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スズキ ハスラー新車試乗記(第719回)

Suzuki Hustler

(104万8950円~157万6050円)

消費税が上る前に、
スズキが祈る時、
ワゴンRとジムニーが結婚した!
だから軽クロスオーバーなのだ!

2014年02月21日

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キャラクター&開発コンセプト

軽ワゴンとSUVのクロスオーバー


東京モーターショー 2013に出展された新型スズキ ハスラー

2013年11月に開幕した東京モーターショーでお披露目された新型ハスラーは、ワゴンRのようなトール型軽ワゴンとSUV(スポーツ用多目的車)を融合させた新ジャンルの軽自動車。市販車は12月24日に正式発表され、年明けの2014年1月8日に発売された。

一番の特徴は、「アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」をテーマとした内外装デザイン。また、4WDモデル(CVT)には、低μ路での発進をサポートする「グリップコントロール」機能や、急な下り坂ではブレーキ制御等で車速を約7km/hに維持する「ヒルディセントコントロール」機能を追加するなど、オフロード走行性能も若干高められている。

現行ワゴンRがベース


スズキ ハスラーと言えば、1969年に登場した2ストロークのオフロードバイク「TS」シリーズが有名。国内向けがハスラーと呼ばれ、全盛期には50ccから400ccまであった。写真はスズキ歴史館の展示車で、1970年代の空冷モデル。左から400、50、90

ベースは現行の5代目ワゴンRであり、超高張力鋼板を多用した軽量プラットフォームをはじめ、トルクフルなR06A型エンジン、超ワイドな変速比を誇るジヤトコ製副変速機付CVT、リチウムイオンバッテリーを使ったブレーキエネルギー回生システム「エネチャージ」、レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)といったスズキの最新技術は、全て現行ワゴンRから受け継がれている。

生産は湖西工場(静岡県湖西市)。販売目標は月間5000台と、ワゴンR(1万6000台)の約1/3だが、受注はうなぎのぼり。納期は仕様にもよるようだが、現時点で半年待ちとも言われている。

なお、マツダには「フレア クロスオーバー」としてOEM供給され、2014年1月31日に発売されている。こちらの目標台数は月間500台。

 

価格帯&グレード展開

104万8000円からスタート。売れ線は130万~150万円台


試乗した2台。いずれもXで、左のピンクがターボ・4WD、右のシルバーがNA・FF

エンジンは自然吸気とターボの2種類で、駆動方式はFFと4WD。ミッションはCVTがメインだが、下位グレードでは5MTを選択できる。

価格は104万8000円からだが、ホワイト2トーンルーフなどの人気オプションを選べるのは、中間グレードの「G」から。売れ筋はGグレードに、2トーンルーフ(4万2000円)、ディスチャージドヘッドランプ、運転席シートリフター、チルトステアリング等のセットオプション(6万3000円、これは必須)、4WD(約12万円高)、ターボ(8万4000円高)を追加した130万~150万円台になりそう。全部のせは、160万円を超える。

 

写真の15インチスチールホイールは「A」と「G」に標準装備。基本はガンメタだが、ホワイトルーフ車のみホワイトになる。最上級「X」は切削タイプのアルミが標準

【ラインナップ】
■A(5MT)   104万8950円(FF)/116万6550円(4WD)
■A(CVT)   104万8950円(FF)/116万6550円(4WD)

■G(5MT)   112万7700円(FF)/124万0050円(4WD)
■G(CVT)   121万1700円(FF)/133万4550円(4WD)
■Gターボ(CVT) 129万5700円(FF)/141万8550円(4WD)

■X(CVT)    136万9200円(FF)/149万2050円(4WD)
■Xターボ(CVT) 145万3200円(FF)/157万6050円(4WD)

 

パッケージング&スタイル

道具感あり、可愛らしさあり


ヘッドライト周辺は初代ジムニー(LJ10、LJ20系)や現行ジムニー(JB23)、そして前後フェンダーのショルダーラインは初代/2代目エスクードがモチーフとのこと

