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ホンダ インテグラ タイプ R新車試乗記(第212回)

Honda Integra Type R

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2002年03月16日

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キャラクター&開発コンセプト

販売不振のインテグラを一躍スターにした先代「タイプR」

思い起こせば、さっぱり人気の出なかった先代インテグラのマイチェン時に、カンフル剤として投入されたのが通称「インテR」の始まりだった。当時「タイプR」と言えば、NSXのみ。しかしいかんせん値段が約1000万円と高すぎた。つまり当時「赤バッジ」は多くの人にとって高嶺の花だったのだ。

その「タイプR」様が一気に200万円台にまでご降臨されたモデル、それが初代「タイプR」、通称「インテR」だった。しかもこのクルマは単なるプアマンズ・タイプRではなかった。エンジンは専任スタッフが手作業でポート研磨&コンロッドボルト締め! 手間暇がたっぷりかかった、コスト度外視モデルと言われたものだ。さらに遮音材を大幅に省略し、ガラスまで薄くした徹底的な軽量化、ガチガチのサスペンション等、カッコだけのスポーツカーとは一線を画す硬派ぶり。つるしの状態でサーキット走行が行え、そのまま家まで帰ってこれる、というタイプR精神に乗っ取ったモデルであった。

売れるのはミニバンばかりといったご時世に、いかにも一般ウケしそうにない、言ってみれば敷居の高そうなこのモデルが、意外にも大ヒット。特にレーシングドライバー系の自動車ジャーナリストが口々に絶賛した影響は大きかった。普通のインテグラが相変わらず売れないのを後目に、発売当初は長いバックオーダーを抱えたのだ(なにせエンジン組立に手作業があったため量産できなかった)。

ちなみにその高性能ぶりは海外にまで広まり、結局はヨーロッパやアメリカでも販売された(ただしエンジン、装備、外観など、仕様は国内のものと異なる)。

新型「タイプR」は、事実上インテグラの主力モデル

今回のモデルチェンジは最初から「タイプRありき」で計画された。元を辿れば'91年デビューのEGシビックまで遡る先代シャシーから、ついに一新された新型シャシーは曲げで35%、ねじりで116%アップするなど大幅に剛性アップ。ホイールベースは先代3ドアと同じ2570mmだ。シャシー廻りでのもう一つのトピックはシビックなどに続いて、ついにフロントサスペンションがダブルウイッシュボーンからストラットに変更されたこと(リアはダブルウイッシュボーンのまま)。ホンダにとってはかつてカタログに高々と謳ったセールスポイントだったのだが。

またエンジンは先代の1.8リッター(B18C)から新設計の2.0リッター(K20A)に排気量アップ。性能向上だけでなく、兄貴分であったプレリュードの生産中止を受けてインテグラを上級移行させるのに好都合、という判断もあったはずだ。

アメリカ市場もターゲット

ちなみに今回の新型インテグラはほぼ同時にアメリカでもデビュー。名前はこのモデルから「インテグラ」の名前が消滅し、「アキュラ RSX」となる。タイプRに相当するモデルは「Type-S」のサブネームが付き、普通のRSXのエンジンが160psであるのに対し、200psを発生。レカロシート、ブレンボ製ブレーキ、17インチホイールなどは採用されない。6MTを搭載する点はタイプRと同じだ。

インテグラ/アキュラ RSXは、どちらかと言えばクーペ需要のあるアメリカ市場を重視したクルマであろう。ややケバ目のデザインを見れば、太平洋のどっち側を向いてデザイン開発したかは何となく分かるというもの。

価格帯&グレード展開

4ドアを廃し、「タイプR」と「iS」の2グレード構成

インテグラは今回のモデルで4代目。初代(クイントインテグラ、ワンダーシビックの兄弟車)、2代目(通称カッコインテグラ。CMに出ていた俳優のマイケル・J・フォックスの当時でも「くだらない」と言われセリフがその名の由来)、3代目が当初、丸目4灯モデルとしてデビューした先代モデルである。

従来、インテグラには3ドアクーペ(ハッチバック)と4ドアハードトップがあり、それぞれに各種グレードを用意していた。それに対し新型インテグラは3ドアオンリー。さらにラインナップを一気に2モデルに絞った点が特徴だ。

「タイプR」は実質的にインテグラの主力となるスポーツモデル。2.0リッター・DOHC i-VTECのK20A型エンジンは、ステップワゴンやCR-Vなどと基本形式を同じとするも、最高出力220馬力を発生。クロスレシオの6速マニュアルミッションと組み合わされる。またブレンボと共同開発されたフロントブレーキ、タイプRではお約束のレカロ製バケットシートも装備。車両価格は標準的なモデルで259万円。ただしオーディオはスピーカーを含めてオプションであるのに注意。

