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トヨタ カムリ新車試乗記(第822回)

Toyota Camry

(2.5L直4ハイブリッド・329万4000円~)

ビューティフルモンスター!
生き残りをかけて変身した
ミッドサイズセダンに試乗!
  

2017年09月08日

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キャラクター&開発コンセプト

トヨタを代表するグローバルFFミッドサイズセダン


新型トヨタ カムリ

約6年ぶりにフルモデルチェンジし、2017年7月10日に発売された新型「カムリ」は、トヨタの伝統的なミドルクラスセダン。その歴史は1980年に登場したFR(後輪駆動)の「セリカ カムリ」から始まるが、実質的な初代は1982年にトヨタ初のエンジン横置きFF(前輪駆動)車として登場した「カムリ」であり、そこから数えると新型は8代目に当たる。

 
中間グレードのカムリ Gの画像

日本向けとは時に別モデルとして、海外向けカムリはグローバルカーとして独自に進化し、米国ではトヨタの最量販モデルとして2002年から2016年まで15年連続で(あるいは過去20年間で19回)、乗用車部門のベストセラーとなるなど大きな成功を収めている。現在も100ヶ国以上の国・地域で販売され、累計販売台数は1800万台超とのこと。

一方、国内ではセダン市場の縮小に伴って販売台数は減少しており、先代に続いて新型もハイブリッド車のみが販売される。ゆえに国内では新型の投入で「セダンの復権」も期待されている。

TNGAプラットフォームを採用。日本向けはハイブリッドのみ


TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づいた新開発のFFミッドサイズ用プラットフォームを採用

国内向け新型カムリのパワートレインには新開発2.5L 直4“ダイナミックフォースエンジン”(A25A-FXS)のハイブリッド(THS II)、プラットフォームにはトヨタのTNGA(Toyota New Global Architecture)に基づいて新開発されたFFミッドサイズ用「GA-K(Kプラットフォーム)」を採用。低全高・低重心設計を活かしてスポーティなデザインとしたほか、操縦性や動的質感の大幅な底上げを図っている。また、JC08モード燃費も先代(23.4km/L)から大幅にアップし、28.4~33.4km/Lとなった。

先進安全装備についてはトヨタの上位モデルに採用されているTSSP(Toyota Safety Sense P)を標準装備。ミリ波レーダーと単眼カメラを装備することで、追従走行や車線維持、歩行者検知などを可能にしている。

 

販売は3チャンネルに。目標販売台数は5倍弱の2400台に

先代カムリの生産は米国(ケンタッキー州)、オーストラリア、アジア各地など、世界10拠点で行われているが、新型の国内向けは先代同様にトヨタ本社の堤工場(愛知県豊田市)で行われる。

広告キャッチコピーは「Beautiful Monster」。国内の販売チャンネルは従来、トヨタカローラ店のみだったが、新型ではトヨペット店とネッツ店が加わって計3チャンネルになった(つまりクラウンを扱うトヨタ店以外のトヨタブランド全店)。目標販売台数は先代の月500台から2400台に増やされている。発売後一ヶ月の初期受注台数は約1万1500台と、ひとまず好調だ。

 

北米仕様の先代カムリ・後期型(北米仕様は2014年にマイナーチェンジしている)

■過去の新車試乗記
新車試乗記>トヨタ カムリ ハイブリッド “G パッケージ”(2011年10月掲載)

■外部リンク
トヨタ自動車>ニュースリリース>カムリをフルモデルチェンジ(2017年7月10日)

 

価格帯&グレード展開

329万4000円から。“レザーパッケージ”は419万5800円


ベースグレードのカムリ X。16インチスチールホイール+樹脂キャップになる

新型の北米仕様には、2.5L 直4や3.5L V6の純ガソリンエンジン車(トランスミッションは8速AT)もあるが、日本仕様は2.5L 直4のハイブリッド車(FF)のみ。3グレード構成で、価格は以下の通り

■カムリ X  329万4000円
■カムリ G  349万9200円
■カムリ G “レザーパッケージ”  419万5800円

 

オプションのパノラマムーンルーフ(ガラスおよびポリカーボネート製)

オプションは、フロント側が電動アウタースライディングガラスルーフになる「パノラマムーンルーフ」(14万0400円)、そしてブラインドスポットモニター(BSM)、リアクロストラフィックアラート(RCTA)、インテリジェントクリアランスソナーのセット(9万2880円)、おくだけ充電(1万2960円)など。

