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ホンダ ジェイド ハイブリッド新車試乗記(第759回)

Honda Jade Hybrid

(1.5L 直4+モーター・7速DCT・272万円~)

ストリームの後継か
オデッセイの直系か
はたまたアヴァンシアの再来か。
都市型3列に試乗!

2015年05月22日

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キャラクター&開発コンセプト

3列シートの6人乗りワゴン


ホンダ ジェイド ハイブリッド X
(photo:Honda)

国内では2015年2月12日に発表、翌13日に発売された「ジェイド」は、新開発の「超高密度低床プラットフォーム」を採用した3列シート・6人乗り乗用車。セダンのような、ワゴンのような、ミニバンのような、といった多様な要素を備えるモデルで、開発コンセプトは「マルチ・サプライジング」。広告キャッチコピーでは、1500mmの低全高ゆえ都市部に多い機械式立体駐車場もOKということで、「都市発想」「都市型3列」を謳っている。

 

2代目ホンダ ストリーム(2006~14年)
(photo:Honda)

直接的には同じく3列シートだったストリーム(2014年に販売終了)の後継車だが、一方では、背高の両側スライドドア車になった現行の5代目オデッセイと異なり、低全高だった3代目/4代目オデッセイ(2003~13年)の雰囲気を引き継ぐモデルでもある。

プラットフォームは、フロント部分が海外向け現行シビックベースで、それより後ろは新開発。リアには新開発のダブルウイッシュボーンサスペンションが採用されている。日本市場を含めたグローバルカーとして開発されており、2013年から中国で生産と販売が始まっている。

■外部リンク
ホンダ>ニュース>2013年上海モーターショー

■参考記事
新車試乗記>ホンダ ストリーム (2006年8月掲載)

 

日本向けはハイブリッド車でスタート


超高密度低床プラットフォームを採用。パワートレインはよりコンパクトに、全高やフロアはより低くされた
(photo:Honda)

中国向けは1.8Lの純ガソリン車だが、日本向けはヴェゼル ハイブリッドと同じ1.5L直噴エンジン+7速DCT+モーターの「スポーツハイブリッド i-DCD」を搭載したハイブリッド車のみでスタートした。

ただし、燃料タンクはフィット/ヴェゼル ハイブリッドのような前席下(センタータンクレイアウト)ではなく、リアに搭載。逆に駆動用リチウムイオンバッテリーは荷室ではなく、プリウスαの3列シート車のように運転席と助手席の間(センターコンソール)に搭載する。ホンダのハイブリッド車で駆動用バッテリーをここに積むのは今回が初。JC08モード燃費は24.2~25.0km/Lを達成している。

 

2列目を前方に寄せた状態。後ろにスライドさせると左右席のアームレストがくっつく
(photo:Honda)

また、全高がセダン並みの1530mmしかないのに3列シート車であるのも特徴で、さらに2列目は後輪ホイールハウスを避けるように斜めに前後スライドする「Vスライドキャプテンシート」になっている。

■外部リンク
ホンダ>ニュース>「ジェイド」を発売(2015年2月12日)

 

1.5L直噴ターボの「ジェイド RS」を追加


ホンダ ジェイド RS
(photo:Honda)

ハイブリッド車の発売から約3ヶ月後の5月21日には、純ガソリン車の「ジェイド RS」が追加された。エンジンとトランスミッションは、新型ステップワゴンと同じ直噴1.5L ターボ(150ps、203Nm)とCVT(無段変速機)。こちらはJC08モード燃費18.0km/Lを達成している。

RSでは専用の内外装を採用したほか、シャシーも強化。ハイブリッド車に対してフロントの剛性を15%、リアの剛性を20%アップしたサスペンション、専用セッティングのスプリング&ダンパー、ブレーキ制御を利用した「アジャイルハンドリングアシスト」を採用したほか、アンダーフロアパネルにトンネルブレーズを追加し、フロア回りの剛性アップも図っている。

■外部リンク
ホンダ>ニュース>「ジェイドRS」を追加(2015年5月21日)

