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スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-S アイサイト新車試乗記(第651回)

Subaru Impreza Sport 2.0i-S EyeSight

(2.0L水平対向4気筒・CVT・4WD・233万1000円)

メジャーに行ったレガシィに代わる、
ニッポン人のためのスバル!
4代目インプレッサに試乗!

2012年01月27日

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キャラクター&開発コンセプト

20年目の4代目。デザインやエンジンを一新


歴代インプレッサ。右から初代、2代目、3代目、4代目スポーツとG4
(photo:富士重工業)

今回のインプレッサは、初代(1992年~)、2代目(2000年~)、3代目(2007年~)に続く4代目。日本国内では東京モーターショー初日の2011年11月30日に発表され、12月20日に発売された。先代では5ドアが先行したが、今回は5ドアの「スポーツ」と新しく「G4」と命名された4ドアセダンが同時にデビューしている。

 

新型の主な特徴は、Aピラーの前出しやホイールベースの延長によって一新された内外装デザイン。また伝統の水平対向エンジンについては、従来のEJ系に代えて、現行フォレスターに先行搭載されたロングストロークの新世代FB系に刷新。変速機は従来の4ATから「リニアトロニック」(CVT)に変更され、スバル製で初のアイドリングストップシステムも新採用されている。またレガシィに続いて、ついに「アイサイト」が搭載されたのも大きなトピック。なお新型インプレッサは、スバルが新しいブランドステートメント「Confidence in Motion」を打ち出してから初のブランニューモデルになる。

国内ではポストレガシィ

販売目標台数は月間2200台。先代の目標はシリーズ合計で1400台だったので、今回はその約1.5倍に相当する。ボディサイズが先代レガシィに匹敵することもあり、国内ではポストレガシィの役目が期待されている。

■富士重工業株式会社>プレスリリース>新型インプレッサ発売(2011年11月発表)

価格帯&グレード展開

グレード構成・価格は5ドアと4ドアセダンで全く同じ


スバル インプレッサ スポーツ。東京モーターショーにて

新型インプレッサで面白いのは、5ドアの「スポーツ」とセダンの「G4」でグレード構成や価格がまったく同じこと。このような例はスバル車に限らず、あまり例がないと思う。

というわけで、いずれもエンジンは1.6リッターと2.0リッターの2種類で、駆動方式はFFとAWD。変速機は主にCVTで、1.6リッターにのみ5MTを用意する。アイサイト装着車は2リッター・AWDのみ。非装着車に対して10万5000円高いだけだ。

 

スバル インプレッサ G4。名称の由来は「Genuine(本物の、真の)4ドア」とのこと


■1.6i   FF・CVT:155万4000円/AWD・5MT:169万0500円/AWD・CVT:174万3000円
■1.6i-L  FF・CVT:171万1500円/AWD・5MT:184万8000円/AWD・CVT:192万1500円
■2.0i   FF・CVT:185万8500円/AWD・CVT:208万9500円
■2.0i EyeSight   AWD・CVT:219万4500円
■2.0i-S       FF・CVT:199万5000円/AWD・CVT:222万6000円
■2.0i-S EyeSight  AWD・CVT:233万1000円  ※今回の試乗車

アイサイト装着率が半数に迫る

発売後1ヶ月の受注台数は、目標の3倍を超える7157台。内訳はスポーツが71.9%、G4が28.1%で、2.0リッターと1.6リッターの構成比は65.1%と34.9%となっている。「アイサイト」(2リッターのAWDのみに設定)の装着率は全体の44.4%だ。

■富士重工業株式会社>プレスリリース>新型インプレッサ受注状況 PDFファイル(2012年1月発表)

パッケージング&スタイル

Aピラーを前出し、ホイールベースを拡大

今回試乗したのは「スポーツ」。全長4415mm×全幅1740mmというボディ外寸は先代とまったく同じ。なのにスタイリングが全く違って見えるのは、Aピラーの付け根が200mmも前出しされたから。おかげで新型インプレッサには往年のサーブ900風?だった先代の面影はなく、今風のショートノーズ、ビッグキャビンのスタイリングになっている。

 

