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ダイハツ ミラ イース新車試乗記(第816回)

Daihatsu Mira e:S

(0.66L直3・CVT・84万2400円~)

「低燃費・低価格」から
「安全・安心」へ。
フルモデルチェンジした
「第3のエコカー」に試乗!

2017年06月09日

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キャラクター&開発コンセプト

元祖「第3のエコカー」の2代目

初代ダイハツ ミラ イースの画像
初代ダイハツ ミラ イース(2011年)

ダイハツの軽自動車「ミラ イース」が6年ぶりにフルモデルチェンジし、2017年5月9日に発売された。

初代ミラ イースがデビューしたのは、東日本大震災の記憶が新しい2011年9月。ガソリンエンジン車(ハイブリッド車を除く)としては当時最高のJC08モード燃費30.0km/Lや、79万5000円というスタート価格、そしてハイブリッド車でもなく電気自動車(EV)でもないという「第3のエコカー」という言葉が大きな話題となった。なお、「e:S」という車名は、Eco(EcologyとEconomy)& Smart(賢い選択)の略。

「低燃費・低価格」に「安全・安心」をプラス

ダイハツ ミラ イース(2代目)の画像
ダイハツ ミラ イース(2代目)

今回の2代目ミラ イースでは、初代で全面的にうたった「低燃費・低価格」に加えて、昨今のユーザーが求める「+αの魅力」として「安全・安心」を追求。具体的には基本性能の向上と共に、世界最小サイズの高性能ステレオカメラを使った衝突回避支援システム「スマートアシストIII」(以下スマアシIII)を採用した。スマアシIIIの採用は現行タント(マイナーチェンジ版)に続くもので、ダイハツ全体でもまだ2例目だ。

なお、JC08モード燃費については、最大80kgに及ぶ軽量化を行ったものの、スズキ アルトの37.0km/Lには及ばず、先代最終モデルと同じ35.2km/Lに留めるなど、燃費競争から距離を置くかたちに。スタート価格は先代より上昇しつつ、84万2000円に抑えた。

生産はダイハツ九州。月販目標9000台

トヨタ ピクシス エポックの画像
OEM供給するトヨタ ピクシス エポック

生産工場はミラ、キャスト、ウェイクなどと同じ、2007年から稼動している「DKC」ことダイハツ九州株式会社の大分中津工場(大分県中津市)。

月販目標は9000台で、台数的にはムーヴ、タントに次ぐ第3のダイハツ軽になる。発売後1ヶ月の累計受注台数は目標の2倍を超える約2万台で、購入層は50代以上が中心とのこと。

また、通称名別の販売実績統計ではミラココアと共に「ミラ」に合算され、2017年5月の軽販売ランキングでは新型ミラ イースの投入効果で、1位のホンダ N-BOX(1万3118台)に迫る2位(1万0562台)に入った。ちなみに3位にも同じダイハツのムーヴ(1万0448台 ※キャンバスを含む)が入っている。

なお、新型ミラ イースも先代同様、トヨタではピクシス エポック、スバルではプレオ+(プラス)としてOEM販売される。

新しい事業構造「DNGA」がスタート

ダイハツは新型ミラ イースについて、同社が目指すスモールカーづくりを行うための新しい事業構造「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の原点を確立するモデル、としている。DNGAの原点とは「低燃費」「低価格」「安全・安心」で、今後はそのコンセプトに基づく新プラットフォームを採用した軽自動車を投入し、さらに小型車やグローバルへの展開も目指す、としている。

ミラ イースについても、あらかじめ車両や部品ごとに予算を設定する予算制のもと、設計・開発を行う低コスト化活動を実施。樹脂製バックドアの生産工場を大分中津工場内に建設して内製化するなどして、高品質と低コスト化を両立したという。

 

■過去の参考記事
新車試乗記>ダイハツ ミラ イース(2011年10月掲載)

 

価格帯&グレード展開

スマアシ付は90万7200円~


新型ミラ イース B “SA III”

