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ヒュンダイ クーペ新車試乗記(第217回)

Hyndai Coupe

 


2002年04月20日

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キャラクター&開発コンセプト

海外ではすでに名の売れたモデルの2代目

2002年4月2日に発売が始まった新型ヒュンダイ・クーペ。実は、今回のモデルは2代目。'96年にデビューした初代モデルは、ヒュンダイ初のスポーツカーとして韓国はもちろん、ヨーロッパやアメリカですでに販売されていた。ちなみにヨーロッパでは日本と同じく「ヒュンダイ・クーペ」だが、アメリカでは「ティビュロン」(Tiburon、スペイン語で「鮫」の意)、韓国では「タスカーニ」(Tuscani)と呼ばれる。

つまりヒュンダイ・クーペは日本でこそ知る人ぞ知る存在だったが、すでに正真正銘のグローバルカー。また、価格の安さを武器に世界市場を開拓してきたヒュンダイにとっては、自社のブランドイメージを高める大切なモデルでもある。価格だけでなくクルマ自体の魅力で選ばれるメーカーになりたいと願うのは、当然ながらヒュンダイも例外ではない。

「デザインとパフォーマンス」で選ばれるクルマに

そんな大きな使命を担ってデビューした初代ヒュンダイ・クーペ(ティビュロン)はクーペ需要の根強いヨーロッパでまずまずの成功を収めた。ただしその理由が相変わらず低価格にあったことは否めない。そこで今回登場した新型は、引き続き「リーズナブルな価格」をセールスポイントとしながらも、さらに上を行く「高品質」「デザイン」「高性能」を目指して開発された。

自動車生産台数では世界ベスト10に入る大メーカーのヒュンダイだが、2001年からようやく本格的に進出した日本ではまだ知名度が低い。現在、国内には30余りしかディーラーがなく、販売も苦戦している。しかし世界の他地域に比べて後手となった隣国市場への意気込みは高い。目標として2005年までにはディーラー数を200店、販売台数を年間3万台に設定する。そのためにも、このヒュンダイ・クーペでブランドの知名度アップをぜひとも図りたいところだ。ヒュンダイがオフィシャルパートナーの一つに名を連ねるサッカーワールドカップ日韓共催の今年、日本でのヒュンダイ・クーペの販売目標台数は年間500台。あくまでもイメージリーダーとしての役割が期待されている。

価格帯&グレード展開

日本が世界で一番安い? 199万円のバーゲンプライス

海外では1.6リッターや2.0リッター4気筒モデルも用意されるが、日本に導入されたグレードは「FX V6」1種類。エンジンは2.7リッターV型6気筒。トランスミッションは4速ATの他、ヒュンダイ初の6速MT搭載モデルがある。17インチアルミホイールや、電動ガラスサンルーフ、トラクションコントロールを標準装備。また安全装備は全車にデュアル&サイドエアバッグ、EBD付きABS、プリテンショナー&ロードリミッター付きシートベルト装備と文句なし。ちなみに韓国は左ハンドルの国であるが、日本仕様は右ハンドル。ウインカーもちゃんと右レバーでの操作としてあるのは評価したい。

オーディオレスであることを除き(6スピーカー&アンテナは標準装備)、ほぼフルオプション状態のヒュンダイ・クーペ。価格は4AT・6MTとも199万円! というバーゲンプライス。ただでさえ安いヒュンダイ・クーペであるが、今、世界で一番安くヒュンダイ・クーペ(のトップグレード)が買える国は間違いなく日本だ。文字通りの戦略的価格と言える。

パッケージング&スタイル

エッジの効いたデザインは先代に引き続きイタリアン・モード

全長×全幅×全高は4395×1760×1330mm。このクラスのクーペとしてはごく平均的な3サイズだ。ホイールベースは2530mm。ライバルとしてヒュンダイ自ら名指しするトヨタ・セリカ(4335×1735×1305mm、WB:2600mm)と比べるとほんの少しずつ大きいが、ほぼ同サイズと言って良い。

