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ホンダ ステップワゴン G・Lパッケージ新車試乗記(第371回)

Honda StepWGN G・L Package

(2.0リッター・4AT・217万3500円)


2005年06月24日

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キャラクター&開発コンセプト

箱型FFミニバンのパイオニア

初代ステップワゴンは1996年に登場。アコードベースの初代オデッセイに続き、1クラス下のシビックの車台で開発した「ユーティリティミニバン」だ。乗用車的なオデッセイに対して、実用然とした箱型ボディが当時はかなり新鮮だった。それまで主流だったキャブオーバー型ワゴンに引導を渡し、ミニバンブームを加速させたエポックメイキングなクルマだったと言える。

低床・低重心化された3代目

2005年5月発売の3代目は、初代やキープコンセプトの2代目と異なり、低い全高、低い床、低い重心が特徴だ。遅ればせながら両側スライドドアも採用。ミニバン初のフローリングフロアや白色ガラスを使った「トップライトルーフ」を設定するなど、部屋感覚を追求した工夫も新しい。販売目標は月間8000台。

価格帯&グレード展開

主力は「G」(207万9000円~236万2500円)

グレードは大きく分けて3種類。ベーシックな「B」(199万5000円)、主力の「G」(207万9000円~236万2500円)、2.4リッターエンジン+CVT(無段変速)の「24Z」(255万1500円)。26万2500円高で4WDが選べる。販売主力は「G」にパッケージオプションを追加した仕様だ。200万円を切るBでは、メーカーオプションがほとんど選べない。

パッケージング&スタイル

一石四鳥の低床化

ボディサイズは全長4630mm(従来比-45)×全幅1695mm(同±0)×全高1770mm(同-75)。低く、短く、今どき珍しくダウンサイジングした。現行オデッセイと同じく、パッケージングのテーマは低床化(-60mm)。これによって従来モデル並みの室内高をキープしつつ乗り降りしやすくなった。さらに低重心で操縦性も向上、ソフトなバネが使えて乗り心地も確保しやすいと、理屈の上では一石二鳥どころか四鳥くらいの設計自由度が生まれる。

脱「箱っぽさ」

箱っぽさを強調した初代、2代目に対して、3代目は逆にそれを払拭する工夫が凝らされた。ボンネットの両脇に配したヘッドランプ、寝かせたAピラー、ボディ側面のキャラクターラインが「脱」ステップワゴン的。写真では分かりにくいが、キャラクターラインとスライドドアのレールが交錯するあたりは、ちょっと散漫な感じ。

室内確認用ワイドミラーを装備

横長のブラックフェイスパネルはホンダが昔から好んで使うもの。デジタルメーターはシトロエンを除いて最近のクルマ、特にミニバンでは珍しい。視認性は悪くないが、エアコンの温度表示が左端というのが気になった。スイッチ類も往年のアルファ164のように、空調用もオーディオ用も同じカタチで整然と並んでいて選びくい。ダッシュが低いので前方視界は良好だ。Aピラーは寝ているが、三角窓が大きく、視界の邪魔にはなりにくい。

小物入れはいたるところにある。全体の質感はまあまあ。天井のサングラスホルダーには室内確認用ワイドミラーを内蔵(一部グレードを除く)、後部座席の子供たちの様子が一目で分かる。ちょっと見にくいが、面白いアイディアだ。

「ワンステップ」ワゴン

低床化で従来モデルと同等の広さをキープしつつ、大きく進歩したのが乗降性だ。公共バスとワンボックス型ミニバン共通の悩みがステップの高さだが、新型ステップワゴンの床は地上高390mm。従来型から-60mm、初代からは-100mmと低く、途中のステップを省略してワンステップになった。セレナやノア/ヴォクシーといった直接のライバル車に対して、ここはステップワゴンの独壇場だ。

