Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > スバル インプレッサ 15S

スバル インプレッサ 15S新車試乗記(第471回)

Subaru Impreza 15S

(1.5L・4AT・FF・151万2000円)

インプレッシブな5ドアの3代目、
その1.5リッターモデルの
ファーストインプレッションは?

2007年07月21日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

3代目は5ドアハッチバックで登場

2007年6月5日に発売された新型インプレッサは、1992年登場の初代、2000年登場の2代目を継ぐ3代目。伝統の水平対向エンジンやAWDシステムを引き継ぎつつ、プラットフォームは現行レガシィのものをベースに新開発された。ボディサイズがついに3ナンバー幅になったこと、細かい点ではドア構造が長年スバルが採用してきたサッシュレスからサッシュ付きとなったことも新型の特徴だ。

国内向けは5ドアハッチバック車だけというのも大方の予想をくつがえした点。新型の4ドアセダンは北米など海外には投入されるが、国内導入は未定となっている。これには「インプレッサ=WRX(STi)」から、若者向けハッチバックへイメージを一新したいという意図があるようだ。国内の販売目標はシリーズ全体で月間2500台。

価格帯&グレード展開

エンジン3種類で、145万9500円~259万3500円

エンジン別に3グレードで展開。1.5リッターNA(自然吸気)の「15S」、2リッターNAの「20S」、パワフルな2リッターターボの「S-GT」という構成だ。

「15S」・・・1.5L(110ps)・4AT /5MT・2WD/AWD 145万9500円~166万9500円 ※今回の試乗車
・「20S」 ・・・2.0L(140ps)・4AT・AWD   194万2500円
・「S-GT」 ・・・2.0Lターボ(250ps)・4AT/5MT・AWD  246万7500円~259万3500円

価格はあくまでオプションなしの状態。全車オーディオやナビはオプションで、特に「15S」ではフルオートエアコン、HIDヘッドライト、キーレススタート、ステアリングテレスコ調整などもオプション扱いとなる。

パッケージング&スタイル

5ドアハッチバックで心機一転

ボディサイズ(先代1.5比)は、全長4415(-50)×全幅1740(+45)×全高1475(+10)mmの3ナンバー幅。先代インプレッサの「スポーツワゴン」を襲名しても良かった気はするが(実は先代前期モデル比だと全長は同値)、今回の新型インプレッサは「5ドアハッチバック」を謳う。ボンネットが長く、リアゲートが少し寝ているせいか、同じ5ドアでもかつてのサーブ900シリーズにちょっと似ている(本家サーブに、今や純然たる5ドアはないが)。

開発スタッフ自ら「一見スバル車に見えない」と豪語するエクステリアは、サイドのキャラクターラインや独特のCピラー形状など、過去のインプレッサとは関連のない新しいモチーフが目立つ。BMW・1シリーズに似ている、という声もあるが、これはボディ側面のキャラクターラインやサイドウインドウ周辺のデザイン、全体のサイズ感が近いからか。このあたりは時間の経過と共に「インプレッサらしさ」が出てくるのかもしれない。

サッシュレスドアを廃止した理由

サッシュレス(窓枠なし)からサッシュ付き(フルドア)に変更されたが、いずれにしても窓枠はブラックアウトされており、ドアを閉めている状態では、方式による見た目の違いはほとんどない。「そういう意味でもサッシュレスである意味がなくなった」ということのようで、むしろドア開口部が広く取れなかったり、ウェザーストリップの交換時期が早い(吸い出し音などがサッシュ付きより出やすい)といったサッシュレスのデメリットが目立ってきた、というのが理由のようだ。内部構造も簡単になるので軽量化もできたという。

オーソドクスな内装デザイン

外観同様、爽やかな曲線でデザインされたインテリア。ドライバーの目の前に計器類、ダッシュ中央には外気温計+平均燃費計+時計、オーディオもしくはナビモニター(試乗車はオーディオレス仕様)、そして空調と、ごくオーソドクスにレイアウトされている。スポーティな見た目のシートはレガシィ用の骨格をベースに、座面に振動吸収性が高いと言われる低反発ウレタンを、背面には新タイプの平面スプリングを使って座り心地に配慮したとのこと。今時のクルマとしては着座位置は低めで、相対的にダッシュボード上面(カウル部分)が高く感じられる。