細かいところでは、最近のスバル車に多い「ホークアイヘッドランプ」やヘキサゴン(六角形)グリルが特徴だが、ややコンサバティブな印象は否めないところ。先代の5ドアではリアクォーターまわりやLEDを多用したリアコンビランプが個性的で質感も高かっただけに、少し残念。ただし全体にシンプルな面やラインで構成されているのは好ましいし、セダンのスタイリングもよくまとまっている。

 

スポーツのCd値(空気抵抗係数)は0.329。ちなみにG4のそれは0.306 。ホイールベースは先代比で25mm延長されている
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm)
■VW ゴルフ(現行型) 4210 1790 1485 2575
■BMW 1シリーズ(現行型) 4335 1765 1440 2690
■スバル インプレッサ スポーツ 4415 1740 1465 2645
■マツダ アクセラスポーツ(現行型) 4460 1755 1465 2640

インテリア&ラゲッジスペース

見晴らし良好。スバルらしい真面目なデザイン


試乗車はオプションのHDDナビ(約29万円相当)やスエード調シートカバー(5万6700円)を装着

運転席に座って気付くのは、視界がとても広いこと。低くて遠いダッシュボード、細めのAピラー、サイドミラーのドアマウント化、それに先代より少し高まったアイポイントが効いている。計器類や操作系のデザインはスバルらしくロジカル。遊びはないが、使っているうちにジワジワ良さが伝わってくる、そんなスバルの伝統は健在。

 

前席シートは先代よりヒップポイントを高め、背もたれも大型化されている

試乗車は最上級グレードの「2.0i-S アイサイト」で、電動シートは標準装備。ステアリングのチルト&テレスコも当然可能で、ポジションに不満はない。ヘッドレストはむち打ち防止のため、高さだけでなく角度も変えられる。ただコーナリング時のサポート性は今ひとつ。

なお、キーレスアクセス&プッシュスタートは上級グレードでも6万3000円のオプション。新型インプレッサでは施錠と解錠が共にタッチセンサー式になった。最近のトヨタ車と同じで、他メーカーでもこの方式が増えている。リクエストスイッチがないので見た目がスッキリする。

後席スペースを拡大。乗降性も問題なし

後席の空間も不足なし。着座姿勢の見直しや25mm拡大されたホイールベース等のおかげで、足もとは広く、ヘッドルームも十分。ドア構造を見直したことで、肩や肘まわりのスペースも増しているらしい。

乗降性についても、ルーフがスラントしているので頭が当たるかな、と思いきや、少なくとも5ドアの場合は頭を意識して屈めなくても大丈夫だった。サイドシルは低められ(フロントは-20mm、リアは-10mm)、ドア開口部も拡大されたことで、足運びも楽になっている。

荷室容量は大幅にアップ


写真はオプションのカーゴマット(1万1550円)を敷いた状態

スポーツの荷室容量は先代より約80リッターも多い380リッターで、このクラスのベンチマーク、例えばゴルフの350リッターを大きく上回る。ちなみにG4は先代比40リッター増しの460リッターで、レガシィB4より20リッター少ないだけ。このあたりにも先代レガシィの実質的な後継車にする、という意図が垣間見える。

 

床下には発泡スチロール枠のサブトランクがあり、奧にパンタグラフジャッキとパンク修理キットを搭載している。つまりスペアタイヤレスで、これが荷室容量アップに効いている。

基本性能&ドライブフィール

スバル製で初めてアイドリングストップを採用


エンジンカバーやターボ等の補器類がないため、水平対向エンジンのレイアウトがよく分かる

試乗したのは2リッター・AWD仕様の「2.0i-S アイサイト」(233万1000円)。スタートボタンを押すと、以前より控えめながら、聞き慣れた「ザザザザ」というエンジン音が聞こえ始める。従来のEJ系に代わる新世代のFB系エンジンは、ロングストローク化やデュアルAVCS(吸/排気の可変バルブタイミングシステム)の採用で、低速トルクや低燃費を狙ったもの。バルブ駆動は従来EJ型のタイミングベルトではなく、チェーン駆動になっている。

 

CVTということもあって滑らかに発進。新採用されたピニオンアシスト式の電動パワステ(1.6リッターの一部グレードは油圧)の操舵感は、言われなければ電動だと気付かないほど自然だ。

