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スズキ イグニス新車試乗記(第785回)

Suzuki Ignis

(1.2L直4・CVT・138万2400円~)

コンパクトカーとSUVが融合。
世界で戦うスズキが打った
新しい一手に試乗! 

2016年04月01日

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キャラクター&開発コンセプト

Aセグメントの「コンパクトクロスオーバー」


東京モーターショー2015に出展されたイグニス(参考出品車)

スズキの新型車「イグニス」は、コンパクトカーとSUVを融合させた新ジャンルのコンパクトクロスオーバー。最初は2015年3月のジュネーブショーで「iM-4コンセプト」として登場。2015年秋の東京モーターショーに出展された参考出品車では「イグニス」と名前を変え、2016年2月18日に国内で発売された。日本での生産・発売を皮切りに、欧州など海外にも投入される世界戦略車である。

全車1.2Lマイルドハイブリッドを採用

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新型スズキ イグニス

今回発売された国内仕様のパワートレインは、昨年8月に発売された現行ソリオとほぼ同じ。1気筒あたり2つのインジェクターを持つ1.2L自然吸気のK12C型「デュアルジェット」エンジンに、ISG(モーター機能付発電機)や小容量リチウムイオン電池を組み合わせたマイルドハイブリッド仕様で、ミッションはスズキ御用達のジヤトコ製副変速機付CVT(無段変速機)。JC08モード燃費はFF車で28.0~28.8km/Lを達成している。

Aセグメント用に新開発された新世代軽量プラットフォームを使う点も現行ソリオと同じ。イグニスではクロスオーバーSUV的なスタイリング、高めのアイポイント、高めの最低地上高(余裕のあるロードクリアランス)などが特徴になる。

販売目標台数は月間1500台。国内向けは、スイフトやソリオと同じ静岡県牧之原市の相良(さがら)工場で生産される。

■関連する過去の新車試乗記
スズキ ソリオ バンディット ハイブリッド (2016年2月掲載)
スズキ ハスラー (2014年2月掲載)
スズキ スイフトスポーツ (2011年12月掲載)

 

価格帯&グレード展開

138万2400円からスタート

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ボディカラーは、MZで選択できる写真のブラック2トーンルーフ仕様(4万3200円高)も含めて、全13パターン。ルーフサイドはボディ同色という変わった塗り分け

ラインナップは、装備が省かれたベースグレードの「MG」、キーレスプッシュスタートや運転席シートリフター、16インチタイヤ&アルミホイール、リアシートスライド機能等を標準装備する「MX」、LEDヘッドランプや本革巻ステアリング、7速パドルシフト等を標準装備する上級グレード「MZ」の3つ。

■HYBRID MG  138万2400円(FF) / 151万9560円(4WD)

■HYBRID MX  150万1200円(FF) / 163万8360円(4WD)

■HYBRID MZ  164万1600円(FF) / 177万8760円(4WD)

全車オプションのセーフティパッケージ(全車9万7200円)は、デュアルカメラブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、エマージェンシーストップシグナル、SRSカーテンエアバッグ、フロントシートSRSサイドエアバッグをセットにしたもの。ぜひ装備しておきたい。

 

パッケージング&スタイル

名車のモチーフを継承

デザインコンセプトは「シンプルアイコニック(わかりやすく特徴的)、シンプルスタンダード」。現行アルトに通じるクリーンなラインや小さなグラスエリア、タイヤがボディの4隅で踏ん張ったスタイリングは、スペース志向のコンパクトカーやミニバンが多い日本車の中では異色。

そして猫背のリアウインドウ、角型リアコンビランプ、Cピラーの3本スリットは、まさしく1970年代の名車フロンテクーペ(1977年以降の550ccモデルはセルボ)へのオマージュ。さらに角型ヘッドライトもフロンテクーペ/セルボの、ボンネット左右のスリットは初代エスクードのモチーフを受け継いでいる。

Aセグサイズのクロスオーバー

ボディサイズは全長3700mm、全幅1660mmと、グローバルでの最小クラス、Aセグメントに分類されるもの。2435mmのホイールベースは実にアルト(2460mm)より短く、最小回転半径は軽並みの4.7mに収まっている。

