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三菱 i M新車試乗記(第408回)

Mitsubishi i M

(0.66Lターボ・4AT・138万6000円)



2006年03月24日

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キャラクター&開発コンセプト

リア・ミッドシップの4シーター軽自動車

2005年秋の東京モーターショーで発表され、2006年1月24日に発売された三菱「 i (アイ)」は、エンジンをリア・ミッドシップ(後輪車軸の直前)に積む新開発の軽自動車。エンジンも新規、シャシーも新規で、ヴィッツをしのぐロングホイールベースによって4人乗りが可能だ。RR(リアエンジン・リア駆動)に加えて、三菱らしく4WDもある。

軽自動車としては高価ゆえ、販売目標はeKワゴンの半分となる月間5000台だが、とりあえず発売2週間で1万台以上を受注した。2月の実績は自社のeKワゴンに次ぐ9位(6027台)と滑り出しは順調だ。

価格帯&グレード展開

全車ターボ・4ATで128万1000円~149万1000円

今のところ全車3気筒ターボと4ATのみで、2WDか4WD(12万6000円高)が選べる。装備の有無によって3グレードあり、オーディオレスの「S」(128万1000円)、装備充実の「M」(138万6000円 ★今回の試乗車)、アルミホイールやディスチャージド・ヘッドライト付きの「G」(149万1000円)。

パッケージング&スタイル

未来的なスタイル、長大なホイールベース

極めて斬新なスタイリングが最大の見せ場。その注目度は、最近の例で言えばレクサスの比ではなく、撮影中にやたら声を掛けられた。バッテリーやラジエイターしかないフロント部分は、前面衝突時にクラッシュボックスの役目を果たす。巨大なフロントウインドウを拭くダブルリンクの一本ワイパー、前後の15インチホイールが、軽自動車離れしている。

フロントやサイドビューに比べると、少々平凡な後ろ姿。外寸は例によって軽自動車サイズだが、全高は1600mmと高い。いわゆる立体駐車場には入らないとされる高さだ。2550mmのホイールベースはパッソより110mm、フィットより100mm、現行(2代目)ヴィッツより90mmも長い。タイヤはボディの四隅一杯に寄せられている。ボディカラーは全9色で、試乗車は唯一のブルー系、ライトブルーメタリック。

眺めは抜群、インテリアの質感は今一つ

これだけAピラーが寝ていても、起点がはるか前方にあるので視界は広く、ヘッドルームには余裕がある。リアエンジン車のメリットを強くアピールする部分だ。一方で、繭(まゆ)型のモチーフを反復したインパネのデザインは意外性がなく、樹脂の質感も平均的。価格に比すと、ややチープとも言える。外装に比べてスペシャル感に乏しいが、上位2グレードで選べる赤いシート地の「レッド内装」なら、いくぶん違った印象になる。写真のHDDナビはオプション(16万8000円)。

アナログ回転計の中にデジタル速度計があるメーターは、10時と2時の方向に突き出た燃料計と距離計を合わせると、ミッキーマウスの顔に見える。15年前、同じミッドシップ軽のビートを開発したスタッフが、あるテレビ番組で「ミッキーのようなクルマが作りたかった」と言って、一部オーナーの顰蹙を買ったというエピソードを思い出した。機能的には問題なく、オレンジ色のバックライトで昼夜を問わず視認性がいい。しかしこれだけの高価格車で、燃費計が無いのは残念だ。ぜひ付けるべき。

操作性や使い勝手はまずまず

ドリンクホルダーは収納式が2個(左端と中央)、固定が1個(中央)。収納式の出し入れ動作はやや安っぽい。しかしシフトレバー横の固定ドリンクホルダーは一見なんでもない形だが、場所的にもサイズ的にもとても使いやすい。シフトレバーはD-3速-2速ホールドとゲートを切ったタイプで、これは理想的だ。

運転席のシートはサイズこそ少し小ぶりだが、男性でも不満なく使える。意外にもステアリングにはテレスコ(前後調節)どころかチルト(上下)も無いが、上位2グレードでは座面高が30mm調節できるのと、ステアリング径が大きいという二つの理由で、メーターがリムの影に隠れるということにはなりにくい。前席シート下には、ホンダフィットのように燃料タンク(35L)があり、停止直後に耳をすませるとチャプンと音がする。

圧迫感のない後席

ミッドシップ車はエンジンがホイールベース内に侵入するので、普通なら後席の足元あたりが犠牲になって狭いものだが、それを解決したのが2550mmのロングホイールベースだ。特に広くはないが、リアシートのサイズは大人男性がちゃんと座れるし、半球形の天井のおかげで圧迫感もない。サイドウインドウも全開する。