また「軽量化命!」のモデルであるからして、エアコンレス仕様(-18.1万円、車両価格240.9万円)も用意。エアコン&スペアタイヤレス仕様(応急パンク修理セット付き)はさらにお安くなって-21.1万円、車両価格237.9万円 である。サーキットのコンマ5秒のためなら、夏の暑さは我慢しようということだ。さすが体育会系。

一方、日常ユースをメインとしたいわばモデルが「iS」だ。こちらのエンジンも「タイプR」と同じK20A型だが、最高出力を160psに押さえ、逆に10・15モード燃費を14.8km/h(5MT)と高めた環境派。こちらのVTECは燃費向上のため2本ある吸気バルブのうち1本を2200rpm以下で休止させるために機能。トランスミッションは新型5速マニュアルとマニュアルモード付き5速ATを用意。車両価格は5MTが174万円。5速ATが187万円である。こちらもオーディオはオプション(ただし4スピーカーは標準装備)。ホイールも標準はスチールだ。

ライバルは不在。あえて言えばWRCレプリカ系ターボ4WDか

クーペ市場がこれだけ冷え込んだ現在、圧倒的な評価を得た「タイプR」と正面切って戦うクルマは今や他メーカーにはない。あえてライバルを挙げれば、スバル・インプレッサWRXと三菱・ランサーエボリューションといった4WDターボカーだろう。クルマの性格は全く異なるが、いずれも300万円以下の車両価格で完成度が高く、モータースポーツが存分に楽しめるクルマだ。

しかし最大のライバルは身内のシビック・タイプR(220~253万円)だろう。両者の基本的なスペックはほとんど同じだが、細かく見ると多くの違いがある。たとえば「インテR」のみに装備されるブレンボブレーキや1cm幅広いタイヤ、5psと0.4kgmとわずかながらパワフルなエンジン、意外にもシビックより約30kg軽い車重、シビックの電動パワステに対して油圧パワステ、そしてサスペンション・セッティング。実質的な価格差は10万円程度であるが、内容の差は大きい。シビックの「ダンガン・ホットハッチ」デザインが好きな人は悩むところだ。

ちなみにシビック・タイプRはイギリスの現地工場で生産される輸入車であり、ヨーロッパではすでにほぼ同じ仕様のもの(ただしエンジンは197ps)が同じ名前で販売されている。

パッケージング&スタイル

キャブフォワードパッケージングを採用。全高もアップ

タイプRのボディサイズは全長4385mm×全幅1725mm×全高1385mm。ホイールベースは2570mm。「ショートノーズ・キャビンフォワード」とホンダが言う通り、キャビンがかなり前方に移動したパッケージングが特徴だ。ボディ全体が丸みを帯び、全体的にボリューム感がぐっと増した。スラントしたボンネットは、同じく傾斜の強いフロントガラスとほぼ同じ角度でつながる。フロントガラスの位置が下端で90mm前進しているため、ドライバーへの圧迫感はない。全高が先代に比べて55mm高くなったことも効いているのだろう。この上下方向の余裕を生かして、ヒップポイントを40mmアップし、同時にサイドウインドウ下端のラインもアップ。高速走行時の安心感を向上させたという。

ちなみにヘッドルームにはかなりの余裕があるが、資料には「ヘルメットの装着を考慮した」とある。「この理屈は後付けでしょ」と思わないでもないが「タイプR」だから許されるフレーズでもある。また室内幅は先代に比べ45mm広くなった。これは30mm増えて1725mmとなった全幅を生かしたものだろう。

デザインは一気にモダン&マッシブに。アメリカンテイスト濃厚

デビュー以来、8年間基本的に変更のなかったボディ・デザインは、今回のモデルチェンジで大幅にイメージを変えた。先代モデルはどちらかと言えばオーソドクスなデザインでウエッジシェイプも控えめ。'93年のデビュー当時も丸目4灯こそ目を引いたものの、それを除けば前のモデルのキープコンセプトデザインだった。

新型のデザインは最近の流行に即したアグレッシブなもの。やや腰高なのが気になるが、短い前後オーバーハング、高いウエストライン、塊感のある造形は、アウディ・TTやトヨタ・セリカなどと共通の、最新トレンドに即したものだ。

また注意深く観察すると気付くのが、ピニンファリーナの影響だ。サイドウインドウ周辺の処理や全体の造形など、フェラーリの360モデナ(ピニンファリーナのデザイン)とよく似た部分が散見される。ホンダとピニンファリーナの関係は今も続いており、こういったディテールや全体のイメージについて、アドバイスを受けていることは間違いないだろう。

