キャラクター&開発コンセプト
ブースを飾ったショーカーが市販化に、ターゲットは若い世代
ホンダの楽しさ創造車「Jムーバー」の第2弾となるHR-Vは、斬新なスタイルと優れたユーティリティー、爽快な走りをコンパクトなボディの中に実現し、世界最高水準の安全・環境性能を備えた新しいジャンルのクルマ。
「HR-V」とは「ハイライダー・レボリューション・ビークル(最低地上高を高くとった革新的なクルマ)」の頭文字を取った名前。クロカンのように車体そのものの高さがあるのではなく、シビックのような2ドアクーペ風の車体を、サスペンションで持ち上げたというもの。これによって高いアイポイントが確保され、雪道や砂浜のような悪路も走りやすくなる。ホンダによると、このクルマの開発、エクステリア、インテリアのデザインはすべて若手に委ねたということ。それだけに20代前半の若い世代の価値観にあった遊び心溢れる大胆な発想を見ることができる。また、2ドアボディのみの設定として、スペシャリティ感覚も強めている(ただし5ドア追加の可能性は否定していない)。
価格帯&グレード展開
価格は129.8~162.8万円(東京地区)と、若者にも嬉しい安価な設定
グレードは3タイプ。エンジンはすべてLEV(ローエミッションビークル=低公害車)対応の1.6リットル直4OHC16V。ミッションは5MTと「HMM-S(ホンダマルチマチックS:ホンダお得意のクリープ付き無段変速機)が設定され、FFが「J」、4WDが「J4」とVTEC仕様の「JS4」となる。また、3グレードに装備の違いはない。ステレオは全車オプションで、どうせ後付けされるだろうと思われるものは省かれている。その分メーカー、ディーラーオプションは多彩。
パッケージング&スタイル
車高を持ち上げた2ドアクーペのスタイルはとにかく斬新、まさに現代のスペシャリティーカー
ショーモデルーのJ-MJの市販バージョンであるHR-Vは、ショーモデルで見せたスタイリングとコンセプトは、ほぼそのまま踏襲しながらもかなり現実的に仕上がっている。ショーモデルに比べ全長は45mm延長され3995mmに、全幅は5ナンバー枠に収まるよう85mm抑えられ1695mmになった。また全高もタワーパーキングを考慮して185mm低くなり1590mmとなる。
プラットフォームはロゴ、エンジンや内部構成部品などにシビック系を使うなど、目に見ない部分に同社の既存部品を約40%流用し、コストを低減している。
外観デザイン・テーマは「ジェットフィール・ハイライダー」だ。背が高く目立つスタイルとジェット機のような勢いあるボディラインで、新しいかっこよさを表現。最低地上高190mmを確保し、フロントマスクは大型アンダーガードでクロカンぽい力強さを、丸基調の異型4灯ヘッドライトで未来感を演出し、今までになかった新しいカタチを創造している。リアビューは、最近のホンダらしく縦型の大型テールランプが目を引く。ますますボルボ(V70)に似てきた?
遊び心溢れるインテリア、すべてが若者の価値観でデザインされている
インパネはロゴやシビックと似たデザインでありながら、グレー基調の2トーンカラーやダイヤル式空調パネル・メーター・ステアリングのHマークにブルーでアクセント効果をあしらったことで、若々しい新鮮さを演出。ドアポケットはネット式、灰皿やシガライターは装備されてなく、代わりにアクセサリーソケットやカップホルダー収納タイプの灰皿(ディーラーオプション)を設定するなど、チープな素材を若者ならではの価値観で上手く価値のあるものに変えている。色調といい、デザインセンスといい、非常にお洒落だ。
絶対的な広さは足りないがスペシャリティカーと思えば十分に満足
全長は3995mmと、シビックよりもコンパクトながら、室内は予想以上に広い。
もちろん室内スペースを最優先したミニバンではないので、必要以上の余裕は追求していない。Aピラーがかなり傾斜しているが、窓ガラスの角度が垂直に近く、クロカン的なアイポイントなので、開放感がある。表皮にジャージを使用したシートはちょっぴり小柄なサイズ。しかしホールド性は十分。ただ、もう少しヒップポイントを上げて欲しい気もするが、これ以上に上げたら頭がルーフに付いてしまうし、これもスペシャリティ感覚と思えば納得できるところか。
助手席の背もたれを前方へ起こせば、シートが前に移動するウォークイン機構を採用しているので、後席のアクセスはそれほど苦労しない。足元はさすがにせまく、とても足を組めるとはいかないが、170cmぐらいの人ならば足元・頭上空間ともに拳一個分の余裕があり、何とか自然な着座姿勢がとれる(リアシートにリクライニング機構は付かない)。でもやっぱり2ドアクーペ、大柄な人は窮屈と感じるはず。緊急用、子供用と考えた方が無難だろう。
次にラゲッジの使い勝手はどうだろうか? リアシートは左右50対50分割可倒式を採用する。ワンモーションタイプとなっているが、ラゲッジフロア自体が高いためにリアシート可倒時でもフラットなフロアを実現しているのが○。反面、重い荷物を載せるときは少し苦労するというのが×。奥行き、幅は合格レベル、トノボードを付けたときの高さは×。ともあれ、若者層を狙ったクルマだけに、カタログ文句の「スノーボードの積載OK」というのがひとつのウリになっている。
基本性能&ドライブフィール