全高は1595mmと、機械式立体駐車場に何とか収まるレベル。最低地上高はハスラーや新型エスクード並みの180mmで、多少の悪路も行けるようになっている。

 

後ろから見るとワイドトレッド、そしてボディ上部が絞り込まれているのが分かる

サイドウインドウのグラフィックスは現行アルトに通じるもの
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スズキ アルト (2014~) 3395 1475 1475~1500 2460 4.2~4.6
スマート フォーフォー (2015~) 3495 1665 1544 2494 4.1
フィアット 500 (2008~) 3545 1625 1515 2300 4.7~5.6
フィアット パンダ 4×4 (2014~) 3685 1670 1615 2300
スズキ イグニス(2016~) 3700 1660 1595 2435 4.7
スズキ ソリオ (2015~) 3710 1625 1745 2480 4.8
スズキ スイフトスポーツ (2011~) 3890 1695 1510 2430 5.2
日産 ジューク(2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
新型スズキ エスクード(2015~) 4175 1775 1610 2500 5.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

質感やデザインにこだわる


メモリーナビ自体は全車オプションだが、そのタブレット風のベースは全車標準

インパネもユニーク。オートバイ風の一眼メーター、タブレット風ナビディスプレイ、トグルスイッチを使った独立型の空調操作パネルなど、こだわりが感じられる力作。また車体色に合わせてオレンジもしくはチタンシルバーの高輝度塗装を施したニーパッドやドアハンドル、助手席側のダッシュボードに立体感を出すためというクボミといったアイディアも面白い。

メーカーオプションの全方位モニター付メモリーナビ(14万2560円~)は、「Apple CarPlay」に対応。通話・音楽再生・メッセージなど、iPhoneの機能をナビ画面で操作できるほか、「Siri」での音声操作もできる。

 

メーカーオプションの全方位モニター付メモリーナビ。バックモニターだけでも十分だが、便利と言えば便利

センターコンソールのニーパッドには、エクステリア同様に3本のスリットが刻まれる
 

高めのヒップポイント


前席ヒップポイントは615mm。見晴らしが良く、乗り降りもしやすい

前席ヒップポイントは615mmと高めだが、後席のそれは680mmとさらに高い。また、後席は背もたれを一番寝かせた状態でも少し立ち気味で、座面クッションも短め。なのでフットルームは広々していても、足を前に投げ出すようなリラックスした姿勢では座りにくい。欧州A/Bセグ車の後席みたいにキチンと姿勢を正して座ることになるが、そうするとヘッドルームがややタイトに感じられる。

 

写真は一番後ろにスライドした状態。窓枠の一部にボディカラーが露出する

助手席の下にはエネチャージ車でおなじみのリチウムイオン電池を配置
 

シートアレンジはソリオ譲り


後席使用時の荷室容量は258L。ゴルフバッグ一つを積載可とのこと

上級グレード(MXとMZ)のシートは、左右別々に前後165mmのスライドと背もたれの格納が可能で、荷室は必要に応じて拡大すればいい、という考え方。新型ソリオ同様、荷室側からでもショルダー部のレバーで前後スライドと背もたれ格納ができる。これは便利。

荷室容量は後席使用時で258L、後席収納時に415Lと、1クラス上のBセグ並みを確保。加えて床下にはFF車で106L、4WD車で36Lのサブトランクを備える(MGグレードには未装備)。ボディが小さいわりに荷物は積めそう。

 

後席を畳めば、荷室容量は415Lに、荷室長は1230mmにアップ

スペアタイヤレス(パンク修理キット搭載)により、荷室床下には大容量の収納スペースを確保
 

基本性能&ドライブフィール

パワートレインは新型ソリオと同じ

試乗したのは「ハイブリッドMZ」のFF(164万1600円)。

今回はスズキ本社を起点に、イグニスとアルトワークス(次週アップの予定)の2台を試乗した。ターボエンジンと5速クロスミッションを備えたアルトワークスから乗り換えたせいか、イグニスの第一印象は「レスポンスがすごくマイルド」、そして「アクセル操作に対してエンジン回転だけ先に上がってしまう感じが強い」の二つ。

