キャラクター&開発コンセプト
これぞトヨタ・ミニバンの本命。車格アップでオデッセイに宣戦布告
5ナンバーサイズの乗用型ミニバンとして初代イプサムが登場したのは96年5月。宣伝で「イプ~」なる幼児向け? キャラクターを使うなどして、若いファミリー層に人気を博した。しかしファミリー向けの宣伝効果はあったものの、男性ウケができず、結局「ミニバンといえばオデッセイ」という図式を塗り替えることはできなかった。トヨタにはオデッセイの対抗馬としてエスティマがあるものの、スタイリングやコンセプトの違いで、こちらはモロにバッティングしない。というより違うものとして販売を伸ばしたいのがトヨタの本音。しかしイプサムがオデッセイに負けているという事実だけはプライドが許さない。ナンバーワンメーカーとしては、どうしてもオデッセイの築いた市場へ正攻法で食い込みたいのだ。
というわけでフルモデルチェンジを機にトヨタ版オデッセイを作ってしまったのが2代目となる新型イプサムである。3ナンバー化されたボディに合わせて排気量も2.4リッターに拡大。「ミニバン、トゥモロー」をテーマに、パッケージング、デザイン、走り全てを次世代型に進化させ、ミニバンの将来像を提示した。駆動方式はFFと4WD。乗車定員は7人乗りを基本としており、2列目を独立シートとした6人乗りも併設する。宿敵オデッセイに用意されている3.0リッターV6の設定はなく、その市場での争いはエスティマにゆだねられる。なお、今回イプサムのフルモデルチェンジによってトヨタの新世代ミニバン階層はカローラ・スパシオ、ガイア、イプサム、エスティマという順になった。
価格帯&グレード展開
エスティマとイプサムでオデッセイの勢いを囲い込む
グレードは主に装備の差によるもので安い方から「240e(204万円)」「240i(217万円」「240s(238万円)」「240u(244万円)」「240uGセレクション(283万円)」の5タイプ。eとiは7人乗り、その他は6人乗りと7人乗りが併設される。また、4WDは全グレードに24万円高で用意されている。
廉価版ともいえる「240e」でも装備は充実しており、十分満足できる内容。そのワンランクアップの主力グレード「240i」には、「240e」の装備に加えて、ディスチャージヘッドランプ、LED付きリアスポイラー、前席センターテーブル、スカッフプレート、オーディオが付く。オーディオ以外あまり重要ではない装備であるが、価格がベースの13万円高とあれば、買い得感は高い。
「240u」はラグジュアリー指向になっており、内装生地に専用のものが与えられ、オプティトロンメーター、クリアランスソナー&バックモニター、アルミホイール、MD・CD付きオーディオなどが新たに備わる。「240s」はシリーズ唯一のスポーティグレードだ。室内の装備は「240e」と「240u」の中間的内容で、室内色と木目調パネルを黒色に統一。ボディのメッキ部がカラード化、ボディ回りを囲むエアロパーツや16インチタイヤが奢られる。ファミリーユースの楽しげな雰囲気とは違い、独身ユーザーをターゲットとしている。
旧型からの価格アップは、同グレード比で約15万円。車格の向上を考えれば納得できる値段だ。ライバルはホンダ・オデッセイを筆頭に、日産プレサージュ、三菱シャリオ・グランディス、マツダ・MPV。ただしイプサムのみV6がないことになる。
パッケージング&スタイル
堂々の3ナンバー化で高級感アップ。ホイールベースは長いが、全長は意外と短い
ボディサイズは全長4650mm×全幅×1760mm×全高1660mm。それぞれ旧型よりも+120mm、+65mm、+40mm。ダウンサイジング化が唱えられれている昨今、一世代でいきなりここまで大きくなるのは異例。旧型をコロナクラスとすれば、新型はマークⅡクラス。車格感は明らかに高まっており、これならお父さんも気になるだろう。逆に奥様方からは大きすぎると敬遠されそうだが、120mm長くなったとはいえ全長は5ナンバー枠に収まる4650mm。オデッセイやプレサージュよりも100mm以上短い。最小回転半径が旧型と同じ5.5mをキープしているのは評価すべきポイントだ。