そしてエンジンが暖まり、室内が空調の設定温度に近づくと、信号待ちでアイドリングストップするようになる。「スバル製」では初となったアイドリングストップシステムだが、わずか0.35秒という再始動の速さや始動ノイズの少なさなど、動作はマツダのi-Stop並みに優秀。つまり非ハイブリッド車では最もスムーズなレベル。ステアリングを動かすと再始動する点もi-Stopと同じだ。アイドリングストップした直後に信号が青になった、みたいな時でもスムーズに発進できる。

 

レガシィのような「SI-ドライブ」切替ダイアルはなく、走行モードはノーマルとボタンによる「S」(スポーツ)の2通り

CVTは現行レガシィに採用されているリニアトロニックをインプレッサ用に再設計したもの。緩やかに「燃費運転」する限り不満はないが、アクセルを雑に踏み込んだ時にエンジン回転を上げながら加速するなど、ダイレクト感が物足りないのは少し残念な部分。

とはいえ、いったん加速体制に入れば、スピードの乗りはけっこういい。特にスイッチを押して「S」モードを選択するか、6速マニュアルモードをパドルシフトで操作すれば、プレスリリースに書かれている「2.0リッターながら従来の2.5リッター並みの加速性能」を実感できる。2リッターエンジンの最高出力はきっちり150ps、最大トルクは20.0kgm。車重はこのAWD仕様でも1350kgとそんなに重くないから、本気で走るとけっこう速い。

ワインディングで本領を発揮


「マルチファンクションディスプレイ」のVDC作動状態表示。VDCが作動すると下の写真のように表示が変わり、作動時間がグラフで表示される

いずれにしても新型インプレッサの本領を見るなら、ワインディングが最適。出来れば中・高速コーナーが連続して、舗装の荒れたワインディングがいい。そんなところへ行くと、インプレッサは水を得た魚のように嬉々として走り始める。圧倒的なのはスタビリティの高さで、スバルの水平対向エンジン+AWD車ユーザーならご存じの通り、この時の安定感や接地性の高さは、例え相手がドイツ車でも2WD車なら敵ではない。

エンジン搭載位置が圧倒的に低い感覚は水平対向エンジン独特のものだし、コーナー途中の段差やうねりをタタンッと小気味よく受け止めるリアの改良型ダブルウイッシュボーンサス(ラテラルリンクの外側ブッシュがピローボールに変更されている)も頼もしい限り。このシャシー性能が200万円前後で手に入るというのは、ものすごいバリューだと思う。

 

(photo:富士重工業)

ちなみに「マルチファンクションディスプレイ」でVDCの作動状況を表示すると、時間経過グラフ(過去30秒間を表示)にVDCが作動した分の時間、5秒間なら5秒間分の黄色い帯が表示され、それが時間経過と共に流れてゆく。つまり雪道などでVDCが介入しまくった時には、この時間経過グラフには黄色の帯が連続する。とはいえ、シンメトリカルAWD仕様の限界は高く、一般的な運転ではウエット路面でもVDCが作動することはまずない。また作動させた時の介入も自然で適度。急激に失速感が生じるようなことはない。

賢いアイサイト。ただしレガシィとはちょっとだけ違う


2基のCCDカメラ(ステレオカメラ)で前方の映像を捉え、画像解析で状況を判断、各種の警告や制御を行う

新型インプレッサの大きな売りが、これまでレガシィでしか選べなかったアイサイト。新型インプレッサに搭載されたのは最新世代のアイサイト ver.2。ステレオカメラで前走車や前方の歩行者を検知し、プリクラッシュブレーキ、プリクラッシュブレーキアシスト、全車速追従機能付クルーズコントロール、AT誤発進抑制制御、車線逸脱警報などの機能を発揮する。

実際のところプリクラッシュセイフティは試すわけにいかないが、頻繁に作動するのは車線逸脱警報。カメラで車線を読み取るもので、ピピピッと何度も注意を受けた。これは天井のボタンでキャンセルすることもできる。

 

