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ホンダ インサイト G新車試乗記(第548回)

Honda Insight G

(1.3リッター直4+モーター・189万円)

アンダー200万円で
ハイブリッドをみんなのものへ!
大ヒット中のインサイトを洞察してみる!

2009年03月07日

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キャラクター&開発コンセプト

「みんなに乗ってほしい。189万円」


2月5日には東京・青山本社のほか、名古屋でも新車発表が行われた

2009年2月5日に発表、6日に発売された新型「インサイト」は、5人乗り・5ドアのハイブリッドカー。その特徴はなんといってもトヨタ・プリウスより40万円以上も安い189万円からという低価格だ。初代インサイト(1999~2006年)は、世界最高燃費を目指したオールアルミ製ボディの2人乗りだったが、2代目はあくまで量販を目指した「新時代コンパクトスタンダード」。広告のキャッチコピーは「みんなに乗ってほしい。189万円」だ。

1.3リッター直4エンジン+薄型モーターのハイブリッドシステムは、シビック・ハイブリッドの改良版。シャシーはエンジンコンパートメントや前後サスペンションをフィットから応用して、低コストを追求。フロア部分は燃料タンクやメインバッテリー等を後方に配したもので、ほぼ新設計となっている。10・15モード燃費はプリウス(30~35.5km/L)には及ばずも、シビックハイブリッド(26~31.0km/L)と同等の28~30km/Lだ。

グローバルで年間20万台を予定

生産は鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で、3月からは欧州、4月からは北米でも発売される。販売目標は国内では月間5000台(年間6万台)、欧州では年間約3万台以上、北米では年間約10万台で、グローバルでは計20万台とされている。なお、現行プリウスの国内実績は2008年のデータで年間7万3110台、グローバルでは2007年のデータで年間約28万台だった。プリウスは2005年末から中国でも生産されており、さらに今年から国内でも新型の登場を控えて増産体制に入っている。


2007年の東京モーターショーに出展されたデザインコンセプト「CR-Z」

今回の新型インサイトは、またの名を「ホンダ・グリーン・マシーン 001」。で、いつの間にやら、シビックハイブリッドが「002」ということになっている。2010年にはスポーツタイプハイブリッドのコンセプトモデル「CR-Z」の市販バージョンが発売される予定だ。

ホンダ>プレスリリース>新型インサイトを発売 (2008年2月5日) http://www.honda.co.jp/news/2009/4090205-insight.html

価格帯&グレード展開

189万円、205万円、216万円の3グレード

ベースグレードの「G」(189万円)、HIDヘッドランプ等を装備する「L」(205万円)、パドルシフトや16インチアルミ&タイヤを装備する「LS」(221万円)と、16万円飛びの3グレード構成。オーディオ、ナビは全車オプションで、アルミホイールも下位2グレードには標準装備されない。売れ筋はやはり189万円の「G」だろう。

G    189万円  ★今週の試乗車
■L    205万円 ※HID、革巻ステアリングホイール、ドアミラーウィンカー等
■LS    221万円 ※(上にプラスして)7速パドルシフト、16インチアルミホイール等

パッケージング&スタイル

サイドビューは「FCXクラリティ」の小型版


車両協力:ホンダカーズ東海

ボディサイズは全長4390mm×全幅1695mm×全高1425mm、ホイールベースは2550mmだ。全長はプリウスより55mm短いだけだが、ホイールベースは150mmも短いなど、実はプリウスより少なからず小さい。

フロントのデザインは新型オデッセイやアコードと足並みを揃えたもの。伸びやかなリアオーバーハングが印象的なサイドビューは、燃料電池車「FCXクラリティ」をモチーフにしたものだ。Cd値(空気抵抗係数)はプリウス(0.26)、シビックハイブリッド(0.27)に及ばない0.28だが、プリウスより全幅が30mm狭く、全高も65mm低い上、グラスエリアの絞り込みも激しいので、前面投影面積はインサイトの方が明らかに小さい。絶対的な空気抵抗値(前面投影面積×Cd値)はほとんど互角と思われる。

初心(初代シビック)に戻ったボディサイズ

全幅を5ナンバー枠に収めた点は、4分の3近くを欧米で売ることを考えると異例の判断だ。開発スタッフによると、ホンダの海外拠点からは「そんなに幅が狭いなら、要らない」とまで言われたらしいが、それでも5ナンバー枠に収めたのは前面投影面積の問題のほかに、小さな初代シビックでもアメリカで立派に成功したあの時の原点に戻ろう、という思いがあったからだという。