ボディカラーは、テーマカラーのエモーショナルレッド(5万4000円高のオプション)など全7色。

 

パッケージング&スタイル

TNGAで「低重心シルエット」を実現

「Beautiful Monster」、美しきバケモノと謳われるスタイリングの、文字通り大口をあけたフロントデザインは、Bi-Beam LEDヘッドランプ、デイタイムランニングライトのLEDランプ、それらをつなぐスリムなアッパーグリルと大きなロアグリル(下側の存在感を重視した、トヨタ言うところの「アンダープライオリティ」)で構成される。

 

いわゆる「キーンルック」であり、顔つきはかなりアグレッシブだが、メイン市場の北米では似たようなデザインの4ドアセダンが街にあふれており、そこで埋没しないのが至上命題だったはず。マーケットの好みや事情が違う以上、このあたりは悩ましいところ。

プロポーションは低く伸びやか。先代はボンネットやカウルの位置が高く、ルーフも高くて全体にずんぐりしていたが、新型では4代目プリウス同様に、TNGAの思想が導入されたことで、トヨタ言うところの「低重心シルエット」が実現された。おそらくはヒュンダイ ソナタやマツダ アテンザあたりも強く意識したと思うが、従来カムリのプロポーションの凡庸さは一掃されている。

全長はクラウン並み。小回りは苦手

このクラスのボディサイズに今さら驚く気はなかったが、全長は4.9m弱の4885mm(先代比+60mm)、全幅は1840mm(同+15mm)もあって、やっぱり少し驚いてしまう。とは言え、全長はアテンザ セダンより20mm大きく、クラウンより10mm短い程度だ。

全高は1445mm(先代比-25mm)と低めで、これが新型カムリとTNGAの特徴である。キャビンの広さに影響するホイールベースが2825mm(同+50mm)に伸びたのは順当なところだろう。

少し注意が必要なのは、最小回転半径が16および17インチタイヤ装着車で5.7m、試乗した18インチ装着車で5.9mもあること。この数値は現行ホンダ アコード(日本仕様はハイブリッドのみ)とまったく同じだが、クラウンはさすがFRで5.2m。小回りを重視されると、カムリのような大型FFセダンは辛いところだ。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
メルセデス・ベンツ Cクラス (2014~) 4690~4715 1810 1430~1445 2840 5.1~5.3
VW パサート セダン (2015~) 4785 1830 1465~1470 2790 5.4
レクサス GS (2012-) 4850 1840 1455 2850 5.1~5.3
マツダ アテンザ セダン (2013~) 4860~4865 1840 1450 2830 5.6
新型トヨタ カムリ(2017~) 4885 1840 1445 2825 5.7~5.9
トヨタ クラウン ハイブリッド 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
ホンダ アコード ハイブリッド(2016~) 4945 1850 1465 2775 5.7~5.9
 

インテリア&ラゲッジスペース

見た目は奇抜だが、使い勝手は堅実

インテリアはy字型のセンターコンソールに驚かされるが、よく見ると意外にオーソドクスな構成に思えてくる。眼前には一般的な2眼メーターに大型のマルチインフォメーションディスプレイ。センターコンソールには上から空調吹出し口、ナビ用ディスプレイ、空調操作スイッチがごく当たり前に並ぶ。また、このナビディスプレイ、ボタンを押すと社外品の2DINオーディオみたいにウィィィンと持ち上がって、裏側に各種ディスクやメモリーカードが差し込めるようになっている。さすが日本車。

 

トヨタ自身は新開発のカラーヘッドアップディスプレイなどによるHMI(Human Machine Interface)をアピールしているが、むしろ好感が持てるのは、何でもかんでも液晶ディスプレイやコントローラーに格納せず、メカニカルスイッチを多数残しているところ。スイッチの多くには透過照明も付いていて、夜間の操作性もいい。レーダークルーズコントロール操作用のステアリングスイッチも新開発だが、すぐに慣れることができた。

 

上位グレードのG(レザーパッケージを含む)には宝石のタイガーアイ(虎目石)をイメージした加飾パネルが採用されている。インテリアの質感については、ミッドクラスの実用セダンということで考えればライバル車をリードするものだと思う。

 

低く座るタイプ

ドライビングポジションは、比較的低いところに座るタイプで、着座基準位置は先代比で22mm低く、50mm後方に下がっているという。しかし見晴らし自体はカウルなどが低いせいだろう、意外に悪くない。ステアリングのチルト/テレスコ調整量も大きく、小柄な人でも使いきれないくらいある。アクセルペダルはオルガン式だ。

