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ホンダ エリシオン Gタイプ新車試乗記(第321回)

Honda Elysion G type

(2.4L・5AT・283万5000円)

2004年06月12日

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キャラクター&開発コンセプト

ホンダの最上級ミニバン

2004年5月13日に発売されたエリシオンはオデッセイの上に位置する、ホンダの最上級ミニバン。ラグレイト(実はカナダ製の北米向けオデッセイを輸入したもの)の後継ではあるが、エリシオンは国内用に専用開発したブランニューモデルだ。FFベース、3列シート、3.0リッターV6と2.4リッター直4のエンジン、そして価格と、販売的にはトヨタ・アルファードが仮想敵なのは間違いない。

内外装のデザインモチーフは大海原を行くクルーザー。オデッセイ譲りのダブルウイッシュボーンサスペンションや低重心プラットフォーム、インスパイア譲りの可変シリンダーシステム付きV6エンジンなど、ホンダらしく走りやエンジンにこだわった点も特長だ。

アルファードと同じ目標4000台/月

車名エリシオン(Elysion)は、ホメロスのギリシア神話叙事詩「オデッセイア」に出てくる楽園の名が由来。青い海がバックの広告でも、非日常感やリゾート感覚をアピールする。キャッチコピーは「Shall We Cruise?」。CMソングはアイルランド出身のエンヤが唄う「Wild Child」だ。

販売目標はアルファードと同じ4000台/月。販売力で劣るホンダにとっては、これはかなり強気の数字。しかし、そのアルファードが今も平均6000~7000台ペースで売れ続けるのを見れば、エリシオンもそれに迫りたいところだ。月に1万台以上売れていたオデッセイ(目標5000台)が、4月:6399台、5月:5944台と最近は落ち着き気味ゆえ、今後はエリシオンに期待が集まる。

価格帯&グレード展開

アルファードと正面勝負

オデッセイでおなじみ2.4リッター直4(273万円~334万9500円)とインスパイアのエンジンの発展型である3.0リッターV6(351万7500円~451万5000円)があり、それぞれ3つのグレードと4WDを展開。グレード体系はほぼアルファードに準じており、販売面ではトヨタを意識した様子がありあり。

もちろん違う点も多々ある。8人乗りだけのエリシオンに対して、アルファードは7/8人乗りの2本立て。エリシオンは全車5ATだが、アルファードは4AT。また、可変シリンダーシステム付きのエリシオンのV6モデルは、アルファードのV6(303万4500円~449万4000円)よりやや高価だ。

パッケージング&スタイル

ライバルより10cmほど低い

クルーザーをモチーフにした外観は、確かにちょっと垢抜けている。すごく大きなマツダデミオ、という感じもなくはないが。全長4840mm×全幅1830mm×全高1790mm(FF車)で、アルファードやエルグランドに比べて全高は10cmほど低め。幅は国内専用車だけあって、先代ラグレイトより105mmもスリムだ。2900mmのホイールベースはオデッセイより70mm長いが、シャシーは基本的にそのオデッセイの技術や考え方を使ったものだという。CD値(空気抵抗係数)は0.30と、かなり低い。

スウェード調生地で上質感

インテリアのモチーフもやはりクルーザーのラウンジ。「新世代プレミアム8シーター」のコンセプト通り、上質さを追求する。ひと頃のホンダと違って、質感の出し方がぐっと良くなった。無垢材風の木目調パネルがイイ感じ。カタログ写真では分かりにくいが、上級グレードの内装に使うスウェード調ニット生地の質感がなかなか良く、多少出費しても該当グレードを選びたい、と思わせる。試乗車は普通のトリコット素材だった。

横に長いインストルメントパネルに「スーパー立体自発光メーター」を採用。パネル上部にLEDを配し、反射レンズを使ってホログラムのような立体感を出したという。実際、その未来感はなかなかで、視認性もいい。この手のものでは最先端と言えるだろう。

段差のないステップ

ドアの敷居に、大型ミニバンに多い階段式ではなく、段差のないステップを採用したのが新しい。最も安いグレード以外、助手席側スライドドアは電動が標準だが、試乗車の運転席側スライドドアは手動だった。これはぜひオプション(6万3000円)で両側電動にしておくことをお勧めする。1人でクルマを使う場合、運転席側を開け閉めする方が圧倒的に多いからだ。細かい点だが、試乗車の電動スライドドアは、動きが従来のものより遅かった。もう少し速い方がいい。

燃料タンクを床下に配置するなど工夫を凝らし、フラットな床を確保した後部座席。後列にいくにしたがって約40mmずつヒップポイントを上げて、乗員の開放感にも配慮する。セカンド/サードシートに大型アームレストを備え、2列目のそれを倒せば、3列目でも前方視界が得られる。ここが3列目の閉塞感が強いオデッセイとの大きな違いだ。基本的には6人乗車(2+2+2)をメインに想定した室内設計だ。

