Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > ホンダ オデッセイ アブソルート

ホンダ オデッセイ アブソルート新車試乗記(第298回)

Honda Odyssey Absolute

(2.4L・5AT・260万円)

2003年12月21日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

「速い」「美しい」「広い」

2003年10月17日発表(24日発売)の3代目は「ミニバン・イノベーション」をコンセプトに、「速い」「美しい」「広い」を目指して開発。特に目立つのがホンダらしく、ミニバンらしくない「速い」の項目で、低重心と高剛性ボディによる高い走行性能を強く訴える。ミニバンらしからぬ背の低さ(立体駐車場にも入れる1550mm ※FF車)が斬新。広告キャッチフレーズは「ミニバンを発明しなおしました」だ。

次期大型ミニバンと住み分け

走りへの徹底的なこだわりは、2003年の東京モーターショーで発表された大型ミニバンとの住み分けゆえ。従来あった3.0リッターV6や6人乗り(2+2+2)がないのも、そうした事情からだろう。販売目標は5000台/月。V6搭載車がないなどモデルレンジが狭く、先代(99年発売)発売時の目標(6000台)より少なめだ。先代末期は月平均で3000台を割り込んでいたが、これで一気に本来の水準に戻したいところ。発売後1ヶ月の受注数は約25,000台と好調で、30~40代のユーザーが約7割を占めるという。

初代は国産ミニバンの先駆け

初代オデッセイは94年10月に登場。アコードをベースに既存の工場ラインをギリギリ通る車高で造った苦肉の策のミニバンだった。米国市場を視野に入れたオデッセイだったが、日本国内で大ヒット。各メーカーから数多くのフォロアーを生むエポックメイキングなクルマとなった。

価格帯&グレード展開

アブソルートは260万円から

エンジンは2.4リッター・DOHC16バルブ「i-VTEC」で、160psと200ps(アブソルート用)の2種類を用意。トランスミッションは主力のFF車に7スピードモード付きCVTを採用。アブソルートと4WD車には5速ATを載せる。グレードは「S」(220万円)、「M」(230万円)、「L」(275万円)、アブソルート(260万円)の4種類。4WDは全車プラス22万円だ。

パッケージング&スタイル

ロー&ワイドでミニバンに見えない

ギョッとするほど低いというのが第一印象。スタイリングもミニバンのイメージを打ち破るロー&ワイド。ブルーに妖しく光るヘッドライトが、良くも悪くも睨みを効かす。「ブラックパンサー(黒豹)」がモチーフというのは、車体色が試乗車のブラックアメジストパール(アブソルート専用の濃い紫)の場合、けっこう納得できる。

注目度は年齢性別を問わずかなり高い。そうとう思い切らないとできないデザインという点で、まことにホンダらしい。大ヒットすればやっぱり他メーカーも追随するんだろうか。アブソルートは前後エアロバンパーなど専用パーツが付き、ホイールは17インチとなる。

地面の近さに驚く

サイズは全長4765×全幅1800×全高1555mmで、立体駐車場に入庫可能という低さ(先代比-80mm)が目立つ。逆に、室内高は先代比+5mmを確保。実際、室内は従来のオデッセイ的な広さがあり、全高の低さを忘れさせる。忘れた頃にクルマを降りようとして、今度は予想よりずっと地面が近いことに驚く。足を外に降ろすとベタッと地面につく感じ。ドア開口部が天地に広いから、乗り降りはわりと楽。これはセダンにも普通のミニバンにもない特異な感覚だ。

未来的インパネ。機能も秀逸

インパネのデザインはホンダの既存のセダン以上にスポーティで未来的。アブソルートはドアを開けた時から赤系のメーター照明が段階的に点灯してゆく。見た目だけでなく機能性も高い。ステアリング脇のインパネシフトはもちろん、空調やオーディオ・コントローラーにも手が届きやすく操作しやすい。残念ながら試乗車は装備していなかったが、ナビ操作用の「プログレッシブコマンダー」なる集中コントローラーも使いやすいようだ。メーターの視認性も良く、速度計下にある瞬間燃費計も見やすい。

十分広い3列目だが、短距離が無難

ホイールベースの2830mmは先代と同じ。樹脂燃料タンクの扁平化、リアサスや排気系の工夫で低床化し、先代オデッセイと同等以上の広さを達成したという。実際、3列目に人がちゃんと座った状態でも、2列目は余裕。「外見からの想像をはるかに超えるゆとりの室内空間」(ホンダ資料)の文字はオーバーではない。

