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ジャガー XK クーペ スポーツ新車試乗記(第427回)

Jaguar XK

(4.2L・V8・6AT・1180万円)



2006年08月19日

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キャラクター&開発コンセプト

新型XKもアルミボディに

10 年振りのフルモデルチェンジで登場した新型XKは、英国で2006年3月、日本では7月に発売された。「XK」の名はジャガー草創期のXK120 (1948年)から始まり、米国ではXK-Eと称したEタイプ(1961年)、さらにXJ-S(1975年)を経て、先代のXK8(1996年)につながっている。新型XKもこれらジャガースポーツ同様に「スポーティング・ラグジュアリー」という性格を継承。クーペとコンバーチブルの2モデル体制も踏襲する。一方で新しい点は、現行XJシリーズで実績のあるアルミモノコックボディを採用したこと。パワートレインは従来からの4.2リッターV8「AJ- V8」とZF製6ATの改良版を使う。

伝統的にジャガースポーツのモデルライフはとても長い。最初のXKシリーズは13年、Eタイプは14年、XJ-Sは何と21年も基本設計を変えなかった。その例に従えば、新型XKもかなりの長寿モデルとなるだろう。

価格帯&グレード展開

クーペは1130万円~。コンバーチブルは100万円高

普通はクーペとコンバーチブル、どちらか一方の発売が遅いものだが、新型XKは同時発売。標準仕様のクーペは1130万円、コンバーチブルは100万円高の 1230万円。しかしそれらは9月以降の受注販売で、実際の初期デリバリー車は「スタイル・セレクションズ(STYLE SELECTIONS)」(1180万円と1280万円)という仕様だ。これには「コンテンポラリー」、「スポーツ」、「ラグジュアリー」という3つのテーマに沿ったカラーと装備が最初から組み込まれている。

変速機は先代同様に6ATのみで、英国本国にもマニュアル車はない。いずれも右・左ハンドルが選べる。試乗した「スポーツ」には、20インチタイヤとチャコールグレーの革シート、そしてACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=いわゆるレーダークルーズ)が標準で備わる。

また、7月のロンドン・モーターショーではイートン製スーパーチャージャーを追加した高性能モデル「XKR」(420ps、57.1kg-m 画像上)も発表されている。

パッケージング&スタイル

ワイド&マッシブ

外寸(カッコ内は先代比)は全長4790(-5)×全幅1915(+65 ※20インチタイヤ仕様)×全高1320(+25)mm。スリークな先代から一転、ワイドでマッシブになった。歩行者の衝突を検知すると100分の3秒でボンネットが持ち上がり、衝撃吸収ゾーンを確保する世界初の「ペデストリアン・デプロイアブル・ボンネット(Pedestrian Deployable Bonnet)」を採用するものの、やはりボンネットの位置は昔ほど低くない。見た目の印象を左右するホイールベースは160mm伸びて2750mmとなり、モダンな雰囲気が強まった。

アストンとの共通点

フロントエンドは60年代のEタイプを思わせる顔付き。しかし全体のスタイリングはEタイプの女性的な優雅さとは反対で男性的だ。むしろ同じフォード傘下のアストンマーティンによく似ている。新型XKのデザインは過去にアストンでDB7(1993年)をデザインしたイアン・カラムだから、気のせいではない。

見た目だけでなくハードウエアの部分でもアストンとXKの共通点は多い。いずれも接着とリベットで接合したアルミモノコックシャシーを採用。DB9とXKはいずれも2+2で、そのホイールベースは10mmしか違わない(XKが+10mm)。そもそもDB9から始まったこのスポーツカー用アルミシャシーは、ホイールベースを自由に伸縮できるモジュール構造が特徴だったはずだ。2シーターのV8ヴァンティッジもDB9のシャシーを140mm短縮して使っている。

広くなった前席。パドルシフトの採用

よく言えばジャガー伝統のデザインから脱却したインテリア。英国らしさは薄まったが、「新しいジャガー」を打ち出したいということだろう。ただ、この価格帯のスポーツカーであれば、もう少し非日常的なムードが欲しいところ。デザインや素材などにも、何か新しい試みがあればと思う。室内は先代より明らかに広く、トランスアクスルではないFR車にしては足元も広い。節度感のなかったJゲートのマニュアルレンジを廃止し、代わりに採用したパドルシフトや電動パーキングブレーキの操作性は良好だ。

後席は明らかに荷物置き

全長4.7メートル超ながら、後席は驚くほど狭い。大人は首から上が完全につかえて短距離でも不可。何とか座れるポルシェ911の「プラス2」より明らかに狭い。チャイルドシートの子供でもこれはちょっと厳しいだろう。逆に荷物置きとしては適当で、そのためか座面は深いラック状になっている。

「E-TYPE以来」のリアゲート

「Eタイプ以来」のクーペ用リアゲートは、ポルシェ・ケイマンSと比べたくなるほど長い。もちろんEタイプのような横開きではなく、上に跳ね上がる。広い荷室はちょっとしたスポーツワゴン風だ。床下には最近の新型スポーツカーでは珍しく、テンパータイヤが収まる。