パワートレインは自然吸気の3気筒エンジンとCVT(無段変速機)のみで、4WDは12万9600円高。

グレードはビジネス用途の「B」、ホイールキャップやキーレスエントリーを装備する「L」、14インチタイヤやLEDヘッドランプを装備する「X」、14インチアルミホイール、オートアエコン、キーフリーシステム、サイドエアバッグ等を装備した最上級グレード「G」の4種類。

スマートアシストIII(SA III)は、BとLでは6万4800円高で、XとGでは標準装備。スマアシIII付は90万7200円からスタートする。

なお、現在ダイハツでは、「スマアシIII 搭載グレード 購入サポート(6万円相当)」を6月末まで実施しており、つまり今ならスマアシIII(6万4800円相当)は実質タダということになる。

■B      84万2400円~
■B “SA III” 90万7200円~
■L      87万4800円~
■L “SA III” 93万9600円~
■X “SA III” 108万円~ ※試乗車
■G “SA III” 120万9600円~

 

パッケージング&スタイル

水平基調とエッジ感で「安全・安心」を表現 

新型ダイハツ ミラ イースの画像

先代の簡素な外観からすると、ガラリと印象が変わった新型。プラットフォーム自体はキャリーオーバーだが、アッパーボディは新しく「Dモノコック構造」を採用した新設計。水平基調のプレスラインがビシッと入り、個々のパーツもエッジが立ったものになった。力強く見せることで「安全・安心感」を表現する、というのが狙いだ。

空力性能もさらに向上

新型ダイハツ ミラ イースの画像

質感も見違えるように上がった。上級グレードにはLEDヘッドライト(ロービーム用のLED4灯とハイビーム用のLED2灯で構成)まで標準装備される。

面白いのはリアウインドウの両サイドに配された黒色ガーニッシュ。樹脂製バックドアと一体構造で、ワイド感を表現すると共に、空力性能を向上させるという。ほかにもAピラー付け根の空力フィン(特許出願中)、フロントバンパーの下にある欧州車のようなアンダースポイラー、4輪すべての前面に備わるタイヤディフレクターなど空力アイテムは数多い。Cd値(空気抵抗係数)は先代に比べて約3%低減し、0.30を切った(0.29)。

 
新型ダイハツ ミラ イースの真横画像

ボディ外板はバックドアのほか、フロントフェンダーも樹脂製。また、外から見えないところでは燃料タンク(FF車)も樹脂製だという。ボンネットも持ち上げてみると非常に軽いので、タントみたいに樹脂製かと思ったが、ここはスチール製だ。

ボディカラーは新色のスカイブルーメタリックのほか、試乗車のスプラッシュブルーメタリック(キャスト アクティバと同じ色)など全9色を用意。

 

ボンネットフードのヒンジ部分をカバーするパーツには空力フィンがついている(特許出願中)

樹脂バックドアと一体成型のルーフスポイラーとCピラーガーニッシュで整流を行う
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スズキ アルト(2014~) 3395 1475 1475~1500 2460 4.2~4.6
初代ダイハツ ミラ イース (2011~2017) 3395 1475 1490~1500 2455 4.4
新型ダイハツ ミラ イース (2017~) 3395 1475 1500~1510 2455 4.4
ダイハツ キャスト (2015~) 3395 1475 1600~1640 2455 4.7
ダイハツ ムーヴ (2014~) 3395 1475 1630 2455 4.4~4.7
スズキ ワゴンR (2017~) 3395 1475 1650 2460 4.4~4.6
トヨタ パッソ /
ダイハツ ブーン(2016~)
3650~3660 1665 1525 2490 4.6
 