ただし見た目の印象は大きく異なる。セリカのキャブフォワード、ショートオーバーハングの先進的スタイルに対し、ヒュンダイ・クーペは古典的なロングノーズ&ショートデッキ。オーバーハングも長い(そういう意味ではスープラに近い)。また、もともとヒュンダイ・クーペは初代からイタリアン・テイストの濃いデザインだったが、新型にもそれは受け継がれている。

デザインは韓国にあるヒュンダイ・デザインセンターにて行われたと公式にアナウンスされているが、そもそもヒュンダイは日本のホンダ同様、ピニンファリーナと親しい関係にあり(2001東京モーターショーに出たヒュンダイのミニバン・コンセプトカー「LAVITA(ラビータ)」はピニンファリーナデザイン)、このヒュンダイ・クーペについてもその影響がかすかに感じられる。例えばフェラーリ456GT似のサイドのキャラクターライン、そしてリアハッチゲート付近の面処理。サイド&クオーターウインドウの造形。この手のデザインをそつなくこなすのはイタリアのカロッツェリアじゃないとかなり難しいはずだが、いかがだろうか。

クラシカルなロングノーズに落ち着いた理由の一つは、フロントに大きなV6エンジンを積むからだろう。だから全体のシルエットは仮想敵たるトヨタ・セリカ、ホンダ・インテグラより、V型6気筒モデルの設定がある三菱・エクリプス(日本未導入)、あるいはフォードグループのマーキュリー・クーガーに近い。

またヒュンダイ・クーペは世界最大級と言うヒュンダイの風洞実験施設を使って、空力についても入念にチェック。Cd値(空気抵抗係数)0.342は「このクラスのクーペとしては最小レベル」と同社は主張する。

日本車も真っ青? クオリティ&機能性とも申し分ないインテリア

インテリアのクオリティの高さは驚異的だ。東京モーターショーで初めて実車(参考出品)を見た時、「市販車もほんとにこれ?」と思わず疑ったドイツ車ばりの緻密さは、嬉しいことに変わっていなかった。まず目を引くのがセンターコンソールに並ぶ3連アナログメーター。右から電圧計、瞬間燃費計、そして他ではあまり例のない「エンジントルク計」(Nm表示)。「エンジントルク計って何か役に立つの?」という素朴な疑問はこの際置いといて、嬉しいのはその丁寧な造りだ。スピード&タコメーターと同じく、この3連メーターもメタル調のベゼルで縁取られる。またセンターコンソールやドアトリムの一部にクリア塗装されたメタル調パネルが使われ、これがまた好印象。さらに思わずAUDI TTと同じパーツかと思った金属製大型フットレストやペダル類。見た目・操作感ともなかなかだ。

全体としてインテリアデザインには、変に遊んだ部分や奇をてらったところがない。各部に使われた樹脂パーツの質感や精度も驚異的に高い。ちなみに日本仕様はヨーロッパではオプション設定のあるオートエアコン&プッシュ式空調コントロールではなく、マニュアル&ダイアル式。おそらく、どうしても200万円を切りたかったため、オートエアコンはあきらめられたのだろう。

凝った造りのシート

深いサポートを持つシートはレカロによってデザインされたと一部外誌で伝えられている(製造は異なる)。サイドサポートは柔らかめだ。しかしベアリングを使った滑らかな前後調整、ノッチの細かいリクライニング調整、調整幅は少ないもののほぼ垂直に上下する座面、そして2段階式のランバーサポートなど、調節の自由度の高さはツボを押さえたものだ。基本的にヒップポジションは低く、ウエストラインが高いこともあって囲まれ感はかなり強い。また身長が高い人は、ヘッドクリアランスがやや苦しいかもしれない。

スピードメーターとタコメーターの間にはドライブコンピューターとシフトポジション(AT車)が液晶表示される。特にシフトポジションは通常のDモードでも表示され、なかなか気が利いている。赤系で表示される計器類の視認性はとても良い。

スイッチ類の操作方法も基本的に「取り説要らず」。しかしドアポケット内側に隠された? テールゲートオープナーはわかりにくいし、使いにくい。さらに問題なのは頭上に並ぶルームライトと電動サンルーフの開閉スイッチ。これらがまったく同じ形状で同列に並ぶので、夜間だと区別がつかない。慣れでは解決しないものなので、至急改善すべきだ。実際、間違えて何度かサンルーフを開けてしまった。雨の日じゃなくて良かった。

