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トヨタ アイシス プラタナ 2.0新車試乗記(第339回)

Toyota Isis Platana 2.0

(2.0リッター・CVT・220万5000円)

 

2004年10月23日

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キャラクター&開発コンセプト

いわば7人乗りラウム?

2004年9月28日に発売された「アイシス」は、両側スライドドアを持つ7人乗りミニバン。最大の特長は現行ラウムのように助手席側がBピラーレス(※1)である点(トヨタは「助手席側センターピラー内蔵ドア」と称する)で、「パノラマオープンドア」なる大きな開口部(幅1890mm)を持つ。言うなれば7人乗りになったラウムだ。

※1 「ピラー」とは屋根を支える柱のことで、クルマの場合は便宜上、前からA、B、C、と数えて目安とする。

開発コンセプトは「柔(じゅう)・空間」。障子や襖(ふすま)のように、空間を自由に、柔軟に使えるクルマを目指したという。具体的には、助手席タンブルシート(ラウム)、チップアップ機構付セカンドシート(ポルテ)、後方床下格納機構付サードシート(トヨタ国内初)など既存の技術や新しいアイディアを盛り込み、多彩なシート機能を与えた。

片側ピラーレスのウィッシュ

構造的には「助手席側Bピラーを取り去ったウィッシュ」と考えると分かりやすい。実際、シャシーの前半分はウィッシュ系のプラットフォームであり、パワートレインの仕様もほぼ準ずる。これを機会にガイアはラインナップから消えるが、アイシスはガイアの後継ではなく、次世代ミニバンの手本となるまったく新しいミニバンである、とトヨタは説明している。

アイシス(Isis)とは、英語で古代エジプトの豊穣の女神の名前イシスから。広告キャッチフレーズは「Your Oasis "アイシス"」。生産拠点は関東自動車工業の東富士工場。販売は主に全国のトヨタ店で、目標台数は月間4000台だ。

価格帯&グレード展開

スポーティモデル「プラタナ」を設定

グレード5種類、エンジン2種類、そしてFFと4WDがある。価格は一番安い1.8リッターの「L “Xセレクション”」(178万5000円)から最上級の「G“Uセレクション”」(252万円)まで。2.0リッター車はプラス21万円で4WDに出来る。

ラインナップ上の特徴はスポーティグレード「プラタナ」があること。5ナンバー枠を捨てて、全幅を1710mmまで拡げたワイドフェンダーパネルや前後エアロバンパーを持つ。通常こうしたワイドボディバージョンは樹脂フェンダーを追加するだけだが、「今やこうしたスポーティグレードは、販売の半数ほどを占める(トヨタのスタッフ)」こともあり、プラタナのフロントフェンダーは専用金型によるスチール製パネルとなる。プラタナの2.0リッターモデルはさらに、7速マニュアルモード付きのCVTや205/55R16タイヤ(ほかは195/65R15)を装備する。

パッケージング&スタイル

前半ウィッシュ、後半ノア

ボディサイズ(プラタナ)は全長4640(+30)mm×全幅1710(+15)mm×全高1640mm(カッコ内はノーマル比)。5ナンバーの標準車と異なり、3ナンバーとなる。デザインテーマは「ソリッド&モダン」。今回試乗したプラタナは、それとなくスポーティな路線で、上品すぎるせいか注目度は高くなかった。奇抜さで目を引くより、そつなくまとめた、と言う感じだ。

プラットフォームはフロント部がウィッシュ、増加したアクスル荷重に対応するためボディ後半部がノア/ヴォクシーのフロア/サスペンション。ピラーレス構造はもちろんラウムの応用だが、これだけの車重や開口部だけに、剛性の確保はたいへんだったはずだ。車重はウィッシュのスポーティグレード「Z」(1400kg)に対して70kg重い1470kgに収まる。

ラウムの助手席シートを流用

骨格はともかく、デザインはまったく新規のインパネ。ダッシュ素材はソフトパッドを使わない硬質樹脂で質感は高くないが、操作性や視認性は良い。特にシフトレバーの操作性が優れている。オプションのダッシュ内蔵式ETCユニットが目新しい。