2つのキラーオプション

試乗車には無かったが、ミニバン初のフローリングフロア(メーカーオプションで5万2000円)もセールスポイント。木目柄のプリント樹脂を硬質クリア層でコーティングしたもので、傷付きにくさに配慮している。色はナチュラルとブラウンの2種類。もう一つ、やはり試乗車に無くて残念だったのが「トップライトルーフ」と呼ばれる半透明の固定サンルーフ(9万4500円)。前後1600mm×幅500mmの細長いもので、白色の中間層を挟んだ合わせガラス製だ。この二つがあるとかなり楽しい印象になったと思う。

回転対座が選べるが

試乗車はオプションの2列目回転機能付き(7万3500円)で、折り畳みは通常のタンブルではなくチップアップ&スライド式。で、少なくともこの回転シート付きは、対面モードにしろ、折り畳むにしろ、操作力が大きめで、しかも「どうすればどうなる」のか直感的に分かりにくい。特に必要がなければ標準シートで十分だろう。

アクセスしにくく、重いサードシート

座るときはヘッドレストを上げて使うのが前提のサードシート。リクライニングと前後スライドが可能で、見晴らしもまあまあ。セカンドシートを前にスライドさせないとアクセスできないなど乗降性は今ひとつ。

サードシートの収納は従来どおり、サイド跳ね上げ式。操作性に配慮して軽量化したらしいが、新型セレナのアシストスプリング付きを知った今、これはあまりに重すぎる。普通の女性では操作する気になれないだろう。しかもシートスライド位置が後端では、操作できないのも煩わしい。セレナやノア/ヴォクシーのように荷室床下収納がないのも見劣りする部分。

基本性能&ドライブフィール

そつのないパワートレイン

試乗したのは販売主力の2.0リッター・4ATモデル(G・Lパッケージ)。エンジンはチェーン駆動のDOHC・i-VTEC「K20A」(155ps、19.2kg-m)、車重はカタログ値では1510kgだが、試乗車はオプションが加わって1580kg(車検証数値)。実際の動力性能は2リッターでこれだけ走れば十分、と言えるレベルだ。初代と2代目ステップワゴンはパワーの出方が唐突で、雨の日にはホイールスピンとトルクステアのオンパレードだったが、スロットルが電子制御化された新型はそんなこともなくしっとり加速するし、高回転では爽快に回りきる。

乗る前には「いまどき4速?」と思ったATも、乗ってみるとまったく不満がない。CVTかと思うほど変速は滑らかだし、回転のつながり感も上々。2.4リッターFF車にはCVT、2.4リッター4WD車には5ATを使うが、主力の2リッター車はコスト面でも性能面でも4ATで十分という判断だろう。10・15モード燃費も試乗車で13.2km/Lと、CVTのセレナ(13.0km/L)と互角だ。

限りなく乗用車に近い

操縦性の良さは走り出した瞬間から分かる。従来モデルから-15mmの目線の高さを除けば、運転感覚は限りなく乗用車に近い。ミニバンにしては、という但し書きが不用なくらい、遠慮なくステアリングが切れるし、ブレーキが踏める。クイックなステアリングギアレシオで気持ちいいほどノーズがスッとインを向き、さらに切り込むとアンダーステアを感知してVSAがブレーキ制御に入る。オデッセイやマツダ・プレマシーほどのスポーティさはないが、その気になればついていけるのでは、と思ってしまうほどよく曲がるミニバンだ。タイヤはオプションの16インチタイヤ(205/60R16)だが、大人しい性格(ヨコハマのデシベル)だったせいか、ABSやVSAの介入はけっこう早めに感じられた。

荒れた路面は苦手

気になったのはファミリーミニバンとしては、乗り心地が少しハードなこと。荒れた路面だとサードシートでは突き上げが気になる。高張力鋼版の使用率を上げてボディ剛性は大幅に向上しているが、低床化によって足回りからの入力やロードノイズが伝わりやすくなった感じだ。