これだけデザインで老若男女に絶賛される軽自動車も珍しい。ボディサイズは全高も含めて現行ワゴンRと大差ないが、アウターパーツはほぼすべて新規。丸目の異型ヘッドライト、小さめのグリル、無塗装の前後バンパーやフェンダーアーチ、表情豊かなボディサイド、立ったAピラー、ワゴンR比で+25mmの最低地上高(175~180mm)、大径タイヤ(全車165/60R15)などで、タフな道具感と可愛らしさを両立したデザインとしている。

面白いのは、2スト時代のジムニーや初代エスクードなど、スズキが誇る歴代SUVへのオマージュが随所に隠されていること。ボディサイズに制約がある中、これは本当にグッドデザイン賞ものじゃないだろうか。

ボディカラーは全9色。2トーンルーフ仕様も用意


NAとターボを外観で見分けるのは困難。識別点はマフラーエンドの形状と太さくらいしかない

全部で9色、2トーンルーフ(ホワイトもしくはブラック)を含めると11パターンあるボディカラーも、ハスラーの楽しさを倍増させている。新色のパッションオレンジ、サマーブルーメタリック、キャンディピンクメタリックの3つは、ホワイトルーフの2トーン仕様。また、フェニックスレッドパール(ワゴンR スティングレーと同じ赤)とブラックルーフといった組み合わせも用意している。2トーンルーフはMINIというより、トヨタのFJクルーザーや、その元ネタであるランドクルーザー40系を思わせる。

 

ディスチャージヘッドランプ(LEDポジションランプ付)はXだと標準だが、Gでは運転席シートリフター等とセットオプション(6万3000円)

リアのエンブレムは頭文字の「H」型。リアコンビランプの形状は初代(1988年~)/2代目(1997~2005年)エスクード譲り

これはスチールシルバーメタリック。Aピラーが起こされ、ロングルーフ化されたことで、シルエットはワゴンRとは別物になっている
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ N-ONE 3395 1475 1610 2520 4.5-4.7
スズキ ワゴンR/
ワゴンR スティングレー
1640~1660 2425 4.4~4.6
スズキ ハスラー 1665 4.6
スズキ ジムニー(JB23型) 1680~1715 2250 4.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装デザインとパッケージングも文句なし


一眼メーター、エアコンルーバー、スピーカーリングの形状は、ヘッドランプと同じ。新開発のシボが採用された黒い樹脂部分の質感も高い

ダッシュボードのカラーパネルは新開発の材料着色素材で、車体色がオレンジの場合はオレンジだが、それ以外は写真のピュアホワイトになる。車内が明るくて楽しい雰囲気なのは、このパネルのおかげだ。

また、シートカラーは全車ブラックだが、外装オレンジの場合はオレンジの、ブルーの場合はブルーの、ピンクの場合はピンクのパイピングが施される。それ以外の外装色はホワイトのパイピングになる(Aグレードはパイピングなし)。コスト制約のある中、これだけ楽しく出来た内装デザインにも100点をあげたい。

 

助手席を畳めば(座面を跳ね上げ、ヘッドレストを抜いて倒す)、お弁当を広げられる耐荷重2kgのテーブルに早変わり

メーカーオプションのスマートフォン連携ナビは7万3500円高(GのCVT車やXのみ)。インパネボックスのリッドは、開けると耐荷重1.5kgのテーブルになる

液晶ディスプレイには、エンジン始動時と停止時に、各4パターンのイラストがランダム表示される。燃費計のほか、タコメーターも表示可能
 

後席は前後スライドやリクライニングが可能。リアドアポケットには、ペットボトルやちょっとした長物も収納できる

運転席シートリフターやチルトステアリングは、Gだとセットオプション。運転席シートヒーターはAの2WD車を除いて標準

センターコンソールの足もとにも大型のドリンクホルダー(センターロアポケット)がある
 

荷室フロアには取り外し可能な樹脂製ボードを採用。濡れたものや汚れたものも大丈夫

助手席まで畳めば、大人が足を伸ばして横になれる。室内長は2160mmで、ジムニーより500mm長い。

荷室の床下にはパンク修理キットを搭載する
 

基本性能&ドライブフィール

【自然吸気・FF】 基本的にはワゴンRと同じ

試乗したのは、CVTのNA・FF車とターボ・4WD車の2台(グレードはいずれも最上級のX)。浜松市にあるスズキ本社をスタートし、同市内や浜名湖周辺、東名高速道路、浜名バイパス等で試乗した。