 

月販目標は3000台


ホンダ ジェイド (1991年)
(photo:Honda)

国内向けの生産は埼玉製作所・狭山工場で、販売目標はRSも含めて月間3000台。

ちなみにJadeとは翡翠(ヒスイ)のことだが、かつてホンダの2輪車には同名の250cc 4気筒ネイキッドモデルがあった。2輪好きにはちょっぴり懐かしい響き。

■外部リンク
ホンダ>2輪製品アーカイブ>JADE

 

価格帯&グレード展開

ハイブリッドが272万円~。ターボが253万円


標準グレードの「ハイブリッド」。16インチのスチールホイール+205/60R16タイヤを履く。写真はハイブリッド専用色のプレミアムブルーオパール・メタリック
(photo:Honda)

前述の通り、日本向けはハイブリッド車とターボ車の2本立てになり、全て6人乗り。駆動方式はいずれもFFになる。

ハイブリッドは2グレード構成。16インチスチールホイールを履く標準グレードの「ハイブリッド」が272万円。先進安全装備の「Honda SENSING」、17インチアルミホイール(ノイズリデューシング=消音装置付き)&タイヤを標準装備した上級グレードの「ハイブリッド X」が292万円。

 

Xに標準のノイズリデューシングアルミホイール
(photo:Honda)

ターボ車の「RS」は、専用内外装の他、17インチアルミホイール(Xと同じノイズリデューシング付)、専用サスペンション等を標準装備して253万円。ただし、Honda SENSINGは標準グレードやRSでも約11万円でオプション装着できる。

 

右上はACCの作動表示。標識認識はかなり精度が高く、交差点を曲がったりすると消えて、再び標識があると数秒後に表示される
(photo:Honda)

ちなみにHonda SENSINGは、ミリ波レーダーと単眼カメラを装備し、衝突軽減ブレーキ(CMBS)、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、LKAS(車線維持支援システム)、先行車発進お知らせ機能、道路標識の認識機能(速度制限、侵入禁止など)などをセットにした高度なもの。ジェイドを買うなら、ぜひ装着したい。

インターナビは全車オプション。メーカーOPなら「レーンウオッチ」付


左にウインカーを出した時に作動する「レーンウォッチ」用のカメラ
(photo:Honda)

ナビは全車オプションで、中でもメーカーオプションのHonda インターナビ(23万7600円)には、国内向けホンダ車では初の妖怪ウオッチ、じゃなくて「LaneWatch(レーンウオッチ)」がセットで備わる。これは助手席ドアミラー下部のカメラで、ウインカー操作時などに左後方の映像をナビ用ディスプレイに映し出すもの。後述するが、車線変更する時などは感動的に便利。

 

「レーンウォッチ」作動時。ウインカーを出している間に加えて、ウインカーレバー先端のボタンを押しても表示できる

他にハイブリッドXとRSでは、オプションで本革シート+前席パワーシート&シートヒーターも装着できる。

ボディカラーは全8色(プレミアムブルーオパール・メタリックはハイブリッド車のみ、コバルトブルー・パールはRSのみ)。マンダリンゴールド・メタリック(ブラウン)という個性的な色もあるが、車名の由来となったジェイド(翡翠)色はない。

 

パッケージング&スタイル

スカイデッキ、オデッセイ、アヴァンシアが生きている


試乗車はハイブリッドX。フロントデザインはホンダ車共通の「ソリッド・ウイング・フェース」

外観デザインは3列シート車に見えないもので、新種のステーションワゴン風。実はすっかり忘れていたが、今から6年前の東京モーターショー2009には、ジェイドの予告となるコンセプトモデル「スカイデッキ」が展示されていた。方向性はこの頃すでに決まっていたことが分かる。

 

東京モーターショー2009に出展されたホンダのコンセプトモデル「スカイデッキ」

さらには前述の通り、3代目と4代目オデッセイの面影もジェイドには見て取れるし、もっと遡れば、「4ドアクラブデッキ」と称した上級5人乗りワゴン、アヴァンシア(1999~2003年)のコンセプトも生きている。これも一種のホンダDNAだろう。

