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トヨタ イスト 150G新車試乗記(第477回)

Toyota ist 150G

(1.5リッター・CVT・178万5000円)

ヴィッツから生まれ、
かの国でサイオンを名乗る
グローバルカー、イストの
アイデンティティとは?

2007年09月08日

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キャラクター&開発コンセプト

2代目は男性向け

2007年7月30日に発売された2代目イストは、ヴィッツがベースのコンパクトカー。初代イストは初代ヴィッツがベースだったが、新型はもちろん2代目ヴィッツがベースだ。

クロスオーバーSUVテイストのスタイリングは今回も同じだが、可愛らしかった先代とは違って、イメージはかなり男性的に変化。全長は4メートル以下と依然コンパクトだが、全幅は1720mmと3ナンバー幅になった。狙いとしては「団塊ジュニア世代の30代男性向け新ジャンル・コンパクトカー」という位置付けで、広告コピーも重々しく「ヘビー・ビューティ(Heavy Beauty)」だ。

真面目な部分では、トヨタの「全車サイド&カーテンエアバッグ標準装備」宣言後の第1弾として衝突安全装備を充実。新開発アクティブヘッドレストも全車標準としている。

生産はトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)。取扱いはネッツ店で、販売目標は月間2000台と控えめに設定。広告宣伝はファッション性を強く打ち出したもので、カタログもファッション誌のような体裁になっている。テレビCMには俳優のオダギリジョーを起用し、ボディカラー別に展開されるが、あまりにクルマ自体を見せないため「なんだかよく分からない」との声もあり。

またの名をサイオンxD

02年5月発売の初代イストは米国で03年からスタートした若者向けブランド「サイオン(Scion)」の1車種「xA」として投入されているが、新型イストもすでにサイオン「xD」として発売されている。北米でのターゲットユーザーは、「ジェネレーションY」(米国における1970年代以降生まれの世代)、つまり30代前半くらいまでの世代と説明されているが、これもつまりは日本でいう「団塊ジュニア世代」のことか。これでサイオンは07年9月現在、「xA」(初代イスト)、「xB」(初代bB)、「xC」(米国専用クーペ)、「xD」の4車種となった。

価格帯&グレード展開

価格は165万9000円~199万5000円

グレードは3つ。1.5リッター・CVTで、オーディオとアルミホイールのない「150X」(165万9000円)、その上級グレードの「150G」(178万5000円)、そして1.8リッター・4ATの「180G」(189万円)となる。1.5リッターには4WD(21万円高)も設定。従来あった1.3リッターは廃止された。1.8リッター車はその4ATから分かるように、要するに北米仕様のパワートレインと言っていいだろう。

■150X (2WD:165万9000円/4WD:186万9000円)
150G (2WD:178万5000円/4WD:199万5000円) ★今週の試乗車
■180G (2WD:189万円)

最近のトヨタ車では珍しく、純正ナビはHDDではなくDVD式。おかげでオプション価格は13万1250円(「150G」と「180G」)と安い。このあたりはHDDナビの装着率が伸びない現状や、5~6万円程度の安価なメモリーナビが出回り始めたことへの対策か。

パッケージング&スタイル

ヘビーだが、ビューティか?

2段構えのフロントグリルはアメリカンといえばアメリカンだが、鬼瓦のようでもある。実はこの顔、国内専用デザインで、この部分だけダイハツが手がけたもの。サイオンxDのフロントは先代イストの後期型(サイオンxAと似ている)と同じテイストで、もっとすっきりしている。新型のターゲットは男性だからか、この顔だから男性がターゲットなのかは不明だが、「上質でお洒落なコンパクトカー」として女性に好まれた初代の面影はない。

リアビューにも先代から受け継いだものはほとんどない。ニューMINIのようにB・Cピラーをブラックアウトした初代イストのウインドウグラフィックスは、新型ではVWゴルフのようなボディ同色・極太Cピラーに取って代わり、ヘッドランプと相似形だったリアコンビランプは普通のデザインになった。面白いのはリアウインドウの天地が極端に狭いこと。そのためリアワイパーはまるで鉛筆くらいの長さしかない。

試乗車のボディカラーは新色の「ディープアメジスト マイカメタリック」。アメジスト(紫水晶)ながら、ちょっと赤みがあってマルーン(栗色)にも見える微妙な色だ。

全長は4メートル未満ながら、幅は1700mm台へ

FF車のボディサイズ(先代の後期型「A-S」グレード比)は全長3930(+5)×全幅1725(+30)×全高1525(-5)mm。コンパクトさを守りつつ、3ナンバー幅となった。上屋に負けないように、195/60R16サイズのタイヤ(先代は185/65R15だった)を標準にしてどっしり感を出している。