初代インサイトや2代目CR-Xを思い出す

リアビューは緩やかに下がるリアウインドウと斜めにねじりながら絞り込んだCピラーを後方に伸ばしたところで、いきなり垂直に断ち切ったもの。これはまさしく初代インサイトと同じだ(見方によってはCR-Xだが)。垂直部分にガラスをはめ込み、後方視界を確保する手法は2代目プリウスと同じだが、これももともとはホンダの2代目「サイバー」CR-X(1987年)やインサイトで採用されたもの。バックミラー越しの景色に、昔を思い出すホンダ乗りは少なくないはず。

 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネはシビックハイブリッド似

回転計をステアリングのリム内に、デジタル速度計をリムの上に見せる配置のインパネ(マルチプレックスメーター)は、現行シビックやシビックハイブリッドと似たもの。

ステアリングのデザインも、そのシビックやフィットとほとんど同じに見える。シビック同様にチルトとテレスコが可能なのは、ドライビングポジションに加えて、メーター視認性を確保するためでもある。シートにはリフターも付く。

青より緑がエコ! メーター色でエコ運転度を伝える「コーチング機能」

デジタル速度計にはインサイトならではの仕掛けがある。それはグリーンからブルーへ変化するメーター色(アンビエントメーター)などでエコドライブ度を感覚的に伝える「コーチング機能」と呼ばれるものだ。アクセルをじわっと開けるエコドライブならメーター色はグリーン。エコドライブを意識せず、普通にアクセルを踏んでしまえばブルーグリーンになり、無頓着にグイッと踏み込むと濃いブルーに変化する。要するにグリーンのまま、ブルーにならないように走ればいいわけだ。

エコ運転度を教えてくれる「ティーチング機能」


こちらはメーカーオプションのインターナビで、「ティーチング機能」を表示したところ

試乗車のナビは8GBフラッシュメモリー式の販売店オプション品だったが、メーカーオプションのインターナビなら「エコドライブ度」の履歴を残したり、採点してもらえたりする「ティーチング機能」が付いてくる。さらにパソコンなどでインターナビ会員用のホームページにアクセスして、それらのデータを見ることができるほか、全国の会員と燃費ランキングを競うこともできる。

インターナビ・プレミアム・クラブ>エコアシスト ティーチング機能

育てるハイブリッド

insight-08ecoguide.jpg
(photo)本田技研工業

とはいえ素の状態でも、メーター中央の液晶ディスプレイには、平均燃費(トリップメーターA・Bにそれぞれ連動)、瞬間燃費(バーグラフ式)、エネルギーフローなどを表示。走行後、イグニッションを切った時には、その日のエコドライブ度が葉っぱのマークで採点される(10点満点ならぬ10葉満点)。

 
insight-08ecoscore.jpg
(photo)本田技研工業

さらにその下には「その日までの成長度が分かる生涯成績」を別の葉っぱマークで表示。エコ運転を続けていると、葉っぱが成長して最後には花が咲くが、逆に反エコな運転だと葉っぱがしおれてしまう。インサイトは、育てるハイブリッドだ。

少なくともタクシーには使えない

新型インサイトで評価が分かれるのは、この後席だろう。最初に面食らうのが、リアドア開口部のヘッドクリアランスがタイトで乗り込む際に頭をぶつけそうになってしまうこと。身長165センチ程度でも、かなり意識して頭を屈めないとルーフに頭が当たってしまう。

中の広さも微妙だ。欧州車的にアップライトな着座姿勢はいいが、これは実はリアシート下に燃料タンクがあるから。結果としてやはりヘッドルームがタイトになり、正しい姿勢を取ると身長170センチでも頭がルーフにかすってしまう。低いルーフ(特に左右両端)や小さなサイドウィンドウからの圧迫感も今どきのクルマにはないレベルで、一昔前のシビック・3ドアみたい。ホンダらしいと言えばらしいが、開放感があるとは決して言えない。ライバル車であるプリウスはタクシー車両としても人気があるが、率直に言ってインサイトのタクシーはまずあり得ないだろう。そういう用途にはシビックハイブリッドがある、ということだ。

