントが少し上がる。優れた乗り心地や静粛性は、最新のアッパーセダンにまったく引けをとらない。

峠&サーキット仕様も目指せる

セダンベースとは言え、外観はトラックだから足まわりには期待していなかったが、これが驚くほどいい。サスペンションは4輪独立で、コモドアと同じ前:マクファーソン・ストラット、後:セミトレーリングアーム。フルパワーを与えても、少なくとも路面が乾いていればまったく危なげない。235/45R17という極太大径タイヤとLSDのおかげもあり、山道でも素直で安定した操縦性に終始する。

ワインディングもそつなくこなすユートだが、こうした場所では4速ATのギアリングが大まか過ぎるのが欠点と言えば欠点だ。2速/5000回転で120km/hも出てしまうので、普通の山道だと3000~4000回転でボーボー言わせて走ることになる。トルクがあるのでパワー不足は感じないが・・・。この手のクルマはATに限るという意見も多いと思うが、6MTで峠&サーキット仕様を目指すのもアリだと思う。それぐらいトータルバランスが高い。

一方、さすがに雨の日はラフなアクセル操作をすると2速でもホイールスピンが止まらない。今どき何とトラクションコントロール類は一切ないので、まさに乗り手の腕と自制心が問われる。現代的とは言えないが、スーパーカーを乗りこなすような楽しさがある。

世界最速のトラック

ユートのヒノキ舞台は高速道路だ。100km/h巡航は1750rpmと超ハイギアード。そこからアクセルを踏み込むと、滑らかに3速にキックダウンして、あれよあれよという間に「大台」を通過、さらに余裕で加速し続ける。試乗車はローダウンスプリングによるピッチングが激しくて、それ以上飛ばせなかったが、ノーマルの足まわりならそうとう快適で安定した走りだろう。まさに世界最速のトラックと言える。

ここがイイ

久々に味わう大排気量のおバカな走り。いや、いい意味で言っているわけで、トルクフルながら軽く吹け上がるエンジンに「乗せて頂いて」いると、心まで大陸的になってくる。荷台にサーフボードを積んでビッグウェイブを求め、せせこましい街を抜けだしたくなった。ジジイであることを一瞬忘れさせてくれる憎いヤツである。楽しい!

ここがダメ

試乗車はメード・イン・ジャパンのオリジナルマフラーにより、強烈に勇ましいサウンドを奏でていた。こうなると、アメリカンロックでなく、日本のロケンロールが似合ってしまう。そこがちょっと残念。また確かに大パワー、大トルクなのだが、昔のアメリカンV8のごときドロドロ感はあまりない。そんな今風がいいのか悪いのか、その点はちょっと微妙。

総合評価

試乗車はステッカーチューンが派手なため、かなり人目を引いたが、ノーマルならそれほど異様に目立つクルマじゃないし、オーストラリアは右ハンドルなので、ウインカーレバーの位置などインパネ形状は日本車同様。そのためまったく違和感なしに足として乗れるのは意外だった。

何より、スタイルが実にカッコいい。Cピラーから荷室へのラインが絶妙。これがただのクーペならあたりまえになってしまうが、トラックにしたことでよりカッコよくなるのが不思議だ。思い出したが、20年ほど前、スズキが軽自動車アルトのリアをぶった切って、マイティボーイというセダンピックアップを出し、アルトとは比較にならないカッコ良さで人気を集め、結構売れた。つまり、このリアぶった切りという手法は、クーペともワゴンとも違うカッコ良さの演出法なのだろう。日産のエクサとか、スバルのレオーネベースの海外向けピックアップはなんて言ったけ? ブラット。あれもカッコよかったなぁ。

20年前はステーションワゴンさえも売れない時代だったから、この手のクルマもあまり売れなかったが、ワゴンがあたりまえになった今なら、そこそこいけるのでは。どこかのメーカー、やりませんか。むろんモノコックボディは簡単にぶった切るわけにはいかないので専用設計となってしまうが、今の技術を使えばそう難しくはないだろう。

 

こんなセダンピックアップはクーペの走り、セダンの居住性(ただし2座分)、トラックの実用性を兼ね備えた、ある意味スーパーカーだ。ふだん二人しか乗ることがなく、荷台に積める遊び道具を持っており、こういう派手なクルマを足に使える生活をしている人には、おすすめだ。逆に言うと、そんな人が日本にどれだけいる? ということで、GMは正規に日本へ輸入することはなさそう。でもこういうニッチな商品はやっぱり楽しい。まったく「今のクルマ」なので、クラシックなセダンピックアップのような「維持することの苦労はない」と思う。あとはユーザーの問題。ヒマとお金の都合がつく人はぜひお求めいただきたい。

試乗車スペック
ホールデン SS ユート
(5.7リッターV8・4AT・399万円)

●形式:ー●全長5049mm×全幅1845mm×全高1484mm●ホイールベース:2939mm●車重(車検証記載値):1568kg(F:-+R:-)●エンジン型式:ー●5665cc・V型8気筒OHV・縦置●333ps(245kW)/5600rpm●47.3kgm(465Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L●10・15モード燃費:-km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:235/45R17(ブリヂストン B530)●乗車定員:2名●価格:399万円(試乗車:-万円 ※オプション:フルレザー内装&オートエアコン 17万6400円、キーロック付きハード・トノカバー 18万9000円、カーゴエリアライナー 8万9250円、トーイング(牽引)パッケージ 9万3450円、そのほかローダウンサスペンション、スペシャルマフラーなど)●試乗距離:約220km ●車両協力:株式会社オートプレステージ

公式サイトhttp://www.holden.co.jp/utess/index.html

 
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