低重心が生きるのはやはり高速巡航だ。高速コーナーにも安心して入ってゆけるし、いざという時のフルブレーキングや急なレーンチェンジも思い切って出来る。時速100km時の回転数は2500回転ほどでエンジン音は静かだし、Cd値もミニバンらしからぬ0.33で風切り音も小さい。ただ、ここでも80㎞/hあたりからロードノイズや小刻みな上下動が気になった。参考までに車載のドライブコンピューターが表示した燃費(1名乗車)は、高速100km/h巡航なら間違いなく10km/L以上、一般道エコランで8km/L台、普通に走って7km/L台、山道を飛ばして6km/L台というところ。

ここがイイ

実は今回、インテリジェントなハイテク装備が各種オプションで選べるようになっている。VSA、追突軽減ブレーキ+E-プリテンショナー、インテリジェントハイウェイクルーズコントロール、フローティングカーシステム対応のインターネット・プレミアムクラブカーナビ、QQコールが装着可能だ。ナビをつければ音声でエアコンやオーディオの操作もできる。ハンズフリーフォンはブルートゥース対応だ。

小物だがサングラスホルダーに仕込まれたワイドミラーは便利(旧ステップワゴンでは、室内を見るために小さなミラーをウインドウに貼っていたものだ)。またセンターコンソール中央の張り出しが少なく、シートをかなり前にセットしてもウォークスルー時に足が引っかからないから、いちいちシートをスライドさせなくてもいい。

運転席窓のラインはかなり下げられており、三角窓やドアに取り付けられたミラーの恩恵で、左右の死角はずいぶんなくなって視界が開けた。このクラスではわりと小回りが効く方なので(最小回転半径5.3m)、小柄な女性でも心理的にチョイ乗りがしやすいだろう。

走りの方はもう完全に乗用車感覚で乗れる。ミニバンのそれではない。コーナーを楽しめる領域まで来ているワンボックス型ミニバンだ。つまり2代目オデッセイ同様ということになる。よく走る2.0リッターエンジン+4ATは動力性能的に十分。

ここがダメ

インテリジェント装備の中に、AFS(進行方向へ首を振るヘッドライト)はともかく、インテリジェントキーがないのは問題。またナビのプログレッシブコマンダーはやはり慣れを要する。直感的に使えるか、あるいはうんと簡単にするかして欲しいものだ(それらを融合するのがベスト)。

操作部分が全て重すぎる。スライドドアのアウターハンドルに始まり、セカンドシートアレンジ、サードシートの跳ね上げ、バックドアの開閉など、男でもひるむほど重い。また操作にも慣れがいるようで、サードシートの跳ね上げはスライドを規定の位置まで戻す必要があるし、回転対座シートは説明書なしでは回転させられなかった。ただし、セカンドシートに関しては回転対座シート固有の問題だろう。ポップアップシートは軽く動くのでサードシートへの乗車も簡単だ。

Dレンジでアイドリング時に、細かいエンジン振動がセカンド/サードシートではお尻に伝わってくる。試乗車個体のものならいいのだが。

デザインはもはやよく分からない世界になっている。横長のデジパネや、水平に走るスライドレールと中途半端に交錯する後ろ上がりのキャラクターラインなど、なんだかヘンに見えるのだが、こちらの感性がおかしいのだろうか。初代シビック、初代シティ、初代ステップワゴンといったホンダの名車のイメージからはかなり外れているという点では、確かに革新的だ。

総合評価

2代目デビュー時のモーターデイズ試乗記を読み直してみたが、当時モーターデイズでは絶賛している。初代の欠点をことごとくつぶし、1列目回転対座シートによる室内ユーティリティの素晴らしさ、3列フルフラットシートによる寝心地など、ファミリーワゴンとして文句なしとしたのだ。ただし、片側スライドシート、小さなセカンドシート、走りの物足りなさ(これは否定してはいない)は指摘しているものの、それを補って余りある良さを褒め称えている。

しかしこの2代目ステップワゴンはあまり売れなかった。それどころか月平均8000台売れた初代をコピーし、両側スライドドアと床下収納を追加しただけ、とも言うべきノア/ヴォクシー(いまだに月平均1万台は売れている)にしてやられ、それより良くできていると思われた2代目ステップワゴンはまっとうに評価されなかったわけだ。実は多くのユーザーにとってこのクラスのミニバンは、今も初代ステップワゴンのコンセプトのままでOKなのだろう。四角くて、少し大きく立派に見えて、十分な広さを持つ箱を求めているわけで、過剰な装備(今やフルフラットシートや回転対座シートすら消えゆく運命)や過剰な走りは要らなかったわけだ。