ピピッという電子音と共に警告が表示される

もう一つ、よくお世話になったのが「先行車発進お知らせ」。先行車が発進して約3メートル以上離れても自車が発進しない場合に警告してくれるものだ。けっこう便利。

また全車速追従機能付クルーズコントロールを使用すれば、アイサイトの認識能力の高さ、そして賢さが実感できる。感心したのは前方に割り込んでくるクルマへの対応や速度調整時のブレーキの掛け方など。全車速対応なので、完全停止までブレーキを掛けてくれる。

 

プリクラッシュブレーキや車線逸脱警報はスイッチ長押しでキャンセルもできる

ただしインプレッサの場合は、レガシィのような電子制御パーキングブレーキではなく、普通のハンドブレーキなので、停止後は警告音と共に自動ブレーキが解除され、クリープで再び動き出してしまう。つまり停止状態を保持するには、フットブレーキの操作が必要だ。よって再発進時には、レガシィのようにアクセルをチョンと踏むだけでクルーズコントロールを再開する、というわけにはいかず、一手間増えることになる。流れが止まってしまうような深刻な渋滞路では、少々面倒かも。

試乗燃費は9.9~12.3km/L。JC08は15.8km/L


指定燃料はもちろんレギュラー

今回はトータルで約300kmを試乗。参考ながら試乗燃費は一般道と高速道路を半々で走った区間(約90km)が9.9km/L。一般道を燃費を意識して走った区間(約150km)の平均は12.3km/Lだった。ただし今回は真冬での試乗となったので、冷間時の暖機やフリクション、ヒーター優先によるアイドリングストップ時間の短縮などが不利に働いている。

なお、この2リッター・AWDモデルのJC08モード燃費は15.8km/L。100km/h巡航時のエンジン回転数は約1850回転と低いから、高速道路を法定速度でひたすら巡航すれば、それに近い数字が出るかも。

ここがイイ

抜群の操縦安定性、アイサイトの採用、VDCの全車標準化、良好な視界など


新型インプレッサ用のPOP。ここにない「ポイント2」はアイサイトだろう(展示車はおそらく非装着車)

試乗車はAWDだったせいもあるが、抜群の操縦安定性。AWDだけでなく、水平対向エンジンやダブルウイッシュボーンのリアサスなど、コスト削減や合理化ばかりが褒められるこの時代にあって、職人気質の塊のようなメカニズムが奢られている。ある意味、都会的な感覚では過剰性能に見えるが、山間を縫うワインディングが生活道路であり、雪も積もれば凍結もする、という地方に住む人にとって、この性能は一度味わったら捨てがたいはず。海外、例えば真冬にマイナス数十度まで下がる北米でスバル車が確固たる支持を受けているのもそこにあるはず。

安全装備の充実。レガシィに続いて、アイサイトがついにインプレッサでも選べるようになったのは喜ばしい限りだが、もっと地味なところではVDCが全車標準であることも積極的に評価したい。150万円台からある1.6リッター車にも付くわけで、安全性能のバリューは圧倒的だと言える。加えて全グレードが後輪ディスクブレーキであり、衝突安全テストのJNCAPやユーロNCAPでも極めて高い評価を得ている。

 

「マルチファンクションディスプレイ」もエントリーグレード(1.6i)を除いて全車に標準装備

マルチファンクションディスプレイ。燃費などを表示するものは今までもあったし、日産GT-Rのように凝ったものもあったが、VDCの作動状況を表示するものは画期的。グラフィックも見やすく、ここにもスバルらしいこだわりが感じられる。

視界の良さ。スバル車にはスバル360や初代サンバーの頃から、安全性能の基本としてドライバーからの視界には厳密な社内基準があるそうだが、新型インプレッサにもそれが受け継がれている。

コンソールの肘掛け内に12V電源があり、ここからスマホなどに電気を供給した場合、蓋に切欠きがあって電源ケーブルを通せる。これは便利。

ここがダメ

リニア感不足のリニアトロニック、アイサイト装着車の少なさ、静粛性など

リニアトロニックと称するCVTだが、欧州車で急速に増えてきたDCTや7/8速の多段トルコンATと比べてしまうと、リニアなレスポンス、ダイレクトな伝達感という点で物足りなさが残る。マニュアル派なら6MT仕様が欲しいところだが、MTは今のところ1.6リッターAWDの5MTしかない。

