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スバル インプレッサ新車試乗記(第141回)

Subaru Impreza

 

2000年09月29日

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キャラクター&開発コンセプト

WRCの王者、スポーツ路線を柱に走り・機能・個性をアピール

1992年10月のデビュー以来、約8年という長きにわたって生産されてきた初代インプレッサは、レガシィの下に位置する、本来ならスバルにとっては最も量販を見込める基軸車種だ。実際にはレガシィの方が、圧倒的な主力車種となってきたわけだが、WRC(世界ラリー選手権)で3年連続優勝を成し遂げるなど、インプレッサの性能自体は世界中から高い評価を獲得し続けてきた。そこで新型ではそのスポーツイメージを継承したコンセプトで「高密度スポーツマインドカー」を標榜。よりスポーツ方向に振って走りのイメージを際立たせ、実績のあるメカニズムを熟成する、といったスバルらしい正常進化となった。

価格帯&グレード展開

セダン系の名称をWRXに統一して、シリーズ体系を簡素化

ボディタイプは旧型と同じく、4ドアセダンと5ドアワゴンの2タイプ。グレード展開は簡素化され、セダン系は「WRX」にその名を統一し、2リッターターボ付きの「NB」と、2リッター自然吸気の「NA」による2グレード構成となる。ボディはワイドフェンダーによる3ナンバー化がなされ、駆動方式はともに4WDのみで、スポーツモデルに特化した。

一方、「スポーツワゴン」を名のる5ドアワゴン系は、1.5リッターエンジンと2リッターエンジンによる4グレード構成。基本的に4WDが中心で、1.5リッター車のみFFも併設される。グレード分けは1.5リッターの「I's」「I'sスポルト」、2リッター自然吸気の「20N」、そのターボ付きの「20K」2リッターのエンジンはWRXと同じだ。とはいえ3ナンバーボディを採用するセダンに対して、ワゴンはカジュアルなイメージが盛り込まれ、1.5リッターエンジンやFFモデルを用意するなど、女性の足グルマも意識した設定となった。

パッケージング&スタイル

精悍な丸い目、セダンはラリーを見据え3ナンバー化

注目は何といっても丸目のヘッドライトだろう。スモールランプ、ウインカーもこの中に内蔵されており、あっさりとした顔つきながら、目を奪われる戦闘的なイメージを醸し出すのに成功している。デザイン上の個性は、全てこの丸形ヘッドライトに集約されているといってもいい。好みが分かれそうだが、個人的にはカッコイイと思うし、真面目一本槍のスバルにとっては、これはきっと英断だったはず。

そしてもうひとつの英断が、ボディ幅を1730mmとしたセダン系の3ナンバー化だ。これはラリーを見据えたワイドトレッド化が狙い。アーム長を伸ばすことで接地特性の向上を図ったわけだ。そのトレッド拡大分はブリスターフェンダーの張り出し分によって処理されており、特にフロント側は、バンパーとの継ぎ目が後付け風になっており、これも迫力を醸し出す要素のひとつとなっている。

この3ナンバー化は、扱いやすさを訴えて5ナンバーボディとしたレガシィとは考え方によっては矛盾が生じる部分でもある。しかし、インプレッサの目的が“WRCの参戦”という、レガシィとは異なる特殊な背景を持っていることを思えば、まあ筋も通るのではないのだろうか。また、2525mmという長くはないホイールベースも、WRCのシガラミのひとつといってもいいだろう。WRCでは、長すぎるホイールベースが不利になるからだ。

もちろん、衝突安全性は最新型に相応しい高いレベルを確保。合わせて、曲げ、ねじれ剛性は旧型の約2倍。ただし車体設計を大きく変えずにそれを実行したことで、車重は平均で約80kgも増えた。この代償は「ピュアスポーツ」を謳うインプレッサにとってけして小さくはない。

カジュアル路線のスポーツワゴンは5ナンバーサイズ

「スポーツワゴン」をコンセプトとするワゴン系は、フェンダーの張り出しがなく、5ナンバーサイズを厳守する。セダンとの共通パネルはフロントドアとボンネットだけで、ボディサイズは全長4405mm×全幅1695mm×全高1465mm、ホイールベース2525mm。セダンとは、全長だけが同じで、全高は35mm高い。従来型と同じ5ドアハッチバック風のスタイルが特徴だが、やはりこちらも丸目を採用し、リアピラーをレガシィツーリングワゴンと同じ手法でガラス処理するなど、カッコイイかは別として、新鮮さはセダン以上だ。

なおドアはスバル伝統のサッシュレス。窓枠をつけない分、ピラーの造形に自由度が増し、剛性を高めやすいため、あえてこうしたとスバルは説明する。

インパネはオーソドックスながら遊び心が随所に散りばめられる。シートの出来は一級品

オフブラックを基調とする室内は、シルバーパネルをアクセントとすることでスポーティーで引き締まった印象が与えられている。インパネはセダン、ワゴンともに共通で、中央の回転計を核としたメーターは、黄色の指針を採用するなど凝縮感を強調したもの。空調コントロール部は大きなダイヤル式で、ナビ位置はインパネ最上部のポップアップ式。ステアリングはI'sを除く全車MOMO製本革巻きだ。ハザードスイッチもセンターで見やすく、操作系に不満はない。これまでセンスイマイチだったスバルとしてはなかなか小洒落た仕上がりといえる。

