キャラクター&開発コンセプト
RAV4、CR-Vがライバル
2004年9月11日に発売された「JM(ジェイエム)」は、FF車(エラントラ)ベースのライトSUV。事実上サンタフェの後継車だ。同年2月にシカゴショーで「Tucson(ツーソン)」としてデビュー、4月の韓国を皮切りに、今夏から欧州、秋に北米で発売する。日本と欧米がほぼ同時発売なのは、ヒュンダイにとって最後の市場である日本で、ブランドイメージを高めるためだ。
トヨタRAV4、ホンダCR-VがライバルとなるJMの特長は、同じように乗用車ライクの快適性や軽快感、ある程度の悪路走破性、都会にも郊外にも似合うスタイルといったところ。ヒュンダイが世界で掲げる価格競争力の高さもセールスポイントだ。すでに発売された地域では大人気でバックオーダーを抱えるという。目標台数は1000台/年とされた。
なぜツーソンでなくJM?
米国や欧州はもちろん、お隣り韓国でも車名はツーソンとなっている。ツーソンは米国アリゾナ州南部のサボテンに囲まれた町の名前で、西部劇のロケ地としても有名だ。ワイルドなイメージや語感のユニークさから言ってSUVの車名にはピッタリなのに、なぜJMになったのか。理由は2002年以降、日本の商標制度では地名の商標申請が出来なくなったからとのこと。そこで「Joyful Mover」の頭文字から取った開発コード「JM」から名付けたそうだ。
価格帯&グレード展開
装備充実のモデルで187万9500円~
グレードは3つで、FF車のベーシックモデル「2.0GL」(169万500円)、装備充実の「2.0GLS」(187万9500円~)、2.7リッターV6・4WD車の「2.7GLS」(231万円~)。ワイドフェンダー&サイドガーニッシュと235/60R16タイヤをセットにした「Aパッケージ」(7万3500円)や本革シート&サンルーフの「Lパッケージ」(16万8000円)といったパッケージオプションが追加できる。ただし、全車オーディオはオプションだ。
装備が違うので正確な比較はできないが、日本の同クラス車より30万円ほど安い感じだ。特にV6搭載車は日本車だとクラスが一つ上になるので、もっと価格差が生じる。
パッケージング&スタイル
短くてワイド
試乗車はワイドフェンダー付き(Aパッケージ)で、全長4325mm×全幅1830mm×全高1730mmと全長は短いが、幅は完全にアメリカンサイズだ。
スタイリングはこの手の軽量SUVの典型で際だった個性はないが、「素」の魅力があると言えばある。クルマに詳しくない人は、国産車と区別が付かないと思う。ホイールベースは2630mmと平均的。
簡素に見えて、実は装備満載
センターコンソールのデザインはトヨタ・ハリアーのようだが、それ以外は特長がない。しかし、簡素に見えて装備は充実している。フロントワイパーには停止位置のガラスに熱線を仕込んだディアイサー機能付きで、雪国では便利だ。GLSのエアコンはフルオートで、空気の汚れを感知すると自動的に内気循環になるAQS(エア・クオリティコントロール・システム)を装備。GLSなら前席、サイド、カーテンと計6エアバッグが標準装備される。
後席も十分な広さ。天井が高い分、ゴルフクラスより当然居住性は高い。シートの座り心地も問題ない。後席の折り畳みは、座面が自動的に沈み込むワンアクションで簡単だ。
ハッチ付のリアゲート
リアゲートは独立して開くガラスハッチ付き。オープナーのボタンの場所を示す「DOOR」「HATCH」という刻印が面白い。わざわざキーレスを使わずハッチが開けられて便利だ。容量も使い勝手も申し分ない。
基本性能&ドライブフィール
走りに不満なし
試乗したのは2.0リッター4気筒(144ps、19.0kgm)の2.0GLS。簡単に言って運転した感じはRAV4などに近い。6000回転まで回るエンジンは下から上まで十分パワーがあり、4ATの変速も滑らか。多少エンジン音は大きいと感じたが、これといって走りに不満はない。
1830mmのワイドフェンダー付だが、取り回しも意外に楽。最小回転半径は5.4メートルだ。乗り心地も悪くなく、荒れた舗装路でも滑らかに走り、ボディのがっしり感にも不満がない。後席でも十分に快適だ。
高性能タイヤを装着
台風直下の試乗になったので操縦性は十分に試せなかったが、濡れた路面で走った限りは安定性が高く、限界は高い。タイヤはブリヂストンのオンロード向け高性能タイヤ「TURANZA ER30」で、これのウエット性能がすごくいい。なにしろ大雨にもかかわらずアンダーステアがほとんど出ず、ABSさえなかなか作動しなかった。
高速道路ではややアンダーパワー感があり、トップスピードは伸びない。それでも150㎞/h程度の巡航は難なくこなし、強風の中の試乗だったが横風の影響もそう強くなく、直進性もいい。概して不満のない走りといえる。