エンジン始動は左手で

「グローバルカー」(海外に投入するモデル)ゆえ、トヨタ車でおなじみのスタートボタンはステアリング左に配置。今後グローバルカーはステアリング左に、国内専用車は右に配置となるようだ。この後に発売されたヴァンガード(ベースはグローバルで売るRAV4)も左配置だ。しかし同じメーカーのクルマで左右違うというのは、複数所有だと混乱するのではないだろうか。

初代イストのメーターは同じセンター配置でもヴィッツより見やすく、デザインも小粋だったが、新型はあっさりドライバー正面に配置変えされている。このあたりは好みだが、何となく普通になってしまって淋しい。

デザインと製品化の間で

その代わりというわけでもないだろうが、メーターは速度計と回転計を同一円上にまとめた「コンセントリックメーター」なるデザインになっている。速度は7時(0km/h)から2時(180km/h)まで。エンジン回転数は6時(0回転)から逆方向に針が回り、2時(8000rpm)まで刻まれている。少なくとも速度計の視認性は悪くなく、回転計の方はそもそもCVTだから見る必要がない、といった感じだ。

気になるのがメーター内に島のように浮いている半円のシルバー塗装部分で、これがいま一つデザイン的に中途半端。デザインスケッチの段階ではもっと未来的なものを目指していたようだが、製品化する過程で意図とズレてしまったように見える。

浮いたように見えるセンターパネル「フローティング・センタークラスター」も同じような印象だ。えんどう豆みたいにも見える有機的なデザインで、スマートのフォーツーやフォーフォーも、こうした植物っぽいモチーフをインテリアに使っているが、イストはここを濃いガンメタリック塗装にして、結局のところ形の面白さが伝わらないものになっている。デザインの方向性がインテリアのあちこちでバラバラな感じがする。

多機能型のリアシート

2WD車用のリアシートは前後スライドのほか、ワンタッチ・チルトダウン式で折り畳みが可能。見てのとおりスライドを最後端にすれば広さはまずまずだが、気になったのはスライド&沈み込み用のフレーム構造があるせいで、座面クッションが薄くて座り心地がいま一つなこと。4WD車は普通のダブルフォールディング式だ。

サイド&カーテンエアバッグ全車標準

「見えない部分」のセールスポイントが衝突安全装備。このクラスの日本車ではオプションか未設定のサイド&カーテンエアバッグを全車に標準装備。この点はブレイドも同じだが、新型イストはトヨタの新型車「全車サイド&カーテンエアバッグ標準装備」宣言後の第1弾となる。

さらに新開発アクティブヘッドレストも全車に標準装備。今までのトヨタ車はシート形状を工夫しただけの「WILコンセプトシート」がスタンダードだった。このアクティブヘッドレストは単純な仕組みだが効果は大きいようで、欧州車ではすでに同種のものが多く採用されている。

フラットな荷室。ディープな床下収納

リアシートを工夫したおかげで、荷室はフラットな床を備えた機能的なものに。床下収納スペースは発泡スチロールで成形されており、傘のようなものから転がりやすい小物まで分けて収納できる。深さが部分的に20cmほどあるのもポイント。そのまた下にスペアタイヤが備わる。

基本性能&ドライブフィール

トヨタ定番の1.5L・CVTに試乗

試乗したのは、販売主力の「150G」。1.5リッターの「1NZ-FE」(109ps、14.1kg-m)は先代とほぼ同じだが、CVTとの組み合わせは現行トヨタ車における定番中の定番。乗った感じもおおむね「最近の1.5リッタートヨタ車」という感じで、動力部分で際立った特長はない。

しかし4ATだった先代イストのことを思えば、CVTとなった新型の走りは今風のもの。トヨタの直4エンジンは高回転がノイジーなので、低回転をキープしたまま加速できるCVTと、相性はいいと言える。ただし新型イストのイメージに合った重厚な走りという意味では、北米仕様そのものの1.8リッター・4ATの方がふさわしいかもしれない。

物足りないのは、パドルシフトどころかマニュアルモードすらないことで、回転を高めにキープしたい時は「S」モードに入れるしかない(「B」はエンジンブレーキ用で、スポーツ走行には向かない)。これは2代目ヴィッツのRSでも同じだったが、実はヴィッツには今年(07年)8月のマイナーチェンジで、RSの1.5リッターCVT車にパドルシフトが追加されている。新型イストで先取りしておいても良かったように思う。