 

ホンダ アヴァンシア (1999~2003年)
(photo:Honda)

3代目ホンダ オデッセイ アブソルート (2003~2008)
(photo:Honda)
 

ウエストラインの低さに注目

独特なのは、ウエストライン(ベルトライン)が最近のクルマでは異例と言えるほど低いこと。これは当然、ドライバーからの視界の良さに貢献しているし、グラスエリアの大きい特徴的な外観も形作っている。

しかし一方ではスポーティさも出すため、前後フェンダーを微妙に盛り上げながら、ルーフを後方でスラントさせて、伸びやかなウエッジシェイプ形状を実現している。同様のコンセプトを狙ったトヨタのマーク X ジオスバル エクシーガあたりを思うと、かなりスポーティにまとまっている。

 

ホンダの新ジャンルワゴンと言えば、ホンダ アコード エアロデッキ(1985~89年)

エアロデッキ同様、リアゲートはルーフまで食い込んでいて、3列目頭上の天窓ガラスごと開く
 

各寸法はアヴァンシアに激似

ボディサイズは全長4650mm×全幅1775mm×全高1530mmで、特に「セダン並みの低全高」が特徴。なにしろ全高はシャークフィン型アンテナを除くと実質1500mmしかない。外寸に関しては、そこがプリウスαとの最大の違いでもある。

ちなみにアヴァンシアの全高もちょうど1500mmで(4WD車は1545mm)、ホイールベースはジェイドと5mmしか違わない。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
初代ホンダ ストリーム (2000~06) 4550 1695 1590~1605 2720
2代目ホンダ ストリーム (2006~14) 4570 1695 1545~1570 2740
トヨタ プリウス α (2011~) 4615~4645 1775 1575~1600 2780 5.5~5.8
ホンダ ジェイド (2015~) 4650 1775 1530 2760 5.5
ホンダ アヴァンシア(1999~2003) 4700~4795 1790~1810 1500~1545 2765 5.6~5.7
3代目ホンダ オデッセイ(2003~08) 4765~4770 1800 1550~1570 2830 5.4
4代目ホンダ オデッセイ(2008~13) 4800 1800 1545~1565 2830 5.4
5代目ホンダ オデッセイ(2013~) 4830 1800~1820 1685~1715 2900 5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

アウトホイールメーターを採用


インパネの中央にはインターナビ用のディスプレイを配置。かつてのプログレッシブコマンダーはなく、タッチパネルで操作する

運転席からの眺めは、横方向に広がるインパネに加えて、大きな3角窓やドア付けサイドミラーによる視界の広さが印象的。

ダッシュボード上の薄型メーターパネルは、最新のホンダ車に多いタイプで、ステアリングリムの上から見る、いわゆるアウトホイールメーター方式。一方、ステアリングリム内には加飾パネルがあるだけで、「せっかくの一等地なのにもったいないなぁ」と思うのは、新型ステップワゴンと同じだ。

ただ、この加飾パネルは、上級グレードのXでは木目調になり(アイボリー内装では明るいユーカリウッド調、ブラック内装では黒基調のジオメトリック木目調)、触ると木の地肌のように凸凹している。これは凸凹をつけた水圧転写フィルムを使うことで実現した新技術とのこと。

スペシャリティカーみたいな1列目


上級グレード「X」のシートサイド部には、ホンダ車で最近多いレザー調素材「プライムスムース」を採用。座面や背もたれのファブリックは、スポーツウェアのような通気性のある素材

駆動用のリチウムイオン電池をセンターコンソール内に搭載する方法は、トヨタ車ではプリウスα(7人乗り)やエスティマハイブリッドなどでお馴染みだが、ホンダのハイブリッド車では初。これの主な目的は、3列目シートのフットルームや格納スペースを確保するため。おかげで、センターコンソールはS2000もかくやというほど大きくて高い(RSでは少し低い形状のセンターコンソールに変更される)。