後席座面は簡単にノブを二ヶ所外すだけで簡単に外せる。その下には巨大な湯たんぽのようなアルミ製のカバーがあり、右・座面下にパンク修理キットが備わる。

意外に広い荷室

エンジンがある分、床の高い荷室だが、奥行きは440mmあり、普段の買い物には十分。後席の背もたれを分割で倒せば、元々の荷室が上げ底なので全体でフラットになり、大物も積みやすい。スペアタイヤレスだが、荷室右壁にジャッキが入っている。

荷室の下にエンジン

素手かコインで樹脂製ネジを二つ外すと、荷室フロアカーペットをめくることができる。さらに遮音/吸音用の分厚いウレタンマットをめくると、スチール製のエンジンカバーが現れる(写真)。蝶ネジ(懐かしい)を緩めて、パコッとそのカバーを持ち上げると、エンジンが登場。ミッドシップ車のメインテナンスハッチはたいてい開口部が狭いが、これは十分に広く、しかも覗きこみ易い。オイル交換等はここから行う。

ハッチを開けた状態でエンジンを掛けるとかなりノイジーで、上のウレタンマットやエンジンカバーの効果が分かる。荷物を積んだり、吸音材を足したりすれば、静粛性も「気持ち」高まるかもしれない。

基本性能&ドライブフィール

RRの違和感なしで乗れる

試乗したのは2WD車。エンジンは完全新開発の連続可変吸気機構付き・3気筒DOHCインタークーラーターボ(64ps、9.6kg-m)で、変速機は4ATのみ。アルミ製シリンダーのエンジンはリア車軸にもたれるように、後ろへ45度傾けて搭載される。ポルシェや大昔のルノーのようなRR車(車軸後方に縦置き)に比べると、確かにリア「ミッドシップ」と言いたくなるレイアウトだ。必然的に前方吸気・後方排気となる。なお、設定温度を越えるとイグニッションオフ後も、エンジンルーム内の冷却ファンがしばらく回り続ける。

運転感覚はごく当り前で、戸惑う部分はまったくない。外観は奇抜だが、乗ってみると普通という感じだ。一般的にRRの弱点と言われる直進安定性の低さ、リアを軸としたフロント側のピッチング、といったものが無いのは、RRの挙動を知る人なら思わず感心してしまうはず。見晴らしは抜群で、小回り(最小回転半径4.5m)もよく効く。クルマに詳しくない人でも「これはいいクルマかも」と思わせるものがある。

エンジンは次期スマートと基本的に同じ

次期スマートにも供給するという新型エンジンはターボラグがほとんどなく、3000回転という低い回転で最大トルクを発生する。おかげで車重900kg(2WD)とやや重いボディでも、無理なく走らせることができる。注意深く観察すると3000回転を超えてからブーストがグンと高まり、よく言えば1300cc車の加速、悪く言えば意思に直結しないパワーの高まりがあるが、660ccターボとしては現状でベストの一つだろう。アクセルを踏み続ければ7400回転以上のレッドゾーンまで簡単に回るが、低中回転域のトルクで走る方が楽しい。

軽自動車の996?

逆にクルマ好きなら、RR独特の走行感覚が「適度に」味わえるところが面白い。コンパクトなRR車というとやはりスマートだが、長大なホイールベースを持つ i にはトリッキーな動きが全くない。スマートが空冷のポルシェ911だとすれば、 i は水冷化直後の911(通称996)と言えるかもしれない。つまり、RRらしさは確かに抑え込んであるが、依然としてどっしり感のある後輪に押されながら、走る、曲がる、といった独特の挙動が味わえる。

抜群のフラット感、静粛性もおおむね問題なし

直接の比較対象はやはり最新の軽自動車だろうが、快適性に関するほとんどの項目で i は、ライバルと同等か、項目によってはそれ以上と感じた。まず、気になる静粛性は、一般的にミッドシップエンジン車はかなり不利だが、 i の場合はリアエンジンに近いレイアウトなので音源が遠く、エンジンノイズの侵入も思ったより少ない。エンジンに近い後席でも、交通の流れに乗ったペースなら、全くうるさくないと感じた。

ロードノイズはリッターカーに比べると大きめだが、大径のスポーティなタイヤであり、路面の種類や状態、周囲の騒音の大小によって差が大きい。軽自動車としては問題ないレベルで、きれいな路面で巡航している時など「静か」と感じることもあった。ただ、ハイスピードの高速巡航では風切り音、ロードノイズなどがかなり高まり、軽であることを実感させられるが。