試乗車の内装はオフブラックだが、新型の売りの一つはアイボリー内装。普通は汚れるのをきらって黒とするステアリングを、新型インプレッサでは思い切ってアイボリー色で統一している。

トヨタ譲りのスタートボタン

ステアリング右側には、トヨタ車同様にエンジン始動用のスタートボタンが備わる(一部オプション)。いつものトヨタ車同様にブレーキを踏み、ボタンを1回軽く押して離せば、赤いメーター指針がブゥーンと振り切れて、計器類が浮かび上がり、スターターが回ってエンジンが掛かる。

ただしドアの解錠方法は、トヨタ車がドアハンドルをつかんだ指に反応するセンサー式なのに対し、インプレッサはリクエストスイッチを押す国産車で主流のタイプ。トヨタのセンサー式にはいくつかメリットがあるが、このタイプでも利便性に大きな差はない。

乗降性アップ、居住性も進歩

後席は先代比+95mmのホイールベース(2620mm)によって、足もとスペースもまったく問題ない。座面クッションの厚みは十分にあり、座面長も拡大されているようだ。ただし全体の空間自体はそれほど画期的に広くはなく、平均的な眺め。ボディ剛性は旧世代のクルマとは段違いなので、走行中の快適性は比べるまでもない。

乗降性も大幅に向上。サッシュレスを止めたことでリアドア開口部を広くとれるようになり、開口角度も大きくなったという。先代インプレッサに比べると、乗り降りの際に頭をかがませずに済むようになった。

縦がダメなら横に積め

後席の折り畳みは、今や世の主流であるシングルフォールディング式。折り畳んだ時の荷室フロアはおおむねフラットだが、上げ底にはなっていない。よってバンパー敷居の部分で少し段差がある。

右の画像は荷室拡大時だが、5人乗車時の荷室容量はクラス平均の296L。従来はダンパーストラットの張り出しが目立っていたが、新型では新開発のダブルウイッシュボーンサスペンションでそれを解消。9インチゴルフバッグ2個を横に積める、というのが自慢だ。床下に収納スペースはなく、スペースセーバータイヤが収まっている。

基本性能&ドライブフィール

今や貴重な水平対向エンジン

試乗したのはベーシックグレードの「15S」。スタートボタンを押せば、先代と基本的に同じ1.5リッターDOHCエンジン(110ps、14.7kgm)が目覚める。水平対向のドコドコ音がまったくしないのは、等長等爆エキゾーストが付いた従来ユニット同様で、少なくともアイドリング時に直4か水平対向かを判別するのは難しい。

なのでエンジンルームの中身を拝んでおくのは欠かせない儀式。ボンネットフードに立派なガスダンパーが付いているのはそのためだ。というのはウソで、アルミ製だったボンネットをスチール製に変更したから、とのこと。ちなみにエンジン本体は下の方に埋もれていて見にくく(先代に比べて前端部で22mm、デフセンター部で10mmさらに搭載位置を下げたせいではないにしても)、一番目立っているのは真上に乗っかっているアルミ鋳物製のインテークマニフォールドだ。

自然とエコランを心がける

そんな水平対向エンジンだが、走り出して感じるのは力感が薄いこと。もともとこの1.5リッターはパワフルなユニットではないが、それに加えて旧来通りの4速ATが要因の一つ。全体にギアリングがワイドで(100km/h巡航は2500回転とまあ普通だが)、パワーバンドを維持しにくい。これを最新の出来のいいCVTに換装できれば万事解決!となりそうなのだが。逆に優れているのは回転のスムーズさで、ウィーンと粒の細かいエンジン音を響かせながら、不快な振動なしに回転を上げてゆく。

高回転まで回してもパワーが湧き出ることはないので、必然的にドライビングは大人しくなる。さらにダッシュボード中央の目立つ位置にある平均燃費計や、穏やかなアクセル操作をしていると点灯し続ける「ECO」ランプの励ましもあって、自然とエコランに努めてしまう。この「ECO」ランプも、スロットル開度の動きに合わせて、ちゃんと理にかなった点灯の仕方をするのが巧い。ただ、ランプが消えないように走ると、軽自動車にも置いてゆかれそうなほど加速は緩慢になる。

