Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > スバル インプレッサ WRX STi

スバル インプレッサ WRX STi新車試乗記(第265回)

Subaru Impreza WRX STi

(6MT・295.8万円)

2003年04月19日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

2年でビッグMCを迎えた2代目

初代インプレッサは1992年に登場。8年の長寿モデルとなった初代を継いで、2000年に2代目となった。今回試乗したのは、約2年という短いスパンで02年11月に発売されたビッグマイナーチェンジモデルの高性能バージョン「WRX STi」だ。

WRC(世界ラリー選手権)直系マシンをイメージとするインプレッサWRX STi は、95~97年に3年連続でWRCマニュファクチュラーズ・タイトルを獲得している。現在、そのトップカテゴリーである「WRカー」の中身は市販車とはかけ離れた物となっているが、下位クラスや国内レースでは、空力や熱処理対策といった点まで市販車の段階で解決しておく必要があるという。

デザイン変更とさらなる性能アップ

マイナーチェンジの主なトピックは、フロントを中心としたデザインの大変更と、ラリーに(そして三菱のランエボに)勝つための性能アップ。トルクはついに40.2kgmの大台に乗り、宿敵ランエボを0.2kgm上回る。電子制御4WDシステム「ドライバーズ・コントロール・センターデフ」などのハイテクも採用した。

販売目標はインプレッサ全体で月間2500台。マイチェン後(02年11月~)の実績は、2574台、3412台、1906台、2377台で目標は何とかクリアしている。一方、北米など海外では好調なようだ。現在では、海外でもフルパワー仕様が正規販売されている。

価格帯&グレード展開

主力はWRX。特に、280馬力・6MT仕様の「STi」

インプレッサはセダンとスポーツワゴンで構成。WRXは両方にあるが、もっとも高性能な「STi」はセダンのみ。スポーツワゴンには低価格の2WD・1.5リッターモデルがある。

セダンは全車4WD。2.0リッターDOHC・NAエンジンの「20S」(203.3万円~)もあるが、主力は2.0リッターターボの「WRX」(245.3万円~)と「WRX・STi」(295.8万円~)。前車は250psで5MTと4AT、「STi」は280psの6MTのみだ。

国内価格は相変わらずバーゲン

余談だが、イギリスでの「STi」(261bhp仕様)の価格は24,995ポンド(475万円)とかなり高い。現地では「プロドライブ・パフォーマンス・パック」というオプション(約38万円)もあり、300bhpまでパワーアップ出来る。為替(1ポンド:190円で計算)の問題はあるが、日本での価格はやはり大バーゲンだ。

「spec C」もあるが

競技ベース車として90kg軽量化した「STi spec C」(274~320.5万円)もあるが、遮音材が省かれミッションが超クロスレシオになるなど、日常使用には向かない。ジムカーナ場やサーキットに毎週通う人には最適の「ロードゴーイングレーサー」だ。

パッケージング&スタイル

外観はWRカーそのもの

WRXのサイズは、全長4415mm×全幅1740mm×全高1425mmと、ほぼ従来モデルと同じ。ホイールベースも変わらない。マイチェンによるデザイン変更は、主にヘッドライト形状で、他にフロントバンパー左右に小さな整流板が付き、ドアミラーが新型になり、フェンダーもわずかに膨らんだ。

リアコンビランプもフロントに伴って変更。同じ意匠を反復することで、前後に統一感が出た。後ろ姿で目立つのは、WRカーそのものの巨大なスポイラー。ラリーのSSステージでは最高で200km/hほど出るらしく、ダウンフォース確保のためにはこの大きさと高さが必要らしい。ウイング位置が高いので後方視界は良好だが、ウイングの陰になる部分は結構見にくく、特にパトカーなどは識別しにくい。

エアスクープが視界を遮る

新型で目立つのは、ボンネット上にそびえ立つインターク-ラー冷却用のエアスクープだ。レイアウト上、スペースに余裕あるエンジン上部にインタークーラーを置くのが好都合だが、大量に風を当ててコアを冷やすには、ここに巨大なインテークを付けるしかないという。ドライバーの視認性はそうとう犠牲になった。

シートは即交換?