まずはNA・FFの印象から。ベースはワゴンRということで、のっけから身も蓋もないことを言えば、中身はワゴンRとほぼ同じ。車重は現行ワゴンRとほぼ同じ800kg(試乗車)で、CVTのギア比もまったく同じ(タイヤは大径化されているが)。トルクフルなR06A型エンジン(最高出力52ps、最大トルク6.4kgm)、超ワイドレンジのCVT、超軽量ボディ、オルタネーターの負担を減らすエネチャージなどによって、ワゴンRでも「けっこうよく走るなぁ」と思ったが、ハスラーでも普通に街中を走るだけなら、NAで十分と思わせる。

 

もちろんNAなので、加速時にはアクセルを床まで踏み、エンジンを高回転までブン回すことになるが、その場合でも軽のノンターボとしてはノイズレベルが低くて、音質も耳障りではないし、速度のノリも比較的いい。このあたりが、このR06A型エンジン&ジヤトコ製CVTのいいところ。

CVTのギア比はターボ車と全く同じで、100km/h走行時でもアクセルを緩めると、2300回転くらいまで下がるが、巡航する時は3000回転前後まで上がっている。それでも、回転は十分に低く、エンジン自体は静か。

その一方で、ちょっと加速しようとすると、軽自動車らしく、それなりにノイジーになるのは仕方ないところ。ここは、後で触れるターボとの差が大きい部分。最高速は120km/hまでならすぐに出そうだが、その後はジリジリ。総じてNAでは、加速時に軽自動車であることを実感させられる。

【ターボ・4WD】 軽に乗ってる感がまるでない


ターボエンジンはワゴンR スティングレー譲り。最高出力64ps、最大トルク9.7kgm

続いてターボ・4WD。ターボエンジンはワゴンR スティングレーなどと同じで、NAと比べると最高出力は約2割(12ps)増しの64ps、最大トルクは約1.5倍の9.7kgmにアップする。車重はターボで20kg、4WDで50kg増えて、ターボ・4WDでは870kg(Xグレード)になる。

NA(少なくともFF)に乗ると、「これだけ走れば、ターボじゃなくてもいいな」と思うのだが、ターボに乗ると「うーん、やっぱりターボはいいな」になる。ワゴンRの時よりターボに惹かれるのは、やはりSUV的な車両イメージにパワー感が合っているせいか。

試乗したターボ車はフルタイム4WD仕様で、車重のほか、若干の駆動抵抗も増えているはずだが、ターボだと車体とパワーのバランスがとれていて、とてもいい。パワー感、静粛性、乗り心地は1~1.3リッタークラスの普通車並みか、それ以上で、軽自動車に乗っている感がまるでない。

【ターボ・4WD】 高速道路も快適至極

乗り心地もNA・FFより、心なしかしっとり、ゆったり。車重が70kg重い上、やはりエンジンのトルクが分厚い分、加速にせせこましさがなく、ちょっとした重厚感すらある。試乗車はたまたまスタッドレスタイヤ(ブリヂストンのブリザック)を履いていたので、よりその印象が強まっていたかも。開発時には、主に近所の足として使われるワゴンRに対して、長距離ドライブにも積極的に使われるだろうと考え、SUVらしくゆったりした乗り味にチューニングしたというが、その乗り味を一番よく実現しているのが、このターボ・4WDだと思う。