なお前席サイドエアバッグと合わせて、前・後席カーテンエアバッグは全車オプションとなる。プリウスも主力グレードはオプションだ。

ワゴン風に使える荷室はプリウス似

荷室はプリウスと似たような感じ。リアシートを畳めばステーションワゴンのような使い方が可能で、5ドアゆえに開口部も広い。面白いのは、フロアボードを起こしてグイと手前に引っ張るだけで、写真の状態よりフロアを一段下げられること。5人乗車時の最大荷室容量は、プリウスの460リッターに対して400リッターだ。

 

床には小さなリッドがあり、そこから床下収納(8リッター)にアクセスできる。荷物を積んでいない状態なら、ガバッとフロア全体を起こすことも可能で、床下には発泡スチロール製ボックスにパンク修理キットや工具が収まっている。

バッテリー&コントロールユニットを小型・軽量化

床下のボックスを取り外すと、銀色に輝く小箱が現れる。これが新開発のニッケル水素バッテリー(サンヨー製)と PCU(パワー・コントロール・ユニット)の一式である「IPU(インテリジェント・パワー・ユニット)」だ。シビックハイブリッドでリアシートとトランクの間にあったものだが、インサイトの新型IPUはユニット全体で19%小型化・28%軽量化されている。当然ながら現行プリウスのものより明らかに小さく、しかもリアサス(H型トーションビーム)スレスレの低い位置にある。

基本性能&ドライブフィール

ホンダのハイブリッドシステムをおさらい

シビックハイブリッド用の改良版であるハイブリッドシステムは、1.3リッター直4・SOHC「i-VTEC」(88ps、12.3kgm)に、薄型モーター(14ps、 8.0kgm)をドッキングしたもの。モーターはエンジンとトランスミッションの間に挟み込まれ、常にエンジンと一体で回る。つまりモーター(発電機でもある)が回っている時は、かならずエンジンも「回転」している。これが一般的に「パラレル式」と呼ばれるホンダハイブリッドの特徴だ。

仕組みも初代インサイトやシビックハイブリッドと基本的には同じで、エンジン主体で走り、モーターは主にアシスト役。複雑な動力分割機構を使って「シリーズ・パラレル式」としたプリウスと違って、インサイトはモーターのみで発進することはない(構造的には可能だが、エンジンも一緒に回してしまい効率が悪いため)。

また新型インサイトの場合、低速巡航時だけはモーターで走るが、上のような構造から実はその時もエンジンは「回って」いる。そのため全気筒の吸・排気バルブは閉じたまま休止して空気の出入りによって生じるポンピングロスを抑制し、エンジンの回転抵抗(いわゆるエンジンブレーキと言われるものの主要因)を極力小さくするわけだ。そうすると結果として減速時に回生ブレーキの効率も上がる。減速時でも常にタコメーターの針が回っているのは、そういう理由だ。

発進(ブレーキを離す)と同時にエンジン始動

というわけで、新型インサイトは身も蓋もない言い方をすれば、「モーターアシストがあって、アイドリングストップするガソリン車」だ。プリウスの場合はブレーキを離した瞬間、モーター(インサイトの5倍近い68psと40.8kgmを発揮する)の力でゴロッと転がり、そのまま「ゴロゴロゴロ・・・・・・、ブォーン(エンジンの音)」という感じで走り出すが、新型インサイトはブレーキを離した瞬間、「ブォン」とエンジンが掛かり、フィットとかフリードみたいに走り出す。

なお変速機はCVTだが、発進時のクリープは2代目フィットやフリードのようなトルコンではなく、電子制御クラッチによるもの。エンジン冷間時はちょっと発進に唐突感があるが、暖機が済めばすぐに収まる。

走りはまさにいつものホンダ車

ステアリング右には「ECON」(イーコン)という緑色の目立つスイッチがある。これさえ押しておけば、クルマが自動的にエコ運転モードになるというものだ。具体的にはエンジン出力や回転を抑えるほか、アイドリングストップ時間の延長、減速時の回生充電量の増加、エアコンの省エネ制御までしてくれるという優れモノ。アクセル全開でも、基本的にはエコなモードを守るという。

そんなECONモードでも、走りは力強く、しかもホンダらしく元気一杯。プリウスもそうとう速いが、飛ばしてもひたすらスムーズで平和という感覚が持続するのに対して、インサイトは言わばライトウエイトハイブリッドスポーツという感じだ。