室内に大変更はないが、シートは新タイプ。従来のWRXのバケットは、サイドサポートの張り出しが大きく、リクライニング付きのバケットシートとして最高の出来だったが、今回のシートはサイドサポートがまったく甘い。インプレッサの旋回性能を考えると、ほとんど体をホールドしないと言える。乗降性などを優先したのかもしれないが、いずれにしろ本気でコーナーリングを楽しむことは難しい。ひょっとして、一種の安全弁か?

基本性能&ドライブフィール

ドコドコ言わない。眼前のツイタテ

イグニッション・オンでライトがつき、メーターの針が一瞬ブゥンと振り切れる演出はどこかで見たが、ちょっと嬉しいところ。アイドリング音は大人しく、水平対向のドコドコ感を期待すると裏切られる。普通のWRXと違い、STiは取り回しが複雑な完全等長タコ足を採用しており、排気干渉が原因のボクサーサウンドは聞こえない。

とりあえず驚くのが、上にも書いたボンネットの出っ張りで、「どうだー」と言わんばかりに前方視界を遮る。昔のアメリカ車のチューンニングカーみたいだ。信号で止まるたびに笑える。運転にはギリギリ支障ないとは言えるが、もう少し何とか出来なかったものか。おそらく本チャンのラリーでも、相当視界のジャマだと思う。30分くらいでとりあえずは慣れるが。

どこでもカタパルト

普通に走る限り、運転自体は拍子抜けするほど楽。ステアリングは軽く、クラッチもまあ軽く、乗り心地もまあ良く、そして静か。スポーツカー好きではない女性を助手席に乗せたとしても、おそらく文句は出ないだろう。ガラスの越しのエアスクープを指差して「あれ一体何?」と聞かれることはあるだろうが。

ランエボに比べて弱点と言われる低速トルクは、かなり改善された様子。低回転でもよく粘る。したがってこの大パワー車ながら、イージードライブも可能だ。発進はアイドリングのままクラッチをつなぐのが、一番簡単でスムーズ。ただし、回転を落としてしまってからの再加速は、慣れないと少しもたつく感じがする。

低速からのパワーの盛り上がりは滑らかだが、本領発揮は4000回転手前から。ターボが効き始めると、280ps/6000rpm、40.2kgm/4400rpmのパワーが爆発。カタパルトから発射されたみたいな加速が始まる。レッド8000回転までは一気呵成。「キュイイイイイイン」という、WRC映像でお馴染みのギアノイズがちょっと嬉しい。

1速(60km/hまで)、2速(100km/hまで)、3速(140km/hまで)と、矢継ぎ早に変速。中央にデンと据えられたタコメーターには、ラリーカーよろしくシフトアップインジケーターの赤ランプ。100回転刻みで任意の回転数に設定可能。回転上昇が恐ろしく速い上、高回転で音が変化しないので、これはほとんど必需品だ。ブザーを鳴らすことも可能。シフトフィーリングも従来よりかなり改善され、コクコクと気持ちよく決まる。

LSD・3連発

今回はあくまでも一般道での試乗なので、シビアな操縦性については他の記事を参考に。いずれにしてもフルタイム4WD、高剛性ボディ、電子式「ドライバーズコントロール・センターデフ」、Sタイヤのようなトレッドデザインのポテンザ「RE 070」、フロント「シュアトラックLSD」(イギリスのオートモーティブ・プロダクツ社製)、リア機械式LSDなどなど、バキバキの武闘派装備もあって、コーナリング性能はそうとう高い。

曲がって行く感じはトルセンLSDを装備したホンダのタイプRシリーズに近い。ステアリングを切った方向にグイグイ曲がる。そこからアクセルを踏んで行くと、今度はFR車のような、後輪に駆動力をかけて立ち上がってゆく感じも味わえる。RE070のグリップレベルは高く、耐久性も高そう。その高性能に比べればオマケみたいなものいだが、パターンノイズも低く、快適性能も高い。

気になった点は、強力なLSD付きのFF車に似た、緊張感あるステアリングフィール(試乗車はセットオプションのフロントLSD付)。筑波で1秒遅くてもいいから、もう少し自然な設定でも良かったのではと、個人的には思う。

もう一つは「走る」「曲がる」に比べて、「止まる」が少し苦手なこと。多くの媒体ではブレンボの対向4ポッドブレーキの性能(特に耐フェード性)に物足りなさを訴えているが、今回の試乗ではブレーキそのものに加えて、車重も気になった。レガシィB4並みに1440kgと軽くなく、おまけにパワーがあって回頭性が高いので、減速時だけちょっとイメージとズレる。少しの気合いでそうとうハイスピードになってしまうので、慣れるまでは要注意だ。ブレーキフィールも普通のクルマっぽく、「効く」という感じには遠い。

