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ホンダ ライフ Dタイプ ターボ新車試乗記(第293回)

Honda Life D type Turbo

(0.66Lターボ・4AT・128万円)

2003年11月15日

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キャラクター&開発コンセプト

安心、おしゃれ、快適、使いやすさ

若い人は知らないかもしれないが、厳密に言えば初代ライフの登場は1971年(初代シビック発売の前年)。大ヒットした軽自動車「N360」の後継車だった。時代が下り、97年にトゥデイの後継車として再登場したのが新世代のライフ。今回試乗した2003年9月5日発売(ターボは10月6日)の新型は、そこから数えて3代目となる。

開発コンセプトは「ハートフル・テクノロジー」。女性にアピールすべく、安心、おしゃれ、快適、使いやすさを意識して、シャシーやエンジンなど全てを一新。衝突時の相手車両への攻撃性低減まで考慮した「コンパティビリティ対応ボディ」のほか、ホンダ自身はあまり強調しないが、トゥデイ時代から脈々と使ってきたパワートレインを刷新したことは大きなニュースだ。そのエンジンはフィットの技術を生かした新開発「i-DSI」直列3気筒で、オートマチックは専用設計・新開発の4ATへ。先代にあった5MT車は廃止された。

販売目標は1万5000台/月。立ち上がり1ヶ月の受注は約2万8000台と好調で、10月の登録台数は約2万1782台(速報ベース)と、なんと普通車を含む販売台数1位を獲得した。広告のキャッチコピーは「Sweets of Honda」。ホンダが作ったおいしいデザート、といったところだ。

価格帯&グレード展開

ターボはプラス11万円

グレードは最上級「Dタイプ」(117万円~)、中核の「Fタイプ」(105万円~)、ベース車「Cタイプ」(95万円~)の3つ。先代では「ライフ ダンク」として独立モデルだったターボ車は、今回からライフに組み込まれ、全グレードに設定された(ダンクは廃止)。ターボは自然吸気モデルのプラス11万円(Cタイプはプラス11.5万円)、4WDはFFのプラス12万円となる。

助手席チップアップはFタイプのみ

なぜか最上級グレードの前席はベンチシートになり、ウリの一つである助手席チップアップ・スライド機構は付かない。同機構が欲しい場合はFタイプを選び、欲しい装備をメーカーオプション(工場装着)で選ぶことになる。

オプションはスマートカードキー(3.7万円、D、Fタイプ))、ディスチャージド・ヘッドライト(5万円、Dタイプ)、ビターブラウン・インテリア(こげ茶色の室内色、2万円、Dタイプ)を用意。ナビは全て販売店オプションだ。

パッケージング&スタイル

スマートをFF車にすると…

デザインは新型ライフが強く訴えるポイント。フロントフェンダーはダイムラー・クライスラーのスマートに似た造型で、ヘッドライトをボンネット左右に置く手法も同じだ。思うに「スマートが4人乗りFF車だったらどうなるか」と考えると、ライフのデザインは理解しやすい。全体としてはボクシーなスタイルを捨てて、丸みを強調したのが特徴だ。

デザインの面白さは細部にもある。上部が飛び出したヘッドライトは日産マーチ風。感心したのは、上下左右どの角度からも手をかけやすい「マルチアングル・アウタードアハンドル」。丸い形状は確かに開けやすいし、面白いアイデアだ。

全12色と豊富なボディカラーもチャームポイント。クルマに関係ない分野のクリエイターの提案で生まれた「コンピレーション」カラー3色が楽しい。マッチャクレム(=抹茶クリーム)、バニラクレム、カラメルクレムと甘そうな名前が付く。前述のように室内カラーにはコーヒー色「ビターブラウン」をオプションで用意。

フィットを越えた室内クオリティ

室内クオリティの高さは驚くほどのレベル。デザイン、質感、タッチ、機能、あらゆる点でフィットすら越えたように見えるのは、クラスにこだわらないホンダらしいところ? 燃費計(瞬間と区間表示)、タコメーター、トリップメーターなどを表示する「マルチインフォメーション・ディスプレイ」(一部グレード除く)が見やすく便利だ。インパネシフトも使いやすい。とにかく細かい点まで神経がかなり行き届いている。前席シートの座り心地も良い。収納を重視したせいか、後席がやや平板なのは残念だ。