荷物ではなく人を運ぶ

滑らかにスライドする3列目を一番前にすれば、荷室容量は1057リッター。簡単に広さが変えられるので、走行中も荷物が暴れず便利だ。今回は別件の取材にエリシオンを使用したが、撮影機材のように雑多なものを積むには便利だった。

ただし、リア開口部の天地は実測で約90cmと、自転車を積む時は少し斜めにする必要がある。荷室の天井高も1メートル15センチ程度(場所によるが)と、いわゆるワンボックス系のミニバンのような余裕はない。荷物運搬車ではなく、あくまでもピープルムーバーということだ。

基本性能&ドライブフィール

フワフワしない

試乗車はスケジュールの関係で、2.4リッター(160ps、22.2kgm)のFFモデル。「3.0リッターV6の方がやっぱりパワーはあるんですけど」と広報の方は言うが、車両価格が300万円を切る2.4リッター車で十分走るなら、それに越したことはない。

街中での印象は、例えがトヨタ車で申し訳ないが「エスティマとアルファードの中間」。ミニバンにしては低い目線で、フワフワせずにしっかり走る。オデッセイなど、他の多くのホンダ車のように「ちょっと尖った部分がなくて」、すぐになじむ。

素直で自然なエンジン

2.4リッターエンジンは低速からしっかり加速しつつ、高回転までホンダらしく滑らか。スロットル開度や出力特性を変にイジった感じがなく、素直で自然なところが逆に個性か。分かりやすいのは静粛性の高さで、走行中にエンジン音が気になることはまずない。5速トップでの100km/h巡航は約2000回転。状況によって4速と5速を小刻みに使い分けながら粛々と走る。最高速はこの2.4リッターでもメーターを振り切るところまで出るようだ。

実用上はまったく問題ないが、シフトゲートに「1-2-D」しかなく、4速か5速か任意で選べない点は少し残念。「選ぶ必要がない」ということだろうが、せっかくの5ATなのに見た目と操作上が4ATなのは、ちょっともったいない。

高速コーナーで違いが出る

ホンダらしく走行性能にこだわったエリシオン。新車発表時も「走りの良さは、運転していただければすぐに分かります」「サーキットへ行くと、違いが分かるんですよ」と開発スタッフが胸を張っていたのが、ちょっとおかしかった。

実際、この手のミニバンとしては山道もしっかり走る。特に感心したのは高速コーナーというか、都心の高速道路のキツ目のコーナーにオーバースピード気味で入った時の安心感。ボディがグラッといく感じがなく、下手なセダンより心拍数が上がらない。これは鼻先がV6より100kgほど軽い、2.4リッターモデルならではの特長かもしれない。

3列目でも「必要十分」に快適

走行中に3列目も試してみたが、当然ながらオデッセイよりも静か。エンジン音や排気音は皆無だが、ロードノイズが荷室床から耳に届くので、フル乗車時はここを吸音性のある荷物(着替えなど?)で埋めるといいかも。多少の上下動は仕方ないとすれば、乗り心地は文句ない。6人以上で快適にロングドライブするなら、このエリシオン以上が個人的には必要十分条件だ。

今回は3日間で540kmを走行。高速道路が多かったせいもあり、車載燃費計は最後に8.1km/Lを表示した。渋滞や撮影中の細かい移動を含めてで、1.8トンのクルマとしてはかなりいい数字では? ちなみに10・15モード燃費は10.2km/L、使用燃料はレギュラーと経済的だ。3.0リッターV6が(インスパイアと違って)ハイオク化されているのを知れば、この2.4リッターにさらに心が傾くというところ。

ここがイイ

やっぱりミニバンはこうでなきゃ、と思わせる高いアイポイント。最高グレードでもあり、「他人を見下ろす」視点はやはり重要なセールスポイントだ。それでいて足回りはライバル各車と較べて圧倒的にスポーティ。こんなデカいワンボックスがワインディングをそこそこ楽しませてくれるのだから、技術の進歩は恐ろしい。

試乗車はさほどでもないが、上級車の内装の上質感は素晴らしい。トヨタの三河的和風豪華さ、日産の無国籍風一見豪華(実はコストダウンが見られたりして)と較べても、好感が持てる上質な豪華さだ。虚像式のメーターも今後の上級車のインパネを先取りしたもので、ナビもなかなか見やすいものになっていた。

全開できるスライドドアの窓は他にないものだし、チップアップ式セカンドシートの使い勝手もよろしい。どの席でもおそらく誰も不満を言わないだろう。それでいて、昔のワンボックスで言い古された「運転手のお父さん」というネガも一切ない。あえてセパレートシートを使わず、8人乗りとしたのも見識だろう。もはや室内ウォークスルーなどする人はいないからだ。