また、クルマに乗る際、ドアのロックを外すのに鍵を使ったところ、盗難防止装置が働いてクラクションが鳴り始めてしまった。これは後で聞いたところ、キーレスを使ってロックしたのに開けるときは鍵を使ってしまったから。ピッキング防止策としては単純ながら有効な方法だが、かなり面食らったのも事実。クラクションを止める方法? キーレスのスイッチを押せば良い。

基本性能&ドライブフィール

スムーズでトルキーなエンジンだが、パワーは有り余るほどではない

ヒュンダイ・クーペに搭載されるオールアルミ製V型6気筒2.7リッター「デルタ」エンジンはヒュンダイのSUV「サンタフェ」のものとほぼ同じ。175ps/6000rpm、25.0kgm/4000rpmを発揮し、1380kg(6MTは1370kg)を引っ張る。試乗車はマニュアルモード付き4速ATが組み合わされたモデルだ。

このエンジンの特徴は回転フィーリングの滑らかさ。これに関しては国産V6エンジンと比べても何ら遜色ないと断言できる。また排気量が2.7リッターとやや大きめなこともあり、全域でトルキーだ。少なくとも昨年アメリカで3,000kmほど乗ったマーキュリー・クーガー(2.5リッターV6、170ps、1450kg)より明らかにトルキーで、滑らかで、気持ちいい。試乗車は4速ATだったが、オートマチックとの相性もなかなか良い。

欠点はパワーの盛り上がりが感じられないこと。つまり回してもエキサイティングな感じがしないことだ。とは言え、街中や幹線道路を快適に素速く動き回るのには打ってつけのエンジンと言える。1速はレッドゾーンが始まる6500rpmまで回して65km/hまでカバーするから、混んだ街中はマニュアルモード(ヒュンダイ言うところのシフトロニクス)で1、2速を使えば、自由自在。振動・騒音は低く快適性も良い。

2速は130km/hまでカバーするが、高速道路の合流・追い越しなら3速で十分な加速が得られる。4速トップでの100km/h時のエンジン回転数は2500rpm。エンジン音は非常に静かで、それ以上のスピード域になると風切り音の方が気になる。実際、エアロダイナミックなデザインから期待されるほど、風切り音は小さくない。ただしエンジンが静かだったゆえに目立ったとも言える。

このように高速巡航性能はかなり高い。荒れた路面を強行突破してもボディはミシリともいわず、260km/hまで刻まれるメーターの2/3くらいの領域でも直進性、安定性、快適性はまったく問題のないレベル。ちなみに最高速度は218km/h(6MTは220km/h)、0-400m加速は16.0秒(同15.8秒)と発表されている。

ハンドリングは軽快。あまりの完成度に自分の感覚を疑う

ハンドリングはロールがとても小さいのが印象的。鼻先に重いV6を積んではいるが、普通に走る分にはノーズは軽快かつ機敏に反応する。アンダーステアは軽く、かなり舵の効くタイプだ。というか、オーバーステア気味なほどのハンドリングは、やや違和感が残るところ。もう少し弱アンダーの方が自然だと思われる。パワーステアリングの設定も重からず軽からず。切り始めの反応も良く、まったく問題がない。前記した高速巡航時の素晴らしさも含めて、このあたりの造り込み、完成度の高さは「日本車と遜色ない」という表現を越えて、「日本車以上」と言いたくなる。ステアリングを握りながら、「自分が今運転しているクルマはひょっとして国産の最新クーペではないか」と言う錯覚に何度もとらわれた。

ただし追い込んでゆくと、当然ながらフロントの重さはやはり出る。ABSが作動するようなフルブレーキング、蛇角の大きいコーナリングといった状況では標準装着のタイヤ(ミシュラン・パイロットスポーツ。215/45R17)をもってしてもやや役不足。ただしそういった状況でも、ヒヤリとするような挙動は一切出ず、クルマは非常に安定している。逆に言えば、サスペンションはフルにタイヤの性能を引き出していると言えるだろう。

かなりエンジンを回して走ったせいか200kmほどを走っての燃費は5.5km/リットル。かなり厳しい数字が出たが、4000回転で最大トルクを出すエンジンゆえ、おとなしく走ればもう少し改善されるだろう。