インテリア&ラゲッジスペース

ダイハツならではの工夫を盛り込む

新型ダイハツ ミラ イースのインパネ画像

インパネデザインも水平基調に変化。中段に棚(インパネロングアッパートレイ)が走るダッシュボード、そのセンター上部のオーディオもしくはナビディスプレイ用スペース、インパネドリンクホルダーなどの実用的なデザインは、ビジネス車の傑作、プロボックス/サクシードの開発・生産も担うダイハツならでは。白色LEDを使った自発光式デジタルメーター(全車標準)の質感も高い。

全車ウレタンのステアリングは新設計で、「グリップ径が太く」「手ざわりのいい革シボを採用」(プレスリリース)したというが、実際に握ってみるとグリップ径はどちらかと言うと細めで、手ざわりは「サラサラ」という感じ(印象には個人差があります)。

 

ポルシェのような?(あるいはエッセのような)ハイバックタイプの軽量骨格シート構造を新採用したフロントシートは、背中へのおさまり感やハンドル操作時のホールド性を高めた、とするもの。ドライビングポジションについては、従来よりステアリングを身体の方に寄せて(+20.2mm)、ペダルは逆に少し遠ざけて(-12.7mm)、ゆとりのある自然な姿勢を実現した、とする。確かに、運転席シートリフターやチルトステアリング(いずれも最上級グレードのみに装備)のない試乗車でも割と自然なポジションがとれるが、センタートンネル側の床が少々出っ張っており、左足が少々落ち着かない。フットレストが欲しいが、オプションでも用意されていないようだ。

それ以上に気になったのが、軽量化のせいだろう、フロントドア内張りの薄さ。中からドアを開ける時にインナードアハンドルを引きながら肘でドアを押すと、内張りが「ペコッ」と一瞬凹んでしまう。

後席:スペースは十分だが、座り心地はいまひとつ

後席は空間そのものは先代と大差ないようで不足はないが、座り心地はいま一つ。リアシートの座面が短く、クッションは薄く、背もたれの角度は立ち気味で、大人の男性だといま一つ落ち着かない。また、後席ヘッドレストは下位グレード(LとB)だとオプションになる。

ただ、近所の移動や子供の送り迎えにはこれで十分であるし、クッションが薄いのは荷室拡大時に背もたれをフラットに畳むためだろう。

 

軽くて開け閉めしやすいバックドア

新型ダイハツ ミラ イースの荷室画像

荷室の容量は不明だが、広さは日々の買い物に困らない程度というか、買い物袋が転がらなくてちょうどいい、といったところ。

いいなぁと思ったのは、バックドアが樹脂製で軽く、小さくて、とても開け閉めしやすいこと。剛性があるせいか、閉める時の「バスッ」という音が気持ちよく、つい何度もやってしまった。軽自動車で初という電気スイッチ式バックドアオープナーの操作感もいい(ちゃんとボタンを押す感覚がある)。女性や高齢者など、小柄で力に自信がない人には嬉しいポイントだろう。

 
新型ダイハツ ミラ イースの荷室画像

後席の背もたれは全車、左右一体式。なので倒す時に両端にあるロックを外すのが少しやりにくいが、まあこのクルマでは重要な要素ではないだろう。

ビジネス向けのBグレードには、荷室拡大時に広くフラットなフロアを実現する「ビジネスデッキボード」が標準装備される(それ以外のグレードでもディーラーオプションで用意)。

 
新型ダイハツ ミラ イースの荷室画像

床下には小物収納スペースのほか、パンク修理キットやパンタグラフジャッキが収まる。スペアタイヤの設定はない。

 

基本性能&ドライブフィール

エンジンは自然吸気の第3世代KF型

試乗車は4つあるグレードのうちの、上から2番目、「X “SA III”」。LEDヘッドランプやスマアシIIIを標準装備して車両価格108万円というモデルだ。

エンジンはダイハツの軽でおなじみの、直列3気筒「KF」型の自然吸気のみ。思えば、このKF型が今はなきエッセに搭載されてデビューしたのは2005年だが、これは何度も改良されて進化してきた第3世代のKF。先代ミラ イースのマイチェンモデル(2014年7月以降)でも採用されていた。

