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トヨタ ヴェルファイア ZG(3/3)新車試乗記(第831回)

Toyota Vellfire

2018年02月23日

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ここがイイ

取り回しの良さ。安全装備の充実

とにかく運転しやすいこと。大きなボディを軽い操作で自在に動かせるあたり、独特の快感さえある。それでいて動きは軽々しくなく、トヨタ車らしいゆったり感もあって、後席乗員のことを考えた丁寧な運転もしやすい。視界がいいせいもあって、狭いところでの取り回しも見た目ほど悪くない。今回のマイチェンモデルでは先進安全装備や運転支援装備も「今のクルマ」にふわしく充実し、安心感も高まった。誰かをもてなすための乗り物としては、究極かつ無難な選択の一つ。

 

ここがダメ

アダプティブハイビームシステムの使い勝手

本文でも触れたように、アダプティブハイビームシステム(AHS)は、ライトスイッチをハイビーム側にし、メインスイッチをONにした状態でシステムがONになるわけだが、対向車や先行車がいる場合でもハイビームが点灯していればハイビーム警告灯が青々と点灯するため「ひょっとして普通にハイビーム?」「相手は眩しくないか?」などと心配になってしまう。この手の装備はホンダのように「ライトスイッチをAUTOにすれば、オートハイビームも連動してオンになる方式」が分かりやすくていいと思うのだが。

もう一つ細かい点で気になったのは、一部グレードやパッケージオプション装着車のLEDルームランプが妙に暗いこと。夜間、運転席の床で探し物をした時には懐中電灯が必要になってしまった。今どきはスマホが懐中電灯代わりになるが、そのスマホをスルリとシートの下に落としてしまうと本気で困りそうだ。

総合評価

運転はクルマに任せたい

久々に運転したくないクルマだった。一人でこのクルマに乗っていると、巨大なムダを走らせている気になる。この燃費で動かしているのは、快適であろうキャプテンシートや、皆でワイワイ楽しむ時に有効なサードシートなのだから。この燃費ならいっそ、スーパースポーツをぶりぶり乗り回したい。いや、快適なスポーツセダンで気持ちよく走りたいものだ。

などとフリで書きたくなったのは、まさにこのクルマは運転するより乗せてもらいたいクルマだから。今のアルファード/ヴェルファイアの動力性能や操縦安定性は、もはや運転していて不満を言いたくなるものではない。視界が高くて見切りはいいし、ワインディングだって普通に走れてしまうのは驚異だったりする。ミニバンの進化はすごい。そうした性能を持ってはいるが、しかしこのクルマ、どうせなら誰かに運転してもらって、後席でゆったり過ごしたいのだ。運転はもう誰かに任せたい。誰か? そうもちろん自動運転するヴェルファイア自身に、である。

 

つまりこの手のクルマこそ、一刻も早く自動運転を実現してもらいたいものだ。行き先を指示したら、あとはこの快適そうな後席でくつろいでいれば目的地に着く、というクルマであれば、たとえ1000万円であっても「買い」だろう。いずれ自動運転車の時代になった時には、コストの安い移動のためのクルマと、こういう快適でリッチなクルマの二手に分かれるのではないか。自動運転になったら運転性能云々より、乗り心地や快適性が競われるはず。そしてそのときには、トヨタのようなこういうクルマ作りに長けたメーカーが優位になるだろう。ただ、その頃は、シェアリングなどクルマの所有形態の変化で、個人向け販売は少なくなってしまっているかもしれないが。

今でもこのクルマなら、かなり自動運転ぽさを味わうことが出来る。レーダークルーズコントロール(いわゆるACC)と「レーントレーシングアシスト(LTA)」によってステアリングに手を添えているだけで、新東名で名古屋から東京まで、たいした操作をせずに快適に移動できるだろう。レーダークルーズコントロールの設定可能速度も実用的になっているから、自然に高速道路の流れに乗って走れるはず。レーントレーシングに関しては、もう少し自然な感覚が欲しかったが、これもさらにバージョンアップされていくだろう。やっとここまで来たか、と感慨深い。やっと、ではあるが。

クルマの価格だけはインフレ傾向

いつも書くが、デイズでは2003年11月に「インテリジェントカー」という雑誌を編集し、宝島社から発売した。その時にACCを特集して、もう15年もの年月が過ぎた。15年……、一人の人生においては途方もない時間だ。そんな時間を経て、ようやく高速道路の流れに乗って走れる実用的なACCを搭載した国産車が出現しつつある。ようやくここまで来たのなら、加速度をつけて、いや制限速度をはるか超えるような速度で、進化を早めてもらいたい。15年の間に、中国の自動車産業はどこまで進化したか? 15年の間に、世界のスマホ事情はどこまで進化したか? それを思うと、今後の15年は、などと言っている場合ではないと思えてくる。

それはそうとして、昨今、国産車の価格がどんどん高くなっているように思えてならない。インテリジェントカーを読むと、アルファードの場合、レーダークルーズのない15年前の2.4Lがナビなしで265万円~、3Lが289万円~、2.4L ハイブリッドが366万円~。現在は消費税抜きで2.5Lが310.6万円~、3.5Lが458.1万円~、2.5L ハイブリッドが404万円~と、1割程度は高い感覚。性能や装備も違うので単純比較はできないものの、やはり性能や安全性が高まったのに比例して価格も上がっているのは間違いないだろう。

 