 

シートベルト内蔵式の助手席をラウムから流用。背もたれを倒してテーブルになるほか、前方にタンブルする。ただしタンブル操作は「背もたれを起こした状態で一度最後端に下げ、それから背もたれを畳んで」という手順が必要。ロックを確実にして安全確保するためだが、少し分かりにくい。巧みなスプリング配置によって操作自体は軽い力で出来る。

シートアレンジをさらに工夫

2列目以降のシートアレンジにも工夫がある。セカンドシートはポルテと同じチップアップ機構付で、座面が後ろに跳ね上がる。左側の大開口部から自転車や家具などの大物を入れる時に便利だ。レバー操作の必要がなく、上に持ち上げるだけでポルテより簡単だ。ウィッシュより50mmほど背が高いが、室内高はスライドドアのせいか資料の上で5mmしか増えていない。助手席側の開口部は幅1890mm×高さ1190mm。

運転席側も電動がいいが・・・・・・

話は逸れるが、試乗車の運転席側スライドドアは手動。というのも助手席側は全車電動だが、運転席側は一部グレードに標準ないしオプション(5万2500円)で、プラタナは設定外。しかしドライバーにとって使用頻度の高い運転席側が手動なのは不便だ。一方が電動なだけに、運転席側でも自動で開くのを「待って」しまう。

また、世界初のステアリング感応式クリアランスソナー(一部に標準もしくはオプション)も売りの一つ。ステアリング舵角と二つのソナーの検知情報によって、無駄な警告を減らすというものだが、これもプラタナは設定外となっている。

トヨタ国内初の床下収納サードシート

サードシートはトヨタ国内仕様初という後方床下格納タイプ(北米向けの8人乗りミニバン「シエナ」が似たものを採用)。ウイッシュは背もたれを前に倒すだけのワンタッチ・チルトダウン式だ。アイシスの方は一つ手順が多いが、操作は簡単に出来る。

シートアレンジで小型バンに変身

荷室容量はサードシート使用時で247リッター、格納時で515リッター(セカンドシート最後端)。さらにセカンドシートを一番前にした時の最大容量は1038リッター。奥行きは1420mmもある大スペースが現れる。絶対容量は負けるが、軽ワンボックスバンのような大空間が得られるのは、いざという時に便利だろう。最上級グレードは電動バックドアも装備する。

基本性能&ドライブフィール

完成域に達したD-4

試乗した「プラタナ」は2.0リッター直噴「D-4」を搭載。変速機もいつも通り「D-4」とセットのCVT(無段変速)だが、従来の「Super CVT」から進化して、ナビ情報をもとに下り坂の曲がりくねった道でシフトダウンするなど「NAVI・AI-SHIFT制御」の入った「Super CVT-i」となっている。シーケンシャル・マニュアルモードも6速から7速に増えた。

以上は注意して乗らないと分かりにくいが、基本性能は素晴らしい。今までのD-4は燃費を重視したため、低速トルクが薄く、エンジンノイズもやや大きめだった。しかし、このアイシスのD-4はほぼそういった欠点を払拭して、アクセルを踏み込んだ時の加速はけっこうスポーティ。車重1470kg、155psという額面以上の走りをする。エンジンノイズも含めて、静粛性も十分に高い。

CVTの欠点を解消

トルクコンバーターでクリープを付けたCVTは、クルマに詳しくない人ならCVTだと気付かないほど自然だ。従来のCVTの悪癖として、アクセル全開時に回転だけ上がってから、車速がそれを追いかける感覚があった。また、高回転を維持しながら加速するのがCVTの利点だが、それだと加速する間、エンジンノイズが最大の時間が持続してしまい、結果的に「うるさいクルマ」となってしまう。ベルトが移動してから加速するためレスポンスもよくなかった。アイシスではこれらの欠点をほぼ解消。具体的に言うと、アクセル全開でも金属ベルトがプーリーを移動してゆくのを極力抑え、エンジントルクで加速するのを待つ感じになった。