パワートレインは新型ソリオとほぼ同じで、自然吸気の1.2L 直4「デュアルジェット」エンジン(91ps、118Nm)とマイルドハイブリッド、そして副変速機付CVT(無段変速機)の組み合わせ。車重はFF車で850~880kgと、ハスラーの4WD並みに軽く、ソリオ(ハイブリッド)と比べると70~100kgも軽いのだが、感動するほどの力強さはない。イグニスは見た目がいかにも走りそうなので、ちょっと期待が大きすぎたか。

 

マイルドハイブリッドのISG(モーター機能付発電機)は、アイドリングストップ後のエンジン再始動を行うほか、発進後~約100km/hでは一回あたり最長約30秒間、加速をアシストする。モーターの最高出力は3.1ps、最大トルクは50Nm。エンジン再始動時の自然さ、滑らかさは素晴らしいが、アシストについてはエンジンとCVTの唸りに隠れてしまい、いまいち体感できない。

コンパクトカー寄りのクロスオーバー

「高めのアイポイント」が売りの一つだが、実際に乗ってみるとクロスオーバーSUVに乗っているという感覚はそれほどない。どちらかと言えばコンパクトカー寄りで、ハスラーに乗っている時の方がSUVっぽく感じられると思う。

乗り心地にハンガリー製のスプラッシュ新型エスクードのような硬さはなく、日本車的にソフトで滑らか。ホイールベースがアルトより25mm短いとは思えないほどピッチング(シーソー的な上下動)はなく、横方向の揺れもない。サスペンションはしなやかに動き、路面の凹凸やうねりを上手にいなす。高張力鋼板をボディ全体の50.1%(重量比)に使用したという高剛性ボディも効いているのだろう。

 

SUVらしさを一番感じるのは180mmの最低地上高。雪道や林道に行かずとも、段差でアゴやおなかを擦りにくいのは日常的に心強い。ちなみにアプローチアングルは20度しかないが(ハスラーは28度)、ディパーチャーアングルは4WD車で38.3度、FF車で38.8度を確保している(ハスラーは46度)。

なお、4WDシステムは生活四駆的なビスカスカップリング式だが、悪路での走破性を高めるため、ヒルディセントコントロールやグリップコントロールが採用されている。

ESPをガリガリ介入させながら


最上級グレードには7速マニュアルモード付パドルシフトが備わるのだが

ワインディングでも四隅のタイヤが路面をよく捉え、ESPをガリガリ介入させながら破綻なく走り切る。タイヤは175/60R16のエコタイヤ(ブリヂストンのエコピアEP150)で、グリップはそれなりだが、ESPによる必死の支援で最後までステアリングを切った方向に曲がろうとしてくれるのがいい。ワークスと勝負したら加速ですぐに置いて行かれそうだが、ハンドリングのバランスがいいのでストレスや不安がない。

気になったのは、CVTの節度感がなく、アクセルのオンオフの度にエンジン回転が上下してしまうこと。そこで最上級グレードに標準装備されるマニュアルモードに切り替えると、今度はステアリング固定式の7速パドルシフトを旋回中に見失ってしまう。そんな時はシフトレバーでマニュアル操作できればいいのだが、あいにくシーケンシャル操作用の+-ゲートはない。また、最上級グレードにはマニュアルモードがある代わりに、スポーツモードが付かなくなる(下位グレードはLレンジとスポーツモードスイッチ付き)。どちらがいいか悩ましいところ。

デュアルカメラブレーキサポートを装備

100km/h巡行時のエンジン回転数は、CVTゆえ安定しないが、1800~1900rpmくらい。アクセル全開でぶん回せば最高速はそれなりに伸びるはずだが、中間加速はけっこう緩慢。直進安定性や静粛性は高いので、淡々と巡行するだけなら不満はないと思う。