また現在アイサイトは2リッターAWDモデルでしか選べないが、今後は1.6リッターやFFでもアイサイトを選べるようにして欲しいもの。アイサイトは制御面でAWDを前提としている部分があるようだが、例えば1.6リッターの上級グレード、1.6i-LのAWD・CVT(192万1500円)に+10万5000円でアイサイトを付けて202万6500円で買えるとしたら、これは強力だと思う。とにかく全車標準装着に向かってほしい。

 

新型インプレッサのSUV版「XV」。東京モーターショー2011

WRXがなくなったことで、ブランド力とか華の部分がやや弱まった。特にG4というサブネームが付いたセダンの場合、レガシィ B4ほどイメージが鮮明ではなく、いかにも地味なセダンという印象になってしまう。新型インプレッサのシリーズとしてのブランドイメージ向上には、SUVルックが精悍な「XV」の早期投入が望まれる。これは一見してカッコイイから、若者からクルマ好きにまで強くアピールすると思う。

高速クルージングでは、もう少し静粛性が欲しいと思った。特にロードノイズが気になる。2リッタークラスの車両なのだから、さらに快適性が高まると、より多くの人から高評価を得られるのでは。あとは内装の質感か。価格やヒエラルキーなど難しい点は多いだろうが、VWグループに対抗できる質感がもし実現できたら素晴らしいと思う。

総合評価

4代目で立ち位置が変わった

クルマ好きなんていう人種は、どんなクルマでも、あれこれ文句を付けたがるもので、リニアトロニックにリニア感がないだの、遮音が今ひとつだの、というあたりは、インプレッサに乗ればすぐに言いたくなるところ。でも客観的に先代と比べるなら、新型インプレッサは「普通の人」が初めて購入車リストに加えるべきスバル車になっている、という事実になかなか気付けない。独自のメカニズムとスタイリングを持つかなりマニアックな小型車というインプレッサの商品キャラクターは、この4代目で完全に変わった。誰もが乗れる、日本にジャストサイズの乗用車。あるいはアメリカンサイズとなったレガシィに代わる、ジャパニーズサイズの国内主力モデルとなったのだ。

2011年におけるレガシィの販売台数は北米が14万6000台で、日本は2万2000台と、北米がメインマーケットであることは明白(ちなみにインプレッサは4万1000台と2万1000台)。現行レガシィは、日本ではちょっと大きすぎるという意見もあるが(もちろんワゴンを中心に確固たる需要はある)、北米ではジャストサイズであり、特に後席の広さで不満が出ないようになっている。それに加えてAWDの安定感、信頼性の高さで、雪の多い地方では圧倒的な支持を得ている。

 

スバル BRZ コンセプト。東京モーターショー 2011にて

そんなレガシィに代わって日本(と欧州)の主力モデルとなるべく開発されたのが4代目インプレッサだ。欧州でも主流のCセグメントに属するモデルであり、世界規模で商売すべきクルマでもある。またハッチバックとセダンが並んで存在しているのも、主力モデルらしいところだろう。このサイズのセダンは、特に日本国内では貴重。競合車にはマツダ アクセラのほか、トヨタならプレミオやアリオン、日産ならシルフィだったりするから、この市場に投入された意義は大きい。

またWRX STIは、先代が引き続き販売され、これによってアッパークラスのレガシィ、ミドルクラス(上級コンパクト)のインプレッサ、高性能AWDモデルのWRX STI とラインナップが整理された。そしてまもなくこれにFRのBRZも加わることになる。ある意味で隙のない、鉄壁のラインナップが完成するわけだ。BRZの登場が、インプレッサの立ち位置を変えたといってもいいだろう。

小メーカーの見事な生き残り方


新型インプレッサのシンメトリカルAWD
(photo:富士重工業)