この第3世代KF型エンジンは、高圧縮(12.2)、アトキンソンサイクル、デュアルインジェクターを採用した燃費志向型で、最高出力49ps、最大トルク57Nm(5.8kgm)とパワーは控えめ。今回はさらにオルタネーターベルトの低フリクション化などでメカニカルロスを減らしたほか、スロットル特性や変速制御を見直して、先代より加速性能を良くしたという。ミッションは全車、定番のCVT(無段変速機)だ。

負けじと車重650kgまで軽量化

とはいえ新型ミラ イースの場合、走行性能に影響するのは、エンジンよりむしろボディの軽量化だろう。目下、軽量化で先行しているのはスズキの方で、現行アルト(2014年末に発売)では5MT車で610kg、CVT車で650kgとして業界を驚かせたが、ダイハツも負けじと新型ミラ イースでは先代の730kgから80kgもダイエットし、CVT車で650~670kgを実現している。

ちなみに軽量化に一番貢献しているのは「Dモノコック」構造を採用したボディで、マイナス35kg。次は樹脂製パーツ(フロントフェンダー、バックドア、燃料タンク)や、内外装部品の合理化・薄肉化(新骨格シート、インパネ薄肉化、ガラス薄板化)で、マイナス30kg。そして足回り部品の最適化(国内最軽量の13インチタイヤ&ホイールの設定、電動パワステユニットの軽量化、スプリング、ナックル、ロアアーム等の軽量化)でマイナス15kgとある。人間もこんな感じでダイエットできればいいのだが。

というわけで、これだけ軽ければ動力性能は自然吸気エンジンでも十分。パワーウエイトレシオは約13kg/psで、エンジンをぶん回せば高速道路の登り坂でも、ほとんど力不足を感じなかった。空力性能も効いているはずだ。まぁCVTゆえ、加速時にエンジン回転だけ先に上がってしまう感覚はあるが、基本的にはよく走る。

気になるロードノイズ


上級グレード(GとX)のタイヤは155/65R14 (ダンロップのエナセーブ EC300+)

プラットフォームはキャリーオーバーだが、アッパーボディには現行ムーヴで導入した「Dモノコック」(軽量高剛性ボディ構造)を採用。ボディ剛性の向上に伴い、静粛性や乗り心地も向上しているだろうと期待したが、実際にはいくつか気になる点があった。

特に気になったのは静粛性で、具体的にはロードノイズ。資料にはボディにあけられた穴数の削減(減孔ボディ)、吸遮音材の最適配置、フロントピラーやドアミラー形状の見直しによる風切り音の低減などによって「車内の会話明瞭度は先代比で3%向上した」とある。そう聞くと、確かに路面が平滑な一般道(60km/hくらいまで)なら特にうるさくはなく、先代イースのユーザーなら「静かになった」と感じるかもしれない。

しかし舗装が荒れていたり、高速道路で80km/h以上出したりすると、ロードノイズが無視できないほど高まってくる。エンジン音や風切り音はかき消され、オーディオ(CDプレーヤー付AM/FMラジオ)の音もボリュームを上げないと聞こえない。「そう言えば昔のクルマってこうだったなぁ」と懐かしさすら感じた。ま、昔の軽はこれよりもっとうるさかったはずで、こちらの感覚が贅沢になったのかもしれない。

路面を選ぶ硬めの乗り心地

ワインディングでは、軽量ボディとハードな足回りがあいまって、まるでスポーティモデルのようにロール感なく走る。上級グレードのGとX(試乗車)の足回りには、軽自動車で初の超飽和バルブと専用ベースバルブを組み合せたカヤバ製ダンパーを採用し、さらにシリンダー径のサイズアップ(25mm径→30mm径)や専用ブッシュ(リア)の採用などで、乗り心地と操舵安定性の両立を図ったという。