最も好感が持てたのがシートだ。ドライビングポジションにこだわったというだけあって、上下50mmという大きな調整幅のラチェット式シートリフレクターは、座面部だけでなくシート全体を動かすことができる。チルトステアリングの組み合わせにより、最適なドラポジかつ良好な視界が確保できる。特にターボ仕様のモノフォルムタイプのバケットシートは、嫌でも立ち気味のベストポジションを強いられる。スポーティなクルマとはいえ、ここまで本格的に全車でシートにこだわったクルマも珍しい。

1200mmあるワゴンの室内高にも注目したい。ワゴンの全高はセダンより25mm高いわけだが、これはルーフレールによる差ではなく(というかルーフレールの設定自体がない)、室内高へほぼそのまま寄与している寸法。だから3ナンバーのセダンよりも5ナンバーのワゴンの方が広い。
 室内幅はともに1380mm。ちなみにレガシィは1440mm。同じ全幅でも室内幅はレガシィの方が60mmも広いのだ。こういうところに車格の差が表れている。

基本性能&ドライブフィール

実績あるメカニズムを熟成、秀作だった先代の正常進化。でもパワーダウン

車両を構成するコンポーネンツは、基本的には従来型のキャリーオーバーだが、ほぼ全てにわたって改良が加えられている。エンジンは1.5リッターの「EJ15型」(100馬力/14.5kgm)、2リッターの「EJ20型」(155馬力/20.0kgm)、そのターボ仕様(250馬力/34.0kgm)の計3タイプで、いずれも水平対向4気筒。給排気系を見直して排ガスのクリーン化と低燃費化が図られており、1.5リッターエンジンは「優-低排出ガス(★二つ)」、2リッターエンジンはNA、ターボともに「良-低排出ガス(★ひとつ)」に認定されている。

注目の2リッターターボは最高出力250馬力、最大トルク34.0kgmを発揮する。旧型の最終仕様のスペックが280馬力、34.5kgmだから、数値だけ見ればポテンシャルダウンとなる。パワーウエイトレシオも4.46kg/psから5.36kg/psにダウンしている。しかし、最大トルクの発生回転域は4000回転から3600回転に引き下げられており、かつ2200回転で最大トルクの80%以上を発生する全域高トルク特性に仕上げれられている。また、旧型ではATの最高出力は240馬力。最大トルクは31.5kgmだったのに対し、今回はMT、ATともに同じスペックだ。セダンWRXに初めてAT(スポーツシフト-ステアリングスイッチ付き)が設定されたことも見逃せないニュースだ。

足回りは前後ストラット。リアにレガシィと共通のマルチリンクは使われず、WRCでの熟成されたものベースに各種設定を大幅に見直している。

4WDシステムは3タイプあり、MT車はオーソドックスなビスカスLSD付きセンターデフ方式による前後トルク配分50:50のフルタイム。AT車は、ターボ仕様が、45.4:54.6を基本トルク配分とした可変トルク配分システム(VDT-4WD)。NA仕様は多板クラッチによるアクティブトルクスプリット4WDが与えられている。

WRCを見据えた先進のポテンシャル、あらゆる状況下でも高い安心感

まず試乗したのは、250馬力のセダン「WRX-NB」、AT車だ。スポーツシフト機構付きで、シフトゲートとステアリングスポーク上に+/-のシーケンシャルスイッチが設けられている。搭載される「EJ20型」エンジンはレガシィにも搭載されているものと型式こそ同じだが、決定的に違うのはターボの数。インプレッサはシングルターボ、レガシィはツインターボ。一般的には、ツインターボの方が、穏やかにターボが利き始め、幅広い回転域で充実したトルクを発揮することができる。実際、新型インプレッサの加速は発進からいきなりフル加速した場合に限っては、時速20kmあたりまではモタッとしており、そこから一気に力強さを発揮する設定となっている。この発進時のもたつきは、恐らく、「AT車だから」であり、MT車なら問題は解消されるはず。

いったん回転が上がってしまえば、あとは絶対的な速さを体感できる。ターボの領域(3000回転以上)をキープして走れば、アドレナリンが大分泌されるだろう。WRCと名が付くだけに足回りはかなり引き締められているが、不快な振動は低減されており、洗練度の高さという点では間違いなく旧型を凌いでいる。街乗りも十分可能な固さだ。