ヴィッツの進化はイストの進化

乗り心地はトヨタ車としてははっきり固めだが、街乗りでは不満のないレベルにおさまっており、シャシー性能も2代目ヴィッツのポテンシャルを受け継いで大幅に高まっている。先代はカッコ重視の大径15インチタイヤのせいか腰高感があり、トレッドも狭いせいでいま一つ落ち着きが無く、いつものワインディングでコーナリング中にブレーキを踏むとリアが一瞬流れることもあったが、新型ではもうそんな挙動は出ない。ただしパワーがそこそこで、CVTゆえエンジンブレーキが効かないこともあり、コーナーではひたすら弱アンダー気味にトレースするのみ。パワステの反応も妙に重々しく、コーナーが待ち遠しいという気にはならない。もう少し軽快感が欲しいと思ってしまう。

高速でも当然ながらヴィッツRSのような鬼のようなスタビリティはない。なお、VSCは主力の1.5リッターに設定がなく、1.8リッターに辛うじてオプション設定されるのみ。VSCより4エアバッグの方が重要ということか。

参考までに車載燃費計による燃費は、連続して高速・一般道を100kmほど試乗して10.0km/L。撮影を行ないながらさらに約100km走って、トータル9.6km/Lとなった。10・15モード燃費は18.0km/L(1.5L・2WD)だが、車重1160kgの1.5リッターCVT車として、実燃費で約10km/Lは決して悪くない。

ここがイイ

このジャンルでは割と珍しく、全長4メートル以下とコンパクト。いよいよサイド&カーテンエアバッグも標準になったし、トヨタ初のアクティブヘッドレストもあるし、燃費も悪くないし、押し出しのあるカッコにひかれて買ったとしても、普段乗る分には当たり前だがほとんど不満は出ないだろう。

ここがダメ

「このクラスのユーザーがVSCを求めないので用意しない」のでなく、価格が上がるのを極力抑えてVSCを標準装備するという英断があれば大拍手ものだが、実際には1.8にしかVSCは装着できない。同様に、車両価格に比較して高くなるからHDDナビは用意しない、というもなんだかな、という部分。たとえ売れなくても「意義あるものだからちゃんと用意してあります」という姿勢がナンバーワンメーカーであるトヨタには求められるのでは。

グリルデザインはサイオンの方がすっきりしていて好ましい。エクステリアデザインそのものはなかなかカッコいいのだが、このグリルがバランスを崩している。インテリアも当初のデザインが生産型になる時点で「なんだか違う」ものになってしまっている。1眼2針メータがその象徴で、これなら普通のメーターでも十分なのでは。

試乗車は燃費を稼ぐ意図も大いにあって60km/h巡航では1000回転ほどしか回らなく、弾みで転がっているかのよう。エンブレは効かないし、これ以下の速度になるとスロットルレスポンスが微妙で、どうもコントロール感に乏しい。高速の急な上りでは絶対的なパワーも不足気味。走りもちょっとチグハグな感じだ。

全長が4メートル以下にもかかわらず、最小回転半径は5.5メートルもある。つまりヴィッツの長所である小回り性能(4.4メートル)が、イストにはない。言うまでもなく大径タイヤゆえ切れ角がないのが原因だが、実際のところ思ったより小回りが効かなくて困った。実はヴィッツRS(1.5リッター)も5.5メートルで、これはもうヴィッツベースだと仕方ないのかもしれないが。コンパクトカーである以上、「団塊ジュニアの男性」も小回り性能は欲しいと思う。

総合評価

先代イストの名古屋での発表会では、珍しく名古屋でも割とオシャレなエリアにあるナディアパーク(ナゴヤデザインセンタービル)が使われた。そのデビュー時の、今までにないスタイリッシュなコンパクトカーとしての印象の強さを、今も鮮明に覚えている。果たして先代はオシャレな若者、特にヴィッツの多さに辟易した若い女性を中心に大ヒットといってもいい売れ行きを示した。さらに重要なのは、そうした若者女性需要が一巡したあとに、中高年(特に高年の方)に異常なほど受けたことだろう。今も街中でイストに乗っている中高年を本当に多く見かける。ヴィッツではちょっと女性っぽいと思う「小さくてほどほどの価格で、それでいて普通車」 志向の中高年にとって、イストは恰好の選択肢になったわけだ。特に価格の安い1.3リッター車がここにあてはまった。