ここがダメ

ジョイスティックとホイール式コマンダーを組み合わせたナビの操作系は、最初全く動かせなかった。ジョイスティックだけの方が使いやすいと思う。BMWのiDriveが使いにくかったことの研究結果がホイール式コマンダーを追加させたようにも思えるが、画面とジョイスティックによる、より使いやすい操作系をぜひ構築して欲しかった。また音声認識も、相変わらずいまいちだった。

リアのダブルウィッシュボーン+サブフレームは、確実に荷室を狭めている。走りと騒音のトレードオフとして空間が犠牲になったあたりは、一つの限界を示していると言えるだろう。

何よりグリルが地味。レジェンドも地味なグリルで損をした高級車だが、その二の舞とならないかが心配。ホンダの場合、開発側はどうもグリルをでかくしたがらないようだが、営業は間違いなくデカいグリルを求めている。マイチェンでデカくするようなら、最初からデカい方がいい。このクラスには絶対にデカいグリルが必要だ。

総合評価

エリシオンは対他メーカーの戦略車というより、ホンダの客を他社に逃がさないための受け皿という側面が強いと思う。ホンダで育ってきたユーザーが、最後に行き着くのがレクサスやアルファードでは、ホンダも浮かばれない。まずはこのエリシオンで旧オデッセイの代替客を守ったわけだ。ステップワゴンを始め、数多いホンダミニバンオーナーはこの真打ち登場を待ちわびていたはず。新オデッセイは別のベクトルを持つクルマになってしまったため、出世魚方式でクルマを乗り換える場合、他メーカー車がどうしても目に入ってしまう。それをホンダへ引き留めるのがエリシオンの使命だろう。

そんな斜に構えた見方ではなく、素直にクルマとして評価すると、乗用ミニバンとしてはある意味、進化の頂点に来ているし、世界的にもおそらくトップクラスと言っていいミニバンだ。例えばメルセデスのビアノと較べると、そのあまりの差は、誰が乗り較べてもわかると思う。乗用車のSクラスとレジェンドもいろいろな意味でその差がわかるはずだが、ミニバンでは明らかにホンダがメルセデスの上を行っている。ミニバンは日本車が最高なのだ。その中でも、走りを中心に考えればエリシオンは世界最高のミニバンといってもいい。

でもこれで目に見える(というか、乗ってわかる)進歩はさすがにおしまいだろう。走りも乗り心地も、もはや不満などない。10数年前、エスティマの誕生に驚喜した身としては、ついにミニバンもここまで進化したか、と感慨ひとしおである。今の人は幸せだ、とジジイ臭い感想を思わず漏らしてしまった。しかし、個人的にはもうミニバンは必要ない家庭環境になっている。10年前と言わず、5年前なら絶対欲しかったが、今の家族構成、ライフスタイルでは、もっと荷物の載る、いわゆるワンボックスの方が使い勝手がいい。その意味ではビアノを選択するかもしれない。

とはいえ今回の試乗時のようにたった一人でこのクルマを長距離走らせていると、凄くムダな感じがして心理的には疲れた。むろん、へたな古いスポーツカーなんかより燃費も良く排ガスもきれいだから、経済的にも環境的にもムダは少ないのだが、豪華空間をただ移動させることが、すごくムダに思えて仕方がなかった。

こういった感覚はセダンなどをよく知っている最後の世代だから感じることかもしれない。生まれたときからミニバンで育った世代や、ミニバンで青春時代を過ごし、その後もずっとミニバンに乗ってきた世代あたりは、もはや狭いクルマなど乗れない、どうせ乗るなら広いクルマがいいと発想し、出世した暁にはエリシオンを求めるだろう。というわけで、こんないいミニバンを作ると、セダンやスポーツカーはますます辛くなる。ホンダはそれでいいのだろうか。まもなく出る新型レジェンドが、楽園の中で伝説に埋もれてしまわないことを願うばかりだ。

試乗車スペック
ホンダ エリシオン Gタイプ

●形式:DBA-RR1●全長4840mm×全幅1830mm×全高1810mm●ホイールベース:2900mm●車重(車検証記載値):1810kg(F:1010+R:800)●乗車定員:8名●エンジン型式:K24A●2354cc・DOHC・4バルブ直列4気筒・横置●160ps(118kW)/5500rpm、22.2kgm (218Nm)/4500rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/70L●10・15モード燃費:10.2km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:215/65R16(YOKOHAMA ASPEC)●価格:283万5000円(試乗車:315万円 ※オプション:リアカメラ付きHDDナビゲーションシステム+DVD/CDプレーヤー 31万5000円)●試乗距離:約540km ●車両協力:本田技研工業株式会社

 
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