前席のヒップポイントは現行アコード並みに低く、横にはセンターコンソールがあるから、乗車感覚はスペシャリティカー的でもあり、「低さ命」だった1980年代のホンダ車的でもある。

 

2列目はV字スライド。3列目は+2


斜め後方に大きくスライドする2列目の「Vスライドキャプテンシート」。アームレストは取り外すこともできる

2列目のキャプテンシートは、170mmの前後スライドが可能。この種のロングスライド機能は、後輪ホイールハウスとの干渉を避けるため、横スライドと縦スライドを組み合わせる方法が一般的だが、ジェイドでは「Vスライドキャプテンシート」と名乗るように、スライドレールが斜めになっていて、後ろにスライドさせると内側に寄る仕掛けになっている。ただし、最後端にすると、ドアアームレストが遠くなるし、隣の人との距離も近くなるから、中間位置くらいがベストかも。いずれにしてもこのクルマは4名乗車までで乗るのが良い。

 

写真は2列目をタンブルした状態で撮影している。空間よりもクッションの薄さが気になるところ

3列目は、基本的には+2(プラスツー)。大人でも座れるが、クッションが薄く、乗り降りもしにくいので、ここにはあんまり座りたくないなぁ、というのが正直なところ。

それでも外観から想像するほど、中は狭くない。燃料タンクは従来ホンダ車以上の超薄型だし、マフラーも従来品より約30%薄型化。リアサスは低床化に有利なダブルウィッシュボーンで、しかもアッパーアームを湾曲させて3列目の足元空間を稼いでいる。頭上には「天窓」もある。

 

2列目をタンブル格納した状態。フィットのチップアップ状態に近い積載スペースが得られる

3列目の頭上にはリアゲートと一体になった天窓がある。この方がヘッドルームも稼げる
 

多彩すぎる?シートアレンジ


3列目シートを格納すれば、ステーションワゴン的な眺め

荷室の基本形は、3列目を格納した状態だろう。3列目は日常的には使えないし、3列目を起こした状態では、荷室が狭すぎるからだ。

2列目の背もたれを倒せば長物も積めるし、必要なら2列目を前方にタンブル格納もできる。こうすると前輪を外したスポーツ自転車の2台縦積みも可能。とはいえ、上質感が売りのクルマとしてはちょっと凝り過ぎ、盛り込み過ぎ、という風にも思える。

 

3列目使用時の荷室。奥行きはないが、それなりに深さはある

3列目を格納し、2列目をタンブルした状態。慣れれば操作は難しくない
 

基本性能&ドライブフィール

全体的に上品な印象


1.5L直噴DOHCエンジンを使った「スポーツハイブリッド i-DCD」。エンジン(131ps、155Nm)とモーター(29.5ps、160Nm)で、システム出力は152ps

今回試乗したのは遅ればせながらハイブリッド車。

そのハイブリッドシステムは、名称としてはフィットハイブリッドと同じ「スポーツハイブリッド i-DCD」だが、厳密に言えば、よりパワフルな直噴エンジン(131ps、155Nm)と組み合わせるヴェゼル ハイブリッドと同じタイプ。システム出力はフィット ハイブリッドの137psに対して、ヴェゼル ハイブリッドと同じ152psを発揮する。

とは言え、街乗りでの第一印象は「静か」&「滑らか」。ジェイド ハイブリッドは明らかに車格がヴェゼル ハイブリッドより一つ上な感じで、小排気量エンジンのハイブリッド車にありがちなザラザラしたノイズが少ない。上級グレードのXには、樹脂製のノイズ低減パーツを内側に巻きつけたアルミホイールを奢るなど、ノイズ対策は入念で、全体的に上品な印象を受ける。

 

一方で、パワー感はそれほどない。実際、車重はヴェゼル ハイブリッドより約200kgも重く、試乗車で1530kgもある。トルクはエンジンが155Nm、モーターが160Nmと、十分にありそうだが、152psのシステム出力で計算するとパワーウエイトレシオ(PWR)は11.5kg/ps前後に過ぎない。これに対して、ヴェゼルハイブリッドのPWRは10kg/ps弱と優勢だし、実質的なライバルであるプリウスαのPWRも11kg/ps弱と(システム出力:136ps、車重:1450~1490kg)、ジェイドを上回る。「Powered by Honda」的な力強さを期待すると、ちょっと物足りない。