路面の凹凸に反応してコツコツ、ポンポンと跳ねる硬質な足まわりも、良くも悪くもこのクラスのホンダ車。車重1190kgのボディは感覚的にも軽く、フィットとか1990年代のシビックを思い出させる。前後サスペンションは基本的にフィット譲りで、アーム類、サブフレーム、トーションビーム、そして前ブレーキも共用品。もちろんすべては189万円のためだ。VSAは最上級モデルを除いてオプションだが、足まわりが硬めのため、挙動は最後まで安定している。後ろにバッテリーがあるので、重量配分も良さそうだ。

ちょっと残念なのは、エンジン始動時(発進時ないし停止時)の「ブオン」というエンジン始動音や、ハスキーでやや耳障りなエンジンノイズがあること。そのたびに「ガソリン車」であることをどうしても意識させられる。ロードノイズや外部騒音の遮断はまずまずで、巡航時の静粛性は高い。

「イーコン」オフで、パワード・バイ・ホンダ!

ECONモードでも元気に走るので、そのままで走るインサイトオーナーが増えそうだが、試乗時にぜひ試したいのが「ECON」オフモード。思わず「こっちがホンダの本音?」と思ってしまうくらい、これがなかなか痛快だ。

特にパワフルなのが上り坂で、アクセルをちょっと踏み込んでいるだけで、まるで2リッタークラスのスポーティカーのようにグングン勾配を上ってゆく。ホンダらしからぬ?低速トルク感が気持ちイイ。

そんなわけでトップスピードの伸びも、そうとうなもの。空気抵抗の低いボディと硬めのサスペンションが相まって、初代インサイトの記憶を呼び覚ます未来的な疾走感が味わえる。アクセル全開時はレッドゾーン手前の6000回転で釘付けになるためノイジーだが、エコカーというイメージを裏切る「速いクルマ」だ。体感的な速さはプリウス以上と、良くも悪くも言える。サーキットで走らせたら、どっちが速いんだろうか? F1での勝負の続きはインサイト対プリウスで、というところ。

試乗燃費は15.1km/L。エコランのみで21.0km/L

参考までに、今回の試乗燃費はいつもの試乗コース(約100km)で15.1km/L。またこれとは別に、郊外の一般道を多少エコランを意識して走った区間(約60km)は21.0km/Lだった。ちなみにこの時のエコドライブ度は「10葉」満点だ。

パワフルなだけに飛ばしてしまうと、フィットあたりと燃費は大差なくなってしまうが、ECONモードでメーター色に注意しながら走れば誰でも簡単に20km/Lオーバーで走れそう、というのが実燃費についての印象だ。ホンダの開発スタッフも「社内の実走テストでは、だいたい18km/Lくらい」と言っていたが、デイズにある初代プリウス号(だいたい17km/Lで推移する)の感覚からいっても、それは妥当なところ。なお、10・15モード燃費は30km/L(16インチ仕様は28km/L)、JC08モード燃費は28km/L(同24km/L)となっている。

なおハイブリッドはエンジン冷間時の燃費が良くないので(暖機などを優先してエンジンが止まらない)、1回当たりの走行が多い方が有利になる。これはプリウスでも同じだ。

ここがイイ

価格

安いことはいいことだ。完全なブランニューカーであった初代プリウスは、215万円(21世紀へGO)で、ナビこそ無いもののオーディオとナビ兼用インフォメーションディスプレイが標準装備だった。それを思うと、インサイトのオーディオレスで189万円という価格は、実はそう特に安いとは思えないのだが、「高級車」になってしまった現行プリウスやシビックハイブリッドと単純に見比べた場合、やはり相当に安く見える。昨今の商品は、売れるためには安いことが何より大事。その意味では、まず低価格を全面に打ち出したことは素晴らしい見識といえるだろう。

誰でもエコ走行できるECONモード

ECONスイッチによって、ハイブリッド特有の走り感覚が生まれたこと。プリウスなどにも通じる、エンジンの鼓動ならぬ「モーターの唸り」が感じられることは、ハイブリッドという特別なクルマに乗っているという気分を高めてくれる。というのもシビックハイブリッドにはそれがほとんどなく、ごく普通のクルマっぽく感じられたことが、今ひとつ売れなかった原因にも思えるからだ。