なお、最上級グレードにはクルーズコントロール(約45km/h~約100km/hで設定可能)が付くが、これはソリオと同様に、車間制御機能のないコンベンショナルなタイプ。せっかくオプションでステレオカメラが付くのだから、スバルのように全車速対応のACCになればいいのに、とつい思ってしまう。

なお、セーフティパッケージには、DCBSによる自動ブレーキ(衝突被害軽減システム)のほか、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、カーテンエアバッグ、前席サイドエアバッグなどがセットになる。これだけ付いてたった9万7200円なので装着しないのは損だ。

試乗燃費は15.7km/L。モード燃費はハスラーのターボ車と同等

今回はトータルで約150kmを試乗。参考ながら試乗燃費は一般道と高速道路を走った区間(約80km)が15.7km/Lだった。

JC08モードは、FF車が28.0~28.8km/L、4WD車が25.4km/L。これはハスラーのターボ・CVT車(FFが27.8km/L、4WDが26.2km/L)とほぼ互角。

燃料タンク容量はFF車が32L、4WD車が30L。もちろんレギュラーガソリンでOK。

 

ここがイイ

デザイン、コンセプト、マイルドハイブリッド、軽量化

まずはデザイン。昔のフロンテクーペやセルボ、それに初代エスクードなど、“スズキデザインのDNA”を継承したエクステリアは秀逸。かといって決してレトロではないし、しかも今のアルトもそうだが、消費者が戸惑うほどチャレンジングなデザインで勝負している。日本のメーカーでここまで過去のデザインを上手に昇華させているのはスズキくらいでは。

Aセグメントのクロスオーバーという、今のところはニッチな市場に、果敢に新型車を投入してきたこと。このジャンルのパイオニアは、おそらくフィアットの現行パンダ 4×4だと思うが(広い意味ではジムニーもそうだ)、それらよりもコンパクトカー寄りで、走りはスポーティで、快適性も高く、質感も高く、燃費もよく、安全性も高い。日本での月販目標は1500台に過ぎないが、海外ではヒットするのでは。

 

スズキのマイルドハイブリッドは、スズキ軽でいうところのSエネチャージだが、これが相変わらずいい。ISG(モーター機能付発電機)は減速時のエネルギー回生やアイドリングストップ後のエンジン再始動、そして最長30秒間のモーターアシストを行うが、何よりいいのがアイドリングストップにまつわる違和感(エンジン再始動の遅れやショックなど)がハイブリッド車並みに気にならなくなること。他社も非ハイブリッド車にアイドリングストップを付けるなら全部このレベルにすべきだろう。

あと、乗っているうちに忘れてしまうが、軽量化技術。Aセグメントとはいえ、これだけの安全装備や快適装備を備えたクルマを800kg台に収めているのは驚異的。たぶん世界一の技術だろう。それは間違いなく走りや燃費に効いている。

それから細かい点だが、高輝度塗装されたフロントのインサイドドアグリップ(インナードアハンドル)。別にどうということもないが、ツルツルしていて手触りがいいわりに、手のひっかかりもいいし、見た目もきれい。こんなささいなところにも「今までなかった」感がある。

ここがダメ

節度感のないCVT、スポーツモードの不備(最上級グレード)、寝かせられない後席背もたれ


東京モーターショー2015に展示されていた開発中のソリオ用“フルハイブリッド”パワートレイン。ミッションはCVTではなくAGS(オートギヤシフト)になり、リアに大容量リチウムイオン電池を搭載する

1.2Lエンジンで、車重はFF車で850~880kgと軽並みに軽いので、定評あるスズキ軽の自然吸気モデルよりリニアな加速が味わえるに違いないと思って臨んだ試乗だったが、思いのほかCVTのスリップ感(ラバーバンド感)が大きかったこと。発進時に駆動用モーターがアシストしてくれるマイルドハイブリッドゆえ出足は悪くないが、中間加速はいまひとつ。このあたりは、昨秋の東京モーターショーに技術展示されていた開発中のパワートレインが解決してくれるのかも。これは1.2LデュアルジェットエンジンにAGS(セミAT)と大容量リチウムイオン電池を組み合わせたフルハイブリッド、という想定だ。