またホイールベースの長さも注目したい。ザッと言ってしまうと、ライバルより全長は一番短いが、ホイールベースは一番長い、といった感じ。唯一オデッセイに負けるものの、その差はたった5mm。真横から見ると、ホイールベースの長さはもとより、リアドアが異様にデカイ。
ヴィッツの面影もあるヨーロピアンテイストのデザイン
日本よりも先だって公開されたのがジュネーブショーだったように、今回のイプサムは欧州市場も重要なターゲットとしている。このため、新型は完璧なヨーロピアンテイストのスタイリングに生まれ変わっている。デザイン案を担当したのはヴィッツで一躍有名となったエポック社。それを最終的にトヨタが手堅くまとめたものだ。アクの強くないスッキリとデザインの中で、特徴となるディテールは3つ。1つはヘッドライトとテールランプの意匠が同じモチーフになっていること。2つめがバンパーコーナーを落としたこと。これはカチッとした視覚的な押し出し感はもとより、取り回しのことも配慮されている。そして3つめがクオーターピラーだ。先代でアクセントとなっていたJラインを新型ではこれをなくし、オーパを連想させる台形となっている。後方斜めの視認性が悪化すると思われるが、クリアランスソナーとバックモニターを与えることで、問題を解決している。
ボディサイズが2ランクアップなら、室内空間は3ランクアップ
ボディが大きくなった分、いや、それ以上の広さが実感できる室内。旧型と較べて室内長は+190mm。室内幅は+70mm。そして+30mmという1250mmの室内高は、ライバルを大きくリード。また3列目シートの室内幅も110mmと、オデッセイの100mmよりもワイドだ。ボディサイズに対しての室内空間の広さは、飛び抜けてイプサムが優れていると言っていいだろう。しかも新型は単にでかくなったのではなく、スペアタイヤなどの配置を改善することで、ラゲッジのアンダーボックスを確保。その深さ目視で30cm以上。132リッターの大容量を確保しており、ゴルフバッグがスッポリ入るという。
さて気になるのが3列目のシート。実用に耐えうるだけの余裕が確保されており、その証拠(?)にドリンクホルダーも用意。それだけに止まらずエアコン吹き出し口も2列目用に加えて3列目用も完備。6人が普通に乗れることをアピールしている。なお、3列目シートの畳み方は、表と裏の両面に出ているストラップを引くと、ワンアクションで座面が落ち込み、同時にシートバックも倒れる仕掛け。「オデッセイ方式(床下収納)」を採用しなかったのはトヨタのプライド? この方が簡単なのは確か。
質感はさすがトヨタ製。期待を裏切らない仕上がり。生地に淡いベージュを用いることで(スポーツグレードは黒)、さらなる開放感を演出している。目の行き届かないところまで手が入っており、小物入れの内側にまで植毛による内張りが張られている。鉛筆などを入れておいてもカタカタしない。
インパネはトヨタらしくなくすごく保守的。センターパネルは上からエアコン吹き出し口、ナビモニター(orオーディオ)、エアコン、灰皿。気になるのがナビモニターの位置。メーターの平行線よりも下に配置されている。トヨタはいつも口癖のように「視認性を高めるために上方配置しました」と言っているのに、今回はその方便は聞かれなかった。残念。
奥サマ方からの支持率アップ?! 縦列駐車を音声ガイダンスでサポート
