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ダッジ JC SXT新車試乗記(第549回)

Dodge JC SXT

(2.7リッターV6・6AT・362万2500円)

ミニバン、SUV、ワゴンが一つになった、
“トリプル・クロスオーバー”
ダッジ「JC」に試乗!

2009年03月13日

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キャラクター&開発コンセプト

ありそうで無かった新型クロスオーバー

クライスラー社のダッジブランドから登場した「JC(ジェイシー)」は、新型“トリプル・クロスオーバー”車。その謳い文句が意味するのは、ミニバンのように室内が広くて、7人乗りで、SUVのようにスポーティでスタイルが力強く、乗用車(セダンやステーションワゴン)のような走りと快適性を備える、というもの。

要するに従来のアメリカ車に多かったSUVにサードシートを押し込んだようなモデルではなく、乗用車をベースに(プラットフォームはミドルクラスセダンのアベンジャーがベース)、ミニバン&SUVモデルに仕立てた、というものだ。

本国での車名は「ジャーニー」

JCはアメリカ本国では「ジャーニー(Journey)」と呼ばれるが、日本ではいすゞが販売するマイクロバスと同名になることから、開発コードに因んで「JC」とされたようだ。なお英語でJCと言えば、スラングでイエス・キリスト(Jesus Christ)を指す場合がある。

ダッジ 本国サイト>2009 ジャーニー(英語) http://www.dodge.com/en/2009/journey/
いすゞ>ジャーニー http://www.isuzu.co.jp/product/bus/jny_pv/index.html

価格帯&グレード展開

2.7リッターV6+6ATで、362万2500円

米国には2.4リッター直4や3.5リッターV6、FFの他に4WDもあるJCだが、今回導入されたのは日本のアベンジャーと同じ2.7リッターV6でFFの「SXT」(右ハンドル)のみ。ただし4ATだったアベンジャーに対して、JCは6ATとなっている。

SXT  2.7リッターV6・FF・6AT  362万2500円  ★今週の試乗車

セダンのアベンジャーには廉価版の「SXT ベーシック」(325万5000円)と豪華版「SXT」(413万7000円)の2つがあるが、JCのSXTは前者のベーシックに近い内容。HDDナビやレザーシートなどは備わらない。ただしアルミホイールやサイドビューカメラなど、欲しい装備は一通り備わっている。

パッケージング&スタイル

いかにもアメリカンSUV


ボディカラーはダッジらしい赤(インフェルノレッドクリスタル)など7色を用意。試乗車はソリッド(ただしクリアコート)のストーンホワイト

ボディサイズは全長4895mm×全幅1880mm×全高1720mm。全長はアルファード、全幅はハイラックスサーフ、全高はエスティマ並みといったところだ。正統派アメリカンミニバン?であるクライスラーのグランドボイジャーだと全長は5.1メートル超、全幅は2メートル超と二回りは大きい。JCは日本的な感覚でも今やそう大きくない部類に入る。

225/65R17の大径タイヤ(本国には225/55R19の設定もある)を履き、ホイールアーチを張り出させたスタイルは、いかにもアメリカンSUVらしいもの。最低地上高は195mmあり、確かにミニバンというよりはSUVに見える。

 

インテリア&ラゲッジスペース

一見アメリカンな作りだが、実によく工夫されている

インパネデザインはクライスラー系モデル全般に共通するシンプルなもの。メタル調塗装やメッキパーツなどで質感に気を配りつつも、全体としてはアメリカンファニチャーやGE社製の冷蔵庫に通じる、気のおけない作りがアメ車らしい。小物入れのカバーがボタンを押しても一瞬上がってこなかったり、すぐに閉まらなかったり、みたいな大ざっぱさはいかんともしがたいが、これもアメリカらしさの一つであろう。

 

ところが細部を見てゆくと、実によく工夫されていて評価がずいぶん変わってくる。バックミラーの上にはリアビューインテリアミラー(リアシートの様子が見渡せるもの)、ステアリングの裏にはオーディオ操作用スイッチを備えるし、ダッシュボードの小物入れは350ml缶が2本冷やせる保冷庫になっている。空調ダイアルは運転席、助手席、後席と3ゾーン別々で調整できるものだ。さらに助手席の座面クッションの下は、ノートパソコンくらいのものが入る収納スペースになっていて、思わず「おまえはスズキの軽か!」とつっこみを入れたくなる。