操縦安定性に関しては、NAだとパワーがない分、コーナーではアンダーステアの大小が変化するくらいで何事も起きないが、ターボの場合は(試乗車がスタッドレス仕様ということもあるが)、前輪が加速時に路面を掻いたり、アクセルオフでリアが流れたり、ということがあった。もちろんそんな時でも、主要グレードのCVT車に標準装備されるESPがすかさず介入してくれるので、不安はない。

 

ターボなら高速道路も余裕。80km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転を下回る

当然ながら、ターボは高速道路でも快適。100km/h巡航は2300~2400回転くらいで、上り坂でも余裕で登ってくれる。140km/h手前でリミッターが作動するようだが、動力性能は十分だ。また、ターボ車で一つ不思議だったのは、NAよりも風切り音が静かに感じられたこと。資料には、NAとターボで遮音・吸音材の仕様に違いがあるとは書かれていないが、けっこう明確に差があった。

それから、浜松近辺でおなじみの? 海からの横風に対しては、NA・FFではちょっとふらつくことがあったが、ターボ・4WDはほとんど普通車のコンパクトカー並みに安定して走れた。これはターボ・4WDの方が70kgも重く、おそらく重心も低いせいだと思う。直進安定性はどちらも十分なレベル。

基本は「生活四駆」だが、ノウハウはジムニー仕込み?


アプローチアングルは小さめ。フロントのバンパースキッドプレートは材料着色のSSPP(スズキスーパーポリプロピレン)製

ターボ・4WDではオフロードも少し走ってみた。4WDシステムは、ワゴンRと同じビスカスカップリングを使ったフルタイム4WD。FF・4WDの切替が不要で、初心者でも扱いやすいのがメリットだが、一方で、フルードの粘性を使ったビスカスカップリングの特性上、本格的な悪路走行には向かないとされている。

そこでハスラーでは、ESPを使ったオフロード走行用の制御モード「グリップコントロール」を新採用。これは、空転し始めた車輪に対するブレーキ制御を通常のESPより早めて、グリップしている方の車輪で駆動力を発揮できるようにするもの。合わせて、低μ路の急な下り坂で車速を自動的に約7km/h以下に保つヒルディセントコントロールも新採用された。最近のSUVでは割と当たり前の装備だが、軽ではこれが初とのこと。

 

左のスイッチがグリップコントロール、中央がヒルディセントコントロール(HDCの作動表示灯はメーター内にある)

この日は関東や甲信越で大雪が降った日の直後だったせいか、試乗車にはスタッドレスが装着されていたが、浜松にはもちろん雪はなく……、それでもせっかくなので、ちょっとしたオフロードや砂地を走ってみた。その範囲でも確認できたのは、やはり対地クリアランスは普通の軽より断然余裕があること。ワゴンRベースとはいえ、そこはジムニーやエスクードを作っているスズキ。アプローチアングルこそワゴンRの3度増しに留まる28度だが(ジムニーは軍用車並みの49度もある)、ディパーチャーアングルは5度増しの46度を確保している(ジムニーは50度)。軽自動車はもともとオーバーハングが短いせいもあるが、「クロスオーバー」SUVとしては十分に立派な数値だと思う。

 

グリップコントロールの効果はよく分からなかったが、雪道などでスタックしかけた時には「切り札」として使えるのでは。パートタイム4WDのジムニーみたいな走破性は期待すべきではないが、悪路走行など普段はしない一般ドライバー向けの「生活四駆」としては、かなり欲張った性能だと思う。

あと、最小回転半径が4.6メートルと小さいことも、軽クロスオーバーならではのメリット。林道や雪道では行き止まりなどでUターンしたいことがよくあるが、そんな時も軽のサイズなら余裕。この点はジムニー(最小回転半径は4.8メートル)も得意とするところだ。

 
    最低地上高(mm)
2WD
最低地上高(mm)
4WD
アプローチ
アングル(度)
ディパーチャー
アングル(度)
スズキ ワゴンR 155 150 25 41
スズキ ハスラー 180 175 28 46
スズキ ジムニー 200 49 50
トヨタ FJクルーザー 230 34 27
 