乗り心地は最初に触れたように、乗っているクルマが何なのか忘れるほどフラット感が素晴らしい。ボディ剛性も高いが、突き上げを包み込むしなやかな足回りの設定は、良い意味で日本車らしいところ。以上は短時間の試乗でも分かる部分だ。

ESP要らず?の安定した走り

いつものワインディングでは、はっきりRR車らしい走りが味わえた。前輪はアンダーを出しながら、後輪はガシッとグリップしてトラクションを伝え続ける走りは、まさにRR車の模範と言えるもの。嬉しいのは決してアンダーが大きすぎず、基本通りに走れば低速コーナーでもけっこう曲がってくれる(スロットルオフによって前輪が「引き戻される」)こと。減速で失敗してもEBD付きABSがカバーしてくれるので(ちょっと介入が早いが)、大昔のリアエンジン車にありがちなブレーキングアンダーで「真っ直ぐ一直線」も起きにくい。フロント部分の剛性感、前輪の接地感、ストローク感もRR車としては高い。

なお、多くの媒体では4WD車の方がバランスが良いと評されている。モーターデイズでは試乗できていないので特にコメントはしないが、それはまあ想像できるところ。ポルシェでも理想はカレラ4だ。ただし4WDだとさらに60kg重くなる。

秀逸なブレーキ。ESPはなし

走行後にタイヤをチェックすると、前輪(145/65R15)のショルダー部分はかなり摩擦してしまったが、後輪(175/55R15)のショルダーはほとんど接地すらしていなかった。意外にも i は、スマートと違ってESPをオプションでも用意していないが、これはスタビリティに自信があるからなのか、ESP無しで済ませるためにここまでスタビリティを上げたのか。とにかく、並みの軽とは段違いのペースで、しかも安全にコーナリングできるのは確かだ。

ブレーキの効き、フィーリングも特筆できる。リアはドラム式だが、リアエンジン車らしくノーズダイブは一切なく、タッチも申し分ない。フロントエンジン車なら、足を相当固めないと味わえない感覚だ。走行500kmの新品タイヤの性能もあって、RR車が苦手なウェット路面でのフル制動も不安なくこなした。

100km/h巡航は3700回転くらい

100km/h時のエンジン回転数は3700回転くらい。数字だけ聞くと高回転だが、静粛性も高く、エンジンの余力もあってまったく快適だ。ただし、100km/hを越えると前述のように風切り音が高まる傾向にある。最高速は軽自動車共通のメーター読み140km/h(リミッター作動)。電動パワステのフィールも良く、直進安定性、どっしり感、共に不満がない。

2日間で約200kmを走行したが、全開走行や撮影でのエンジンオン/オフも多かったせいか、燃費は10km/Lを大きく割ってしまった。10・15モード燃費は18.4km/L。

ここがイイ

独創的なエクステリアデザインはやはり高評価。そして、それに伴うクラスレス化。つまり軽に誇りを持って乗れること。

そんなイメージの良さだけでなく、実際に乗ってみるとクラスを度外視できる抜群にフラットな乗り心地。しかもこれだけのロングホイールベース車ながら、小回りが効く。低い位置からよく見える抜群の見晴らしなど、独特の車両感覚も魅力的だ。

RRらしい操縦性と直進安定性、快適性が両立しているのもいい。RRらしいスポーティさや個性が味わえる走りはFF車より楽しいし、ちょっと攻め込んだ時のスムーズな走り、コントロール性の高いブレーキは、まさにリア/ミッドシップエンジン・スポーツカーみたいだ。形だけでなく、クルマとしてもしっかりできている。

中級グレード以上で、ドアハンドルに手をかけただけでロックが外れるインテリジェントキーが標準となる。2回ボタンを押すと外からミラーをたためるのも便利。オートエアコンは全車標準。運転席シートリフターもあるし、後席は前席より高めに座れ、乗り心地も悪くない。ワンタッチでフラットな荷室ができるのもいい。形が奇抜でも、実用的に他の軽に劣っているところはない。

ここがダメ

i に限った話ではないが、リッターカーの実燃費がかなり優秀な今、軽自動車のターボエンジンは燃費でどうしても見劣りする。また、これも小排気量ターボの仕方ないところだが、アクセルを深く踏み込むとキックダウンして一気に加速しがちなこと。