ピラーレスであることを忘れる走り

プレミオ/アリオン系(あのスポーティなカルディナを含む)のシャシーを持つウィッシュ。その延長線上にあるアイシスだけに、運転感覚は見た目以上にスポーティだ。試乗車がプラタナだったこともあるが、パワステは欧州車のように手応えがあり、ボディ剛性もしっかりしていて、思い切った走りが出来る。一人で乗っていると、まさにミニバンであることを忘れ、助手席側ピラーレスであることも忘れてしまう。タイヤはADVANのA-460という、ちょいハイグリップ系のタイヤ。ホンダのストリーム・アブソルートとサイズは違うが(205/50R16)同じ銘柄だ。

そう思ってストリーム・アブソルートと比較してみると、車重も(アイシス1470kg、ストリーム1480kg)、出力も(同155ps、156ps)、直噴エンジンである点も7速MTモード付きCVTである点も一緒だった。そうやって考えると、運転感覚も確かにストリームに近い。ま、アブソルートの直接のライバルはウイッシュの「Z」なのだが。

ここがイイ

5ナンバーサイズのボディとパノラマオープンドアの組み合わせは、日本のミニバンとして使い勝手でかなり上位。ただのスライドドアよりパノラマオープンドアの方が大は小をかねるという意味で、いいにきまっている。

スーパーCVTがほとんど違和感のないものになっている。それでいて高速道路ではエンジンを低回転で回してクルージングでき、7速でスポーツごっこも楽しめる。シフトレバーの位置が大変使いやすいところにあるのもいい。

フロントシートとセカンドシート、あるいはセカンドとサードシートのフルフラットなど、シートがベッド化できるシートアレンジは、この手のミニバンでは貴重。その上、助手席背面のテーブル化もできるので、車内泊も楽にこなせるだろう。助手席タンブル、セカンドシート座面ポップアップ&ロングスライド、サードシート床下収納など、シートアレンジはほぼ完璧。あとは運転席90度・180度回転機構が付くと完璧なのだが。

細かい話としてはインパネビルトイン式ETCが高い位置にあってカードの抜き差しがしやすいこと、ティッシュボックスがぴたり収まるアッパーグローブボックス、さらに試乗車にはなかったがオプション装着できるステアリング感応式クリアランスソナーはとてもいい装備だ。

ここがダメ

先代のガイアにも通じるスタイルの地味さ、華の無さはとても残念。フロントのボリューム感はなかなか個性的でいいが、Bピラー以降はストレート基調がすごく平凡で、フロントからのつながりが悪い。さらに縦上下に二分され、間がスコンと空くテールランプあたりは、デザイン的に変。つなげると某車に似てしまうとはトヨタ関係者の弁だが、といって切り離せばいいというものでもないだろう。

同様に左右非対称のインパネデザインも、妙に重々しいドライバー側とごくシンプルな助手席側のバランスが悪く、スタイリッシュとはとてもいえないし、現代のミニバンとしてはかなり古くさいデザインだ。

パノラマオープンドアにして剛性を確保するためとは思うが、Aピラーの太さが視界を妨げるのは左右共に気になった。特に右側は右折時に先行車一台が隠れてしまうほどの死角がある。同様に強化のためサイドシルが上下に分厚く、乗降時に足が引っかかるのも気になった。

助手席タンブル機構は説明書を参考にしないと、まずできないのはいかがなものか。また試乗車固有の問題であればいいのだが。電動スライドドアに体が挟まっても停止しなかったのはどうしてだろう。相当強く衝撃を与えないと止まって開く方向へ動かなかったのはちょっと怖かった。