ここがイイ

「韓国車恐るべし」という出来の良さ。正直なところ他のヒュンダイ車は価格相応というか、「まだまだだな、韓国車」という感があったが、このクーペに関しては不満点はごくわずか。共にGTカーであるセリカあたりと比べると、トルクの余裕がある分、こちらの方がよりグランドツーリングが楽しめるだろう。前述のマーキュリー同様、トルキーなV6、アメリカン好みのマッスルデザインと、日本より米国市場で評価が高くなりそうだ。

アルミ削り出しのようなインパネのパネルも日本車にないセンスの良さだし、樹脂類の質感、組み上げの仕上がり、シートの出来、装備の充実など、もしこれが日本のメーカーのクルマなら、199万円という価格を考慮すれば、「おすすめ!」の太鼓判を押してしまいそう。ついでにいうと、残走行可能距離が常時表示されるのは便利だった。

ここがダメ

ドアミラーがでかすぎる。傾斜したAピラーとこの右ドアミラーにより、右斜めの視界はかなり遮られる。インテリアの問題では、ステアリングがドテッと大きくスポーティーでないこと、インパネ上部の丸いベンチレーションが妙にでかいこと、カーナビがどこにもつけられそうにないこと(最大の欠点)。もう一つ、夜間、ライトを遠目にしたとき、メーター内のプルーライトがまぶしかった。

総合評価

新車に無料でつけられる「オールウェイズサポート=3年6万km一般保証、5年10万km特別保証(エンジン、トランスミッション等のパワートレイン系)」「フリー・メンテナンス・サポート=6ヶ月、1年の点検を無料サービス、エンジンオイル、オイルフィルター、ワイパーブレードの1年間1回の無料交換」はうれしいところ。さらに、ディーラー網が整備されきっていないだけに3年間距離無制限24時間ロードサイドアシスタンスはありがたい。ちなみにアメリカのヒュンダイは、5年間6万マイル(約9.6万km)バンパーtoバンパー(一般)補償、10年間10万マイル(16万km!)のパワートレイン特別保証、5年間距離無制限24時間ロードアシスタンスが付き、ヒュンダイによると「アメリカで最高の保障内容」らしい。こういった保証は、最近はどのメーカーもやっているだけに目新しさはないが、ヒュンダイにとっては自信の現れといえる。品質面では日本車に次ぐ(を超えた?)仕上がりを持つといえそう。正直なところ、このクーペに関してはかなり気に入ってしまった。

とはいえ、日本で売れるかというとかなり難しいことが多い。ヒュンダイは世界規模の販売台数では日産に肉薄しており、三菱やマツダよりはるか上。世界8位のメーカーであり、すでに世界的にみても巨大企業なのだ。それゆえ逆に日本市場への進出はなかなか難しいものがある。日本人はアメリカ人ほど価格や製品の善し悪しでクルマを買わないし、何といってもブランド志向。ヒュンダイは相当緻密なブランド戦略を立て、腰をうんと低くして日本市場に迎合した営業展開をしないと、いくら良い品でも売れないと思われる。このあたりが大企業のヒュンダイに理解できているだろうか。ヒュンダイはワールドカップサッカーのオフィシャルパートナーになっており、数百台のヒュンダイ車が日本の組織委員会に貸し出されるとか。これまでの日本での販売台数に匹敵する台数なので、ここで一気に知名度と評価を勝ち取ろうということなのだろうが、ちょっと違うような気がするのだが。

最近はコリアンPOPSや韓国映画がブームになっており、歌手のBoAなどは相当メジャーな存在だ。若者の間ではもはや生産国を問わず良いものはよいという感覚が普通になってきている。こういった流れに乗れれば、ヒュンダイが日本でメジャーになることも不可能ではないだろう。その意味では、日本の若者に人気のないクーペというジャンルでは、いかにも外してしまっている。若者受けするミニバン系に、このクーペ同様のハイクォリティと価格を持った車種を投入すればブレイクすると思う。あとはヒュンダイにそこまでやる気があるかどうかだ

 

公式サイトhttp://www.hyundai-motor.co.jp/

 
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