むろん、それにともなって世の人々の収入が増えているのならいいのだが、それはあまり実感できない。そして一般的な感覚ではデフレが続いている。しかしクルマの価格は確実にインフレ傾向であるかのように見える。クルマ離れが進んでいることの理由のひとつはここにあるような気がしてならない。ただ、貧富の差は広がっているらしいので、それにともなって高級車ほどよく売れているようだ。実際ミニバンの最高級クラスであるアルファード/ヴェルファイアもよく売れているようで、貧乏人がとやかく言うことではないのかもしれないが、それでも15年前の人に、ヴェルファイアの最高級グレードが今は消費税込みで700万円オーバーだと言ったら相当驚くだろう。

家賃4万円でアルファードか、家賃10万円で軽自動車か

今後、さらに装備が良くなれば、車両価格は高くなるはず。その意味では来るべき自動運転+カーシェアリングの時代(クルマを所有しない時代)に備えて、そろそろ購入・所有ではなく使用料という概念をもっと定着させていく必要があるのではないか。例えば総額700万円で買ったアルファードを5年乗って200万円で売ったとすると、年間100万円の使用料ということになる。月なら8万円くらいだ。150万円の軽自動車を5年乗って30万で売ったら、使用料は月2万円。それを誰もが基本的に必要な家賃というものとリンクさせてみると、家賃4万円のアパートに住んでアルファードに乗るのと、家賃10万円のマンションに住んで軽自動車に乗るのは同じこととなる。これを個人がどう組み合わせるかだ。

実際のところは、維持費が異なるし、クルマは人気や程度によって売却できる価格が異なるから、こんな単純計算が成り立つわけではないが、クルマと家賃という必需品(地方の生活において)の関係はこういうもの。ここを今後、ビジネスとしてメーカーがどう手当していくか、が自動運転の進化とともに課題だと思う。もちろん、メーカーではなく、そうしたサービスに特化した専業社がやることも考えられるが、メーカーこそがディーラーを巻き込んでこういう発想をすべき時に来ているのではないか。

 

さらに言えば、昨今は昔と違って国産車のモデルチェンジサイクルが長くなっている。走行性能は今のままでもう十分なので、IT装備や運転支援などの先進安全装備は毎年バージョンアップしてほしいし、バージョンアップしたクルマに利用料で乗り換えられる仕組みが欲しいと思う。クルマの価格でなく、利用料という概念を定着させ、毎月いくらかで乗れ、最新のモデルにも利用料アップで乗り換えられる、という販売の仕組みが確立できれば、クルマの進化のスピードアップには追い風だろう。残価設定ローンはそれに近いものだが、あくまで所有・購入が前提だし、金利も高い。クルマはどんどん進化できるとしても、売り方や使われ方が今のままでは、進化はこれまでの15年のようになかなか進まないと思えるのだが、いかがだろうか。

自動運転じゃなくても欲しくなる

さて、ヴェルファイアのような高級(高額)ミニバンが売れている理由のひとつに、かつてミニバンに乗っていた世代がまた買っているという背景があるのではと思っている。歳をとって金銭的な余裕ができた世代が高級車を買おうとした時、子や孫、みんなで乗れる高級ミニバンは悪くない選択肢だ。子育て時代にミニバンを買った世代(今の50代から60代)には、ミニバンに対する拒否感は少ない。子供の家族と3世代で楽しめる高級ミニバンはまたちょっと欲しくなるタイプのクルマだ。昔と違って、運転していても不満はないのだし。そして息子夫婦に運転させれば、自分は念願のセカンドシートで孫とくつろげるのだから。そうか、完全自動運転でなくてもヴェルファイア、欲しくなってきたかもw

 


試乗車スペック
トヨタ ヴェルファイア ZG
(3.5L V6ガソリン・8AT・FF・494万7480円)

●初年度登録:2018年1月
●形式:DAA-GGH30W-NFZRK
●全長4935mm×全幅1850mm×全高1935mm
●ホイールベース:3000mm
●最低地上高:160mm
●最小回転半径:5.8m
●車重(車検証記載値):2110kg(1180+930)
●乗車定員:7名

●エンジン型式:2GR-FKS
●排気量:3456cc
●エンジン種類:V型6気筒DOHC・4バルブ・自然吸気・直噴+ポート噴射(D-4S)・横置
●ボア×ストローク:94.0×83.0mm
●圧縮比:-
●最高出力:221kW(301ps)/6600rpm
●最大トルク:361Nm (36.8kgm)/4600-4700rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:75L(4WD車の場合は65L)

●トランスミッション:8速AT
●JC08モード燃費:10.6km/L(3.5L・FF車でオプション装着により車重2110kg以上の場合。通常の3.5L・FF車は10.6~10.8km/L、3.5L・4WD車は10.4km/L)

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング
●タイヤ:235/50R18 ( Toyo Tranpath R30 )

●車両本体価格:494万7480円(メーカーオプション含まず)
●試乗車価格(概算):649万6200円(オプション込み)
※オプション合計(概算):154万8720円
※オプション内訳:ボディカラー(スパークリングブラックパールクリスタルシャイン) 3万2400円、本革シート+アクセサリーコンセント(AC100V・100W、4個) 33万1560円、3眼LEDヘッドランプ+LEDクリアランスランプ(イルミネーション機能付)+LEDアクセサリーランプ+アダプティブハイビームシステム+LEDシーケンシャルターンランプ+LEDコーナリングランプ 11万5560円、ブラインドスポットモニター(BSM)+リアクロストラフィックアラート(RCTA)+インテリジェントクリアランスソナー + T-Connect SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステム 71万2800円、デジタルインナーミラー 4万3200円、12.1型リアシートエンターテイメントシステム 18万3600円、ITS Connect 2万7000円、専用フロアマット(ロイヤルタイプ) 10万2600円

●ボディカラー:スパークリングブラックパールクリスタルシャイン
●試乗距離:200km

●試乗日:2018年2月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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