一方で新型インテグラのデザインは明らかにアメリカ市場を意識したものだ。特にフロントの4連複眼ヘッドライト(日本では全く売れていないクライスラーの300Mそっくり?)や、猛禽類のくちばしのように尖ったV字型のノーズデザインがそうだ。ちなみに先代インテグラのモデル途中で廃止された丸目4灯ヘッドライトはアメリカではそのまま継続販売された。誰かが言っていた。果たして丸目4灯のまま「タイプR」が出ていたら、あのような大ヒットになっただろうか、と。うーん。

基本性能&ドライブフィール

リッターあたり110ps。いわばメーカー純正チューンドカー

先代と異なり、普及モデルと同時開発された「タイプR」。そのエンジンは最高出力220ps/8000rpm、21.0kgm/7000rpmを発揮。S2000のF20C型エンジンが同じ2.0リッターで250ps/8300rpm、22.2kgm/7500rpmを絞り出すのに比べると、正直やや見劣りする。しかし依然リッター110psと、NAとしてはフェラーリもかくやと言うようなハイチューンエンジン。ただし「熟練工が手作業で…」と言ったロマンチックなエピソードがなくなったのは少し淋しい。一方、10・15モード燃費は12.4km/リッター、さらに「優-低排出ガス」認定を取得するなど、環境的にも正しいエンジンであることをアピールする。ちなみに触媒の効率アップのため、エンジンは後方排気化。また2.0リッターながら先代インテRの1.8リッターエンジンより10kg軽量化されているのもポイント。

「タイプR」のもう一つのウリである6段MTは、1速と2速にトリプルコーン、3~6速にダブルコーンを採用し「全段マルチコーンシンクロ」となった。この6速ギアボックスは従来モデルの5MTギアボックスよりコンパクトだという。またレスポンス向上のために鍛造クロモリ鋼による超軽量フライホイールを採用。デフにはヘリカルLSDが用いられ、強力かつリニアな差動制限によりトラクションを確保する。

サスペンションは「リニアレスポンス・旋回性能向上」のため、ナックルの剛性アップや、ダンパー/スプンリング/スタビライザー/ブッシュを強化。フロントのロアアームは軽量化のためアルミ製だ。フロントブレーキはホンダ初のブレンボとの共同開発によるアルミ製4ポッド対向キャリパー。フロントバンパーから空気を取り入れるブレーキ冷却ダクトも備える。タイヤは前後とも215/45R17だ。

先代モデルよりはマイルドになるも、独特の緊張感は他を寄せ付けない

インテグラのインプレと言えば、サーキットか箱根などのワインディング試乗が多いが、当モーターデイズはあくまでも一般ユースレベルでの「タイプR」をリポートする。サーキットでの限界時の挙動が知りたい人はどうか他をご参考にしてください。

さて試乗車の色は「タイプR」で一番人気の「チャンピョンシップホワイト」。今時珍しくかなりクリーム色っぽいソリッドの白だ。これは'60年代の第1期ホンダF1時代のカラーリングがモチーフで、正確には白地に日の丸だった。思想の左右を問わず、ぜひ誰かこれに日の丸を付けて走ってもらいたい。

さてこの柔道着色の「タイプR」に乗り込んでまず嬉しいのがレカロ製シート。リクライニングタイプであり、競技用フルバケットのような鉄壁のホールド性はないものの、バックスキンでカバーされたサイドサポートは高くしっかりしており、座り心地は素晴らしい。

S2000をポップにしたような感じのインストルメントパネルは機能的。シルバーの文字盤を持つメーターは好みの分かれるところだろう。夜間、メーター照明はアウディのようにオールレッドとなる。

さて軽いクラッチを踏み込んでエンジンスタート。低速トルクは十分にあり、発進は非常に簡単。マニュアル車に普段乗ってる人なら、エンストすることはまずないだろう。スロットルレスポンスは低回転でもビンビン来る。さすが鍛造クロモリ軽量フライホイール。

3000回転前後を使って町中を他のクルマの流れにのって走る限り、非常に快適なクルマだ。200cc排気量の増えたエンジンは粘りがあって扱いやすい。柔軟性のあるエンジンを評して「ゴムまりのような」という形容があるが、まさにそんな感じだ。アルミニウム製シフトノブ(今やチタン製ではない)を握って行うギアチェンジも非常にスムーズに行える。乗り心地も意外に悪くない。静粛性も高く、スピードリミッターの作動する領域でも普通に助手席の人と話が出きる。ボディ剛性が高く、安心感もある。これならデートカーとして十分に使えるのではないか、と感じる。VTECの切り替えは6000rpmで行われるとのことだが、普通に飛ばす分にはそこまで回さなくても十分に速い。