基本性能&ドライブフィール

低速ではブイハチ、高回転ではシャープ

試乗車は20インチタイヤの「スポーツ」。リアフェンダーの樹脂製フェンダーリップが、はみ出したタイヤをカバーしている。シフトレバー横のスタートボタンを押すと、現行XJとほぼ同じ4.2リッターV8(304ps、42.9kg-m)がバオン!と派手に始動。しかし環境基準は三ツ星だ。

ゆっくりアクセルを踏み込んだ時の「ドロドロドロッ」というV8サウンドは米国で好まれそうだが、深く踏み込めば澄んだ音に変わり、一気にリミットまで吹け上がる。こうした音の変化は、サイレンサー内の排ガス流量を変化させるセミアクティブ・エクゾーストシステムのおかげだ。スムーズ過ぎてスポーツカーエンジンとしてはドラマに欠けるが、心拍数を上げずに速い点はGTカーらしい。0-400m: 14.4秒のタイムもAT車としては十分に速い。最高速はリミッターが効く250km/hだ。

パドルシフトで刺激的な走り

ZF製のトルコン6速AT「6HP26」もお馴染みのもの。しかしジャガー初のパドルシフトを操作すれば、「D」モードでも即座にマニュアル に移行。10秒ほど操作せず、スロットル操作も穏やかだと自動でオートに復帰という、ポルシェをはじめ他車にも採用が広がる理想的なロジックだ。

また、このニューXKからシフトダウン時のブリッピング機能も追加された。セミATでは珍しくないブリッピング機能だが、トルコンATではまだ少なく(国産なら日産車やレガシィの6気筒車にあるが)、ポルシェもまだ採用していない。これのおかげでシフトアップはもちろん、シフトダウンも速く、セミATに近いダイレクト感が味わえる。オートモードでは温厚なV8だが、マニュアル操作で積極的な運転スタイルを取ると俄然レスポンスは鋭敏だ。この時のXKはDモードの時と違って、別物のように刺激的になる。

身を引き締めたように

その鋭い走りを支えるのが、先代XK よりねじり剛性で31%(新旧コンバーチブル比では48%)増したというアルミボディだ。ボディサイズとV8の搭載を考えると、1690kgの車重は軽いと言うべきだが、やはり絶対的には軽くない。それよりボディ剛性の高さこそ、アルミボディのメリットだろう。ピュアスポーツのように足を固めたソリッドな乗り味ではないが、メリハリをつけた走りをすると電子制御ダンパー「CATS」のおかげか、エンジン同様に俄然ボディの動きもシャープになり、身を引き締めたようになる。荒れた路面では多少上下に揺すられるが、20インチの超扁平タイヤの割に当たりはそう鋭くない。

期待以上の燃費性能

燃費は予想以上に良かった。一般道で交通の流れに乗る日常的なシーンでは車載モニターで6.5km/L以上を楽々クリア。郊外の空いた道路なら7km/L台も無理なく維持できた。とにかく 2000回転も回せば十分なトルクがあり、アクセルを踏み込む必要がない。また、飛ばさなくても満足できる鷹揚な性格のおかげもある。「スポーツ」に装備されるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール、いわゆるレーダークルーズコントロール)を使えば、高速道路で10km/L台も無理ではないだろう。100km/h時のエンジン回転数は6速トップで1750回転ほどだ。

ここがイイ

「休日の朝。朝靄の中レーダークルーズに任せて高速道路を走り、峠へ。使いやすいパドルシフトを操ってワインディングを遊ぶ。そのまま郊外の洒落たレストランでブランチ。午後は彼女を誘ってショッピングにでも出かけようか」。そんなチョイワルオヤジにぴったり。いや皮肉じゃなくてそういうライフスタイルが楽しめそうに思えてくるのが、このクルマのいいところだ。単なるラグジュアリーカーでなく、ラグジュアリーとスポーツの二面性を兼ね備えているからだ。

「ガソリンが高いって?。でも水よりは安いだろ」という皮肉をどこかで聞いた。リッター 150円のガソリンより0.5リッターペットボトルに入ったミネラルウォーターの方が確かに高い。そうは言ってもやはり燃費はイイにこしたことはない。その点、完成度の高い6速ATとエンジンマネージメントに支えられた燃費の良さもまた、このクルマのいいところだろう。

ボディそのものは大きいが、最小回転半径は5.3メートルと小さいので小回りは効く。また、ボディ前後にパーキング時のアラーム(モニターで場所も分かる)が付くので、駐車時も何とかなる。けっこう毎日使えるクルマだ。

電子系デバイスの多さは最新車ゆえの良さ。オーディオはMP3のディスクにも対応しているし、ナビの地図も最新になった。カタログによればA.R.T.S. (コンピュータ制御・包括的乗員安全システム)があり、実際の効果の程はなんともわからないが、事故の際に乗員は旧タイプよりさらに安全になっているようだ。こういったあたりはフルチェンジのメリットだろう。