試乗燃費はターボで12.6km/L、NAで16.8km/L。JC08モード燃費は23.2~29.2km/L


燃料タンク容量はワゴンRと同じで27リッター。ターボでも無給油で300kmは走れそう

今回はスズキの浜松本社を起点に、ターボ・4WDとNA・FFで約50kmずつ走行(撮影を除く)。あくまで参考ながら、試乗燃費(車載燃費計)は、ターボが12.6km/L、NAが16.8km/Lだった。

JC08モード燃費は、それぞれ25.0km/Lと29.2km/Lだから、実用燃費はおおむね半がけという感じ。ハスラー全体のモード燃費は、23.2km/L(NA・5MT・4WD)~29.2km/L(NA・CVT・FF)。高速道路では、エンジンを回さずに走れる分、ターボが意外に伸びるかも。

 

ここがイイ

デザイン。豊富で楽しいオプション。ワゴンR譲りの機能性・装備

とにかくデザイン。最近の日本車の中ではベスト、と言い切るのはオーバーにしても、ベストスリーには入るのではないか。既存の軽をベースにクロスオーバー風に仕立てたクルマは過去にもあったが、それらとは全くレベルが違う仕上がり。ある意味、デザインが売りのパイクカー(死語)とも言えるが、この遊び心あるデザインは本物だと思う。そしてインテリアはもちろんのこと、スチールホイール(俗に言えば鉄チン)ですらが、専用にデザインされている(これがまた、とてもカッコいい)。

オプションも豊富だ。エンブレムだけでも多くの種類があり、中でもペンギンの親子が4匹いるのが一番人気とのこと。往年のオフロードバイク「ハスラー」に付いていた、翼のはえた赤いオーバルと「S」マークのエンブレムも、熟年にはたまらないかも。もちろん、豊富なボディカラーも楽しい。鉄チンホイールに入れるラインやボディストライプもあるから、趣味よく個性的な外観にできる。

 

アウトドアでの着替えでも便利なカーテン&タープキットを装着したところ

オプションには遊びのツールもいろいろ用意されている。ハスラー自体が「遊びのクルマ」感に満ちているが、アクセサリーカタログはもちろん、車両カタログにおいても、巻頭からタープやら、車中泊用のクッションやらが掲載され、ハスラーの楽しさを伝えている。クルマが単なる移動の手段ではなく、夢のある動く道具であることを、このクルマ(とオプション)が体現しているのだ。

パッケージングや機能性はワゴンRと同じと書いたが、それ以外にもパワートレイン、新アイドリングストップシステム、エネチャージ、レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)といった最新装備をワゴンRから譲り受けていること。ハスラーの良さは、現行ワゴンRの良さでもある。

ここがダメ

メーカーオプションのナビ。テレスコの不備。NAのアイドリングストップからの再始動・発進。

メーカーオプションの「スマートフォン連携ナビゲーション」は、フリック、ピンチイン、ピンチアウトといった、スマホと同じ操作が出来るが、残念ながら走行中にこれらの操作は出来ない(従来のタッチパネル式ナビでできる操作は可能)。また、停止中であっても、これらの操作に対する反応はあまり良くなく、初期のAndroidタブレットを思わせる。また、地図をかなり拡大しないと細かい道路が表示されないなど、地図の見みやすさにも不満が残る。ワンセグとバックモニターが付いて7万3500円という価格は良心的だが、性能的にはもうちょっとがんばってもらいたいところ。なお、ディーラーオプションでも、同様のタッチパネル機能を持ったもので、さらに高性能なものが何種類か用意されている(値段はそこそこするが)。

これだけ人気のクルマであり、普通車からのダウンサイザーや、普通車と併用するセカンドカー需要も多そうなことを思うと、ステアリングのテレスコ調整は欲しかったところ。背もたれを立てた姿勢をとらないと、ちょっとステアリングが遠い感じがする。必須とも言うべきチルトとシートリフターは、上位グレードに装備されるが(とはいえ売れ筋のGグレードでもセットオプション)、さらにテレスコがあれば、もっと「軽自動車で十分」感が出たと思う。