いよいよサンバーの生産が2012年2月で終わり、スバルはついに軽自動車生産から撤退。軽の商用車もダイハツからOEM供給を受けることになる。となれば販売現場で力が入るのは、自社のクルマであるインプレッサであろうことは想像に難くない。となると、数を売るためにはあまりマニアック過ぎてもダメ。極端に言えば、今回のインプレッサはクルマ好きに買ってもらう必要はない。それより、もっと多くの「普通の人」に買ってもらう必要がある。販売現場で聞く限り、それは今のところ、うまくいっているようで、他メーカー車から乗り換えようという新規ユーザーが増えているという。もちろん先代レガシィからの乗り替え組も多いようだし、先代インプレッサからの買い替えもあるだろう。テレビCM等で強調される運転のリニア感は、クルマ好きには物足りないかもしれないが、少なくともこれまで普通のセダンやハッチバックに乗ってきた人なら、「おっ」と思うはずだ。

それに加えて、多くの人にとってはアイサイトが絶対的な強みとなる。最新世代(ver.2)が発売されてから1年半、アイサイトは確実に普及しつつある。特に高齢者には、AT誤発進抑制制御によってペダル踏み間違いによる急発進がないというだけでも説得力は強力だ。衝突安全性の高さを含め、最も安全なクルマという謳い文句は何にも代えがたいもの。特にコンパクトセダンを買いたい保守層なら、AWDとアイサイトの組み合わせが、他メーカーのセダンにはない魅力となるはず。明らかに巡航速度が落ちている昨今の高速道路なら、全車速追従機能付クルーズコントロールも実用となり、手頃な価格で世界最先端の運転支援テクノロジーを味わうことができる。

 

スバル360以来の「スバルの軽」がなくなり、トヨタとの共有部品が散見できるクルマづくりの中で、独自性を維持するスバルは、先行きに不安が少ない小メーカーだ。BRZと86も、企画とデザインという、ある意味でスバルが最も不得意とする部分をトヨタがやり、実際のクルマづくりはスバルがやっている。そしてアイサイトがトヨタ車に搭載されるようなことになれば、それもまたスバルにとっては技術的にも経営的にも大金星だろう。トヨタ傘下にあってもボクサーエンジンやアイサイトでしたたかに生き残っていく、BRZをイメージリーダーとして、インプレッサを実際の販売の柱とする、そしてトヨタにない大型ステーションワゴンをレガシィが担う。小メーカーの見事な生き残り方だ。

最後になるが、クルマ好きとしては確かにリニアトロニックにはもう少しリニア感が欲しい。しかし普段乗りにおける燃費やイージードライブを考えれば、これで十分なのかもしれない。スポーツモードにしてパドルでマニュアルモードを楽しめば、シャシーの持つポテンシャルを十二分に味わえる。それができるのがインプレッサというクルマだ。

試乗車スペック
スバル インプレッサ スポーツ 2.0i-S アイサイト
(2.0L水平対向4気筒・CVT・4WD・233万1000円)

●初年度登録:2011年12月●形式:DBA-GP7 ●全長4415mm×全幅1740mm×全高1465mm ●ホイールベース:2645mm ●最小回転半径:5.3m ●車重(車検証記載値):1350kg(830+520) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:FB20 ●排気量・エンジン種類:1995cc・水平対向4気筒DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:84.0×90.0mm ●圧縮比:10.5 ●最高出力:110kW(150ps)/6200rpm ●最大トルク:196Nm (20.0kgm)/4200rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/55L ●10・15モード燃費:17.0km/L ●JC08モード燃費:15.8km/L

●駆動方式:電子制御4WD ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 ダブルウイッシュボーン+コイル ●タイヤ:205/50R17 (Dunlop SP Sport 2050) ●試乗車価格(概算):303万6120円 ※オプション:HIDヘッドランプ 6万3000円、キーレスアクセス&プッシュスタート 6万3000円、カロッツェリア HDDサイバーナビ 26万8800円、ナビ取付キット 1万8585円、ドアバイザー 1万7850円、フロアマット 2万6775円、カーゴマット 1万1550円、フロントグリル 3万2550円、ドアアンダーガーニッシュ 3万4650円、ルーフスポイラー 4万8300円、インパネパネル(ピアノブラック) 2万3100円、パワーウインドウスイッチパネル(アルミ調) 2万5200円、スエード調フルシートカバー 5万6700円、パドルランプ 3万8850円 ●ボディカラー:プラズマブルー・シリカ ●試乗距離:約300km ●試乗日:2012年1月 ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

 
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