サイドビューカメラ標準。運転ポジションもちゃんと取れる

助手席ドアの内側には、クライスラーグループ車(グランドボイジャー、ダッジ・ナイトロ、ジープ・パトリオットなど)でおなじみ、サイドビューカメラのモニターを配置(アベンジャーには無かったが)。常時表示が可能だが、スイッチでオン・オフもできる。視線移動量が大きいので、走りながらだとちょっと見にくいが、左までギリギリに寄せたい時などには確かに便利だ。

 

シートはリクライニングは手動だが、前後と上下は電動というもの。調整幅はやたらとあり、小柄な女性でもそう困ることはないだろう。

スタンダードな作りのセカンド。90度開くリアドア

セカンドシートは欧州車のようなカッチリした作り。天井にはエアコンの空調操作ダイアルと吹き出し口、そしてLED式のルームライトやスポットを配置。足もとにはショートブーツくらいなら入りそうな床下収納ボックスがある。350ml缶なら最大12個入るようで、カタログの写真にはクラッシュドアイスと一緒に詰め込まれている。もちろんボックスは取り外し可能だ。

背もたれは40:20:40分割でリクライニングと折り畳みが可能。座面は60:40分割で前後に約120mmスライドする。不便だったり悩んだりすることのない、ごくごくスタンダードな作りだ。

ちょっと驚いたのはリアドアが90度まで開くこと。今度は思わず「おまえはダイハツの軽か!」とつっこみを入れたくなる。このクラスのクルマ(しかもアメ車)でこういう作りは珍しいと思う。

「5+2」は謙遜? サードも十分に実用的

これくらいのボディサイズのSUVだと、サードシートはエマージェンシー的なものが多く、JCもカタログでは「5+2」とうたっている。しかしFFベースでミニバン的なパッケージングのため、多くの3列シートSUVに比べればそのサードシートは実用的だ。着座姿勢もちゃんととれるし、セカンドシートの人に多少前に詰めてもらえれば足もとのスペースもまあ何とかなる。全列をカバーするカーテンエアバッグは標準装備だ。

 

乗り降りはレバー操作でセカンドシートの座面を跳ね上げ、前にスライドさせて行う。この時の通り道が広いので大人でも楽に乗り降りできる。

左半分だけフルフラットなんてことが可能

荷室の見どころはシートを折り畳んだ時。サードシートは50:50の分割可倒式で、きっちり水平に倒れるし、セカンドシートの背もたれも水平に倒れ、さらに助手席の背もたれまで水平に倒れて、ほぼ完全にフラットになる(すき間はあるが)。最大荷室長は2743mmだ。

なので、例えば左側の各シートを畳んだところにサーフィンのロングボードやカヌーなどの長尺物を積み、右側に3人(前から1+1+1)ないし4人(1+2+1)乗る、なんてことが可能だ。

荷室の左壁にはやはりクライスラー車で定番の充電式フラッシュライトが備わる。床下には大きめの収納があり、その下にはパンタグラフジャッキとホイールレンチ。スペアタイヤはテンパータイプで、吊り下げ式だ。

基本性能&ドライブフィール

パワーはないが、低回転で穏やかに

JCの2.7リッターV6・DOHC(185ps、26.1kgm)は先に触れた通り、ほぼアベンジャーと同じもの。DOHCヘッドのV6らしく、シュンシュンと軽く回る近代的なユニットで、「ダッジ」、「チャージャー」、「V8ヘミ」、「ボールド(大胆な)」みたいなキーワードからマッチョなものを期待してしまうと、肩すかしをくらう。下からのトルクで、ゆったり走らせるタイプだ。

車重は日本仕様のアベンジャーより250kgほど重い1810kgだが、意外に出足がいいのは変速機がアベンジャーの4ATに対して、6ATだからだろう。1速ローのギア比はいかにも低そうで、発進後すぐに2速、3速へとシフトアップ。燃費のいい低回転を維持するため、こまめにシフトチェンジを繰り返しながら、粘りのあるエンジンで粛々と街中を走る。また減速時も欧州車のように順々にシフトダウンしてエンブレを使い、おそらくは燃料噴射をカットして燃費を稼ぐ。パワーはないが、そう不満なく走れてしまう。それがパワートレインに関する印象だ。