ここがイイ
3年前のサンタフェ試乗の時も書いたが、とにかくヒュンダイ車は日本車並のクォリティを持っている。動力性能、インテリアなど、乗ってみるとよくできた日本車みたいで、特に不満をつけるところがない。エクステリアデザインもJMではすっかり洗練されている。ことデザインに関して言えばTB同様、どんどんよくなる最新ヒュンダイ車、という感じだ。同様に走りや内装、シート形状なども本当に何の不満もない。サンタフェが2000年のデトロイトショーでデビュー、JMが4年後のシカゴショーでデビューと、こうしたライトSUVをかつての日本車同様の4年サイクルでフルチェンジするあたりに、韓国車の勢いが感じられる。旧RAV4はモデルチェンジまでに6年、新RAV4もすでに4年が経過しているのだから。
したがって生活の足としてじっくり乗るならこの価格は魅力。SUVであるだけにセダンなどより付加価値が高く、その分、知名度の低さもカバーできるだろう。オーディオレス(おそらく車両価格を抑えるためだと思う)なのも、好みの社外オーディオ&ナビをつけられるだけにかえってうれしい。
ここがダメ
もはやライトSUVとしてはなんら不満をいうところがないが、逆にこれはいい、と強く誉めたい部分も見あたらなかった。すべてがバランスよく出来たそつのないモデルで、かつてのトヨタ車のよう。特に、SUVゆえに走り、騒音、乗り心地などにさほどシビアにならなくてすむ上、これまで各社のやってきた工夫(フォールダウン式リアシートとか)も「後出しジャンケン」ながら詰め込まれている。まあ、強いて不満を言うなら、なぜかツルツルした革巻きハンドル。ちょっと細身で、グリップ感もあまりよくない。
総合評価
資料によると2003年世界のセールスチャートでは、GM、トヨタ、フォード、VW、ダイムラークライスラー、PSAグループに次いで、ヒュンダイは7位に躍進(2000年の資料では生産台数で世界7位と言っていた)。以下、日産、ホンダ、ルノー、フィアット、スズキ、三菱と続く。つまりヒュンダイは大量生産・大量販売を旨とするメーカーなわけで、特にトヨタを相当意識していると思う。80年代に躍進したトヨタ同様、個性は強くないものの、高品質で低価格な商品を北米で売ることがその戦略だろう。そこから生まれた最新車がJMと言うことになる。
ゆえにJMには悪いところが見あたらない。デザインは洗練されたし、パッケージングもいいし、ユーティリティーも不満ない。程々によく走り、シフトのつながりはよく、乗り心地も柔らかめでいい。これで日本車より安いというのだからすごい。近いとはいえ海を越えてくるわけで運賃もかかるだろう。こと韓国に関してはそう賃金水準は低くないはずだし。いったいどうやって安く作っているのだろうかという疑問さえわいてくる。
3年前のサンタフェの試乗記を読んでもらうとわかるが、日本車が個性を追求し始めた一方で、韓国車は定番商品化して売れ続けるという道をずっと歩んできている。その結果が世界7位だと思うし、毎日使うのにJMはサンタフェ同様、何ら不満がない。しかし、ブランド好きな日本ではサンタフェが苦労したように、今の知名度のままでは販売はなかなか厳しいだろう。
とはいえ、3年前と明らかに違っているのは、最近の韓流ブームだ。日本で韓国のスターがもてはやされるということは、3年前には想像だに出来なかった。韓国ものは今やブランドになったのだ。やはり現代はマーケティング勝負の世界。出来のいいヒュンダイ車なら「仕掛ければ」日本でも必ずや売れるはず。現代ジャパンには現代(げんだい)にふさわしいマーケティング戦略を仕掛けて、現代車を売り出して欲しいものだ。そこがこのクルマに一番不足している部分だと思う。
試乗車スペック
ヒュンダイ JM 2.0GLS(Aパッケージ)
●形式:GH-JM20●全長4325mm×全幅1830mm×全高1730mm●ホイールベース:2630mm●車重(車検証記載値):1480~1510kg(F:ー+R:ー)●乗車定員:5名●エンジン型式:G4GC●1975cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●144ps(106kW)/6000rpm、19.0kgm (186Nm)/4500rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/58L●10・15モード燃費:11.4km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:235/60R16(BRIDGESTONE TURANZA ER30)●価格:195万3000円(試乗車:同じ)●試乗距離:約100km
公式サイトhttp://www.hyundai-motor.co.jp/