細かいことを言えば、最上級のXでも、下位グレードと同じ鉄チンの方が良かった。「G」に6万3000円のセットオプションを追加すれば、鉄チンのままX並みの装備になるが、その場合はステアリングが本革にならず、ウレタンになってしまう。

アイドリングストップからの再始動・発進は、ターボなら問題ないが、NAだと一瞬もたつく感じがある。この「モワッ」という感じがどうしても気になる人は、ターボを選んだ方がいいかも。

総合評価

最近のスズキはデザインが分かっている

先のモーターショーで一目見て、恋の花が咲いてしまった、そんな人は多いようで、とにかくバカ売れ状態のハスラー。しかも老若男女にウケている。クルマにそんなにお金かけられないけど、こだわりのクルマが欲しいという若い男性、足としてかわいい軽が欲しいという若い女性、ママ用のクルマを押し付けられたくない若いお母さん、といったヤング(死語)はもちろん、中高年からシニア(これは生きてる語)までが、このスタイルに惹かれ、足に欲しいと思っている。それにしても、生活の足として使えるクルマで、ここまで広い世代に訴えることが出来たデザインは、ちょっと今までの日本車にないのではないか。

この外観が年齢を問わず好まれるのは、オフロード車的なワイルドさがあるからだろう。トヨタのFJクルーザーもそうだが、オフロード車の方がデザイン的にも遊びがあるし、よりオモチャっぽく、ポップな感じに仕立てることが可能だ。ポップにするとヘタをうてば、カ・ワ・イ・イだけのクルマになってしまうが、四駆の精悍さを加えたことで、より多くの人にウケるデザインになる。ちょっと前から流行っているツートーン塗装もSUVだから、よりハマるのだ。

 

インテリアデザインも、カラーパネルとかシートのパイピングとか、遊び心にあふれている。室内空間も、これまで軽が成し遂げてきた進化の結果、見事に広いから、かなり大柄な人でも十分だろう。聞けば今回は、デザインを含めて通常より短期間(2年ほど)で開発を行い、会社の上層部もそのデザインを軽く認めてしまったらしい。最近のスズキは全社的にデザインが分かっていると思う。例えば現行のMRワゴンなどはグリルレスのため、かなり個性的な顔つきになっているが、にもかかわらず、あれを出してしまったのは偉いと言うしかない。今回のハスラーも、グリルが控えめなのがいいと思う。あざとくウケ狙いしたカスタム系のハデ顔だったら、逆にこんなにも広い層にはウケないだろう。

走ってみても、おそらく誰もが満足できるはず。本文にあるとおり、NAでも十分で、ターボならなお良い。今回はNAが、ワゴンRのそれよりいっそう走るように感じたのだが、ワゴンRのように燃費コンシャスにしなくてもよかったことが幸いしているのかも。アイドリングストップからの始動・発進にちょっともたつく感じがあったのは残念で、ここはちょっと手を入れてもらいたいところだが、嫌ならアイドリングストップをオフにするという手もあるから、まあいいんじゃないのと思える。

「クラスレス」という新たな次元に


東京モーターショーにハスラーと同時に出展された「ハスラークーペ」。あくまでもコンセプトで、市販予定はないとのこと

クルマには夢が必要なのだが、スーパーカーのような高尚な夢に、頑張れば手が届くという良い時代は過ぎ去ってしまった。それとは違う夢、いまやそれは「リア充」と呼ばれるのだが、それを実現できる手が届きそうな道具として、ハスラーというクルマは好まれているのだろう。実際に使うかどうか分からない4WD性能とか、アウトドアで使える防水仕様の荷室とか、このクルマのささやかな夢は多い。熟年層だって、これ1台あれば定年後はなんだか楽しく過ごせそうな夢が見られる。昔は軽トラ、今ならハスラーだ。であれば、これをベースに、リアをぶった切ったトラックがあっても面白い。モーターショーにはクーペが出ていたが、ボディバリエーションをいくつも作ったら、ハスラーシリーズとして一つのジャンルになるのではないか。