 

試乗車は最上級グレードの“レザーパッケージ”で、シートは電動のパンチングレザー仕様。座り心地は悪くないが、人によっては左足付近のフットルームの狭さ、そしてシートのホールド感に不満を覚えるかもしれない。

 

後席は足元ひろびろ、頭上もひろびろ

さすがセダンのベストセラー、後席も広く、シートの形状や座り心地にも不満はない。試乗車には電動アウタースライディング機能付のムーンルーフが装着されていたが、頭上空間への影響は皆無。サンルーフ好きにはお勧めの装備だ。

ハイブリッド車であることを忘れる荷室

先代カムリ(ハイブリッド)は後席の背後にニッケル水素電池を積んでいたたため、トランク容量は440Lと狭く、トランクスルーも後席片側だけだった。それに対して新型ではリチウムイオン電池を後席の下に収めることで、ガソリン車と同等で先代比2割増しの524Lを確保。また、後席の背もたれが左右共に倒れるようになり(荷室側のノブを引っ張るとロックが外れる)、トランクスルー開口部もずいぶん大きくなった。ハイブリッド車であることを忘れさせる広さと言っていい。

ただ、やはり後席の下に電池が収まっているため、荷室側フロアと、倒した背もたれ側のフロア面との段差はけっこう大きく、タンスや冷蔵庫といった大物を積む場合には困りそう。しかし、後で触れるハイブリッドであることのメリット(スムーズな走り、燃費の良さ)を考えれば、ささいな弱点と言える。

 

荷室の床下にはパンク修理キットやパンタグラフジャッキが備わるが、メーカーオプションで応急用スペアタイヤ(1万0800円高)に変更することもできる。自分でスペアに交換できる人なら、何度でも使えるスペアタイヤ仕様もありだ。

 

基本性能&ドライブフィール

新開発の2.5Lハイブリッドを搭載

試乗したのは18インチタイヤ(235/45R18)を履く最上級グレード「G “レザーパッケージ”」(419万5800円)に、オプションのムーンルーフなどを装着して、しめて462万2400円という仕様。

「2.5L 直4エンジンのハイブリッド」という点では先代とパワートレインは同じだが、中身は完全新開発。最大熱効率41%と高出力を両立した新開発「ダイナミックフォースエンジン2.5(A25A-FXS)」(178ps、221Nm)と強力なモーター(120ps、202Nm)を採用し、また、これがパワーフィールに案外効くと思われるのだが、駆動用バッテリーは先代のニッケル水素からリチウムイオンに変更されている。

システム出力は先代の205psから211psに向上し、車重は1600kgほど。パワーウエイトレシオは約7.6kg/psと十分な数値だ。

トヨタ製4気筒ハイブリッド車でベストかも

実際、加速は期待以上にいい。アクセルを踏み込めば瞬時にモーターのトルクが立ち上がって、エンジンを唸らせることなくシューン!と気持ちよく加速する。トヨタのハイブリッド車、特に4気筒エンジンのタイプで、こんなによく走るモデルってあったっけ?と思ってしまうほどレスポンスがいい。1.8Lハイブリッドのプリウス(システム出力は3代目が136ps、現行の4代目が122ps)あたりから乗り換えると、相当うらやましく思えるのでは。また、先代カムリユーザーなら「排気量が同じで、こんなに違うのか」と驚くだろう。

 

新開発のダイナミックフォースエンジン2.5(A25A-FXS)(178ps、221Nm)

ちなみにこのエンジン、車内ではとても静かだが、車外ではアイドリング時のエンジン音がけっこう大きく、エンジンルームをのぞくとエンジン自体もけっこう振動している。そのあたりへの対策だろう、新型カムリではトヨタで初めてエンジンマウント4点をすべて液体封入式にしている。

乗り味も見違えるようによくなった

現行プリウス用のTNGAシャシー「Cプラットフォーム」より一つ格上の「Kプラットフォーム」もなかなかいい。試乗車は18インチのブリヂストン トゥランザを履くにも関わらず、乗り心地は終始よく、ロードノイズも静か。ちなみにサスペンションは、フロントが新開発のマクファーソンストラット、リヤは先代のストラットに代えて現行プリウスと同形式のダブルウィッシュボーンに変更されている。

 

ボディねじり剛性も約30%アップ。ボディ骨格には「環状骨格構造」を採用し、さらに骨格の接合部には現行プリウスにも使われている溶接技術「レーザースクリューウェルディング(LSW)」や構造用接着剤を採用。さらに超高張力鋼板「ホットスタンプ材」の適用部位も増やされている。