ただ、ジェイドは7速DCTゆえ、加速時には明確に“シフトアップ感”がある。そこが無段変速機と違ってスポーティと言えばスポーティかも。ただ、直噴ターボのようにガツンと来るほどのパワー感はないので、「スポーツ」を謳うにはやはり今一歩。そもそもジェイドのハイブリッド車にはパドルシフトの装備もない(RSのCVTには標準装備)。

 

乗り心地も上質。気になったのは車線変更時の安定感


リアサスペンションは新開発のダブルウイッシュボーン。コンパクト設計が売り
(photo:Honda)

上質な走りには、新開発の超高密度低床プラットフォームも効いているはず。フロントの骨格は海外向けシビック譲りだが、リアは新開発のダブルウイッシュボーン。高剛性ボディ、低重心、4輪独立サスペンションと、いい要素が揃っている。実際、ワインディングを流しても、気持ちよく走ることができる。

ただ一つ気になったのが、レーンチェンジする際のリアの挙動。ある程度高い速度域で緊急回避的なレーンチェンジを試みると、リアが少々唐突な動きを見せて、素速くVSAが介入する。

 

上級グレード「X」用の215/50R17(Yokohama Advan dB decibel BluEarth)

ちなみに試乗車のタイヤは、上級グレードに標準の215/50R17で、ヨコハマの「アドバン デシベル ブルーアース」という全方位タイプ。その名の通り、少なくともフロントのグリップ感は十分だし、乗り心地もよく、ロードノイズも小さい。指定空気圧は前2.2kg、後2.2kg(16インチは前2.3kg、後2.2kg)と、特に高くないが、きっと転がり抵抗も少ないはず。

ついでに前後重量配分をチェックしてみると、車検証数値では56:44 (860kg+670kg=1530kg)。比較のため、過去に試乗したプリウスα(7人乗り)の数値を見てみると、61:39 (910kg+590kg=1500kg)だった。ジェイドは同じ7人乗りのプリウスαより、後軸荷重が80kgも重い。ただ、56:44という前後重量配分は、3代目オデッセイと同等ではある。

ちなみにジェイド RSの車重は、リチウムイオン電池がないのにハイブリッド(1510~1530kg)と同等の1520kg。ちょっと不思議。

Honda SENSINGで高速巡航もゆったり

100km/h巡航時のエンジン回転数は、7速トップで約2000rpm。ちなみに、Honda SENSINGのACCは115km/hまで設定可能であるし、車線逸脱すれば振動で警告してくれるので、安全・快適・実用的に長距離クルーズができる。ただしパーキングブレーキが足踏み(非電動)なので、渋滞路など30km/h以下での追従走行は出来ないのが少し残念。

なお、実用上の動力性能は十分だが、いざという時の追越加速では、パワー不足ないし1.5トンの車重が意識される。ここは、ターボ車のRSに期待したいところ。

試乗燃費は15.3~20.6km/L。JC08モード燃費は24.2~25.0km/L


今回入れたスタンドではレギュラーガソリンが142円/Lだった。この半月で20円くらいじわりと値上がりした気がする

今回はトータルで約200kmを試乗。あくまで参考ながら、試乗燃費はいつものように一般道と高速道路を走った区間(約80km)が15.3km/L。一般道と高速道路をハイペースで走った区間(約90km)が15.0km/L。高速区間のうち、おとなしく走った区間(約50km)が16.7km/L。無駄な加速を控えて一般道を走った区間(約20km)は20.6km/L。約200kmトータル(撮影のための移動を含む)での燃費は15.4km/Lだった。

