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ホンダ エディックス 20X新車試乗記(第328回)

Honda Edix 20X

(2.0L・5AT・201万6000円)

2004年07月30日

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キャラクター&開発コンセプト

「3×2(スリーバイツー)」ミニバン

2004年7月8日にホンダが発売したエディックスは、横3席×2列の6座独立シートを持つミニバンだ。3席×2列の6座と言えば、98年に欧州でデビューしたフィアット・ムルティプラがあり、日本では独立シートではないが同年に日産ティーノも発売されている。ただし、両車ともに販売は苦戦。ムルティプラは外観を無難なものに変更して挽回を図っているが、ティーノは昨年のうちに販売終了している。

大型のアメリカ車では昔からベンチシートの横3人がポピュラーだが、全幅が限られる日本車や欧州車ではなかなか定着しない、というのが今までの常識だった。しかしホンダはあえてこのレイアウトに挑戦し、独自のアイディアとパッケージングを盛り込んで、「3×2(スリーバイツー)ミニバン」と名付けている。車名「Edix」は、こうしたシート配置の自在性をedit(編集する)+six(6人)で、表したものという。

欧州にも投入

基本シャシーはシビック/ストリーム系。パワートレインは2.0リッター(156ps)+5ATおよび1.7リッター(130ps)+4ATで、ストリームに準ずる。生産は鈴鹿工場、販売はホンダ全店で、目標台数は4000台/月。また、ルノー・セニック、VWトゥーランといった「CセグメントMPV」市場が拡大中の欧州にも、今年秋から「FR-V」(フレキシビリティ、レクリエーション、バーサティリティの意)の名で投入する。

価格帯&グレード展開

1.7リッターなら178万5000円から

基本的には1.7リッター「17X」(178万5000円)と2.0リッター「20X」(201万6000円)の2本立て。それぞれ20万円前後のアップで4WDを用意する。20XのFF車のみ5速ATで、あとは全て4速ATだ。

HDDナビゲーションシステム(31万5000円のオプション)は、音声認識機能やリアカメラ、8インチモニター、そしてインターナビ(ホンダの情報サービス)対応などの機能を持つ最新のもの。スマートキー(5万2500円)やディスチャージヘッドライト(5万2500円)、サイド&カーテンエアバッグ(8万4000円)はオプションとなる。

パッケージング&スタイル

ショート&ワイド

ボディサイズは全長4285mm×全幅1795mm×全高1610mm(FF車)。3×2レイアウトによって、スタイルは必然的にショート&ワイド化した。つまり、幅はオデッセイ(全幅1800mm)並み、前回試乗記の新型クラウンマジェスタと全く同値で、その意味では許容範囲に収まっている。ムルティプラの全幅1875mmに比べればはるかに常識的だ。全長とホイールベースはシビック5ドアと同じ。

ウエッジシェイプの強い「クラウチング」スタイルはスポーティ。横から見ると、ウエストライン(窓枠の下縁)とキャラクターラインが驚くほど後ろ上がりだ。ただ、全体の印象は割と大人しく、どことなく大きなフィットみたいにも見える。ホンダらしいと言えばホンダらしいデザインだ。

カバンが置ける

インパネはホンダが昔から好む横長タイプで、特に目新しさはない。収納式のドリンクホルダーのほか、中央席を反転させると大型トレイも現れる。内装色はオレンジ系の「エスプレッソ」、「ウォームグレー」「ブラック」の3色。試乗車のブラックはちょっと重苦しく、家族で乗るなら他の2色が良いと思う。エディックスは7色のボディカラーに合わせて自由に内装色が選べるのがいい。残念なのは運転席側のパワーウインドウスイッチがドアではなく、インパネに付くこと。普通の感覚ではドアにあるのが絶対便利だ。

V字シートレイアウトが新しい

中央席が大きくスライドする「V字シートレイアウト」が、エディックスの見所だ。運転席と助手席の間にぽっかり生まれた広大な空間は新鮮。前席中央は前後に270mm、後席中央は170mmスライドする。それによって前の中央席に幅460mm以内のチャイルドシートおよびジュニアシートの装着が可能になった。

大切な子供を乗せることを想定したこの前席中央は、安全性にとことんこだわっている。一般的に、チャイルドシートはエアバッグ展開時の衝撃を避けるため後席への設置が基本で、ホンダもそれを推奨している。しかし、エディックスの中央席は後ろにスライドすることでこの問題をクリア。しかも、ここは車内で最も安全な場所と言われる、後席中央にも近い位置だ。

さらに、この前席中央はISO FIX対応の固定バーはもちろん、シート内蔵型のロードリミッター付きプリテンショナー機構が付いたシートベルトを装備するなど、安全装備に妥協がない。こうした点や、クラッシャブルゾーンの余裕から言っても、安全面ではここが特上席と言えるだろう。ただし、チャイルドシートは中央席を最後端までスライドさせた状態でのみ装着可能。また、乳幼児用のものは付けられない。

