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スバル インプレッサ WRX STi新車試乗記(第152回)

Subaru Impreza WRX STi

 


2000年12月15日

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キャラクター&開発コンセプト

「STi」の名を冠したインプレッサのトップモデル

WRC(世界ラリー選手権)で圧倒的な強さを見せつけ、スポーツモデルファンからカルト的な人気を集めているのがインプレッサだ。そのWRCでのインプレッサの活躍を支えるスバルのモータースポーツ部門「STI」が開発した市販ホットバージョンが「STiシリーズ」だ。

インプレッサWRXの「STiシリーズ」はバージョンI 、II …と毎年改良が加えられ、今回の新型WRX STi は7代目となる。インプレッサ自体は今年8月のフルチェンジで大半のモデルがデビューしたが、もっともマニアックなSTiモデルだけは、最後のお楽しみということで10月発売ということになっていた。

ちなみに「STI」とは、スバル・テクニカ・インターナショナルの頭文字。ここはスバルのモータースポーツ部門を担当する専門会社で、WRC参戦のためのインプレッサWRカーの生産も手掛けている。ただし新型STi はスバルのラインモデルであり、STiによるアフターチューンモデルでないことは知っておくべきだろう。

そのSTi に搭載されるエンジンは、先にデビューしていたノーマルのWRX-NBのそれを徹底チューンした280psの水平対向4気筒ターボ。駆動はもちろんフルタイム4WD。変速機はSTi専用となる新開発の6速MTのみだ。

価格帯&グレード展開

価格帯は296.8~319.8万円とノーマルの約80万円高

STiシリーズのボディは、ノーマルと同じく4ドアセダンの統一名「WRX」と「スポーツワゴン」の2タイプで、それぞれ「WRX STi(319.8万円)」と「スポーツワゴン STi(299.8万円)」というグレード名が与えられる。「WRX STi」には、装備の簡略化やボディの軽量化を徹底した競技用車両ベースとなる「タイプRA(16インチタイヤ仕様が296万8000円、17インチタイヤ仕様が306万8000円)」がある。

先代STiよりも約28万円高、ベースとなった現行のWRX-NBに比べて81万5000円高と、比較すればかなり割高なプライスが付けられているが、これは17インチタイヤ、ブレンボ製ブレーキ、そして新開発の6速MTを新たに採用したため。300万円そこそこというのは、やはり「安い」としかいいようがない。

パッケージング&スタイル

変更部位は最小限

STiといえども見た目の印象はノーマルと大きく違わない。車高が20mm低くなっている以外、ボディサイズは同じだし、ランエボのように専用ボディが与えられているわけでもない。先代は開口部の大きな専用バンパーなどが装着されていたが、今回は共通。確かにボンネット上のエアインテークは大型化されてはいるものの、ノーマルと並べてみない限り識別しにくい。マフラーもSTiと刻印された専用大径タイプが装着されるが、特に目立たない。見方を変えればSTiありきで、ノーマル車両をデザインしたとも言える。

そのなかで最大の差別化となっているのがアルミホイールのサイズと色だ。ノーマルの16インチに対して17インチとなるSTiのアルミホイールの色は、今年を代表する漢字でもある「金」。しかもSTi専用装備となるブレンボ社製ブレーキのキャリパーまで「金」と徹底している。さらにSTi専用エンブレムの色はスパルタンなクルマとは思えないファニーな「桃」(試乗車は紺色のものに変更されていた)。丸目のマスクは賛否両論あるようだが、個性的であることは間違いなし。ラリーで活躍するようになれば、カッコイイというイメージになるだろう。先代のインプレッサだって、発売当初は全然カッコイイと思われていなかったのだから。

細部でノーマルとの差を付けたインテリア

インテリアのカラーはSTi専用となる青(WRブルーというのが正式名称)と黒のコンビネーション。男の仕事場的な冷たさはなく、お洒落なムードが漂う。シートもSTi専用で、フロントには大きなバケットシートを備える。一部にエクセーヌ(人工スエード)を使っており、なかなかの上質な風合いを醸し出している。ノーマルと同じようにレバーの上下で50mmも上下するラチェット式リフターも備えている。上下方向の調節は完璧だ。ただ、前後方向はノッチの数が少ない。ノッチとノッチの間に、もう一ノッチあると完璧だ。