ちなみにJC08モード燃費は、24.2km/L(X)~25.0km/L(標準グレード)で、奇しくも前週乗ったマツダのCX-3 XD(こちらは軽油で、4WDを含めて21.0~25.0km/L)に近く、試乗燃費でもCX-3(13.3~19.8km/L)と同等だった。ただし使用燃料はジェイドがレギュラーガソリンなのに対し、CX-3は約20円ほど安い軽油なので、純粋なランニングコストではCX-3が優る。なお、プリウスα(マイナーチェンジ版)のJC08モードは26.2km/Lで、ジェイド ハイブリッドを少し上回る。

また、ジェイド RSのJC08モード燃費は18.0km/Lで、数値だけ見ると見劣りするが、実燃費は意外にハイブリッド車と差がつかないかも。ここもRSに期待する部分。

ちなみにハイブリッドのタンク容量は40Lだが、RSの方は47Lもある。床下にまだそんなスペース残ってたの?というよりは、もともと47Lあるのを、ハイブリッドでは40Lに縮小したのだろう。

 

ここがイイ

新しいカタチ、Honda SENSING、レーンウォッチ

表向きにはストリームや先々代オデッセイの後継車だが、これはやはりアヴァンシアの復活、再チャレンジと捉えたい。このクルマを「今風のアヴァンシア」として捉え直すと、そのひそかな狙いが見えてくる。とにかく、新しいカタチの乗用車を作りたいというチャレンジは評価したい。

Honda SENSINGは、ミリ波レーダーと単眼カメラを備えた高度なもので、車両や物体のほか、車両前方約60mまでの歩行者まで検知する。今後の課題は、いかに早く全適・標準化できるかだろう。

そして、左ウインカー操作時に車両左後方の様子をナビ画面に表示する「レーンウォッチ」。左折時よりも、高速道路などで左に車線変更する際にとても重宝した。サイドミラーで確認するのが基本だが、ダメ押しでチェックできるので安心感が違う。特に左後方の視認性が悪いオープンカーやクーペには有用だと思うし、出来れば、どんな車種でも後付けできるように販売店オプションで欲しいところ。

 

もうひとつ、ステアリングリム内の一等地に何もないこと。なぜそれがいいかと言うと、スマホをセットするのにベストの位置が確保できるから。まさかそれを狙っているとは思えないが、そう勘ぐりたくなるようなスペースが空いている。ちなみにデンソー関連会社から、まもなく「くるくるピ」というスマホ用リモコンが発売される。ステアリングに取りつけたリモコンによって、画面に手を触れることなく、指先で操作できるため、とても使いやすく、かつ安全にスマホを操作できる。アプリ側の対応が必要だが、「Yahoo!カーナビ」が対応予定なので、地図更新を気にすることなくナビは使える。メーカーには皮肉だが、こういうものにチャンスを与えるインパネ形状は、ユーザー的には「イイね」だろう。プログレッシブコマンダーがなくなったら、サードパーティーからコマンダーのようなものが出てくるというのもまた皮肉な話だ。

■外部リンク
Makuake>KKP(くるくるピ)

ここがダメ

レーンチェンジ時の挙動。盛り過ぎのコンセプト。メーカーOPのインターナビ

本文でも触れたが、高速走行時にレーンチェンジ(特に緊急回避的な)した時のリアの挙動。落下物を避ける時のような素早いステアリング操作時に、リアタイヤの接地感がその瞬間だけ乏しくなり、速やかにVSAが作動する。低重心高剛性シャシーはステアリング操作に応じて反応するのに、リアまわりがついていけない感じ。

ストリームやオデッセイの後継車ということで、3列シートを実現し、2列目は流行りのキャプテンシートにし、ヴェゼルやシャトルともかぶらない上級ワゴンにする、などなど、まさに「マルチ・サプライジング」なコンセプトで、いろんなアイディアが詰め込まれているが、それゆえ車両キャラクターが分かりにくい。また、ここまでの多機能がこういった上級ワゴンに必要かどうかも疑問に思えてくる。3代目オデッセイ アブソルートのような不良(ワル)なカッコ良さはないし、かつてのUSアコード ワゴンやアコード エアロデッキのような、構造としてはシンプルなステーションワゴンでもない。そして売れなかったが、クルマとしての評価は高かったアヴァンシアほど、走らせた時の重厚感もない。間違いなく意欲作だが、それがかえってジェイドというクルマを分かりにくくさせている。