3列目(2人用)でも男性がちゃんとした姿勢で座れるが、背もたれが目の前に壁のように立ちはだかり、かなり隔絶感がある。空調ユニットが天井を低めて圧迫感があるのと、薄いクッションも気になる点。走行中は荷室付近から排気系の音がかすかに侵入してくる。乗り心地は悪くないが、長距離ドライブでの使用はちょっと辛い。ラインナップから省かれた2+2+2のキャプテンシート仕様があれば、とも思うが、それだと6人乗りになってしまう。

操作が楽しい電動サードシート

3列目は、スイッチを押し続けるだけで格納/展開が可能になった(標準もしくはオプション)。ヘッドレストは手動で90度折る必要があるが、それ以外は全自動。畳む時はまず、左右片方ずつ背もたれがバネ仕掛けで倒れ → 3列目全体がモーター駆動で180度反転 → フラットな荷室の完成、となる。

米国のミニバンや高級SUVにはこうした電動サードシートが以前からあるが、日本のミニバンではこれが最初のはず。使用頻度は高くないが、操作自体が楽しい。力のない女性にとっては気が重い操作だけに、こういったことは大切だ。

油圧パワステゆえレーンキープアシストは搭載されず

ハイテク装備に関しては、最近、新型車に採用の多いAFS(アダプティブ・フロントライティングシステム:光軸可変システム付きヘッドライト)も用意。現行ステップワゴン(マイナーチェンジ版)のものは反射板の一部が可動するだけだが、オデッセイのものはプロジェクターユニットそのものが向きを変えるタイプ(スタンレー電気製)。トヨタ・ハリアーのもの(小糸製)に仕組みは近い。交差点から山道までよく動くが、停止中は作動しない。

インスパイア等で採用した車速/車間制御機能を持つレーダークルーズコントロール、追突軽減ブレーキ(CMS)+E-プリテンショナーも用意されている(いずれも試乗車には未装着)。レーンキープアシストが無いのは、パワーステアリングが電動ではなく油圧式だからだ。

基本性能&ドライブフィール

伸びやかに加速、滑らかに変速

試乗車は200psエンジンと5速ATを持つアブソルート。発表会場で見た映像では、F1ドライバーの佐藤琢磨が縁石をフルに使ってテストコースを激しく走行。その様子からかなり固い足を想像していたが、乗り心地は予想以上に良い。普通のセダンとスポーツセダンの中間ぐらいという感じだ。

アブソルート用の200ps、23.7kgmのエンジンは、アコードの2.4リッターとスペック上も全く同じ。車重はアコードの1420~1450kgより200kg以上重い1650kg(試乗車)。だから200psという数字が期待させるほどパワフルではないが、どの回転域からも伸びやかに加速する。セダンのアコードには及ばないが、振動・ノイズも小さい。5速ATの変速は滑らかで、マニュアルモードのレスポンスも素早い。自動シフトアップはしないタイプだ。

トータルバランスで「アブソルート(完全無欠)」

セールスポイントのハンドリングを試すべく、ワインディングも走ってみた。ダンパー、スプリング、スタビライザー、ブッシュ類をハード方向に専用チューニングしたというアブソルートの走りは一言で言うと、大柄で目線の高いスポーツワゴン。専用の215/55R17タイヤ(ヨコハマ ASPEC)は快適性重視で、グリップ自体は高くない。だからその気になればかなり振り回せる。ブレーキを残してコーナーに入る時も、ステアリングを切った状態で加速した時も、絶妙にリアをツーと流してツジツマを合わせる。電子デバイスのVSAがアンダー/オーバーステアを抑えこむせいもあるが、介入の仕方は自然だ。ミニバンらしからぬ走りだが、全体としては先に書いたように、そして他の専門誌でも書かれているように、低重心で得た余裕を快適性確保に使ったクルマだ。ハンドリングに偏った、過激なクルマではない。

高速走行に関しても不満はない。最高速はメーターを振り切り、そこまでの直進性も文句なし。風切り音も低く、快適なハイスピードクルージングが可能だ。

ここがイイ

足の硬さを感じさせず、実に快適な乗り心地ながら、「楽しめる」足回り。サイズを感じさせず、振り回して遊べるのは驚き。低重心がなせる快適性と安定性はもはやミニバンではない、といえる。

サードシートはあくまでエマージェンシーという、ミニバンの実情に即した電動サードシートは素晴らしい。エマージェンシーだからこそ、必要なときに苦労せず取り出せ、すぐにしまえるのがありがたいのだ。年に数回しか使わない装備にこそ、誰でも簡単に使えることが求められる。よく使うなら出しっぱなしでいいのだから。