質感は求めないとしても、チープながらもアイディア満載、デザイン的にも凝っていたスマートに比べて、内装はサプライズに欠ける。ステアリングホイールにチルト&テレスコ機構が無いのも不満。30mm上がるシートリフターで調整すればひとまず不満ないポジションは取れるが、自由度はない。けっこう高いシート高(630mm)ゆえ、小柄な人は乗降の際にズボンの裾がボディに触れて汚れることも。

まったく細かいところだが、ねじ込み式ルーフアンテナは可倒式に見えて、実は倒れない。洗車機や立体駐車場などで外す時は、サイドシルの上に立って外す必要がある。おそらくデザイン優先でガラスアンテナは考えなかったのだろうが、これはやはり不便だ。

総合評価

気になってホイールベースをポルシェ911と比べてみた。いわゆるカエル目の930や964系は2270㎜、水冷の996になっても2350㎜しかない(ポルシェの場合、車種によって多少の誤差がある)。2550mmもある i は、これらより遥かに長い。サスペンション等の要件もあるが、 i ほどホイールベースを伸ばせば、RRであることはほとんど気にならなくなるということだろう。しかも911はリアオーバーハングにエンジンを載せた完全なRRだから、 i のリア・ミッドシップと比べても不利だ(もちろん水平対向で重心が低いのは逆に優れる点だが)。ポルシェ911の40余年の歴史は、このRRの挙動を抑え込むことであり、それは97年の水冷モデルあたりで、ほぼ現在達成できた。ポルシェはPSMという電子制御で最終的な挙動を押さえ込んでいるが、 i にはそれすらない。それはむろんアンダーパワーであることもあるが、この長いホイールベースが全てに効いているわけだ。

それでも i に乗ると、リアの重たい部分を軸に、向きを変える挙動が感じられて、普通のクルマと違う乗り味が楽しめる。RR特有のプッシングアンダーは強くないし、コーナーでアクセルを抜いてもいきなりオーバーステアに転じたりはしないが、それでもコーナー途中で意識的にアクセルを抜くと、フロントが簡単に向きを変える挙動を楽しめる。RR好きにはたまらないクルマだ(まあ、そんな人は少数派だろうが)。ポルシェに長年乗ってきたデイズのスタッフは、そんな i に強い愛着を感じてしまう。

軽自動車が多様化していく中で、こうした特殊なデザイン、特殊な機構を持ったクルマが出てくるのは、たいへん楽しいことだ。乗り換えの際、小型車へダウンサイジングしても気にならない時代になったが、 i ならいよいよ軽までダウンサイジングする人だって出てくるだろう。どいつもこいつも同じようなクルマばっかり、と辟易しているクルマ好きにとって、久々にエンスー心をくすぐられるクルマの登場だ。

スマート・フォーツーは軽仕様(スマートK)がよく売れたが、もし4人乗りの軽仕様があったらもっと売れたかもしれない。 i こそまさに「スマート・フォーフォー」といえる。なんていうと、また誤解をまねくかもしれないが、デイズとしてはこのクルマは2シーターも出して欲しかった。ホイールベースを短くするとESPも必要になるだろうから高価になるし、販売終了したスズキ・ツインや苦戦中のスバルR1が示したごとく、日本には2シーターコミューターの市場は存在していないかもしれない。それでもあえてこのコンセプト、このスタイルであるなら、2シーターとしても出てきて欲しかったのだ。現に i はこれだけの人気を世の中から集めているわけで、それは2シーターであっても得られたのではないか、と思う。ここまで注目を集めただけに、2シーターの姿を見てみたかったと思う人は、けして少なくないだろう。この出来で、ショートホイールベース2シーターが出たら即買いだ。

関連リンク(水野誠志朗'sトーク)

試乗車スペック
三菱 i M
(0.66Lターボ・4AT・138万6000円)

●形式:CBA-HA1W●全長3395mm×全幅1475mm×全高1600mm●ホイールベース:2550mm●車重(車検証記載値):900kg(F:-+-)●乗車定員:4名●エンジン型式:3B20●659cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・横置●64ps(47kW)/6000rpm、9.6kgm (94Nm)/3000rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/35L●10・15モード燃費:18.4km/L●駆動方式:リアミッドシップ・後輪駆動(RR)●タイヤ:前 145/65R15、後 175/55R15(Dunlop SP Sport 2030)●試乗車価格:155万4000円(含むオプション:7インチワイドディスプレイHDDナビゲーション 16万8000円)●試乗距離:約200km ●試乗日:2006年3月

●車両協力:西尾張三菱自動車販売株式会社

 
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