ダイムラー・クライスラー時代の名残であるティップシフトならぬ、オートスティック(シフトレバーを左右に動かすマニュアルモード)を使い、エンジン回転を引っ張ることも出来るが、ペースが著しく上がるわけでないので、すぐにゆったりした走りに戻ることになる。誰でも自然と安全運転になるクルマだ。

快適に遵法運転できる

シャシーに関しても、スポーティなものを期待すると裏切られる。あくまでアメリカンミニバンらしく、ゆったり、まったり、ソフト&スムーズ。アメリカ本国で重視されるロードノイズ対策のおかげだろう、ボディ後部からの音の侵入もなく、車内全体が静かだ。気になるのは全開加速時にのみ聞こえるエンジン音くらい。1年半ほど前に乗ったアベンジャーのタイヤは韓国製(Kumho Ecsta KH11 )だったが、JCにはヨコハマのアスペクが付いており(グランドボイジャーも同銘柄)、これも乗り心地とロードノイズの両方に効いていると思われる。

パワーそのものがないことも手伝って、操縦安定性も徹底的に安定サイド。コーナリングでも破綻のしようがない。サスペンション形式はアベンジャーと同じで、乗用車的にフロントがストラット、リアがマルチリンクと近代的だ。

高速巡航もクルーズコントロールを設定して、ひたすら淡々と流すとのが快適だ。アメリカのハイウェイで一般的な制限速度の55mph(約88km/h)から、郊外のインターステートに多い65mph(約105km/h)~75mph(約120km/h)くらいがちょうどよく、それ以上になると途端に加速が鈍くなる。ストレスなく、快適に遵法運転できるクルマだ。

試乗燃費は6.2km/L、10・15モードは8.3km/L

参考までにいつものコース(約100km)での試乗燃費は、車載燃費計によると16.1L/100km=6.2km/Lだった。10・15モード燃費は8.3km/Lだ。燃料はレギュラーでも良さそうなものだが、ハイオク指定。タンク容量は77リッターだ。

なおこの車載燃費計、リセットボタンを押してもリセットされたようには見えないが、実際には走り出すとリセットされて再計測を始めるという珍しいパターンのものだ。

ここがイイ

快適に、不満なく走る

SUVの進化系、あるいは別体系ともいえるクロスオーバーというジャンルの乗り物として、かなり新しいタイプのクルマだ。スタイリングもよくまとまっていて、けっこうカッコよく目に映る。室内空間も不満ないし、この手のクルマとしてはシート高が高くないから乗り降りもしやすい。

小回りこそ効かないが、アイポイントが高いためサイズの割に意外と取り回しも楽。乗り心地も大らかで、静粛性も高い。柔らかで快適なのに、さほどロールもしないし、ワインディングでもこの手としてはそう不満なく走る。いわゆる走りのスポーティさについては凡庸なレベルとしか言いようがないが、それゆえに良い意味で飛ばす気にならないでいられることは、このクルマのいいところといえるだろう。

多彩な装備、使い勝手

装備を詳細にみれば、ステアリング裏左右のオーディオスイッチは使いやすいし、オーディオの音は確かにいい。「ラインイン」が正面にあるのも、デジタルオーディオ派には便利だろう。オプションで天井につけるフリップダウンモニターも用意されているから、ファミリーカーとして不満はない。

またエアコン吹き出し口が2列目、3列目天井にあるが、温度調整ダイアルもちゃんとある。室内が見渡せる凸面鏡だとか、クライスラー車共通のサイドビューモニターとか、助手席シートバックテーブル、座面下ボックスなどの小技が一杯用意されており、日本車をよく研究したことがうかがえる。シートアレンジも多彩で、日常的に使うクルマとしては相当にレベルが高い。ミニバンの後に来るクルマとして、今後このタイプは増えてくるだろう。

ここがダメ

インテリア質感、走りの大人しさ

ある意味、期待を裏切らないインテリア質感の低さ。今となってはあまりにプラスチッキーで、バリも若干残っている部分があった。メタル調アクセントも高級感にはなっていない。右ハンドル化のため、左足の置き場もやや狭く感じられる。