高いボディ剛性と静粛性

パワートレインはそんな感じだが、レガシィの「SI(エスアイ)シャシー=Subaru Intelligent-Chassis」」から発展した高剛性シャシーはいい。特に従来のストラットに代えて採用したリアダブルウイッシュボーンはこのクラスで一般的なトーションビームとは次元の違う安定感としなやかさを見せる。元々300ps級のパワーを想定したシャシーだから、110psごときでは余裕十分といったところ。ただし「15S」の場合はコーナリング時のロールが大きく、走りを楽しむものとはなっていない。

静粛性は新型インプレッサの得意とする項目だ。静かなエンジン、リアダブルウイッシュボーンサスのサブフレームマウントなどもあって、安っぽい「ゴー」「ガー」系のノイズとは無縁。外部騒音の少ない夜間には「コー」というロードノイズ(タイヤが原因か)が気になったが、それだけ全体の静粛性が高いと言える。

もう一息伸びて欲しい燃費

そういったわけで自然とエコドライブが増えてしまった今回の試乗だが、約230km走行してトータルの参考燃費(車載燃費計表示)は8.6km/Lとなった。内訳は一般道で無駄なアクセル操作を抑えた時に、9km/L台後半から10km/Lを維持。燃費を意識せず空いた道を走ると、9km/L台を割ってしまう。1.5リッター車の10・15モード燃費(標準車・4ATで16.6km/L)が示すとおり、燃費性能は国産他車の1.8リッターCVT車と同等という感じを受けた。排気量による走りっぷりの差を考えると、もう少し伸びて欲しいところではある。

なお1.5リッター車の場合は、AWD車か、もしくは車重が1270kg以上のFF車なら「平成22年度燃費基準+20%」となり、グリーン税制の対象車となるので、購入の際は気にしておきたい。これは車重ごとに基準値が異なるからで、この場合は1266kg未満か1266kg以上かが分かれ目になっている。

国土交通省>自動車グリーン税制概要(pdfファイル)

ここがイイ

小型ハッチバックというクラスではライバルがCVTやら、バルタイやらで燃費勝負に出てくる中、既存のエンジン、既存の4ATで、なんとか燃費を稼ぎ、独自の魅力を失わんとする努力。思わず「水平対向万歳。がんばれ富士重!」と応援したくなる。

今まで広さはかなり厳しかっただけに、この広くなった室内に不満は出ないだろう。囲まれ感、コクピット感のあるインパネ形状もいい感じだ。ナビ位置はエアコン吹き出し口より上段にあり、なおかつその上にセンターメーター的に情報ディスプレイがあるのも分かりやすくていい。

ガソリンキャップにひもがついていて、最近増えたセルフスタンドでキャップ閉め忘れを防止できる。最近の欧州車ではあたりまえなのだが、国産ではまだあまりみかけない。エンジンフードのガスダンパーも同様。

ここがダメ

ちゃんとアクセルを踏めばそれなりにスピードは出るが、車重に対してアンダーパワーなエンジンをカバーするためにも、やはり多段ATかCVTは必須と思える。特殊な水平対向エンジンゆえ、合うものがないせいだと思うが、トヨタ系部品メーカーによる開発・供給を急ぐべきだろう。

総合評価

サイズが限られる小型ハッチバックはデザインが難しい。個性を出すのはたいへんだ。そこで最近はいわゆる複雑な面を作ることで(作ることのできる技術ができたことで)個性を出す方向となっている。BMWに似ているようにも感じられるエクステリアデザインは、まさに複雑な曲線を描く面でできていて、最初は違和感があったが、試乗途中、公園の駐車場でじっくり眺めていると、なかなか美しくも個性的で、だんだん気に入ってきた。そしてスバルがいつまでも個性的なスバルであるためには、これくらいの違和感こそ必要だと思った。おそらくモデルチェンジサイクルも長いはずだし。