死角の多くなりがちなミニバンにとって、最近増えてきたのがクリアランスソナーとバックモニター。ちなみにクリアランスソナーとは、障害物にクルマが近づくとピーピー鳴らして、ドライバーに警告を促す装置。バックモニターはギアをリバースに入れると、後方視界がミニターに映し出される装置。イプサムではこれらミニバン必須アイテムに加えて、新兵器を投入。その名も「ブラインドコーナーモニター」。これはフロントグリル先端の超小型カメラで、微低速になるとになると左右をモニターに映し出すもの。つまりイプーの鼻先をちょっと出しただけで左右がある程度見渡せるというわけ。見通しの悪い交差点ではたいへん嬉しい装備だ。価格もナビ装着車で2万円というお手頃なところも魅力だ。今回の試乗でもかなりお世話になった。便利さが実感でき、これは欲しいと思った。
そしてもうひとつ便利な装備として忘れてならないのが「バックガイドモニター」。単に後方視界が映し出されるだけでなく、縦列駐車する際(車庫入れも可能)にモニターのスイッチにタッチすると、あらま、ハンドルの切り方を音声でエスケープ。それに従えばホントにカンペキな縦列駐車ができちゃうのだ。ボディの大きさを、こうしたサポートシステムの充実で、奥サマ方から支持率を上げるのである。
基本性能&ドライブフィール
2.4リッターエンジン一本
エンジンはエスティマやクルーガーVと同じ2.4リッターの「2AZ-FE型」。1気筒当たり600ccという世にも珍しい直4エンジンだ。パワートレーンもクルーガーVと同じ構造の4速AT。シフトレバーは見た目にもたくましいガングリップタイプコラム式を採用する。使い勝手は下げるときは問題ないが、上げるときに使いづらい。また最上級グレードにはシフトステアマチックが装着される。
ただしイプサムのステアシフトマチックは完全固定式ではない。例えば「3」レンジにすると「オーバードライブOFF」と同じ役目となり、1、2、3のうちで勝手にシフトチェンジをしてしまうもの。
スペックは160馬力/22.5kgm。対して宿敵オデッセイ(2.3リッターモデル)は150馬力/21.0kgm。エンジン性能だけからすれば、鼻差で一歩リードに止まるが、車重を配慮すればさらにその差は広がる。オデッセイが1610kgあるのに対してイプサムは130kgも軽い1480kgなのだ。これは他のライバルと比較しても100kg以上軽い。しかも燃費も一番イイ12.0km/l。これまで直噴でリードを奪ってきたグランディスでさえ11.8km/lに止まっている。ついでに言ってしまうと、同クラス唯一1.5トンを切っているということは重量税も1ランク下。従って1万8900円お得。ちなみに環境性能は★1つ。
固めの乗り心地は欧州を意識? パワー感は十分
重量が若干重くなった新型であるが、パワー増のほうが勝るだけに、加速はワンランク上。特に常用域のトルクアップが目覚ましい。圧倒的な力強さとまではいかないものの、多くの場面でキックダウンさせる必要なく加速を済ませる。満足できる加速と同じぐらい軽視できないのが静粛性だ。ミニバンに不利な風切り音やこもり音が、イプサムでは上級セダン並に低く抑えられてられている。
足回りで注目すべきポイントはミニバン初採用となる電子制御サス「H∽TEMS」だ。路面からの入力を16段階に分類し、それに応じた減衰力を制御するというものだ。結果として振動を大幅にカットして、自然で滑らかな走りを可能としている。また、柔らかめ(コンフォート)から硬め(スポーツ)まで、乗り心地を4段階で任意で切り替えられるスイッチも備わる。
その実際の乗り心地はコンフォートモードでも結構硬め。ただしトヨタ車としてはという条件付き。セダンと較べればソフトだし、ミニバンとして適切な味付けとなっている。スポーツモードは、偏平率65タイヤの硬さかもろにでて、かなりゴツゴツ感が目立つ。これはコンフォートモードでも言えることだが、しなやかさが足りない。走りでもオデッセイを上回ろうという意図は分かるが、オデッセイは引き締まりながらも、しなやかさをしっかりとわきまえている。乗り心地は好みにもよるが、個人的にはオデッセイのほうが好ましい。