逆に期待を裏切る走りの大人しさ。厳ついアメリカンSUVを期待すると、まるで違う。もちろんそれこそ「ここがイイ」でもあるのだが。

総合評価

乗ってみると、かなりまともなクルマ

GMとセットで先行き不透明な企業の筆頭にあげられているクライスラーは、ダイムラーをもってしても再建できなかったわけで、かくなる上はGMとの合併、あるいはフィアットによる支援、はたまた中国メーカーによる支援など、もはや何があってもおかしくない状態。そんな状態の会社から、まともなクルマが出るはずもない・・・・・・とは言えないのが面白いところで、JCは乗ってみるとかなりまともなクルマだ。いや、それどころか、クルマのあるべき姿(北米においての話だが)を示唆さえする、素晴らしい意欲作だ。

北米のクルマとしてはそう大きくないが、その割に多人数が乗れる居住空間がちゃんとあるし、本文にあるように「おまえは軽か」といいたくなるほど様々な便利装備、使い勝手などの工夫が凝らされている。実用車としては、まず文句のない仕上がりだ。

そして何より評価すべきは、SUVでもなくミニバンでもなく、本当にクロスオーバーと呼ぶべきマルチなクルマとして計画されていることだろう。こういうタイプのクルマはSUVの次に来るものとして、たぶん今後増えていくはず。今のSUVの多くは今後モデルチェンジによってこの手のクルマに変わっていくだろう。

ライフラインとして機能するクルマ

オンロードはもちろん普通に走れ、ちょっとしたオフも走れ、収納能力は高く、乗用車としても不満ない乗り心地と居住空間を持ち、(北米では)そう大きくないサイズ。もちろんそう高級な作りではないから(その分価格は安い)、日々の足としてガシガシ使う類のクルマだ。アメリカで「実用的に使う道具としてのクルマ」をまじめに考えていくと、たぶんこういったクルマに行き着くと思われる。プレミアムとかスポーティとかいった付加価値(実用上は余分なものかも)を取り払って、クルマがなくちゃ生きていけない地域に住む大衆のライフラインとして機能するクルマ。その意味では、ありそうでなかったクルマなのでは。

北米ではたぶん、日本の感覚で250万円を切るくらいの価格で買えるだろうし、クルマに過剰な思い入れのない人々が、ライフラインとするにはとても手頃だ。これこそ米国車の良心とも思えるのだが、さて、日本で乗るにはちょっと考え込んでしまう。道路事情的にはもう少し小さい方が使い勝手がいいし、小回りも効いて欲しいし、燃費ももうちょっと伸ばしたいところ。価格もけして高くはないのだが、それでも300万円をはるかに超えている。
「これから伸びてくるクロスオーバー車で、まさに北米の良心ともいえるクルマなんだ」。
そう説明すれば一部の人はわかってくれるかもしれないが、一般にはなかなか理解されづらいだろう。ダッジグリルが威張っているので、より本質が人に伝わりにくい、ということもあるかもしれない。

それでもアルファードあたりと価格的には大差ないから、3列シート車を必要としながら、いかにも日本的なミニバンをよしとしない人にとっては、救いの神かもしれない。欧州のミニバンではシトロエンC4ピカソと同じくらいの価格だが、さてどれにするかと考えたとき、JCはけっこう魅力的に見えてくる。ダッジバンにも通じる道具感を評価できるのであれば、日本で乗っても十分満足できるはずだ。

試乗車スペック
ダッジ JC SXT
(2.7リッターV6・6AT・362万2500円)

●初年度登録:2009年1月●形式:ABA-JC27 ●全長4895mm×全幅1880mm×全高1720mm ●ホイールベース:2890mm ●最小回転半径:6.0m ●車重(車検証記載値):1810kg( 1040+770 )●乗車定員:7名●エンジン型式:2 ● 2735cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:86.0×78.5mm ●圧縮比:9.9 ● 185ps(136kW)/ 5500rpm、26.1kgm (256Nm)/ 4000rpm ●カム駆動:- ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/77L ●10・15モード燃費:8.3km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 マルチリンク ●タイヤ:225/65R17( Yokohama Aspec )●試乗車価格:-円( 含むオプション:- -円 )●試乗距離:140km ●試乗日:2009年3月 ●車両協力:中京・愛知クライスラー株式会社

 
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