 

最上級グレードはマニュアルモード+パドルシフト標準。下位グレードにはLレンジとスポーツモード(スイッチ)が備わる

ワインディングを攻めるクルマではないが、7速マニュアルモード付パドルシフトを備える最上級グレードに、スポーツモードがないのは不便。本文でも触れたように、ステアリングを回しながらパドルを操作するのはほぼ不可能で、下位グレードのシフトノブ側面に備わるスポーツボタンスイッチの方がかえっていいのでは、と思った。

Apple CarPlayの採用が売りの一つになっているが、Androidユーザーとしては「なぜAppleだけ?」という感じ。

後席背もたれの角度が立ち気味で、もう1ノッチ寝かせてみたくなるが、できないこと。立てる方向には調整できるのだが。座面クッションも短めで、だらっと座ると太ももが浮いてしまう。リアシートを少し前にスライドさせた時に、もう1ノッチだけリクライニングできれば、と思う。

総合評価

「ユニークさ」で頭一つ抜けている


スズキ スプラッシュ (2008~2014)

ハンガリーにあるスズキの製造子会社「マジャールスズキ社」製のコンパクトカー「スプラッシュ」が日本に投入されたのは約7年前のこと。このクルマの詳細はモーターデイズの試乗記を読んでいただきたいが、当時、欧州車らしいエクステリアデザインを我々は絶賛した。「タイヤを大きくして、トレッドを拡げ、オーバーフェンダーをかぶせれば絶対にカッコよくなるのだが、これを日本車はやらない。でも欧州車はやる」と当時は書いたが、今回のイグニスも日本車ながらそれをやっている。このリアタイヤの張り出しはまさに日本車離れしている。全幅に制約がある軽ではできないが、小型車ならここまでできるわけだ。軽の枠さえなければ、いい小型車が作れるのにといつも言ってきたが、まさにそれがイグニスだろう。

 

イグニス トレイルコンセプト (東京モーターショー2015)

コンパクトクロスオーバーというコンセプトもユニークだが、とにかく素晴らしいのはこのエクステリアデザインだ。つい全体のフォルムを惚れぼれと見つめてしまう。これなら車高を下げてもカッコいいのでは、などと夢想しながら。スプラッシュから7年、ついに日本のコンパクトカーでも、こんなデザインを打ち出せたことを絶賛したい。そして過去のクルマのデザインモチーフを活かす手法も、これまた日本のメーカーがあまりやらない、やりたがらないものだが、これも見事に功を奏しており絶賛モノ。意地悪く言えば現行アルトを大きくして、SUV風にしたような、ということだが、今のスズキデザインは素晴らしく高いレベルにあると思う。マツダのデザインも素晴らしいが、スズキのデザイン力は「ユニークさ」という点で頭一つ抜けているのではないか。

そしてもうひとつ、ハスラーを成功させた「大人の男が乗れる小型車」というイメージを、このクルマも備えていることが素晴らしい。小さいクルマは婦女子のもの、という呪縛からスプラッシュも逃れられなかったが、あれから7年でいよいよ大人の男のための小さなクルマが生まれたことを祝福したい。ハスラーはいいけど、それ以外の選択肢が少ないとお嘆きの貴兄にオススメしたいものだ。イグニスなら変なヒエラルキーを感じることなく、道具としてガシガシ使いこなせるだろう。

simフリーのタブレットをセットしたい

ただこうなると様々なクルマに乗ってきた大人の男としては、インテリアにおいてもう一つ上の上質感が欲しくなるところだ。全体としてチープということはないが、樹脂類の素材感はそう上質とまでは言えない。もし布や革を上手に使った内装オプションや仕様でもあれば、もっと大人の男に訴求するはず。インテリアデザインそのものはものすごく凝っているのが分かるだけに、それを活かしながらシンプルな上質感を出せたらいいと思う。