 

こちらは2007年の東京モーターショーで発表されたスズキの「X-HEAD」。2人乗り小型トラックのコンセプトカー

そしてそんな道具感が、このクルマのクラスレス感を生んでいる。軽自動車はお金がないから乗るものという捉え方がいまだにあるが、道具感があれば、それを覆せる。例えばジムニーはその代表だろう。初代ワゴンRにもそういうイメージがあり、貧富や年齢を越えて多くの人に乗られた。かつてのダイハツ ネイキッドにもそれを期待したのだが、時期尚早だったのか、売れないまま消えてしまった。ハスラーにはそうはなってもらいたくないものだ。

とにかくハスラーは、経済性云々ではなく、純粋に乗っていてカッコイイ。小さいのに、安いのにカッコイイ。そしてそれが軽の新たな世界を創るだろう。しかも今の軽はネイキッドの時代とは違って、走りでも室内空間でも燃費でも不満がないのだ。ハスラーによって、広くて、よく走る軽というものが、もう一段上の「クラスレス」という新たな次元に進化したといってもいい。

 

悲しむべきは軽自動車税が引き上げられたことだ。安くていいものを作り、それを国民が喜んで買うと、お上が上前をはねる、というのは、どうにもいただけない。ハスラーを筆頭にした軽自動車は今や日本の誇りではないか。ソニーのパソコンは台湾製や中国製に勝てない商品になってしまったが、軽自動車は日本でしか作れない高水準な工業製品だ。そしてデザインの良さは、これはまさにポップカルチャーだと言えると思う。カ・ワ・イ・イが世界の共通語なら、「Kei」も世界の共通語になる可能性を持っている。であれば、ハスラーにはさらに、日本が誇る最新のIT装備や安全装備やらを満載して、可愛くて最先端の乗り物にし、海外へも出してしまおう。この箱庭的製品こそが、日本の伝統的なモノづくりであり、かつてのソニーのトランジスタラジオのように、世界に誇れる製品ではないか。それを保護しないでどうする、と安倍ちゃんには言いたいのだけど、軽自動車になんて今まで乗ったことがないだろう彼に理解できないだろうな、と思う(ちなみに河村名古屋市長の公用車は軽自動車です)。

 

試乗車スペック
スズキ ハスラー X
(0.66L 直3・CVT・FF・136万9200円)

●初年度登録:2014年1月●形式:DBA-MR31S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1665mm ●ホイールベース:2425mm ●最小回転半径:4.6m ●乗車定員:4名 ●車重(車検証記載値):800kg(500+300) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:R06A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:64.0×68.2mm ●圧縮比:11.0 ●最高出力:38kW(52ps)/6000rpm ●最大トルク:63Nm (6.4kgm)/4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/27L ●JC08モード燃費:29.2km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイルスプリング/後 I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)+コイルスプリング ●タイヤ:165/60R15(Dunlop Enasave EC300+)
●ボディカラー:スチールシルバーメタリック

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試乗車スペック
スズキ ハスラー X ターボ
(0.66L 直3 ターボ・CVT・4WD・157万6050円)

●初年度登録:2014年1月●形式:DBA-MR31S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1665mm ●ホイールベース:2425mm ●最小回転半径:4.6m ●車重(車検証記載値):870kg(540+330) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:R06A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:64.0×68.2mm ●圧縮比:9.1 ●最高出力:47kW(64ps)/6000rpm ●最大トルク:95Nm (9.7kgm)/3000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/27L ●JC08モード燃費:25.0km/L

●駆動方式:フルタイム4WD(ビスカス式) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイルスプリング/後 I.T.L.(アイソレーテッド・トレーリング・リンク)+コイルスプリング ●タイヤ:165/60R15(Bridgestone Blizzak Revo GZ ※スタッドレス)
●ボディカラー:キャンディピンクメタリック(ホワイト2トーンルーフ)

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●試乗日:2014年2月 ●車両協力:スズキ株式会社

 
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