ここがダメ

スマートキーを携帯するだけでエンジン始動が可能なのはいいとして、ドアロックはリモコンで操作する普通のキーレスだ。先日試乗したスバル・ステラの場合、ドアロックは自動で、エンジン始動はキーを差し込むという変則パターンだったが、これとは逆のケースになる。どうも電波法の関係で日本ではドアロック機能が省かれたようだが・・・。最近のクルマ業界は電波法がらみの話が多い。

センタークラスターの奥に直立したナビモニターの画面が見にくく、これではタッチパネルの操作もやりにくい。ディスプレイの角度を可変できるようにすべき。

試乗をしたあとの印象として、全体のデザインはかなりカッコよく見えてきた。旧型のような、薄く流麗でクラシカルな雰囲気はなくなったものの、特にリアスタイルがいい。しかし、ジャガーEタイプの印象をリスペクトした、口を開けたノーズまわりのルックスはとってつけたようにも見えて今ひとつ。ここにEタイプを模したと思われるエンブレムがあるので、より「口」が強調されてしまう。同じ口でもなんだか雰囲気が違うのだ。フロントバンパーあたりをもう一度デザインし直したい気分になる。グリルの「網」もプラスチックだし。またデザイン上のアクセントなのか感度の問題なのか、最近珍しいオートアンテナがリアフェンダーに付く。これはやはりガラスアンテナの方がいいと思う。

総合評価

最近はやりのチョイワルオヤジというヤツは、おそらくこういうクルマに乗るのだろう。かつてエンスーといわれていたクルマ好きオヤジは、今思えば「鉄ちゃん」にも近い一種のオタク。ジャガーのクーペなんていうのは、お金に余裕はあるが最新ファッションとかにはそう興味のないクルマ好きオヤジ=エンスーオヤジが乗るクルマだったと思うのだ。そういうジャガークーペのイメージを変えて、カッコいいオヤジが乗り始めたのが先代XKあたり。ファッションからインテリアまで、ライフスタイルをトータルにキメられるファッショナブルな人が、クルマの良さだけでなくイメージの良さで買う。ベンツやBMWではオシャレではないという「粋」な人が選ぶ、人生の小道具としてのクルマだ。

むろん、そのために蘊蓄は欠かせない。幸いジャガーには英国というドイツ車とは異なったジェントルマン文化があったから、おしゃれな人には筋の通せるクルマなわけだ。キザともいえるライフスタイルを、蘊蓄を通してさりげなく見せることができる。実際、もともとお金のある人が乗るのだから、そういうことをやってもそう嫌みにはならない。

ところが最近のチョイワルオヤジは、基本的に成金が多い(失礼)から微妙だ。ITやマスコミ、あるいはもうちょっとヤバい筋で儲けた金で、カッコよく人生を飾りたいわけで、それにはエンスーや歴史を引きずった旧XKより、フォード傘下が強く感じられる新しいXKこそ、ふさわしいだろう。先代XKだとどう見ても古くマニアックに見えるが、XKはどこから見ても新しいクルマ、最新ジャガーだ。しかもメルセデスやBMWのスペシャルモデルのような記号性をノーマル車でも持つから、その意味ではお買い得感も高い。ブランド商品の一つとしてのジャガークーペなのである。

そういうとニューXKが悪いかのように聞こえるが、そんなことはない。前述の通り、すべてにおいてさすが10年目のチェンジと言える進化を果たしていると思う。ただし旧型がエンスーなら新型はブランド。そうした差は間違いなくある。まあ、エンスーなクルマ好きオヤジには、旧型XKの中古車が安く買えるようになるだけに、かえってありがたいが。

象徴的なのがジャガー特有のJゲートが逆Lゲートになったことか。もはやJゲートでマニュアルシフトする必要はなく、使いやすいパドルでそれが可能だ。これが伝統の放棄に映るか、進化に映るかがこのクルマの評価を二分するはず。チョイワルオヤジなら迷わず買いだが、エンスーオヤジは躊躇するはず。時代の進化を受け入れるか、自分の価値感にこだわるか。ポルシェ911でいえば10年前に出た996型のようなクルマだ。最新の911(997型)は一種のパイクカーとして昔のカタチのイメージに戻ったからこういう悩みはないのだが、新型ジャガーXKにはそんな価値観の二者選択を迫る、罪作りなところがある。

試乗車スペック
ジャガー XK クーペ スポーツ
(4.2L・V8・6AT・1180万円)

●形式:CBA-J435A●全長4790mm×全幅1915mm×全高1320mm●ホイールベース:2750mm●車重(車検証記載値): 1690kg(F:920+770)●乗車定員:4名●エンジン型式:5B●4196cc・V型8気筒・DOHC・4バルブ・縦置●304ps (224kW)/6000rpm、42.9kg-m (421Nm)/4100rpm●カム駆動:チェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/71L●10・15モード燃費:6.9km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:前255/35ZR20、後285/30ZR20(DUNLOP SP SPORT MAXX)●試乗車価格:1180万円(含むオプション:なし)●試乗距離:約150km●試乗日:2006年7月 ●車両協力:渡辺自動車 ジャガー名古屋中央

公式サイト http://www.jaguar.co.jp/jp/ja/home.htm

 
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