とはいえ、地方に多い荒れた舗装のことなどを考えると、もうちょっと凸凹を飲み込むような柔らかな設定でも良かったのでは?という思いも。かつてのエッセはそんな足だったと思うが……。タイヤの指定空気圧が前後とも260kPa=2.6kgと高めなせいもあると思うが、段差やパッチだらけの舗装に差し掛かると、鋭いハーシュネス(突き上げ)がビシッと入って一瞬ビクッとすることが何度かあった。それでも操安の方をちゃんとやろう、という判断なのだろう。

また、走り始めて最初に気になったのが、電動パワーステアリングのフィーリング。据え切りは軽いが、走り出してからの手ごたえが全体に重々しく感じられた。ただ、これも3日間ほど乗っているうちに慣れてしまったが。

ステレオカメラ方式「スマートアシストIII」採用車の第2弾


スマートアシストIIIのステレオカメラがクルマや歩行者を捉えるイメージ

今や普通車にしろ軽自動車にしろ、新車には必須アイテムの自動ブレーキ。「とりあえずついていればいい」という時代は終わり、今は性能を競う時代に入っている。

というわけで、新型ミラ イースには、先代の(途中から追加された)赤外線レーザーレーダー方式のスマートアシストI に代えて、ダイハツ車では普通車も含めて、まだタントにしか採用されていない高性能ステレオカメラ方式の「スマートアシストIII」が採用された。こんなところにもダイハツの新型イースにかける意気込みがうかがえる。

従来のスマアシ I (II)からスマアシIII になって進化した部分は、衝突回避ブレーキ機能の上限速度が従来の約30km/h(IIは約50km/h)から約80km/hに引きあげられた点や、歩行者検知機能(約50km/hまで作動)やオートハイビームが追加された点など。また、衝突警報機能も IIの速度差約60km/hまでから、速度差約100km/hまでに引き上げられている。

スマアシ装着車には前後コーナーセンサーもついてくる


ソナーセンサーを使った誤発進抑制制御機能(リア)のイメージ

さらにミラ イースのスマアシIII装着車で嬉しいのは、軽自動車への標準装備(工場装着)としては初という、フロントに2個、リヤに2個のコーナーセンサーがついてくること。日々の運転ではこういう装備がありがたいものだ。

また、リア側のコーナーセンサーは、リアの誤発進抑制用センサーも兼ねており、コーナーセンサー用の短距離タイプの音波に加えて、中距離タイプの音波も交互に出すという。あるものはとことん使え、ということか。

オートハイビームは便利だが

試乗したXには贅沢にもLEDヘッドライトが標準装備されており、さらにスマアシIIIとセットでオートハイビームも付いていた。

オートハイビームは対向車や先行車などがある時はロービーム、いない時にはハイビームに自動で切り替える、というもの。自車速度約25km/h以上で作動する。ライトレバーを奥に押してハイビーム側にすると、オートハイビームが作動状態になる(ダッシュボード下のオートハイビーム作動ボタンがオンの場合)。

実際のところ、ハイ/ローの自動切り替えはなかなかスムーズで、郊外での夜間走行が多い人には、LEDヘッドライトの明るさと合わせて「付いててよかった」と思える装備だろう。うっかりハイビームのまま走ってしまうことも避けられる。ただし、前方から歩行者や自転車がやってきた場合などは、手動でロービームに切り替える必要がある。

なお、オートライトは、最上級グレードのGのみに装備で、X以下のグレードには設定もないため、スマアシ装着車でもライトのオン/オフは手動になる。なのでXの場合はヘッドライトは最新のLEDで、しかもオートハイビームまで付いているのに、ライトのオン/オフは昔ながらの手動という、ちょっとチグハグな感じになる。

試乗燃費は18.8~24.6km/L。JC08モード燃費は34.2~35.2km/L

今回約250kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約80km)が18.8km/L。一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)が21.2km/L、21.9km/L。高速道路を80~100km/hで巡行した区間(約40km×2回)が24.2km/L、24.6km/Lだった。エアコンは基本的にすべてオンで走行した。