2420mmのホイールべースは軽乗用車の中で最長級。「ロングルーム・パッケージング」を謳う室内の「助手席チップアップスライド機構」(Fタイプ)が目新しい。助手席を前端にスライドさせることで、後席のチャイルドシートの子供の世話や前後ウォークスルー、後席の広々した足元を実現する。後席にアクセスしやすいのは何かと便利なはずだ。

後席の収納は、背もたれを倒してから座面ごと後席足元に滑り込ませるタイプ。ワゴンRなどのワンモーションに比べて操作は面倒だが、空間活用率は高い。抜いたヘッドレストはドアポケット部に差せる。リアドアの開度はムーヴの90度には負けるものの、79度と大きい。荷室容量は200リッター。先代では後席を畳まないと積めなかったA型ベビーカーの収納が可能になったという。

軽自動車ながら弱者思い

高張力鋼版を多用したシャシーは衝突安全性の高さがセールスポイント。特に相手車両への攻撃性を低減する「コンパティビリティ」(共存性)を強くアピールする点が画期的だ。コンパティビリティはメルセデス・ベンツが早くから提唱してきた概念だが、小型軽量な軽自動車がそれを売り文句にするところに、ホンダの衝突安全技術「G-CON」(Gコントロール)への自信がうかがえる。

基本性能&ドライブフィール

リッターカーを越えた

マッチャクレム色の試乗車は、最上級Dタイプのターボ(128万円)。走り出した瞬間、軽自動車に乗っていることを忘れるほど、走りの質感は高い。しっかりしたボディ、重厚な足まわり、自然なパワー感のエンジン…。先に触れたインテリアの質感に加えて、ペダルなど操作系にも安っぽさは皆無だ。

試乗中に頭の中で比べたのは同じホンダの小型車フィット、ではなく、トヨタのヴィッツ。固めの足回りや活発なエンジン、そしてCVTのフィットより扱いやすいエンジン、しっとりした足回りなど、新型ライフ・ターボの走りはリッターカーのトップクラスに匹敵する。

完全新設計の駆動系

ホンダの軽自動車は初代トゥデイの後期型(88年発売)以来、直列3気筒・4バルブの「E07A」とその改良版「E07Z」系エンジン、そして3速ATを15年に渡って使ってきた。しかし今回の新型ライフは、3気筒ながらフィット譲りの2バルブ・ツインプラグのi-DSIエンジン「P07A」を新採用。同時にATも遅ればせながら4速になった。これまでもミッドシップのアクティ/バモス、「Z」にも4ATはあったが、ライフのものは完全新設計だ。

少なくとも今回試乗したターボエンジン(64ps、9.5kg-m)は、実にいい。低回転から自然なパワーを発生し、うっかりすると1000ccくらいの4気筒エンジン車(要するにリッターカー)を運転しているような錯覚に陥る。ターボラグもごくわずかで、変速もスムーズ。「ターボだからよく走るのは当たり前」というレベル以上だ。静粛性は高く、1.5リッタークラスのように遠いところから聞こえるロードノイズが「一体自分は何に乗っているんだ?」感に拍車をかける。

軽のアコード

高速道路でもずいぶん余裕がある。100km/h巡航は約3500回転ほど。どっしりした乗り味と静かなエンジンもあって、まったくもってリラックスして運転できる。「軽自動車のアコード」というフレーズさえ浮かんだ。ただ、さすがに風切り音は大きく、120㎞/hあたりまでが快適ゾーン。140㎞/hの直前でリミッターが効くが、それがなければあと10km/hの伸びはかたいだろう。

新型エンジンの最大のウリである燃費だが、ターボ付きの試乗車の10・15モード燃費は18.6km/リッター。車載ディスプレイの燃費表示は、街中の加減速が多いモードでは11km弱/リッターに落ち着くことが多かった。

ここがイイ

本文でも書いたようにフィットを越えちゃったほどのクラスレスな出来の良さ。リバイバルしてる流行語で言えば「なんじゃこりゃ~」。旧ライフが3速ATに象徴されるように、一世代くらい他車より劣っていたハードウェアだったため、今回一気に3世代くらい進化してしまった感が強い。その十分な加速、高速での安定性、そして内装の質感、パッケージングなど、軽自動車としては完璧、もはや小型車と言っても問題なし、というレベルだ。