ところがエンジンの回転を上げてハイカム領域を味わおうと思うと、印象が変わってくる。ステアリングからの掌に伝わるインフォメーション濃度が一気に高まり、エンジンはレスポンスを研ぎ澄ませる。「今時のクルマ」ではまず味わえない緊張感。試乗当日は途中から雨に降られてウェット路面となったこともあり、そうなると「インテR」はなかなかスリリングなクルマだ。220psの誇るエンジンが「いつでもイキマッセー」という感じで臨戦状態にある一方、いかんせん雨の日のハイパワーFF車。パワーバンドに入るやいなや、トルクステアへの備えと小刻みな修正蛇が必要になる。

正直言ってブレーキ制動力やコーナリング能力の高さなどは、当然ながら一般道で実感できるレベルではないと感じた。サーキットのドライ路面において、タイヤグリップの全てを使い切り、コースを何周にもわたって攻め続けて、初めて「買って良かったなあ」と思えるクルマではないか。そんなことを思った。

ちなみに乗り心地の判断は個人差の大きいものだから一概には言えないが、冷静に観察すると、やはり荒れた路面では足の固さが気になる。段差ではそれなりにリアの突き上げもある。何せリアのバネレートは最大で8kg! 場合によってはピッチングも一発では収まらない。しかしクルマの性格を考えれば静粛性を含め、十分に快適であると思える。

「タイプR」はもちろん素晴らしいが、やはりそれなりに人を選ぶクルマ

聞くところでは、先代「タイプR」は自動車雑誌等の評価があまりに高かったため、普通の人が「名前だけで」買っていった例が多くあったと言う。そしてあまりのスパルタンさに音を上げて早々に手放すケースが多かった、と。

おそらくすぐに手放した人は「タイプR」がいわゆる「良いクルマ」だと思って買ったのだろう。もちろん「タイプR」は素晴らしいクルマだ。しかし一般の路上(ワインディングロードを含めて)では、決して「最高のクルマ」ではない。「タイプR」が「世界最速・最強のFF車」と呼ばれるのは、あくまでもサーキットを舞台にしたハイスピード&高負荷走行という状況なのだ。

もちろん「タイプR」を一種のロードゴーイングレーサーとして普段の足として使うことに全く無理はない。静粛性、居住性、乗り心地、快適装備、信頼性、いずれも標準以上である。「タイプR」が醸し出す緊張感や刺激性が楽しめる人なら、サーキットに縁がなくても買って後悔することはないだろう。それは日常の中の非日常として、クルマ生活をエキサイティングなものにしてくれるはずだ。しかし快適でスポーティであると同時に「癒し」もクルマに求めるのなら、その答えは妥協なしに160psの「iS」の方かもしれないとも思った。

ここがイイ

低回転でのトルクが厚くなったことで、ますますマルチに使えるクルマとなっている。サイズも手頃なので、チョイ乗りからサーキットまでこれ一台でこなせるわけだ。ターボじゃないだけに、パワーの出方が自然だから、走らせている実感があるのがいい。「乗って楽しい」といえる典型的なクルマだ。ボディ剛性の高さも実感できるだけのものがある。

ここがダメ

ウェットではフロントタイヤ暴れまくり。その意味ではドライサーキット専用車か。もっこりとしたボディデザインも角度によってはもう一つシャープな印象がないのは残念。ルックス的にはホイールをインチアップしたいところ。

総合評価

エンジンを含め、たいへん過激なクルマなのだが、レカロシート、アルミのシフトノブ、MOMOステアリングなど、座ればいきなり定番の走りの世界が展開しており、先代と全く変わらないインテリアともいえるわけで、その意味ではたいへん保守的なクルマだ。

また絶対的な速さならインプレッサだろうし、GT-Rのようなプレステージ性もないインテRは、最速FFであることは誰も否定しないものの、それを肯定して購入する人は、これまたある意味ではたいへんステレオタイプな(ホンダ信奉者の)走り屋ともいえるだろう。いい意味でも悪い意味でも走りに対して保守的かつ典型的な走り屋向けのクルマということになる。

しかし今回は3ドアクーペのみで、かなりボーイズレーサー的。アメリカでは若い女性向きのクルマだと思うし、(ホンダ信奉者の)走り好きなオジさんが乗るには…。カムバック4ドア! と叫んでみても、まあ、数は売れないからしようがないか…。RV時代における走りクルマの受難は続く。

●車両協力:株式会社ホンダカーズ東海

公式サイト http://www.honda.co.jp/INTEGRA/

 
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