メーカーオプションのインターナビは、いかんせんナビ自体の使い勝手がいまいち。プログレッシブコマンダーも今や廃止され、タッチパネルでしか操作できないのはまぁいいとして(本当は良くないが)、ならば一番使う現在地ボタンをドライバーから一番遠いディスプレイの左上に配置しているのは不親切。どうやら従来型には現在地ボタンがなく、改良でこの位置に追加したらしい。こうなるとディーラーオプションで8インチモニターのインターナビを選びたくなるが(現在地ボタンも押しやすいところにある)、それだとレーンウォッチが装備できないというジレンマ。

総合評価

素直にステーションワゴンと考えてはどうだろう

ホンダが2013年4月に出した、上海モーターショーに関するニュースリリースには、新型車「ジェイド(中国名:傑徳)」について、「中国市場をメインターゲットに開発し、中国から発売を開始する新価値乗用ムーバーのグローバルカー」であり、主なターゲットは「中国の1980年代生まれのお客様」とある。

つまり、開発は日本国内で行ったが、まずは中国の若者に売れることが第一に考えられたわけだ。どこかの輸入車メーカーでも聞いたような話だが、いよいよ日本車もそういう時代になってきたということだろう。中国の経済力、日本の経済力を鑑みれば、それも当然だろうし、けして悪いこととは思わない。日本向けジェイドは日本開発の日本製だが、中国製のスマホやPCはもはや当たり前のように日本で便利に使われている。中国のクルマこそ入ってきてはいないが、それも時間の問題だろう。日本車(日本のメーカー)だって、そうした世界の動きに適確に対応していかないと、日本の電機業界のようにいつ衰退するとも限らない。日本の消費者としてもどこ向け云々ではなく、いいクルマかどうかが重要なのだと思う。

 

そこで日本でのジェイドだ。ここはひとつこのクルマ、素直にステーションワゴンと考えてはどうだろう。かつてモーターデイズではアヴァンシアをイヤーカーに選んだほど絶賛したわけで、ジェイドはそんなアヴァンシアとほぼ同サイズ。ホンダに限らず、これくらいのサイズのワゴンは、特に日本ではとても使い勝手がいい。ジェイドはステーションワゴンとしては背が少し高めだが、それでも立体駐車場に入り、それでいて十分スタイリッシュだ。

実際、街中で走っているジェイドを見ると、何このクルマ!? とかなり目を引く。アヴァンシアはずんぐりしていて、いまいちカッコよさに欠けたが、その点ジェイドはクルマの古典的カッコよさの基本とも言うべき、低くワイドに見えるスタイリングをまとう。つまり今時希少な、新しくもスタイリッシュなステーションワゴンではないか。さらに言えばアヴァンシアというより、スタイルの良さではエアロデッキの再来と言ってもいいかも(そこまで言うと褒めすぎか!?)。

盛って盛って、また盛って


3列目を格納して、2列目を後端にスライドした4シーター状態
(photo:Honda)

とはいうものの、普通のステーションワゴンなんか日本では売れない、というのが、マーケティングから導き出される答えだろう。それゆえ開発陣は何とかせねばと、燃費にうるさい人はハイブリッド車で取り込めます、3列シート・6人乗りでミニバンユーザーも振り向かせられます、同クラスで差別化するため高級路線にしてみました、といろいろ盛り込んで、出来上がったのが今回のジェイド ハイブリッドだろう。盛って盛って、また盛ってと、まあ、どうにも盛り過ぎになった感は否めない。その結果、価格としては高めだし、リチウムイオン電池が入ったセンターコンソールがどうにも邪魔。セカンドシートも凝り過ぎだし、サードシートも無理やり押し込んだ感がある。日本向けならそこまで盛り込まず、いっそシンプルなステーションワゴンで何も問題ないように思える。