クルマの性格上、ホールド性はアフターパーツに変更する必要がないほどだが、乗降性は多少犠牲になっている。例えばサイドサポートの張り出しが極端すぎて乗り降りはしにくい。肩部分のサイドサポートがシートベルトの取付部分と干渉しているため、シートベルトの装着にも手こずるといった具合だ。

快適&安全装備は競技用のSTi-RAを除けば、ノーマルのWRX-NBにほぼ準じたもので充実している。シート以外でSTi専用アイテムとなるのは、アルミ製のスポーツペダル、ピンクのSTiロゴ(夜間点灯する)と「REVインジケーター(詳細は後述)」が付いたメーター、6速のシフトノブ。またタイプRAには競技車両らしくルーフベンチレーターが付く。そしてキルスイッチ風のキー。人によってはオモチャ程度にしか見えないかもしれないが、マニアにとっては心をくすぐるであろうアイテムだろう。オーナーならば手放すときも記念として手元に残しておきたい逸品だ。

基本性能&ドライブフィール

メカは極めて贅沢。新開発の自社製6速MT+ブレンボ社製ブレーキ

STi用のEJ20型、水平対向4気筒DOHCターボエンジンは、ボアとストロークの数値がノーマルと同じ以外、ほとんどがSTi専用にチューンされている。最高出力/最大トルクは2リッター最強の280ps/6400rpm、38.0kgm/4000rpm。エンジンルームを覗いたときに、真っ先に目を奪われるのが「STi」と大書きされたインタークーラーだ。ベースのものよりも50%拡大しており、水を吹き付けることで冷却性能の維持を図るウォータースプレーも、以前同様に装備される(今回はオートモードが付き、自動で水を噴射する)。またECU(エンジン・コントロール・ユニット)もSTi専用品だ。

ミッションは6MTが新たに開発された。4駆の駆動配分は先代より前寄りの45:55。またリアのデフの取り付け位置を20mm上げてロールセンターをアップ。やや前のめりの姿勢になっている。サスペンション自体はノーマルと同じ4輪ストラットだが、取付剛性を3倍まで高めてあるのが特徴だ。注目すべきはブレンボ社製のブレーキで、同時に制動力を電子的に制御するEBD付きABSもセットで装備される。なお、セダンの足回りはSTiとSTi・RAで若干異なる。RAはよりハードにチューニングされ、ステアリングギアのロック to ロックはSTiが2.7回転のところ、RAは2.4回転とさらにクイックになっている。

本当は330psぐらい出てるんじゃない?

280psということで、最も気になるのがまずその体感的な速さだろう。言うまでもなく、チョ~強力。低回転でもトルクがあって街乗りが楽な上、アクセルを踏めば「ホントに280psしかないの」とカタログ値を疑いたくなるほど。特に4500回転から上は、水を得た魚のように強烈なターボパワーが炸裂するから、もう暴力的としかいいようがない。噴け上がりは鋭く、アクセルに対する反応も抜群。なによりこれぽっちも隠そうとしないアイドリング時のフラット4独特のドコドコ音が演出効果となっている(好き嫌いが分かれる部分でもある)。

強いて難癖をつけるとしたら、低回転のトルク感が期待するよりはやや乏しいというところ。ずいぶんと改善されて不足はなくなったとはいえ、基本的にビッグボア&ショートストロークの水平対向エンジンは低速域のトルクが細い。実際、STiの有効パワーバンドは4500~7000回転と、相当高い。対してランエボVIの最大トルクはわずか2750回転で発揮される。出足のパンチ力ではランエボに軍配が上がるはずだ。