ラック並行式EPSで、ハンドリングも格段によくなった

ハンドリングもいい。これだけのボディサイズながら、鈍重な感じがほとんどなく、コーナーでステアリングを切り込めば素直に頭がインを向く。そこからさらに切り込んでも、強いアンダーステアは出ない。試乗車の場合は、235/45R18タイヤの性能も大きいと思われるが。

 

ラックパラレル式EPS(写真はレクサスLC用)

また、電動パワステ(EPS)には、レクサス LC500/500hで初めて採用されたジェイテクト製のラック平行式EPS(ラックパラレルEPS、RP-EPS)と同タイプのものが採用されている。トヨタはこれまでFF車の場合は、上級モデルでもコラムEPS(C-EPS)で済ませてしまうことが多かったので、これは画期的。ステアリングフィールは同社のFR車、あるいは欧州の上級FF車(VWゴルフやプジョー308以上のモデル)にほとんど遜色なく思えた。ステアリングフィールがいいと「いいクルマ」感がぐっと増すし、運転もしやすくなる。

TSSPを標準装備。ACCは180km/hまで

新型カムリには、トヨタの上級モデルに採用されている衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」が標準装備されている。新型カムリのセールスポイントの一つだ。

ミリ波レーダーや単眼カメラを搭載することで、衝突被害軽減ブレーキ(歩行者も検知)や全車速対応レーダークルーズコントロールはもちろん、ステアリング制御付のレーンデパーチャーアラートも付いている。ただ、ステアリング制御は思ったほど積極的ではなかったが。

 

新開発のレーダークルーズコントロール用ステアリングスイッチ

また、国産車では従来、設定上限速度が115km/h前後に制限されていた全車速対応レーダークルーズコントロールについては、レクサスLCに続いて新型カムリでも180km/hまで設定可能になった。これはトヨタによれば、来るべき新東名の制限速度引きあげに対応したものだ。

さらに、トヨタのクルーズコントロールと言えば、レーダーか非レーダーかを問わず、今まではステアリングコラムの左下にはえたレバーで行うものだったが、新型カムリではついに新開発のステアリングスイッチが採用された。操作性は初物とは思えないほど良好だった。

 

なお、新型カムリには新開発のカラーHUD(ヘッドアップディスプレイ)も標準装備されている。フロントウインドウに各種情報を投影するタイプで、視認性は良好。特にACCを使って高速巡行する際には便利だ。

試乗燃費は15.6~18.0km/L。JC08モード燃費は28.4~33.4km/L

今回はトータルで約200km試乗。参考値ながら試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約80km)が15.6km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が16.1km/L、高速道路を80~100km/h巡行した区間が18km/L台だった。思いのほか燃費がよく、「ぜんぜんガソリン減らないなぁ」と思っているうちに返却日となってしまった。

 

試乗車(総走行距離約2600km)に残っていた過去一ヶ月の燃費履歴はこんな感じ。だいたい17~18km/Lと優秀。10km/Lを切ったのは今回の撮影時のみ

ただ、燃費が伸びるのは、プリウスなどと同様に、電気モーターでの走行が増える市街地での渋滞時。高速道路でも車速が100km/h程度まで上がってしまうと20km/L台に乗せるのは難しいと感じた。

JC08モード燃費は、ベースグレードのX(車重1540kg、205/65R16タイヤ)のみ33.4km/Lで、主力のG(車重1570~1630kg、215/55R17もしくは235/45R18タイヤ)が28.4km/L。先代は全車23.4km/Lだったので、少なくとも2割以上は良くなった感じ。

使用燃料はレギュラー。燃料タンクはこのクラスでは小さめの50Lだが、燃費がいいのでまぁ十分だろう。

ここがイイ

先代に比べて何もかもよくなった

新型プリウス同様に、TNGAコンセプトの新プラットフォームを採用したことで、なるほど確かに走りは先代よりグンと良くなった。トヨタ車の場合、クラウンやマークXなどのFR車では走り重視、FF車ではパッケージング重視みたいな役割分担があったような印象があるが、新型カムリはFF車でも欧州流にきっちりシャシー性能を上げてきている。

パワートレインもいい。トヨタのハイブリッドシステム(THS-II)、特に4気筒エンジンのタイプはどれも似たような印象だったが、新開発の2.5Lハイブリッドはレスポンスがとてもよく、エンジン音も室内では静かで、THS-IIを思わず見直してしまった。燃費もプリウスほどではないが期待以上で、このサイズ、この重量、この快適性を考えると、すごいと思う。