またこのスイッチによってクルマがかなり主導的にエコ走行するというのも新しいところ。運転がヘタで燃費が悪い人は、モーターデイズ読者にはいないと思うが、世の中には相当多いと思うので、この手の仕掛けはどんどん取り入れるべき。

エコをエンタテイメントにしようとしていること

同様にメーター色が変化するアンビエントメーターとかインフォメーションディスプレイのECOスコアとか、純正ナビの燃費アドバイス画面とか、エコをエンタテイメントにしようとしてることも評価できる。クルマの楽しみはスピード、というこれまでの常識を葬り去り、新しいクルマの楽しみ方がここに来てやっと提案されつつある。

またメーカーオプションの通信ナビ(インターナビ)でECOデータや評価履歴をPCに送ったり、全国ランキング化したりできるのも、やっとここまで来たか、と感動する部分。クルマをPCにつなげてデータ管理するという、ちょっとIT系に興味がある人なら誰もがやりたかったことが、やっとちょっとだけ現実のものとなってきた。燃費、走行経路、ETCのデータなどがちゃんとパソコンにログとして残る時代まで、もうちょっとだ。ちなみに販売店オプションのカーナビではカード型のユニット(VICSやワンセグなど)を追加することで機能をアップさせるという面白い試みも行われている。

シンプルで、小さく、速いこと

作りがシンプルな分、先端技術の塊であるプリウスより、古典的なクルマ好きには理解しやすいこと。もちろん、むやみに大きくないことも高く評価したい(特に5ナンバー枠の車幅)。そして何より速いこと。走りが楽しければ、古典的なクルマ好きでもハイブリッド車に乗りたくなるはず。トヨタはどうしても嫌だという人は多いはずで、その意味ではまさにアンチトヨタ党のためのハイブリッド車が出たことは、幸いかもしれない。

ここがダメ

リアシートの乗降性や居住性

一家に一台とするのであれば、リアシートの狭さ、乗降性の悪さは、事前に家族の同意を得たいところ。ファミリーカーにするなら、フィットあたりの方がいい。同様にホンダ車らしいと言えばらしいが、走りにしろ質感にしろ、お世辞にも高いとは言えないこと。特に乗り心地はファミリーカーとしては厳しい部分。同様にフロントシートもホンダ車らしく平板で、相性の問題はあるにしても、久々に腰が痛くなった。今までのホンダ車で不満がない人にはいいかもしれないが。

総合評価

F1撤退と歩調を合わせるように

プリウスが登場して10年、ハイブリッド車はトヨタが事実上独占的に販売してきた。相当な部分の特許を押さられてしまったためか、それとも技術開発のための資金不足の問題か、結局まともに追随するメーカーはいなかった。

ただ唯一、ホンダだけが技術的なプレゼンテーションともいえるハイブリッド車を販売してきた。国内販売が2000台ほどだった先代インサイトはもちろん、シビックハイブリッドにしても、商売というよりはショーケースに近い。つまり世界のメーカーはハイブリッド車を本格開発するのでなく、ガソリンエンジンの改良だけでしばらくはしのぎ、いずれ燃料電池で巻き返すというのが大方の戦略だったはずだ。ホンダもFCXこそ本命、としていることは、新型インサイトが出た今もたぶん変わっていないだろう。

しかし異常なまでのガソリン価格の高騰や、燃料電池車の技術開発が遅々として進まないことにより、「早いところ何とかならないか」という感覚が2年ほど前にホンダの経営側に芽生えたのだろう。「そういえばうちにはハイブリッド車があるじゃないか。これを改良して安く市販すれば、しばらくは環境車問題をしのげるはず」ということで急遽作られたのが今回のインサイトではないか、とも思われる。そして販売が始まった今、未曾有のクルマ不況がやってきて、皮肉なことに異常なまでに脚光を浴びるクルマがまたまたホンダから登場、という幸運を引き当てたわけだ。2009年2月の除軽販売台数でインサイトはプリウスを抜いて10位に登場。一躍大人気、大ヒット車へと躍り出た。多くの人が、さすがホンダと思ったのではないか。