総じて実用燃費は、まさにハイブリッド車並み。さすが元祖「第3のエコカー」の後継車といったところだ。

なお、JC08モード燃費は、FF車の場合、155/65R14タイヤの上位グレード(GとX)が34.2km/L。155/70R13タイヤを履く下位グレード(LとB)が35.2km/L。4WD車は全車32.2km/Lだ。

 

これに対して現在、軽で燃費ナンバー1のスズキ アルトは、CVTのFF車で37.0km/L(CVTの4WD車は33.2km/L)と、モード燃費では相変わらずトップの座をキープしている。CVT車同士なら車重はほぼ互角だから、この差が生じた要因は主にパワートレイン、例えばCVTのレシオカバレッジだろう。変速比はダイハツの0.327~0.628に対して、副変速機付のスズキは3.980~0.553と、よりワイド。また、アルトには小型リチウムイオン電池を使った減速エネルギー回生システム「エネチャージ」があるのも有利な点だ。

燃料タンク容量はFF車が28Lで、4WD車が30L。ちなみにアルトは全車27Lだ。

ここがイイ

正確なマーケティング。経済性の高さ。(今なら実質タダの)スマアシIII

先代ミラ イースが日本の津々浦々で、ダイハツの言葉を借りれば「日常生活のパートナー」として使われ、さらにいま「マーケットが求めるもの」は「安全・安心」だと「敏感にとらえた」上で、新型が開発されていること。要するにこれもマーケティングから生まれたクルマだが、ここまで正確にマーケットインしているクルマも珍しい。

経済性の高さ。燃費性能はおおむねプリウスやアクア並みと言ってよく、車両価格や維持費はそれらより圧倒的に安い。

スマアシIIIの採用。中でも前後4ヶ所のコーナーセンサーをセットにしたのがいい。路上ではリアバンパーやリアゲートを凹ませたまま走っている軽自動車をよく見かけるが、確かにそんなものをイチイチお金を払って直していたら、軽で得した分などすぐに吹っ飛んでしまう。これならぶつける可能性はかなり低くなるだろう。

しかも、本文でも触れた通り、ダイハツは現在「スマアシIII 搭載グレード 購入サポート(6万円相当)」を6月末まで実施中で、つまり今ならスマアシIII(6万4800円相当)は実質タダ。付けないという選択はあり得ない。

ここがダメ

高速走行時のロードノイズ。段差でのハーシュネス。ドア内張りの薄さ、オートライトの設定など

一番気になったのはロードノイズ。路面が平滑な一般道(60km/hまで)なら、そんなには気にならないが、舗装が荒れているところや高速道路(80km/h以上)では、かなりうるさくなる。これでも資料によると、新型ではボディの穴を塞ぐことなどで先代より約3%静かになったそうだが……。軽自動車の快適性や静粛性が一部の普通車を超える昨今、ラジオのボリュームを3段階上げないと聞き取れないあたりに、ひと昔前の軽自動車を思い出してしまった。

路面の影響を受けやすい乗り心地。操縦安定性を重視したのだろう、サスペンションはハードな設定で、段差などがあると特にリアからは身構えてしまうほど鋭いハーシュネス(突き上げ)が入る。本文で触れたようにタイヤの指定空気圧が260kPa(2.6kg)と高いせいもあると思うが。

これは他のダイハツ車にも共通するが、再始動時のスターターモーター音が相変わらず大きめなところや、アイドリングストップしたかなと思ったら再始動してしまうことがあること。再始動がスムーズなスズキのSエネチャージ/マイルドハイブリッド車(アルトには未採用だが)との差を感じる部分。