いわゆるタブレットPCを据え付けたようなナビ部分は、形状、位置として本当に素晴らしい。ここに市販の各社タブレットを上手くはめ込むことができたら理想的なのに、とまた夢想してしまう。iPhone派ではないのでApple CarPlayを評価できないのだが、「OK、Google」で目的地をさがし、「Google Play Music」や「YouTube」で音楽を聞いている身としては、ここにsimフリーのタブレットをセットできれば、ほぼ不満はない。その場合、クルマ側のオーディオにBluetoothで繋げられればいいし、全方位モニター用にはサブディスプレイを用意すればいいだろう。マルチディスプレイの有用性はアウディTTの試乗記でも書いた通り。とにかく、最もいい場所にタブレット(のようなもの)を置いたという点で、このインパネデザインを高く評価したい。

進化した燃費と安全装備。走りは今後に期待

さて、7年前のスプラッシュと一番違うのが、マイルドハイブリッド等による燃費の良さだろう。けっこうエンジンを回しても15km/Lを切らなかったのだから文句はない。おとなしく走れば20km/Lに近づくだろう。単純比較はできないが、スプラッシュは10・15モード燃費で18.6km/L 、イグニスは実燃費により近いJC08モード燃費で28.0~28.8km/L(FF車)と1.5倍以上。実燃費は単純比較できないが、それでも2割程度は良くなっていそうだ。燃費が良くなるのは進化したテクノロジーの恩恵だ。もうひとつ、自動ブレーキなどのセットオプション「セーフティパッケージ」が9万7200円と安価で用意されていること。とにかく7年ばかりの間に、燃費や安全装備はここまで良くなったわけで、その進化のスピードはすごいと思う。

 

先日、似たようなコンセプトの日産ジュークにチョイ乗りしたが、こちらは1.5Lエンジンゆえ力はあるものの、やはりCVTのフィーリングは今ひとつだった。また今回、試乗への足としたザ・ビートル カブリオは、1.2Lターボ(105ps、17.8kgm)+DCTで、車重は1380kgと重い。それに対してターボはないものの同じ1.2Lエンジン(91ps、12.0kgm)で、車重850~880kgのイグニスの走りを比較してみると、本文に書いた通り、イグニスに関しては少し物足りない感が否めなかった。ビートルの実燃費は10km/Lそこそこだが、ちょっとばかり燃費は悪くても、走りのいいクルマに乗りたいと思う大人の男性は少なくないだろう。走りが思いっきり気持ちよかったなら、イグニスには100点満点をつけたい。イグニスの場合、今後は進化したAGSへの移行という可能性があるわけで、そのあたりを含めて今後の進化にはまだちょっと期待してしまう部分が残っていると言えそうだ。

 

試乗車スペック
スズキ イグニス ハイブリッド MZ
(1.2L直4・CVT・FF・164万1600円)

●初年度登録:2016年2月
●形式:DAA-FF21S
●全長3700mm×全幅1660mm×全高1595mm
●ホイールベース:2435mm
●最低地上高:180mm
●最小回転半径:4.7m
●車重(車検証記載値):880kg(540+340)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:K12C
●排気量:1242cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:73.0×74.2mm
●圧縮比:12.5
●最高出力:67kW(91ps)/6000rpm
●最大トルク:118Nm (12.0kgm)/4400rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:32L (※4WDは30L)

●モーター型式:WA05A
●モーター種類:直流同期電動機
●最高出力:2.3kW(3.1ps)/1000rpm
●最大トルク:50Nm (5.1kgm)/100rpm
●電池種類:リチウムイオン電池

●トランスミッション:副変速機付CVT(無段変速機)
●JC08モード燃費:28.0km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム(4WDはI.T.L.)+コイルスプリング
●タイヤ:175/60R16 (Bridgestone Ecopia EP150)

●試乗車価格(概算):188万1360円円
※オプション:セーフティパッケージ (デュアルカメラブレーキサポート、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、エマージェンシーストップシグナル、カーテンエアバッグ、フロントシートサイドエアバッグ) 9万7200円、全方位モニター付メモリーナビゲーション 14万2560円

●ボディカラー:ファーベントレッド
●試乗距離:約150km
●試乗日:2016年3月
●車両協力:スズキ株式会社

 
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