5速ホールドで無敵の巡航

100km/h巡航は6速トップで2800回転で、そこからもたつきなく加速可能。しかし、お勧めは何と言っても5速だ。100km/h:3600回転から踏み込むと、リミッターが作動する190km/h付近まで、ほぼ(気持ち的に)瞬間ワープ。「ジャーーン」というジェット機のようなサウンドを伴って、普通のクルマの80~100km/hのように、100~190km/hを「5速だけで」縦横無尽に行き来できる。スタビリティ、快適性、安心感は高く、重力とか加速度とかに関する日常的感覚がだんだん麻痺する。自制心が問われるクルマだ。ちなみにイギリス仕様(261bhp)の最高速度は243km/hと発表されている。

もちろんそれなりに燃料は食う。今回は約140kmを試乗、撮影のための細かい移動や全開加速が多かったせいか、プレミアムガソリンを約40リッター消費した。一般的な使用なら、もう少し良い数字が出るはずだ。

ここがイイ

明らかに低回転域のトルクが太っており(2400回転域では以前に比べ、6kgm以上)、その結果、いきなりターボでトルクが盛り上がる感覚が減り、自然なつながり感が出た。扱いやすさも増したが、絶対的にも速くなった。そして4000回転手前からの爆発的加速は健在で、6MTで回転をキープすれば、これはもう文句なしの高性能。

電子制御のセンターデフをオートにしておけば回頭性は高く、コーナリング出口でもアンダーステアがほとんど出ず、存分にアクセルが踏みこめる。4輪の滑り出しもわかりやすく、大トルクを存分に生かした走りはとにかく速い。しかも怖くない。コンペティションモデルを誰もが味わえる。こりゃすごい。

ここがダメ

巨大なエアスクープやウイングは、好みとしてはX。「spec C」のおとなしいウイングが欲しい。

ブレーキにはもう少し剛性感のあるフィーリングが欲しい。ブレンボのブレーキは、鳴き対策で、どうやら本来の性能を出してないようだ。

総合評価

異例の早期マイチェンは、一に外観、二にランエボ対策

まず外観マイチェンの結果だが、正直なところ先代の方が、個性的でカッコいいと思う。主にアメリカ市場でのウケがよく、日本市場でのウケが悪いことが今回の大幅なフェイスリフトの原因らしいが、丸目とポルシェのような「太もも」を持つ先代のフロント造形は、2年で消すには惜しい。スバルは伝統的に初代の完成されたデザインをマイチェンで崩してきたが、今回もその例に漏れないと思う。普通になった分、売れるとは思うが。

ランエボ対策は、筑波でランエボより遅いとされたことが原因。クラス最強であることが販売上の絶対条件ゆえ、徹底的に見直された新型は、低回転での太いトルクをはじめ、全く別物のような仕上がりとなっている。すごくいい。米国でインプレッサは「ライス・ロケット」の代表選手だが、先代がロケットなら今回はスペースシャトル(あんまり速くなさそうだが)に進化したという感じだ。結論として先代は「凄い」だったが、今回は「楽しい」。

ギラ子も買い換えるとさらに速くなると思うが……(漫画「SS」の話)。

試乗車スペック
スバル インプレッサ WRX STi
(6MT・295.8万円)

●形式:GH-GDB●全長4415mm×全幅1740mm×全高1425mm●ホイールベース:2525mm●車重(車検証記載値):1440kg(F:870+R:570)●エンジン型式:EJ20●1994cc・DOHC・4バルブ・水平対向4気筒・縦置●280ps(206kW)/6000rpm、40.2kgm(394Nm)/4400rpm●10・15モード燃費:10.4km/L●駆動方式:4WD●使用燃料:プレミアムガソリン●タイヤ:225/45ZR17(Bridgestone Potenza RE070)●価格:295万8000円(試乗車:316万3000円 ※オプション:ドライバーズコントロール・センターデフ 14万円、HID&濃色ガラス 6.5万円) ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

公式サイトhttp://www.subaru.co.jp/impreza/

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

最近の試乗記一覧