細かい点だが、オートライトの設定。ミラ イースのスマアシIII装着車には、グレードやヘッドランプのタイプ(LEDかハロゲンか)を問わず、オートハイビーム(ロービーム/ハイビームを自動的に切り替える)がもれなく装備されるが、オートライトは最上級グレード(G)のみ。つまり、試乗したXグレードのスマアシIII装着車は「オートライト機能なしのオートハイビーム装着車」だった。そもそもオートライトは贅沢装備というより、ヘッドライトの点け忘れ防止や早期点灯を促す意味で安全装備の一つなので、出来ればすべてのスマアシ装着車、少なくともすべてのLEDヘッドライト装着車にオートライトをセットにして欲しかった。

やはりドア内張りの「ペコッ」は気になるところ。ただ、試乗も3日目になると、慣れてきて力を加減するせいか気にならなくなったのも事実だが。

総合評価

銀行マンは原付をやめて乗り換えるべし

その昔、毎日毎日、軽自動車に乗って営業をしていた。当時はクーラーなど装備されていなかったから、夏は地獄の暑さだった。それでも原付で走り回っている銀行マンより屋根があるだけマシだと思ったもの。あんまり暑くてボーっとして追突しそうになったことも多々ある。そしてどんなに暑かろうとも睡魔が襲ってくることも知った。ガタピシ走る軽自動車とAMラジオの日々。

ミラ イースの試乗車にはナビがなく、そこにCDプレーヤー付AM/FMラジオがついていたこともあり、久々にAMラジオをつけて、そんな時代をふと思い出してしまったが、このクルマはそんな時代を思い起こさせるような、いかにも軽自動車らしい軽自動車だった。昨今の良すぎて「え、これで軽なの!?」という軽ではなく、いい意味で軽らしさが感じられるクルマだった。

 

軽量化のせいか、いわゆる重厚感というものは微塵もないし、スタビライザーが省略された足は硬めに感じられた(上記のように高めの指定空気圧のせいや、ODOメーターが8kmという慣らしも済んでいない新車だったせいもあるかも)。室内も決して静かとはいえない。

とはいえ、ふつうに走る分には力不足は感じないし、アイドリングストップしてもエアコンはちゃんと効くし、今の時代でも足にするクルマとして大きな不満はない。試しにエアコンを切って走ってみたが、オン/オフでの力感にあまり差がないことには驚いた。少し前の軽だと、エアコンで走りがひどく変わったものだが、もうそれも気にならない。

そして何より、このクラスとしては最新の安全技術がフルに搭載されているのがいい。6月末まで実施されているキャンペーンのようにメーカーからのサポート金があれば、社用車として買う企業も一番下のBグレード(ビジネス向け)にスマアシIIIを装備するだろうから、実際に販売されるミラ イースはほとんどすべてスマアシIII装着車ということになる。これが営業車なら、昔と違って本当に快適・安全だ。銀行マンはいまだに原付で走らされているが、労務管理の面でも、また事故による損失やイメージダウンのリスクを考えても、もう原付などやめて、ミライースを導入すべきと思う。他業界の営業マンは昔と違って、すでにこんなに快適・安全なクルマに乗れる時代なのだから。

今やるべきは安全性能の競い合い

とまあ、そんなことを考えてさせたこの新型ミラ イースは、ついに不毛な燃費レースをやめて、安全性を競うクルマになった。実用燃費はもはやどのクルマもそう悪くはないし、そこでわずかな数値を競い合うより、今やるべきは安全性能の競い合いだ。そして今、ミラ イースがこの一番安いクラスで真っ先にそれを行ったことは、日本の自動車史に残る出来事と言っていいかもしれない。

これで今後は、多くの人が安全装備の恩恵にあずかり、事故でムダなお金を使ったり、嫌な思いをしたりすることが減っていく時代になるだろう。普通車でもまだ全車標準とはいかない先進安全装備が、一番底辺のこのクラスに標準装備として載ったからには、これから一気に全車装着が進むはず。ただ、一つ欲を言えば、コストとのバランスはあるだろうが、最上級グレードのみに装備されているサイドエアバッグも全車標準にしてほしかったところだ。

 