 

かつては大型ステーションワゴンにサードシートがあるのは普通だった。アメリカ車のワゴンの多くは、床下収納で後ろ向きに座る小さなシートを持っていたもの。日本車でも1980年代には日産Y30セドグロワゴンとか、トヨタ セプターワゴンとか、マツダ カペラワゴンとかに、補助席的な後ろ向きサードシートがついていたものだ。近距離移動にはこれがかなり便利だった。それまでワゴンのサードシートというものは、そんな「緊急用」の、ある意味いい加減なものでよかったのだ。

しかし昨今の安全基準を担保するためにはそれは許されないわけで、ジェイドにしてもそうとう作りこまれている。後突の安全性確保もあり、かなり後部は強化されたのではないか。それが重量増やコスト高の要因ではとも思ってしまう。緊急用シートの存在が許されない昨今ならではの残念な話かもしれない。

であれば、これにホンダらしい高性能ガソリンエンジンが載り、サードシートやスライド式セカンドシートをやめて、アヴァンシアのような5人乗りとし、荷室はワゴンらしく十分に広くして、足はばっちりスポーティに、とすれば、やった、ついに出た、やっぱりホンダはステーションワゴンを見捨ててなかった、待ってましたの一台だ、ということになるはずなのだが。

ワゴン好きのジレンマはいつまで続く?


ジェイド RSの1.5L 直噴ターボエンジン
(photo:Honda)

などと考えていたら、あっという間に、RSを名乗るガソリンターボ車が登場してしまった。まだハイブリッドの販売が一段落ついていないのに。これもリコール問題に端を発する新型車発表の遅れによる弊害か。しかしその1.5L直噴ターボは、新型ステップワゴンのチョイノリ試乗ですでに力強さを体感しているし、シャシーもRSでは強化されたようだから、これはかなりいいかもと思える。

とはいえ3列シートは残された。走りに振ったのであれば、スパッと5人乗りにして欲しかったところ。今後、日本専用車でステーションワゴンが作られる可能性は限りなくゼロだから、その点では中国市場サマサマ。せっかく中国にはあるジェイドの5人乗りを、ぜひ日本でもステーションワゴンとして売りだしてもらいたい。いつも言うようで申し訳ないが、普通のステーションワゴン、絶対に一定の需要はあるはずだ。ただ、そうしてまた売れなかったりすると、やっぱりステーションワゴンはだめという悪しき前例をまたまた作ってしまう。それも困る…。ワゴン好きのジレンマはいつまで続くのだろう。

 

試乗車スペック
ホンダ ジェイド ハイブリッド X
(1.5L 直4+モーター・7速DCT・292万円)

●初年度登録:2015年2月 ●形式:DAA-FR4
●全長4650mm×全幅1775mm×全高1530mm ●ホイールベース:2760mm
●最低地上高:140mm ●最小回転半径:5.5m
●車重(車検証記載値):1530kg(860+670) ●乗車定員:6名

●エンジン型式:LEB
●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・横置
●ボア×ストローク:73.0×89.4mm ●圧縮比:11.5
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●最高出力:96kW(131ps)/6600rpm
●最大トルク:155Nm (15.8kgm)/4600rpm
●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/40L

●モーター形式:H1
●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター)
●定格電圧:173V
●最高出力:22kW(29.5ps)/1313-2000rpm
●最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm

●バッテリー:リチウムイオン電池
●トランスミッション:7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)

●システム最大出力:112kW(152ps)
●システム最大トルク:-Nm(-kgm)
●JC08モード燃費:24.2km/L ※ハイブリッド X。標準グレード(ハイブリッド)は25.0km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング
●タイヤ:215/50R17(Yokohama Advan dB decibel BluEarth)

●試乗車価格(概算):-円 ※オプション:オプション塗装(ホワイトオーキッド・パール) 3万7800円
●ボディカラー:ホワイトオーキッド・パール

●試乗距離:約200km ●試乗日:2015年5月
●車両協力:株式会社ホンダカーズ愛知

 
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