先代より使い勝手が良くなったトランク。駆動用バッテリーが床下に収まったことで容量が増え、トランクスルー開口部も大幅に広がったのは、一目で分かる進化だ。

新設計のスイッチ類も本文で触れたように使いやすく、初めて乗っても戸惑う部分がほとんどない。ボディサイズの問題を除けば、おそらくほとんどの人が「使いやすい」「快適」「燃費もいい」と満足するのでは。

ここがダメ

北米向けのボディサイズ。静かゆえ気になる高速域でのノイズ

乗っていて特に不便は感じなかったが、全長4.9m弱、全幅1.84mというボディサイズだけで、購入を諦める人は少なくないだろう。さすが堤工場製、日本仕様の仕上げは丁寧だが、サイズに関してはグローバルカーだと意識させられる。もちろん、アテンザやアコードなどのライバル車もボディサイズは似たようなものだが。

絶対的な静粛性が高いせいだと思うが、気になったのは速度域が高いところでピュルピュルピュルという風切り音がAピラーやサイドウインドウ付近から目立つようになること。ドアミラー上部には特定の速度域で風切り音を抑えるというボルテックスジェネレーター(小さな突起)もついているのだが。一般道では静かなロードノイズも、高速域から目立つようになってくる。あんまり飛ばすな、ということか。

装備面で唯一の不満は、後席のサイドウインドウにブラインド(日除け)がないこと。ここまで作り込まれ、装備もいいクルマなのに、なぜ付け「忘れた」のか。理由を聞いてみたい。

総合評価

「オッサン」にも分かりやすい

4ドアセダンというクルマは世界的に販売台数が減少傾向にあり、それは日本も例外ではない。噂ではマークXの次期モデルはないらしいし、トヨタはラインナップの「セダン」カテゴリーに、厳密に言えば5ドアハッチバックと言うべきプリウスも加えている。そしてやっぱりセダンは3ボックスじゃないと、などという人は「オッサン」と呼ばれることになる。

一方、新型カムリに乗って気に入らないという「オッサン」は少ないだろう。まあ、かなりいい。と言うか、これいいなあ、欲しいかも、と思う「オッサン」が多いハズ。まず快適だ。セダンとして、これは重要な要素。そしてよく走る。まあワインディング云々という類のクルマではないが、一般道を、そして高速道路を走る分には、よく走るなあと思える性能を持つ。そしてレーダークルーズコントロールの設定上限速度も引き上げられているので、昨今の空いた高速道路を巡航する時には恩恵を十二分に味わえる。これのおかげで「オッサン」でも性能の進化を実感できるはず。室内やトランクも広いし、快適装備も文句なし。おまけにというか、ハイブリッドだから当たり前だが、燃費がいい。先代もハイブリッドだったが、それと比べても燃費はかなり良くなっている。「オッサン」としてはこれ、もし10年前に出てたら、きっと買うだろうなと思う。

 

そう、10年前ならセダンもまだ市場性を保っていた。だけどその当時は、いわゆるダウンサイジングが完全にトレンドになっていて、古くなったマークIIやクレスタ等に乗っていた「オッサン」たちは、プリウスだの、更に小さいアクアだのに乗り換えてしまった。乗り換えてみたら十分だった、いや全然よかった、という人が多い。クレスタより広いし、荷物は載るし、小さくて取り回しがいいし、燃費も断然いい。そしてこの10年間で「オッサン」たちも歳をとった。もういまさらクルマにお金をかけるつもりもない。第一、小さいクルマに慣れてしまったら、大きなクルマに乗る気にはなれない。そのへんが、日本で新型カムリがターゲットとする「オッサン」トヨタユーザーの事情のように思える。

 

むろん、そうではないセダン好きもまだまだいるだろうし、先代カムリのユーザーだって多い。今後マークXやSAIあたりが絶版となったりすれば、その代替えの受け皿としても新型カムリはそれなりに売れるだろう。そうなるとトヨタの国内向け上級セダンはいよいよFRのクラウンシリーズ、FFのカムリといったあたりになりそうだが、この出来ならマークXの代替となり得るだろう。スタイリングも4ドアセダンとして今回は十分にカッコよく「オッサン」の胸に響く。そしてトヨタの3チャンネルで販売するわけで、全国の各店が1台ずつ売るだけでも、相当な数が出るはずだ。