また、低重心の水平対向エンジンと、それと一直線上に組み合わせられる4WDシステムという安定志向の条件が揃っている設計だけに、ワインディングでは、挙動は安定しきっている。それでいて接地感が少ないというか、変にどっしりとはしておらず、回頭性が高くて、軽快に、すべるように走り、曲がる。まさにラリー走行をイメージする走りだ。通常速度のアクセル操作による加重移動ぐらいでは挙動はピクリとも変わらないが、追いこんでいくと、4WDらしいアンダーが出るあたりも素直。ただ、走りつづけていると絶対的にはパワーの物足りなさを感じてしまうことも事実。これはSTIバージョン(10月24日発表)のためのマージンだろう。

スポーツシフトATは4速で、各ギアの守備範囲が広く、公道を走る分にはこれで十分。2速、3速あたりで高回転を維持していれば、公道でもたいへん楽しく走れる。ステアリングのスイッチは親指操作が楽で、日本車としては使いやすい方だが、やはりワインディングではシフトレバーを使うことになるだろう。むろん、あるにこしたことはないが。

何より走りの味を際だたせているのが、フラットエンジンならではの音響効果だ。アイドリングからドコドコ、バタバタと聞こえる独特の音。最新のポルシェよりも、はっきりと聞こえる水平対抗サウンドだ。それにしても市販車とは思えないイイ音。実は、試乗車にはちゃっかりとオプションのオールステンレス製スポーツマフラーが。工賃込みで8.5万円とのことだが、値段以上の演出効果がある。

スポーツワゴンは、日常レベルの楽しさが感じられる

次にワゴンの1.5リッターのFF(AT車)を試乗。さすがにターボを乗ったあとでは非力さを感じる。ステアリングの応答性も比べれば、鈍い。ワゴンの宿命である後方からのこもり音も若干気になるところだ。でも、日常的な走りを考えれば、こちらの方がずっと自然であり、快適。そして軽快だ。また、セダンより背が高い上にトレッドが20mm狭いという設計を考えると、エンジンは2リッターターボよりも1.5リッターもしくは2リッターNAのほうがバランス的には優れていると思う。

正直、「スポーツワゴン」というほどスポーティーさは感じられなかったが、それでも同クラスのワゴンと比較すれば、走りはしっかりしているのは確かだ。1.5リッター、FFという廉価版でありながら、走りに手抜きというか安っぽさがない(内装はそれなりにチープだが)。廉価版であってもレガシィ譲りの頑固な作り、ということを強く感じる。

ここがイイ

シートのでき。バケットシートはもちろん、ワゴンのフツーのシートも体をしっかりサポートし、きちんと座れる。というか、ルーズには座れないシートだ。スバルは昔からシートリフターがあったが、今回のものはラチェット式で50mm確実に上下するため、たいへん都合よく、ポジション決めは文句なし。ただ、人によっては窮屈と感じるかも。それを「安全のため」と強気で押し切ったスバルの英断に拍手を送りたい。

純正しか付かないのは辛いが、ダッシュ上部のカーナビも位置的にはたいへん見やすく、GOOD。

ここがダメ

車体設計を大きく変えずに衝突安全性やボディ剛性を確保しようした結果、相当の補強の追加が必要とされ、車重が平均で約80kgも重くなったこと。衝突安全確保のためのフロントサブフレームなども重量増加に貢献? しているようだ。

内装の質感は普通のレベルだが、シルバーに塗られた1.5リッターモデルのコンソールパネルは安っぽい。ごく普通の黒っぽいものでもいいと思うのだが、なぜか各社シルバーに塗りたがる。

WRXはボディの迫力に比べ、タイヤとホイールがいかにもプア。買った場合、インチアップ必至となれば出費が増え、環境にも優しくないと思うのだが。

総合評価

ルックスは評価が分かれそうだ。丸目がダメ、という人がいれば、これが個性的でいいという人もいるだろう。個人的にはナローボディのワゴンのスタイルはあまりいいとは思えず、ワイドなセダンボディはウイングがなければOKだ。運転席からはフェンダーの峰が見え、まるでポルシェのよう。水平対抗エンジンといい、スバルが相当ポルシェを意識していることは確かだろう。

ワゴンはそのサイズからしてたいして荷物も載らず、まさに街乗り用。そうなるとオシャレじゃなければ意味がないが、スバルらしく質実剛健のいいクルマだが、オシャレ度はとても高いとはいいがたい。スバルのラインナップでは軽のすぐ上に位置するわけで、そうした客を取り込むための必要モデルなのだが、軽との間があきすぎだ。ラインナップの少ないスバルの苦しいところだ。

イメージカーのWRXは、実際のところ、ライバルは自社のB4なのではないだろうか。4WDのスポーツセダンは世の中にこの2車しかないわけで、身内の戦いともなりかねない。そこはスバルも考えているようで、安定感と高級感の高い280馬力のB4、軽快感と個性がウリの250馬力WRXときれいに分けてきた。スポーツセダン市場は今後も伸びが期待できるだけに、うまい展開だ。2車あればこの市場の過半数を押さえることすら可能だろう。

●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/impreza/

 
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