反面、サイオンとして出した北米では、ねらいどおり若者に大受けしてしまった。国内市場向けはマイナーチェンジで女性から男性若者ねらい路線へ修正したが、結局大きなイメージチェンジはできないままだった。こうなると2代目はどうしたらいいのか。日米のユーザー層がまるで異なるわけで、そこに対して同じコンセプトのクルマは作れない。しかし結局2代目イストを見る限り、北米市場を選択した作りが結論となったようだ。SUV風テイストや窓の小さなデザイン、マッチョな全体の雰囲気はまさに北米向けのもの。そのせいか国内向けとしては、これまでの実績に比較して実に控えめな月販2000台という目標が設定された。

国内には大きな分母の既存ユーザーがいるわけだが、この層はオーリスあたりの新規参入車への乗り換えを推進させたいのだろう。ネッツは今やハッチバックばかりのラインナップだから、それも可能のはず。ではアメリカンな新型イストはどう売るべきか。おそらくケンケンガクガクの議論の末、ファッション路線で売ることになったようだ。というか、どうしたらいいか分からないままに、エイヤで立ち上がってしまったようにも見える。ちょっと無理矢理っぽくターゲットが絞られ、そこに向けて宣伝イメージが作られ、現在のオシャレ路線が選択されたのだろう。傍から見ると、若者に売りたいなら現在の都会派ファッション路線ではなく、もっとアメリカンを強調したヒップホップ路線のイメージの方がいいように思えるのだが。

つまり2代目イストはまず北米向けがありきで、それを国内で売るにあたってかなり場当たり的な対応がなされているように感じられてならない。クルマをトータルに仕上げ、売る課程での統一された意思が感じられないのだ。デザイン、エンジニアリング、外注あるいは関連会社、マーケティング、広告といった部署がそれぞれの枠内で仕事をして、その集合体としてできあがったクルマではあるものの、一本筋が通っていないプロダクツに思える。その点は先代の方が明確で、それゆえ一時は月間売上ベスト10に入るクルマになったはず。

グリルまわりのデザインは日本向けのコンセプトが右往左往する中で無理矢理作られたようなものに見えるし、インテリアのデザインもメーターのデザインもなんだか中途半端なままだ。エンジンにしても、VSCにしても、まずは1.8ありきで、日本向け1.5は必要に迫られて追加されたという感が強い。さらにインパネのチリに浮きや隙間があったり、全体的なインテリアの質感がいまいちだったりと品質面でも?な部分が目につく。トヨタなのにだ。安いクルマだから安いDVDナビを迎合的に用意したりと、すべてが場当たり的に見えてしまう。

とにかく今回のイストは、北米向け車両(いずれ欧州にも出されるようだが)を国内でも売って、ラインナップを隙間なく埋め尽くそうというクルマといえそう。8月の国内販売が久々に前年を上回ったトヨタだが、とにかく年内は新車を出しまくって数を稼ぐつもりのようだ。国内市場が拡大する見込みは少ないのだから、シェアを稼ぐしかない。そしてそのためには、どんどん新しいクルマを投入するしかないだろう。その流れの中で新型イストも登場してきたわけで、先代のような企画型勝負グルマではないことは確かなようだ。ちなみに近隣のネッツ店では発売当初に展示車がない店舗もあった。地震の影響があったとはいえ、これも?なところだ。


試乗車スペック
トヨタ イスト 150G
(1.5リッター・CVT・178万5000円)

●形式:DBA-NCP110-AHXEK ●全長3930mm×全幅1725mm×全高1525mm ●ホイールベース:2460mm ●車重(車検証記載値):1160kg(710+450) ●乗車定員:5名●エンジン型式:1NZ-FE ● 1496cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 109 ps(80 kW)/ 6000rpm、14.1 kg-m (138 Nm)/ 4400 rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/42 L ●10・15モード燃費:18.0 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/60R16(Bridgestone B250 ) ●試乗車価格:201万9150円( 含むオプション:ディスチャージヘッドランプ 4万7250円、スマートエントリー&スタートシステム+イモビライザー 4万0950円、DVDボイスナビ&オーディオ+バックガイドモニター 13万1250円、ETCユニット 1万4700円 )●試乗距離:200 km ●試乗日:2007年8月

トヨタ公式サイト>ist http://toyota.jp/ist/index.html

 
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