ディーラーオプションの「ハンドルデスク」や「シートマルチバッグ」、「助手席シートアンダートレイ」等を装着したもの

また、新型のデザインはいわゆる女性向きではなく、男性が乗っても違和感がないものだと思う。これもいい判断だ。デジタルメーターを大きく配したインパネ、小物入れが多く使い勝手のいいダッシュボードなどは、道具感があってよくできている。どうせならプロボックス/サクシードのような格納式テーブルなど、さらに道具感が強いアイテムがあるとなおいいが、それは望み過ぎか。安くても「道具」として使える「安全」な軽自動車。このあたりにかなり市場があるように思う。

不公平を正す正義のクルマ


初代スズキ アルト

ところで、初代アルトが47万円で売り出されたのは1979年で、40年近く前のこと。それまでの軽自動車はひたすら高性能・高級化路線を進んでいたが、生活の足が欲しいというニーズに応えて、あるいは、そういったことを新たに提案して、アルトは大ヒット車になった。そして今も再びクルマは軽を含めて、やたら高くて高級な方向に向かっているが、「お金はあまりないけど足は必要、だから燃費がよくて安全で、低価格のクルマがあれば」という人は、同じように多いはず。ミラ イースなら総額100万円程度で買えるから、10年乗れば月1万円以下で乗れることになる。税金も保険も、高速道路料金も、軽ならまだまだ安い。

ミラ イースの例えばBグレードなら、CVTで、エアコンもついて、84万2400円(消費税抜きなら78万円)。6月末までならスマアシIIIも実質ほぼタダで装着できる。だから、もし初代アルトと同じようにMTで、エアコンレスで、安全装備レスにしたら60万円くらいか。さすがに物価も40年前より上がっているから、現代のミラ イースは感覚的には初代アルトに近い価格のクルマとも言えるかもしれない。

 

完全自動運転までは、まだまだ遠い道のりのように思うが、その技術は早くもこうしてベーシックなクルマを安全で、(事故修理が少なくて済む)経済的なクルマにした。お金に余裕のある人ほど安全なクルマに乗れる、という社会的な不公平を正す正義のクルマがミラ イースだ。安くて安全な、生活の足を必要とする人は、高齢化社会を迎え、今後も増えていくだろう。トヨタグループというビッグチームの中で、ミライースは最終回に自動運転が登場するまでの中継ぎ投手、という位置づけにあると思う。クルマそのものを楽しみたいクルマ好きには全く振り向かれないであろうクルマだが、世の中的には重要なクルマと言えそうだ。

 

試乗車スペック
ダイハツ ミラ イース X“SA Ⅲ”
(0.66L直3・CVT・108万円)

●初年度登録:2017年5月
●形式:DBA-LA350S
●全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mm
●ホイールベース:2455mm
●最低地上高:155mm
●最小回転半径:4.4m
●車重(車検証記載値):670kg(430+240)
●乗車定員:4名

●エンジン型式:KF
●排気量:658cc
●エンジン種類:直列3気筒DOHC・4バルブ・ガソリン・横置
●ボア×ストローク:63.0×70.4mm
●圧縮比:12.2
●最高出力:36kW(49ps)/6800rpm
●最大トルク:57Nm (5.8kgm)/5200rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:28L(※FF車の場合。4WDは30L)

●トランスミッション:CVT(無段変速機)

●JC08モード燃費:34.2km/L
※GとXは34.2km/L、LとBは35.2km/L、各4WD車は32.2km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:155/65R14 (Dunlop Enasave EC300+)
※GとXは155/65R14、LとBは155/70R13

●車両本体価格:108万円(X“SA Ⅲ”)
●試乗車価格(概算):110万0866円
※オプション合計(概算):2万0866円
※オプション内訳:インテグレートCD・AM/FMラジオ・AUX端子 1万0800円、ロングバイザー 1万0066円

●ボディカラー:スプラッシュブルーメタリック
●試乗距離:約250km

●試乗日:2017年6月
●車両協力:駄知ダイハツ(株式会社中根モータース)

 
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駄知ダイハツ

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