VTEC、CVTを設定、高燃費&クリーンなLEV対応足
エンジンは1.6リットル直4OHCとそのVTEC仕様の2タイプが用意される。前者はFFのJと4WDのJ4に搭載され、105PS/14.1kgmを発生。後者はJS4に搭載され、5300rpmを境にバルブの開閉タイミング&リフト量が切り替わり、低回転でのトルクと高回転でのパワーを両立しているのが特徴で、125PS/14.7kgmを発生する。また両エンジンともLEV(ローエミッションビークル=低公害車)となっており、燃費(10・15モード)は4WDのATでも13.6km/リットルと優れる。
ミッションは5MTと無段変速機HMM-Sを用意。HMM-Sは従来のHMMに、プロスマチック制御(シフトパターンを平坦路、登坂路、降坂路で自動的に切り替えて、ドライバーのアクセル、ブレーキ操作の無駄をなくし、スムーズな走行を実現した学習システム)を加えた最新バージョンだ。ステアリングにはHMM-Sモード切り返すスイッチが備わり、JS4には通常走行の「D」モード、スポーティ走行の「S1」「S2」モードの3つ、JとJ4に「D」と「S」の2つが設定される。つまり2速および3速のマニュアルモード付きCVTということだ。
駆動方式はFFと4WDの2タイプが選べる。4WDは、滑ったときだけ後輪にも駆動力を伝えるデュアルポンプ式を採用した。
軽快でスポーティーな走りがいかにもホンダ車らしい
試乗したのは1.6リットル+VTECに4WDが組合わさったJS4。ホンダの無段変速機はクリープも付いており、ギクシャクとした感じもなくほとんど普通のオートマチックと大差のない素晴らしい仕上がりとなっている(出足でほんの一瞬もたつくのが気になる人がいるかもしれない)。絶対的なパワーはないものの、レッドゾーンの7000回転までキッチリと回るため、パワー不足が感じられない。車重は1190kgと軽く、運転していても軽さが分かるホンダ車らしいスポーティーな走りが印象的だ。ステアリングは軽すぎず適度なセッティングで、誰でもすぐに馴染めるもの。
ステアリングのHMM-Sモードスイッチを押せば、「S1」モードとなり、エンジン回転数が「D」モードで2000回転だったのが2500回転まで高くなる。でもこれではワインディングなどアクティブな走りを楽しむにはちょっと中途半端。そこでもう一度スイッチを押して「S2」モードにするとさらに1000回転ほど高まり、常に高回転を維持しながら、走りを楽しむことができるわけだ。
ハンドリングは軽快。いわゆるクロカン的な腰高感がなく、乗用車的なコーナリング感覚だ。もちろん100km/h巡航はごく平和で、エンジン音も低い。中間加速はモードを切り替えるとキックダウンと同様の効果が出る。ただここからの加速は強力とは言い難い。CVT特有の回転の高まりに遅れてスピードがついてくる感じがどうしても出てしまうが、それでもエンジンは軽くレッドゾーン手前まで回るので、感覚的なズレこそあれ、「かったるい」というものではない。150km/h巡航も安定しており1.6リットルなら、十分納得できる。
個人的にはベースモデルのJがお勧め。VTECではないが車重が60kgも軽いから、キビキビと走ると思う。またメインは街乗りというHR-Vのキャラクターにあっていると思うし、何てたって価格が20万以上も安い138.4万円というのが魅力。
ここがイイ
こういうハイライダーはどのメーカーも考えてはいたが、現実にはホンダが初めて完成させた。こういう先進性がホンダのいいところ。スタイルはミニ四駆みたいで、やがて免許をとる子供達にもかっこいいクルマとして記憶されるだろう。値段の安さも凄い。設計図を引く前からどうしたら安く作れるかをまず打ち合わせ(流用部品を検討したのだろう)、その後本格的に設計していったという。いつだったかホンダは原価を大幅に引き下げる新技術を開発しているという噂があったが、それがこれか? いや、もっと凄いコストダウンの技(プレス鋼版を使わない?)も開発中とか。とにかく、この不況下、価格の安さはどうにも魅力的に映る。
ここがダメ
インパネの内部構造は恐らくシビックあたりが流用されていると思われ、その結果カーナビ画面は新しいクルマにもかかわらずかなり低い位置。コストがもろにはねかえった結果で、これはちょっと賛成しかねる。若者向けならインターナビが使いやすいインパネをぜひ奢って欲しかった。それと、なんだかちょっとだけ運転席シートがセンターよりドア側に寄っている様に感じたのだが…(ステアリングが左にオフセットした感じがつきまとった)。
総合評価
ショーの時にはさほどカッコイイとは思わなかったのだが、現物は妙にカッコよく見える。正直なところ私たちがカッコイイと感じるクルマは、世の中ではそうは思われないことが多いので、一般の評価はどうなのだろう。実際、すでに何人かの人間が購入を検討しており、モーターデイズのまわりではかなり評価が高い。悲しいことだが、クルマにお金をかける若者がだんだん減っているのは確か。ベース車をそのまま乗るも良し、ドレスアップするも良しと安い価格で提出するのは、ステップワゴンもそうだが確実に支持を受けている。その意味ではこのクルマもおそらく成功するだろう。
公式サイト http://www.honda.co.jp/HR-V/2006/index.html