クルマの左右と後方全てで反応するスマートキーは、完全なオートタイプ。離れれば自動でロックされ、近づけばロックが解除される。使い勝手完璧といえる出来だった。リア窓ガラスが全開するのもいい。

マルチインフォメーションディスプレイも大変よろしい。警告からメンテナンスまでをここで表示するのは、今後ごく当たり前になるべき。さらにテレマティックス対応ナビとの間でマルチディスプレイとなれば完璧でしょう。

ここがダメ

そのマルチディスプレイの画面切り替えスイッチがメーターナセルの上にあり、大変使いにくい。ステアリングボタンなど手元にあるのがベストだが、せめてインパネに付けないと、小柄な女性は手が届きにくく操作しにくい。

リアシートは床下収納のため、座面が小さめ。これだけ広い室内だと、助手席よりリアに人を乗せることが多いだろう。さらにチップアップスライドシート車の場合なら、リアシートはリムジン的な使い方ができるのだが、シートそのものがプアなのでリムジンな気分になれないのが残念。リアの座り心地はワゴンRに分があるだろう。

何より、これだけいい小型車がルックスを含め、あまりに女性向けなこと。ハードウェアの出来のクラスレス感に加え、ワゴンRやスマートのような男女どちらでも乗れるイメージが演出できたら、フィットを超える大ヒット車(現在のところはそうなっているが)としての販売が維持されるはずだ。もしかして、ザッツやスパイクのように男性版が用意されるのかもしれないが、初代ライフのように男女年齢問わず乗れるクルマを提示して欲しかったというのは、今のホンダには迷惑な話?

総合評価

というわけで、あまりの出来のよさに驚かされ、女性向けすぎるのが残念だな、というのが結論。質感も高いし、まるで小型車のような軽自動車だ。こうなるとフィットとライフを隔てる壁は、「普通車」「軽自動車」という記号性と横幅の数値だけといってもいい。このうち、小柄な人にとっては横幅はあまり気にならないため、「軽自動車」であることが最大の壁となる。つまり、よくいる「軽だけは絶対にいや」という女性が、かろうじてこの壁を支えているわけだ。そういう人には「よーく考えよぅ、お金は大事だよぉ」と歌ってしまおう。ライフとリッターカークラスの小型車のどちらに乗っても、満足度は大差ないと思われるからだ。そして昔から何回も書いたような気がするが、この出来の良さのまま初代ステップバン(とそのピックアップ)をぜひ復活させて欲しい。軽トラベースではない、道具としての軽自動車をぜひ。ステップバンの正式名称は「ライフ・ステップバン」だったのだし。

トヨタが一昔前に軽自動車の経済的優位性に異議を唱えていたが、ダイハツの完全子会社化以降、その論調はすっかり鳴りを潜めてしまった。ライフよりさらに室内が広いと言われるダイハツ・タント、スタイリッシュなスバルR2と、今後続々と新型軽自動車が登場する予定だが、ここまで軽の出来がよくなってくると、軽自動車とはいったい何なのか、もう一度考えてみる必要がありそうだ。また、ダイハツとホンダが軽を感じさせない高品質路線でグイグイ来ているが、スズキは割にベーシックな軽自動車路線をキープしており、その点で今後の販売競争が興味深い。

試乗車スペック
ホンダ ライフ Dタイプ ターボ
(0.66Lターボ・4AT・128万円)

●形式:UA-JB7●全長3395mm×全幅1475mm×全高1580mm●ホイールベース:2420mm●車重(車検証記載値):870kg(F:540+R:330)●エンジン型式:P07A●658cc・直列3気筒・SOHC・2バルブ・ターボ・横置●64ps(47kW)/6000rpm、9.5kgm (93Nm)/4000rpm●使用燃料:レギュラーガソリン●10・15モード燃費:18.6km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:155/65R13(ブリヂストン B391)●価格:128万円(試乗車:128万円) ●車両協力:本田技研工業株式会社

 
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