大人3人×2でも、とりあえず大丈夫

子供だけではなく、大人がセンターに座ることもあるだろう。「隣りの人と肩をずらした快適な横3人掛け」も売りの一つ。確かに前席を一番後ろにすると、身長180cmでも無理のない姿勢が取れる。クルマの中心から広がる見晴らしも良く、大人もちょっとウキウキする。家族3人はもちろん、親しい者同士なら大人3人並んでもそれほど息苦しくはない。また、スライドを少し前にすれば、後ろにも人がちゃんと座れる。ちなみにエディクスは6座全てに3点式シートベルトが付く。

フィットと同じダイブダウン式

短い全長ながら、439リッターというステーションワゴン並みの荷室容量を確保。リアシートの折り畳みはフィットと同じようなダイブダウン式(背もたれを倒すと同時に、座面が沈み込む)で、操作は簡単だ。サイドウインドウが立っているせいか、前輪を外した状態のMTBが3台積める。

基本性能&ドライブフィール

動力性能はごく普通

試乗したのは2.0リッターのFF車「20X」。ストリーム等でおなじみの後方排気・直列4気筒「DOHC i-VTECエンジン」(156ps、19.2kgm)を搭載する。このグレードのみ5ATだ。

パッと走り出した印象は、このクラスのホンダ車の典型。同じシビック系シャシーのストリームやCR-Vより目線が低いことから、フィーリングは元のシビックに近い。パワーウエイトレシオは約9kg/ps。ホンダだけあってエンジンはシューンと淀みなく回って素晴らしいが、ブン回して楽しいタイプではない。良くも悪くもエンジン性能が突出した感じはなく、動力性能は平均的だ。

やはり気になる全幅

最小回転半径は4.9メートル(試乗車の16インチタイヤ仕様は5.2メートル)と小回り性能は悪くない。問題は横幅で、やはり左のドアが遠く、全幅の広さはそれなりに意識させられる。大きいのが当たり前のオデッセイやマジェスタでは気にならなくても、エディックスでは気になるのだ。特に、狭い道のすれ違いなど、つい左に寄り過ぎてしまいそうになる。パーキングメーターを利用する時も、幅だけは白線内に収まりきらない。もちろん、この点は今や新型ゴルフあたりでも同じだが。

それよりも、都市部で使う場合に不便なのは、全高1610mmゆえに立体駐車場に入らない場合があることだ。

乗り心地も操縦性もそこそこ

広がったトレッドで生まれた余裕は乗り心地に使った、とメーカーが言うように、確かに足まわりはロールやピッチングを許すタイプ。目線が低いことも手伝って、安心感は十分だ。ただ、乗り心地が特別良いという感じはなく、どことなくヒョコヒョコした動きが気になると言えば気になる。

ただ、後ろにスライドさせた前席中央は4輪のちょうど中心にあたり、姿勢変化の影響を受けにくい場所だ。そういう意味では安全性や見晴らしも含めて、中央席は特等席かもしれない。

一方、ホンダ自身が特にアピールしないように、スポーティな操縦性は特に感じられなかった。油圧パワステの反応がかなりスローで、コーナーでは振り回しようがない。当然、オデッセイ/ストリームのアブソルートほどのシャープさは望むべくもない。このあと、エディックス・アブソルートが控えているのか、と思わされる大人しさだった。

フロアへの井桁構造の採用や高張力鋼板の使用拡大による剛性アップ、防音材の見直しなどによって遮音性は向上させたという。確かに何かが突出してうるさいということはないが、速度を上げるとクラス相応の騒がしさにはなる。100km/h巡航時は2200回転ほどで、フル加速してもエンジンノイズは静かだ。

ここがイイ

子供が喜びそうな中央席。大人が乗ってもそこから見える視界は新鮮で楽しい。ステアリングを中央に付ければ、マクラーレンF1(V字が逆だが)だ。ムルティプラの試乗記でも書いたが、センターハンドルだともっとイイ。

運転席シートはかなりドア側に寄せられているがサイズも十分で、足下も狭くない。センターシートは肘掛けになり、ひっくり返せば豊富な物置ともなり、セカンドバッグなどが置きやすい。こうした理由で、一人で乗っていてもムルティプラのようなムダな空間を背負っている感じがしない。

試乗車のインターナビプレミアムクラブは未設定だったため残念ながら試せなかったが、VICS未設定の道路でも自車及び他車の走行情報を通信で集めて独自渋滞情報とする「プレミアムメンバーズVICS」(ITSで言うところのプローブカーの実用化)や、それをベースとした渋滞予測情報などは自動車メーカーとして世界初の実用化技術だ。素晴らしい。

ここがダメ

ムダな空間とまでは感じないものの、やはり1人で乗っているとなんだかちょっと空しい気分になる。これは3列シートミニバンでも同様だが。

センターシートに人が乗ると、ルームミラーに顔がドンと映るのでちょっとバツが悪い。乗った人が大人だと、ステアリング操作時に肘がセンターシートの人の足に当たるのがかなり気になる。また、「おみあし」がどーんと横に伸びるのも、ちょっと落ち着かない。やはり、親子3人、川の字になってドライブするというのが、もっともハッピーな使い方だろう。