それでもちょっと惜しいと思うのはフロントグリルあたりの個性というか、押しの弱さ。六連星のエンブレムをもっと大きくして、上下二段に見える口の開いたようなエアインテーク部分を一体化させたら、もう少し精悍な印象になると思う。例のグリル統一騒動がいまだ尾を引いているようで、何となく自信なさげに見えてしまうのだ。またフロントノーズが長い(オーバーハングも長い)ため、全体にかたまり感がやはり少ない。これも水平対向エンジンを収めるためなのだと思うが、デザイン部門の苦労が忍ばれる。

インテリアデザインはなかなか良い。インパネは今風だし、質感も高く、トヨタと同じ部品と思われるスイッチ類も多く、その分、なかなか使いやすかった。ナビもエアコン吹き出し口より上に位置しており、ここはトヨタ車より良いところ。ナビ自体はG-BOOK ALPHAが使えるのだから、これらを統合すればトヨタグループ入りして良かった、ということになるだろう。むろん古くからのスバリストには、かなりの抵抗があるかもしれないが。

走りに関しては前述の通り。何しろ試乗したのが販売価格を最も重視したタイプゆえ、これ以上は言うまい。スバルにはかつてジャスティなどのリッターカーもあったが、今は何もないわけで、今後は3ナンバーになってしまったインプレッサをボトムレンジとして女性や若者に売らなくてはならないのだから、かなり大変だと思う。先代の最終期には激安価格勝負のタイプも健闘していたが、試乗車は価格のわりに作り込みが良く、もちろんメカは価格以上に上質で、その点では割安感のあるクルマだ。

トヨタとの関係がまだ内装パーツ程度しか見受けられないインプレッサだが、スバルは今後はどうなっていくのだろう。トヨタの良いところを取り入れて個性的なクルマを作って行けば、クルマ好きにとってはある意味理想的なクルマが登場してくることになる。例えば現在絶好調のポルシェは、10数年前にまさにトヨタに学んだ。その結果、個性的でありながら高品質なスペシャリティカーメーカーとして、今やフォルクスワーゲン・アウディの株主にまでに急成長している。同じ水平対向エンジン車を作るスバルに、富士重首脳やトヨタ首脳がそうした姿を重ねている、と想像することはやぶさかではないだろう。

となれば、やはりスバルとしての個性だ。それもメカだけでなく目に見えるもので欲しい。その点で、分かりやすい個性だったサッシュレスドアが無くなったのはいささか惜しい。おそらくこののち、4ドアセダンやSTiが出てくると思うが、そのあたりで一つ、スバルらしい大人の個性的なモデルを世に問うて欲しい。まずは小手調べという感じの今回のインプレッサだが、そうした先に続く大きなポテンシャルを秘めたボディを持っているという点で、すでにちょっと他とは違う。スバルらしいクルマという点でスバらしいクルマだ。

試乗車スペック
スバル インプレッサ 15S
(1.5L・4AT・FF・151万2000円)

●形式:DBA-GH2 ●全長4415mm×全幅1740mm×全高1475mm ●ホイールベース:2620mm●車重(車検証記載値):1270kg(770+500) ※オプション非装着の標準車は1260kg ●乗車定員:5名●エンジン型式:EL15 ● 1498cc・水平対向4気筒・DOHC・4バルブ・縦置 ● 110 ps(81 kW)/ 6400rpm、14.7 kg-m (144 Nm)/ 3200 rpm ●カム駆動:タイミングベルト ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60 L ●10・15モード燃費:15.6 km/L ※車重1270kg以上のオプション装着車の場合。標準車は16.6 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:195/65R15(Yokohama Aspec ) ●試乗車価格:179万1300円 ( 含むオプション:フルオートエアコン、本革巻ステアリング&シフトノブ、濃色ガラス、フロントフォグ、キーレスアクセス&プッシュスタート、イモビライザー、テレスコピックステアリング、HIDヘッドライト<以上メーカーオプション>、付属品<フロアマット、サイドバイザー、トノカバー、スプラッシュボード等> 7万4550円) ●試乗距離:約230km ●試乗日:2007年7月 ●車両協力:名古屋スバル自動車株式会社

スバル公式サイト>インプレッサhttp://www.subaru.jp/impreza/impreza/index.html

 
 
 
 
 

最近の試乗記一覧