VSC(TRCとセットで6万3000円)が4WDにしかつかないのはなぜだろう。これだけ良く走るミニバンにはぜひ装着しておきたいと思うのだが。

総合評価

ミニバンは登録車のすでに1/4を占める大勢力だ。ちなみにトヨタのシェアは1月から8月までを見ると51.8%で、なんと過半数を超える。高級セダンとミニバンで50%を超えているトヨタは今年、全体のシェアで45%を目指すという。そんなトヨタゆえ、さらに隙間を埋め尽くすように新型車を続々投入してくる。ウィッシュの上に位置し、リバティ対抗車というのがアイシスだが、実際の販売の現場ではトヨタのミニバン同士の争いとなるだろう。いずれにしてもトヨタ車が売れるのだが。

現在のトヨタミニバンラインナップは10種類近くあり、それだけ車種があればたいていの需要に対応できそうなものだが、そこに投入されたアイシスは、実はスタンスがよくわからないクルマだ。先代にあたるガイアもどんな人が買うのかよく分からないミニバンだったが、アイシスも同様にミニバンヒエラルキーの一部門というクルマだろう。ただ一つ大きく違うのが、パノラマオープンドアがある点で、これがなかったらラインナップに埋もれてしまうに違いない。

しかしこのサイズのクルマの場合、このドアはおそらくたいした意味を持たないと思う。ラウムやポルテのようなコンパクトクラスには大いに意義があるが、この大きさのミニバンならちょっと広めのスライドドアで実用上は十分。人を驚かすことはできても、前後を全開にするのは年に数回というところだろう。第一、こんなに開け放していたら、エアコンの冷気も、ヒーターの暖気も逃げてしまうし、雨も降り込んでくる。傘を差して外へ出られるというのも売りのようだが、そうならポルテのような傘立てくらい用意しておいて欲しい。

このパノラマオープンドアが役に立つのはウェルキャブにした時だ。サイドリフトアップシート車では助手席をタンブルさせておくと、伸ばした足をオットマンに載せたまま、電動で出入りできる。これは素晴らしい。こうしたウェルキャブ以外にはあまりこのドアの利用シチュエーションが浮かんでこない。それにどうせやるなら両側パノラマオープンドアにしてもらいたいところ。そうなればインパクトはすごいし、何かもっと利用価値が発見できそうだ。運転席は普通のドアなので、頻繁な出入りも違和感はないのだがら

と辛口の感想を書いたが、ミニバンは「大は小をかねる」。ウィッシュより使い勝手はいいはずだし、「パノラマスライドドアは普通のスライドドアをかねる」ので、より便利には間違いない。コストがかかっている割に販売価格はお値打ちだし、ミニバンとしてはさらに一歩進化した感じだ。

アイシスは、これでもかというほどどんどん良くなっていくミニバンを、子育ての終わった50代以上にも売っていこうという戦略車。それゆえのおとなしい外観やパノラマスライドドアといったわかりやすいアイキャッチ、洗練された乗り心地を与えている。でもMOTORDAYSとしては、どうせやるならもう一歩上を望みたい。両側パノラマスライドドアは当然として、さらに電動ポップアップルーフを追加して、停車中の高さ方面にもさらにゆとりを持たせるとか。まだまだミニバンはいろいろやれる余地があると思う。

試乗車スペック
トヨタ アイシス プラタナ
(2.0リッター・CVT・220万5000円)

●形式:CBA-ANM10W-AWXSH●全長4640mm×全幅1710mm×全高1640mm●ホイールベース:2785mm●車重(車検証記載値):1470kg(F:ー+R:ー)●乗車定員:7名●エンジン型式:1AZ-FSE(D-4)●1998cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●155ps(114kW)/6000rpm、19.6kgm (192Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/60L●10・15モード燃費:14.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:205/55R16(YOKOHAMA ADVAN A-460)●価格:220万5000円(試乗車:265万4400円 ※オプション:G-BOOK対応DVDボイスナビ&オーディオ 34万1250円、サイド&カーテンエアバッグ 8万9250円、ETCユニット(ビルトインタイプ 1万8900円)

公式サイトhttp://toyota.jp/Showroom/All_toyota_lineup/isis/index.html

 
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