それでもコーナリング性能は最新ミニバンらしく、かなり粘りのある走りを披露する。あまりにもボディが大きくなったことで、シートに座った時は、セダン感覚が旧型よりも薄まったように思えたが、トレッドの拡大などによってコーナリング性能は新型のほうがセダン感覚に近くなっている。ロールは自然に発生しながらも、初期段階のロールはうまく抑え込んであるので、ワインディングも違和感なく積極的に走れる。例えタイヤが鳴ったとしても、安心して立て直せるし、急ブレーキをかけても大きく前のめりになることもない。ちなみに旋回中の絶対的なロール量はスプリングで決まるため、コンフォートモードでもスポーツモードでも変わらない。スポーティーという点では確かに過剰すぎともいえるオデッセイにはおよばないものの、バランスという点ではむしろ上といってもいいだろう。
ここがイイ
最新車ゆえ、軽くて高剛性。広くてよく走り、すべてにおいて旧型をしのぐ。後出しジャンケンなので当然ながらすべてにおいてライバルを凌駕。質感の高さはトヨタ車らしいもので、誰からも「まったく」不満は出ないはず。
鼻先の小さなカメラはクルマの常識を覆すもの。運転席では今まで見られなかった風景が、見られるようになったわけで、リアと併せて自動車全車標準装備とすべき装置。これぞわかりやすいクルマのIT化の好例だ。ただ、土砂降りの雨の日の試乗では水滴がかなりじゃま。ワイパーが欲しくなってしまった。
ここがダメ
ヴィッツと同じデザイン屋さんの手になるとは思えない、平凡なスタイルは残念。スパシオの方がずっと斬新。ライバルも保守的なのでマーケティングとしては正攻法ではあるが。巨大なリアドアも、乗用車タイプを標榜する以上仕方ないのはわかるが、実用的には辛い。ファミリー向けならスライドが一番(電動にも簡単にできるし)。
サスの固さも日本ではどうか。ミニバンという性格からするともっとコンフォートな方向の方がいいのでは。特にスポーツモードでは思わず「何じゃこりゃ」と口に出てしまった。走りたいお父さんは中古のスポーツカーを買った方がいいと思う。ミニバンでかっとぶのはやめましょう。
総合評価
一家に一台として、スペースと走りを両立したクルマはまあこういうものになるのでしょう。空間が欲しいのならエスティマやステップワゴンを買えばいいし、走りを楽しみたいなら上記のように中古のスポーツカーで十分。その両方を立てようとして作られたのがイプサム(オデッセイ)なわけで「だから売れるのはこういうクルマです」といわれれば「そりゃそうでしょ」と答えるしかない。
オデッセイにあって便利だなと思ったセンターテーブルもちょっと豪華なヤツがついているし、ステアマチックでマニュアル操作を楽しむこともできる。文句をつけるところは何一つないけれど、欲しいと思えないのはなぜ?
今回のモデルはお父さんが主役とされているのだが、これに乗ってるお父さんはステップワゴンに乗ってるお父さんよりどこか「悲しく」見える。ステップワゴンあたりなら「家族のためのクルマに乗ってます」と開き直った割り切りができるが、イプサムだと「ホントは自分の好みの走るクルマが欲しいんだけど、家族のためにミニバン買わなきゃならない。しかたないから、少しは走りに振ったクルマを選ぼう」といういじましさが見えてしまう。家族のためある時期を我慢して乗るなら、もっと大きなクルマの方が絶対に楽しいはずだ。MTB2台がギリギリ乗る荷室で満足できますか?
といってはみても、実際にはこのあたりに落ち着くお父さんが多いのが現実。ならば天井に後席テレビ(20万円)を絶対につけましょう。今の子はこれがないとクルマにじっと乗っていてくれませんから。
公式サイトhttp://toyota.jp
