カーデータ
●カテゴリー: 小型3ドアクーペ&4ドアセダン
●クラス(排気量):1797cc
●キャラクター : インテグラは旧型シビックベースで開発されたスペシャリティクーペ(4ドアハードトップもある)。中でも95年登場のタイプRは、ホンダのレーシングテクノロジーを市販車にフィードバックさせたメーカー純正チューンドマシンであり、FFながら本格的なピュアスポーツであることを世に知らしめた評価の高いクルマである。その最新版が98specだ。
●コンセプト:究極のFFマシンといわれつつも、タイヤ&ブレーキの変更が認められないN1レースなどサーキットでは、限界性能にいくつかの弱点があった。まして弟分のシビック タイプRの登場で、アドバンテージが薄れてしまったのは否めない。それらのジレンマを克服するために多岐にわたって改良が施された。
●注目度: 外観上の変更はほとんどなく、大幅に進化した戦闘力に注目が集まる。とはいえ傍目にはまったく変化なしに見える。というわけで旧タイプRオーナーこそ、98specの存在をどんなライバル車よりも気にしているはず。
●特筆装備 : 最大のポイントはブレーキとタイヤのサイズアップによるスタビリティ性能の向上にある。タイヤサイズは195/55R15から215/45R16にインチアップされ、ブレーキローターもフロントが14から15インチに、リアも13から14インチにサイズアップされた。リアトレッドも15mm拡大されている。
専任メカニックの手作業によってポート研磨されるB18C型エンジンは、200馬力の最高出力こそそのままだが、レーシングマシン並の完全等長ステンレスエキゾーストマニホールドの新採用により、18.5kgmから19.0kgmにトルクを向上させている。その発生回転数が7500回転から6200回転に大幅に低められているのも特徴だ。トルクアップに合わせて4、5速のギア比が見直され、ファイナルレシオもローギアード化された。これにより各ギアをレッドゾーンまで引っ張ってからシフトチェンジした時にエンジン回転は最大トルクを発生する6000回転付近に落ちるようになった。美味しい回転域を逃さない立ち上がりを重視したセッティングといえる。
●燃費 :10・15モードで12.8Km/リットル。わずかながら旧型よりも改善されている。
●価格・販売 :3ドアクーペが235.8万円(4ドアセダンは239.8万円)で旧タイプRから13万円高となる。ディスチャージヘッドライトの採用、デュアルエアバッグ&ABSの標準化、タイヤ&アルミのインチアップを考慮すれば、実質的な値下げだといえるだろう。オプションのオーディオとエアコンを付けると約257万円となる。
スタイル
旧タイプRからの外観上の変更点は、サイズアップされたタイヤ&アルミ(4穴→5穴)、テールライトの縁取りの赤色化、リアバンパー下部のデザインが変更されたぐらい。見た目の変更よりも中身の熟成に力を注いでいる。
また、チャンピオンシップホワイト以外のボディ色に、カイザーシルバーメタリックのアルミが新たに採用される。
パッケージング
3ドアクーペのホイールベースは、シビックよりも50mm短い。4ドアのホイールベースは3ドアよりも50mm伸ばされ、リアの居住性に大きく貢献している。
内装(質感)
旧タイプRからの変更はない。真っ赤なレカロ製バケットシート(SR-II)、チタン削りだしシフトノブ、モモ製ステアリングなどスポーツ度満点の演出は、乗り込んだだけでドライビング・プレジャーを盛り上げてくれる。カーボンパネルに黄色指針のメーターといった小技もタイプRならでは。シートは赤のステッチが入ったブラックも選ぶことができる。(4ドアはブラックのみ)
シート・ステアリング・シフト感触
フロントシート表皮は中央部が平織りでサイド部がスウェード調ファブリックとなっており、よりホールド性が高められている。エアバッグ内蔵のモモ製ステアリングは直径368mmで、感触良し。チタン製シフトノブは、スパルタンな演出だけでなくシフトフィーリングの良さを追求してあり、確かにいい感じ。
動力性能(加速・高速巡航)
5700回転あたりの、ちょっと段がつく感じだったVTECの切り替わりが直線的になり、一気にリミットまで吹け上がる。シフトアップしたときにも、エンジン回転数が最大トルクを発生する6000回転付近になるので、力が持続する感じ。爆発的なパワー感ではないが、いつも高速側カムに乗っているわけで、とにかくエンジンを回すのが気持ちいい。旧タイプRオーナーからしてみれば低回転域でのトルクが厚くなったことで急激な盛り上がりが薄れ、若干刺激が薄れた感があるかもしれない。試乗は鈴鹿サーキットの南コースだったので、高速巡航はできず。