開発陣が明言しているように、実際のところインサイトには技術的なブレイクスルーは何もない。あるのはコンセプトや制御プログラムといったソフト面の仕掛けと生産体制というハード面での改良だ。詳細は本文をご覧いただくとして、やはり「安いハイブリッド車」という徹底したコンセプトの統一感がこのクルマのキモだろう。

さらにF1撤退と歩調を合わせるように、速さよりエコを競うことでクルマの楽しさを見直そうというインサイトのあり方は、自動車史の大きな転換点を感じずにはいられない。「ここがイイ」で書いたように通信カーナビと連動して全国でエコを競い合うなんてことが世界で初めて可能になった「インテリジェントカー」であることも、このクルマの大きな意義だと思う。

「速い」と「遅い(燃費がいい)」のハイブリッド

ハイブリッド技術は、一般的にエコ面ばかりが話題にされているが、実は走りに効くということは、クルマ好きならわかっているはずだ。レクサスGSから始まったTHS IIはまさに走りのハイブリッドで、ターボとかスーパーチャージャーのようにモーターが効いて、驚くほどの速さを実現している。クラウンハイブリッドなどそちらばかりが強調されてしまい、燃費の悪さを指摘されているほどだ。

インサイトもECONスイッチがなければ明らかにそちら系。1.3リッターとは思えないほど速いクルマだ。こうなると、ちょいとプログラムを変えればすぐにでも最速ハイブリッド車のCR-Zが作れるだろうと思う。そんなCR-Zと差別化するためのECONスイッチ、というか燃費向上プログラム=意図的に遅く走らせるモードを加えたわけで、モーターとエンジンのハイブリッドではなく、まさに「速い」と「遅い(燃費がいい)」という二つの走りのハイブリッドであることこそ、インサイトの真骨頂といえる。エコを前面に出しているから、この話は表立たないが、走り好きのホンダエンジニア的にはたぶんそこが言いたいところだと思う。だって作ったのはやっぱり「走りのホンダ」の人々なのだから。

その意味では、軽量でコンパクトで、重量配分がよくて、過給器ならぬモーターがあって、めちゃめちゃ速いCR-Z(もちろんスポーツカーとしては低燃費)こそ、ホンダハイブリッドの本命で、それを作るため(の利益を獲得するため)のベース車がインサイトだと言えなくもない。それゆえファミリカーとしては中途半端なパッケージングで、妙にスポーティなわけだ。で、エコカーらしい燃費を確保するためにECONという遅い方のプログラムをきっちり用意する、といった展開になったように推察される。もちろんちゃんとしたセダンとしてはシビックハイブリッド(いつのまにかグリーンマシン002に任命されている)やら、日本には未導入のアコードハイブリッド(グリーンマシン004か?)やらがあるから、必要な人はそちらを買えばいいわけだ。まだ見ぬCR-Zはたぶん後席がすごく狭いはずゆえ、その4座版ともいえるインサイトを、CR-Zよりは利便性があると評価して選ぶというのが、正しいインサイトの買い方だろう。

試乗車スペック
ホンダ インサイト G
(1.3リッター直4+モーター・189万円)

●初年度登録:2009年2月●形式:DAA-ZE2 ●全長4390mm×全幅1695mm×全高1425mm ●ホイールベース:2550mm ●最小回転半径:5.0m ●車重(車検証記載値):1190kg( 720+470 )●乗車定員:5名●エンジン型式:LDA ● 1339cc・直列4気筒・SOHC・2バルブ・横置 ●ボア×ストローク:73.0×80.0mm ●圧縮比:10.8 ● 88ps(65kW)/ 5800rpm、12.3kgm (121Nm)/ 4500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/40L ●モーター形式:MF6 ● 交流同期電動機(薄型DCブラシレスモーター) ●定格電圧:100V ●14ps(10kW)/1500rpm、8.0kgm(78Nm)/1000rpm ※エンジン始動時:9.4kgm(92Nm)/500rpm ●バッテリー:ニッケル水素電池 ●10・15モード燃費:30.0km/L ●JC08モード燃費:26.0km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 車軸式(トーションビーム) ●タイヤ:175/65R15( Dunlop SP31 )●試乗車価格:210万6825円( 含むオプション:SSDインターナビシステム<販売店装着オプション) 18万6375円、フロアカーペット 2万4150円、サイドステッカー 6300円 )●試乗距離:190km ●試乗日:2009年2月 ●車両協力:ホンダカーズ東海

 
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