ホンダ車らしくないぼんやりした走り、そう固くはないのになぜかヒョコヒョコする乗り心地など、もうちょっと詰めて欲しいところ。パワーステアリングのフィーリングもいまひとつ。

高性能ながらカーナビの使い勝手はいいとは言えない。プログレッシブ・コマンダーというジョイスティックとダイヤルを組み合わせた操作棒がダッシュから生えているが、BMWのiDriveを意識してるのは明らか。しかも同様に使いづらい(プログレッシブ・コマンダーの方がベターだが)。さらにステアリングにもオーディオ系の操作スイッチがあるから、ラジオを聴こうとするだけで、そうとう戸惑う。この手の操作デバイスはジョイスティックよりトラックボールが絶対優れている。このあたりはいずれ詳しく書こうと思う。音声認識操作もトヨタ系に較べてやや弱い(トヨタは住所の番地までを一発で認識したが、ホンダは番地認識がうまくいかない)。

総合評価

6シーターのフィアット・ムルティプラ登場(98年)の衝撃とその影響は、ホンダの関係者も認めるところ。エディックスはまさにムルティプラを再編集(エディット)したクルマといえるだろう。むろんこの編集力こそが日本らしい力だ。

その手順だが、まずムルティプラ1875mmの幅を、日本でも使いやすいように1795mmまで落とし、全高も60mm下げた。この幅で同じシートを横に3つ並べると小ぶりになるので、真ん中を少し小さくして、後ろにスライドさせることで、運転席、助手席のシートサイズを確保。しかも大人3人でも座れるスペースを獲得できた。ムルティプラの後席は取り外しができるが、日本では取り外しは好まれないので、格納できる独立ダイブダウン式を採用。これでムルティプラのネガはきれいに潰すことができたわけだ。あとは最新の安全性や繰安性、動力性能、情報性能を追加すれば出来上がりというわけだ。

日産ティーノはムルティプラというよりルノーセニックを参考にしていただけに、センターシートに工夫がなく(幅も1760mmと狭い)、独立3人掛けリアシートは取り外し式で日本人には受け入れられなかった。このティーノの失敗もエディックスはクリアしており、3列シートに飽きたミニバンユーザーの増加も伴って、そこそこの販売数は確保できるのでは、と思う。

事実、普段は様々な試乗車に見向きもしない家人がエディックスには興味津々。さっそく前席で大人3人掛けをして、それなりに楽しい時を過ごしたが、18才の子供がいう「もっと小さいときにこれがあったらおもしろかったかも。免許取ってから自分で買うかというと・・・」という意見がこのクルマの率直なところだろう。

若い頃、クラウンのベンチシート車(6人乗り)にフル乗車して長距離ドライブをしたことがあり、相当楽しかった記憶がある。それは冷静に考えると、狭いところでギューギュー詰めになった苦労が、若さゆえの楽しさに転化したということだったように思う。そこまでの苦労をエディックスで感じることはないと思うが、6人乗ればそれなりに狭い。

しかし、例えば現在小学生くらいの子供を持つ家庭がエディックスを買う。ホンダの思惑通り、親子3人川の字になってそれなりに楽しい時を過ごせるだろう。そして10年ほどの時がたってボロくなったエディックスを免許を取った子供がもらい、友達6人で「狭めーなー、コレ」とか言いながらドライブへ。こうして青春は繰り返されるわけだ。

開発責任者の角田氏は40代前半。アメ車やベンチシートクラウン・セドリック、あるいはハイエースなどのワンボックス3人掛けの楽しさを、身を持って知っている世代だろう。その人が思い入れで作ってしまった、というあたりがホンダらしいチャレンジングな姿勢で、評価したいところだ。こうしたことをやらなかったら、つまらない大人のクルマが氾濫してしまう。そして万が一ヒットしなかったとしても、それを責めないで欲しい。

試乗車スペック
ホンダ エディックス 20X

●形式:DBA-BE3●全長4285mm×全幅1795mm×全高1610mm●ホイールベース:2680mm●車重(車検証記載値):1440kg(F:870+R:570)●乗車定員:6名●エンジン型式:K20A●1998cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●156ps(115kW)/6500rpm、19.2kgm (188Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/58L●10・15モード燃費:13.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:205/55R16(MICHELIN Pirot PRIMACY)●価格:201万6000円(試乗車:258万3000円 ※オプション:リアカメラ付き音声認識HDDナビ&DVD/CDプレーヤー付オーディオ 31万5000円、スマートカードキー 5万2500円、ディスチャージヘッドライト 5万2500円、サイド&カーテンエアバッグ 8万4000円、雨天検知ワイパー+親水/ヒーテッドドアミラー+フロントドア撥水ガラス 3万1500円、パール塗装 3万1500円)●試乗距離:約250km ●車両協力:本田技研工業株式会社

 
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