 

つまり大ヒットしそうな要因はなかなかないが、そこそこ売れる要因はたくさんある、というのがこのクルマだ。もともとは海外市場向けだが、日本においてもこのような、まさに大人の事情でそこそこ売れるので、十分商売になるという算段だろう。また、そういったクルマなので乗っていると、なんとなく輸入車を運転しているような感覚もある。Beautiful Monsterなルックスも輸入車感があって悪くないと思うのだが、まわりの「オッサン」の多くからはやや拒否反応の方が強いか。それも存在感アリアリと解釈すれば悪いことではないのだが。

本当のライバルは輸入車

となれば、やはり輸入車のようにステーションワゴンがあったらいいのになあ、と思ってしまう。この低く構えたプロポーションなら、カッコいいステーションワゴンもデザインできそうだ。同じクラスのアテンザもワゴンが人気だし、輸入車でもこのクラスならワゴンの人気が高い。先代と異なり、今回はバッテリーが後席下にうまく配置され、トランクスルーが無理なくできているわけで、これならハイブリッドでもなんとかワゴンらしい荷室を確保できそうだ。トヨタのワゴンは、カローラフィールダーとプリウスα、そして欧州から輸入しているアベンシスくらいだから、案外「オッサン」以外にも売れて、小ヒットくらいしそうな気もする。レガシィを持つスバルに配慮が必要かもしれないが…。

 

長年4ドアセダンに乗ってきた「オッサン」たちは、高級セダンに夢と憧れを持って生きてきた。物心ついたときからクルマに乗せてもらい、免許を取ってからは夢(クルマ)のために一生懸命働き、金を突っ込んできた。そんな夢を持ち続けて、まだ生き残っているセダン好きの「オッサン」には、ぶつからないクルマでもある新型カムリを大いにおすすめしたい。

ただし価格を見ると試乗車で400万円台と、輸入車だって買えそうなところなのが悩ましい。2.5Lのハイブリッド車で、これだけ安全装備がついていれば高くても仕方ないのだが。諸事情で国産車やトヨタ系のクルマしか買えない人は別として、こういうクルマにお金を投じられる「オッサン」たちは、もっと高いクルマだって買えるだろう。今の国産車の悩みは、そしてカムリの悩みもそこではないだろうか。

 

試乗車スペック
トヨタ カムリ G “レザーパッケージ”
(2.5L直4ハイブリッド・419万5800円)

●初年度登録:2017年6月
●形式:DAA-AXVH70-AEXNB(L)
●全長4885mm×全幅1840mm×全高1445mm
●ホイールベース:2825mm
●最低地上高:145mm
●最小回転半径:5.9m
●車重(車検証記載値):1630kg(960+670)※パノラマムーンルーフ装着により30kg増加。非装着車は1600kg
●乗車定員:5名

●エンジン型式:A25-FXS
●排気量:2487cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴+ポート噴射(D-4S)・横置
●ボア×ストローク:87.5×103.4mm
●圧縮比:14.0
●最高出力:131kW(178ps)/5700rpm
●最大トルク:221Nm (22.5kgm)/3600-5200rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:50L

●モーター形式:3NM
●モーター種類:交流同期電動機
●最高出力:88kW(120ps)
●最大トルク:202Nm(20.6kgm)

●駆動用バッテリー種類:リチウムイオン電池
●トランスミッション:電気式無段変速機

●システム最高出力:155kW(211ps)
●JC08モード燃費:28.4km/L ※ベースグレード「X」の場合は33.4km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング
●タイヤ:235/45R18 (Bridgestone Turanza T005A ※Made in Japan)
※レザーパッケージのみの装備。下位グレードは215/55R17もしくは205/65R16

●車両本体価格:419万5800円(メーカーオプション含まず)
●試乗車価格(概算):462万2400円(オプション込み)
※オプション合計(概算):42万6600円
※オプション内訳:ボディカラー(エモーショナルレッド、5万4000円)、パノラマムーンルーフ 14万0400円、ブラインドスポットモニター(BSM)、リアクロストラフィックアラート(RCTA)、インテリジェントクリアランスソナーのセット 9万2880円、おくだけ充電 1万2960円、ETC 2.0ユニット(販売店オプション) 3万2400円、フロアマット(ロイヤルタイプ、販売店オプション) 5万1300円、ドライブレコーダー(販売店オプション) 4万2660円。

●ボディカラー:エモーショナルレッド
●試乗距離:約200km

●試乗日:2017年8月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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