REVインジケーターの有り難み

シフトフィールは試乗車がおろし立て(オドメーターは12kmだった)ということもあって、若干渋みが残るものの、ゴギゴギと非常に節度、剛性感あるものに仕上げられている。クロスレシオ化は、特に高回転まで回したときに有効で、例えば7000回転でシフトアップすると5000回転あたりまでにしか回転は落ちない。他の2リッター車よりもトルクがあるので、1段飛ばしの変速も可能だ。

ユニークなのがメーターに内蔵された「REVインジケーター」。これは任意に設定したエンジン回転になると、光と音でシフトチェンジすることをドライバーに促すというもの。回転上昇が速いクルマだけに、シフト操作は忙しくなるが、これがあればタコメーターを目で確認(=よそ見)することが減るから、安全面でも有効な装備だ。

速さだけでなく、フットワークもいい。四駆とは思えない軽快な回頭性が楽しい。ただ、シャープというよりはスタビリティ重視の味付けで、軽快だが安定感の高い走り、といった印象。普通のクルマなら完全に流れてしまうような高速コーナーでも、挙動をピクリとも乱さず走り抜ける。ハイスピードの領域になればなるほどこのスタビリティは武器になる。

節度を失っていない乗り心地

ブレンボ製ブレーキはタッチ自体は優しいが、ペダルを踏ん量だけパッドが押されるといった具合で、微妙なコントロールはしやすくなっている。もちろん絶対的な制動性能も優秀で、どのスピード域からでもほとんど車体が左右にぶれることなくスパッと止まってくれる。頼もしい限りだ。

乗り心地は当然固い。しかし、ボディ剛性が強化されているためか、路面による突き上げは脳天に突き刺さるようなビシバシではなく、思いのほかマイルド。あくまで公道を走る市販車としての節度を失っていない。クラッチペダルもたいして重くないから、街乗りでも十分使えると思える。

高速巡航は常識的なスピード域ではコメントすることはなにもない。メーターが振り切れるあたりでも特にコメントはない。それより、シフトダウンして加速に移る時の快感に酔い、免許証を失わないことを望むばかりだ。試乗車にはオプションのウイングが装着されていたが、ミラー越しにちょうど後方の車両がウイングの陰になるため、後ろに付いたクルマの判別が難しいことをお知らせしておこう。

ここがイイ

世界最高峰の性能。おそらく誰が乗っても、これはスゴイと言わざるを得ないはず。アイドリングの軽い振動、加速の凄まじさ、コーナリング中の挙動の素直さなど、止まっているときから、軽く流しているとき、気合いを入れて走るときまで、常に楽しい。またフラット4には直列エンジンにはない独自の味がある。17インチのタイヤによって、スタイリングも完全なものとなった。

ここがダメ

前述のように、シートの前後方向の微調節機能が欲しい。ステアリングももう少し小ぶりな方がよりスポーティーに感じられるはず。

総合評価

現在発売中の「サイト」と言う雑誌を見ていたら、英国「Car」誌特約記事でランエボVIとフェラーリ360スパイダーの比較記事があった。日本の雑誌なら絶対やらない特集で、日本人の方が日本車に対して偏見がある(見下している)のではないか、と言う注釈も付いていた。STiに対しても一部のクルマ好きにはそんな偏見があるような気がする。スゴイ性能だがどうにも認めたくないというような。STiという、おそらく世界最高峰の性能を持つこのクルマはラリーのクルマ、走り屋のためのクルマというフィルターをかけられ、特に欧州車信仰の強いエンスーな人達には、キワモノ的に見られかねない。

1日じっくり試乗してみると、このクルマが楽しく、速く、かつ安全で快適な(セダンのようなものではないにせよ、十分日常的に乗れる乗り心地だ)、スーパーカーであることがよくわかった。4ドアとしての実用性すらあるわけで、これはもう完璧なクルマと言えるのでは。フラット4、ターボ、4WD、好き嫌いの分かれるフロントデザインなど、スバルが意図してやっているわけではないと思うが、個性という点でも世界に共通するものはない。ジャパンオリジナルのスーパーカーとして、世界に誇れる工業製品だと思う。

●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/impreza/

 
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