AFS、レーダークルーズコントロール、追突軽減ブレーキ(CMS)+E-プリテンショナーが用意されたこと。量販ミニバンにいよいよ採用されたことで、インテリジェント装備は急速に普及していくはず。

ここがダメ

小柄な人にはAピラー・三角窓・ドアミラーが織りなす右前方の死角は気になるところ。AFSも動く際に一部影ができ、何かが動いたように見えてドキッとした。

背を低くしたことのしわ寄せといってもいいのが、室内の開放感の無さ。広さはおそらく変わらないと思うが、以前のモデルでは高いアイポイントが開放感を生んでいた。けして狭くないのだが、ミニバンと言うより広いワゴンといった感覚だ。3列目の閉塞感はかなりのもの。

総合評価

ホンダの3代目はたいてい良い。初代が良くて、二代目並、三代目で再興というのがホンダのパターンだ。この例にもれず、3代目新型オデッセイは「かなりいい」。スタイリングはワル系のドレスアップが似合いそうだし、プレーンなままならそれなりに上品。走りはスポーツカーとは呼べないまでも、並のスポーティカーは完全に超える。そのくせ乗り心地がいい。エンジンも回して楽しめ、5速ATのマニュアルモードの反応の良さは素晴らしく、2ペダルスポーツ走行が満喫できる。インパネはデザインもすごいが使い勝手も良く、赤いメーターの目盛りがこれまたすごい(カッコいいかは?だが)。クラブ系のインテリアもクール。インテリジェント機能も選べるし、電動サードシートは絶賛したい。

つまり、初代オデッセイの頃と比べれば、夢のようなミニバンが完成したわけだ。よく言われる「ミニバンなんだからもうこれ以上の性能は必要ないのでは」という壁を打ち破り、新たな地平に踏み出した意欲作だ。性能的にはある意味デッドラインに達した感のあるクルマ作りの中、後ろ向きな姿勢に陥ることなく、まだこんな進化型のクルマだって作れるのだというホンダの気概が感じられる。

ハードウェアは絶賛するが、ソフトというか、クルマを取り巻く事情にオデッセイの難しさがあると思う。絶対的なスペースの魅力でミニバンを求める人ならオデッセイの広さには不足を感じるはずだし、走りそのものを楽しみたい人にも絶対的な存在ではないからだ。また価格やブランド性を重視すると、これまた別の選択肢が生まれそうだ。一家に一台のミニバンだとすれば、お父さんにはいい選択だが、奥さんにはモビリオやシエンタなどの小型ミニバンの方が好まれそう。一家で複数所有できるのなら、奥さんが小型3列シートミニバンを買い、お父さんはスポーツカーや輸入車など趣味っぽいクルマを買った方がより楽しめそう。ホンダ車でまとめるなら、奥さんがモビリオ、お父さんがS2000(シビックタイプRでもいい)とか。

かつてミニバンはお父さんが乗らなくてはならない乗り物で、走り好きはミニバンだけは嫌だと思いつつ、家族のために我慢をしたものだ。その場合、奥さんは軽とか小型車に乗るというパターンだった。しかし小型ミニバンが出現した昨今では、小型ミニバンに奥さんが乗り、お父さんは好きなクルマに乗るという自由が復権しつつある。新型オデッセイは、かつての一家に一台の選択としてはすごく高いところでバランスが取れたクルマだが、もし一家に2台のクルマ選びができるとすれば、外れてしまう可能性もあるクルマだ。

クルマ好きのお父さんで一家に一台の家庭ならオデッセイの満足感は相当高いだろう。一家に2台持てるなら、こんないいミニバンのオデッセイを外してでも別の選択がある、もはやそういう時代になりつつあると思う。

試乗車スペック
ホンダ オデッセイ アブソルート
(2.4L・5AT・260万円)

●形式:LA-RB1●全長4765mm×全幅1800mm×全高1550mm●ホイールベース:2830mm●車重(車検証記載値):1650kg(F:930+R:720)●エンジン型式:K24A●2354cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●200ps(147kW)/6800rpm、23.7kgm (232Nm)/4500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/65L●10・15モード燃費:11.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:215/55R17(ヨコハマ製 ASPEC)●価格:260万円(試乗車:274万円 ※オプション:AFS 5万円、AM/FMチューナー付CDプレーヤー 4万円、 3列目電動床下格納シート 5万円) ●車両協力:本田技研工業株式会社

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