ハンドリング・フットワーク
タイヤ&アルミのサイズアップとそれにともなう足まわりのチューニングによりコーナリング限界が高まっている。相当のスピードでコーナーにつっこんでもアンダーが出ず、少しスロットルを戻すだけで容易にクリア。意図的にスピンさせようとしてもできないほど。操作系が軽く、まるで自分の手足のように動いてくれるのだが、がしっとした剛性感あるコーナリングというより、柔軟に路面を舐めるといった走りだ。FFの癖を感じさせないので、ごく一般のドライバーなら挙動を乱すようなことはなく、グリップ走行で「速く、楽しく」遊べると思う。旧タイプRオーナーに聞くと格段に向上したブレーキ性能が一番印象に残るということだった。
乗り心地
サーキットではしなやかに感じられた乗り心地も、街中ではかなりハードに感じられる。耐えられないレベルではないが、リアには座りたくない硬さなのは確かだ。
騒音
クルマの外でエンジン音、マフラー音を聞くと「チューニングマシンとしては静かだなぁ」といった控えめなサウンドだが、乗り込むとそれらのサウンドが内部全体に響きわたり、心地よく興奮させられる。このあたりの演出は心憎いところ。
安全性
デュアルエアバッグ、ABSが標準装備(旧タイプRはオプションだった)。また、ボディ補強も強化され衝突安全性の向上はもとより、スタビリティの向上に貢献している。これによって約20Kgの重量増加となった。
環境対策
特筆事項なし
ここがイイ
タイプRの魅力は、モータースポーツでも活躍できる驚異的な動力性能を与えながらも、低回転域の豊かなトルクで日常で使いやすく、しかもいざとなればその官能的刺激が味わえるといったところにある。98specではさらにライトチューンが加えられ、完成度が高まっており、サーキットへ持ち込んで遊べば、こんなに楽しく、またコストパフォーマンスの高いクルマはない。価格から考えると、「日本人はなんて幸せなんだ」という、いつもの結論に達する。
ここがダメ
現段階ではFFとして究極のハンドリングマシンとも言えるが、この先さらなる進化を求めた場合、旧型シビックのプラットホームを使っているために剛性アップや軽量化には限界があると思われる。また最小回転半径が旧タイプRの5.3mから5.7mになったが、これは特にマイナス面として指摘するほどのことではないだろう。重量増加と扱いやすくなったエンジンのため、クセのあるやんちゃなフィーリングが味わいたいなら旧タイプRということになる。
総合評価
短い試乗ではシビック タイプRとの差がよくわからなかった。つまり本当のライバルはロードスターやMR2ではなく、弟分のシビック タイプRではないだろうか。総合的なパフォーマンスはインテグラ タイプRが優れているのには違いないが、公道での楽しさや刺激といったスポーツマインドを追求した場合、シビック タイプRでも十分かも。両車とも「女の子受けしない」という次元の低い考えを忘れさせてくれるほどに、一度乗ったら欲しくなってしまう楽しいクルマだ。結局クーペかハッチバックか、というボディの好みで選べばいいのだろう。またインテグラには4ドアがあるので、中年の走り屋が渋くきめるにはお勧めだ。
お勧め度(バリューフォーマネー)
試乗会に同席した旧タイプRオーナーも98specの性能に感動したようで、買い替える様子だった。スポーツカーは常に進化し続ける宿命なのだから、最新が最良のモデルなのは仕方ないところ。やはり乗るなら最新モデルに限る。とはいえ、旧型になったタイプRを中古で買って、サーキットマシンにするというのも悪くない。十二分に楽しめるはずだ。アルミが4穴から5穴になったので98specを装うのは無理だが。
チャンピオンシップホワイトの3ドアクーペがダントツ人気のようだが、敢えてシルバーの4ドアを選択するのものいいかも。内装は黒だし、アルミもガンメタ。さらにリアスポイラーと「タイプR」ステッカーを外すとただのセダンに見える。この外観であの走りは愉快。これなら280馬力マシンの中にいても一目置かれそうだ。
公式サイト http://www.honda.co.jp/auto-lineup/integra/