となると3代目はより難しい。ホンダも悩んだのだろう。3代目は初代や2代目の全否定という方向になったわけだが、その結果生まれてきたのは、まったく新しいワンボックス型ミニバンだった。完全な新設計となったことにより、低くスタイリッシュでホンダらしさ全開の素晴らしい繰安性を持つ「走りのワンボックス」(ホンダのミニバンは全部この方向だから、アイデンティティとしては一貫してはいる)が誕生したわけだが、こと試乗車に関しては乗り心地も固いし、サイズダウンはしていないと言うものの室内の広さはあまり感じない。すごく斬新なデザインとなったインパネ回りも、ファミリーミニバンとしてはそこまでやる必然性を感じないし、シートアレンジにひねりもない。ファミリーミニバンと言うより、今や数少なくなった走り好きの若者向けのクルマという印象だ。

試乗車に付いていなかったが、オプションのトップライトルーフやフローリングが付くとこのクルマが急に楽しいファミリーイメージを帯びてくる。特にナチュラルアイボリーの内装とフローリングのインテリアに、トップライトルーフがつくと、若夫婦向け建て売り一戸建てのパンフレットに共通するお洒落なムードにあふれ、この内装だけでも十分な商品力があると思う。サンルーフは明かり取りだけでなく夏の熱気の換気用に効果的というのがモーターデイズの持論であり、今や強力なツインエアコンや左右電動スライドドア、パワーウインドウ等の装備によって必要度は減ったとしても、実用面では物足りなさを感じる。また、フローリングも素晴らしいがドロやホコリ対策はあまり考えられていないようだ(そのためオプションでカーペットマットを用意しているが)。

何だか辛口になってしまったのは、いまだ乗っている初代ステップワゴンの「道具っぽさ」を3代目が持っていないからだ。ステップワゴンというネーミングは昭和40年代の軽商用車ステップバンをモチーフとしていることは明白。初代はまさにステップバンの復活だったわけで、アメリカンミニバン(商用車)の日本的解釈であり、それゆえホンダも予期せぬ多くのカスタム需要が喚起されたと思う。つまりワンボックス型ミニバンに求められているのは走りではなく、雰囲気であり、道具っぽさだろう。3代目の走りの良さ、使いやすい低床への取り組みは高く評価されるところ。こうした出来の良さをベースとして、使い勝手の方向でコンセプトをまとめると良かったのではないだろうか。今回はステップワゴンに対して過剰に思い入れのあるモーターデイズとしてかなり主観的な見方になっているとは思うが、さて初代、2代目のユーザーは3代目をどう評価し、買い替える気になるのだろうか。

試乗車スペック
ホンダ ステップワゴン G・Lパッケージ
(2.0リッター・4AT・217万3500円)

●形式:DBA-RG1●全長4630mm×全幅1695mm×全高1770mm●ホイールベース:2855mm●車重(車検証記載値):1580kg (F:900+R:680)●乗車定員:8名 ●エンジン型式:K20A●1998cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置●155ps(114kW)/6000rpm、19.2kgm (188Nm)/4500rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/57L●10・15モード燃費:13.2km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:205/60R16(YOKOHAMA decibel E74A) ●価格:217万3500円(試乗車 298万8300円 ※オプション:VSA(ABS+TCS+横すべり抑制) 7万3500円、ディスチャージヘッドライト 4万2000円、HDDインターナビシステム+DVD/CDプレーヤー付オーディオ 34万6500円、リアエンターテイメントシステム 10万5000円、右側パワースライドドア 5万2500円、2列目回転機構 7万3500円、16インチアルミホイール&タイヤ 8万4000円、フロアカーペット 3万7800円)●試乗距離:約200km ●車両協力:株式会社ホンダカーズ東海

 
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