キャラクター&開発コンセプト
奇抜なデザインが目を引く、新種のコンパクトカー
2010年2月に欧州で市販バージョンが発表され、日本では2010年6月9日に発売された「ジューク」は、新しい“コンパクトスポーツクロスオーバー”。日産は「コンパクトカーの新しいスタイルを提案する新型車」と定義しており、ラインナップ上はデュアリスやムラーノが属する「SUV」カテゴリーではなく、マーチやキューブ等が属する「コンパクトカー」カテゴリーに分類される。
ベースはルノー・日産の主力コンパクトカーでおなじみのBプラットフォームだが、ワイドトレッド化や剛性アップでスポーティなハンドリングを追求。エンジンは従来の1.5リッター「HR15DE」をベースに、1気筒当たりインジェクターを2個としたデュアルインジェクター等の採用によって中低速トルクを強化。またおなじみ「エクストロニック CVT」も、国内向け普通車で初となるジヤトコ製の副変速機付(2段変速)として、変速比のワイド化を図っている。その他、スイッチの表示が2パターンある新タイプの車両情報ディスプレイも目新しいところだ。
日・欧・米で販売するグローバルカー
日本国内での目標販売台数は月間1300台と控えめだが、受注は発売一週間(6/15時点)までに目標の4倍以上となる5296台を達成したという。これは同じく一週間で5000台を受注したデュアリス(月間目標2000台)に匹敵する好調な滑り出しだ。さらにメインマーケットとなる欧州では2010年10月に発売予定で、追って北米にも投入される。
生産拠点は、日本と米国向けが神奈川県横須賀市の追浜(おっぱま)工場。欧州向けは英国サンダーランド工場となる。
なお「ジューク(Juke)」とは英語で「フットボールなどのスポーツで、フェイントをかけるなどしてディフェンスをかわす」の意。そこから「このクルマのもつ機敏さと、乗る人が仕事やプライベートで日々チャレンジする前向きさをイメージして命名した」という。ちなみに語源は異なるようだが、ジュークボックス(Jukebox)のジュークも、スペリングは同じだ。
価格帯&グレード展開
今のところ1.5リッター・FFの2グレード
今回発売されたのは1.5リッター直4+CVTのFF車で、グレードも2種類とごくシンプル。ベーシックグレードの「15RS」と上級グレードの「15RX」(試乗車)で、後者はアルミホイール、オートエアコン、売りの一つである「インテリジェントコントロールディスプレイ」等を標準装備し、レッド内装も無償で選べるほか、さらにオプションでキセノンヘッドランプ、インテリジェントキー、サイド&カーテンエアバッグ等が選べる。内容から言って、上級の「15RX」がだんぜんお買い得で、初期受注の98%が集中したのも納得できるところ。オーディオやナビ関係は全車オプションだ。
【ジューク】
1.5リッター直4(114ps、15.3kgm) CVT・FF
10・15モード燃費:19.0km/L / JC08モード燃費:17.2km/L
■15RS 169万0500円
■15RX 179万0250円 ★今回の試乗車
秋には直噴ターボ・4WDを追加予定
また2010年秋には、新開発の1.6リッター直噴ターボ「MR16DDT」搭載車を追加する予定。こちらはFFの他、リアデフにランエボの「AYC」のようなトルクベクタリング機構(左右輪の駆動力配分を電子制御する)を備えた「ALL MODE 4x4-i(トルクベクトル付)」仕様が用意される。言わば、「ミニGT-R」みたいなものか。
なお、欧州仕様車のエンジンはこの「MR16DDT」の他、1.5ディーゼルの「K9K」、1.6ガソリンの「HR16DE」の3種類だ。
パッケージング&スタイル
深海魚みたいな顔、昆虫みたいなシルエット、Zみたいな後ろ姿
今や「デザインの日産」と言っていいほど、斬新なクルマが次から次へと出てくる日産だが、「マジで市販車?」「ホントに売るの?」と思わせるインパクトでは今回のジュークが白眉だろう。
いちいち文字にするのは野暮なのだが、一通りポイントを挙げてゆくと、まずは深海魚?みたいなフロントマスク。いわゆる「前7:3」の写真をズーム気味に撮っても、広角レンズで撮ったように見えるのは、プロポーションが異様に「頭でっかち」だからだ。
また「フォグランプみたいに見える丸形ヘッドライト」と「ヘッドライトみたいに見えるポジションランプ」も面白い。丸形の方はレンズカット風のギザギザを内側に付けるなど、一見昔からある汎用タイプに似せてあるが、実際には微妙に異形のマルチリフレクターになっている。
ボディ側面には前後のフェンダーアーチがドアパネルまで巻き込んで大きく張り出し、うねりまくっている。ルーフラインはファストバッククーペ風に後ろ下がりで、サイドウインドウも小さい。リアのドアハンドルをCピラーに溶け込ませて2ドアクーペ風に見せたのはアルファロメオに対してバツの悪い部分だが、こうしたかった気持ちはよく分かる。
そして後ろ姿は、思い切り湾曲させた小振りのリアウインドウとブーメラン型のリアコンビライトで、まさに現行フェアレディZ風。車高が高いから、「Z クロスオーバー」風か。
ショート&ワイド、SUVにしてはロー
ボディサイズは全長4135mm×全幅1765mm×全高1565m。全長はティーダより短く、全高も大差ないが、特異なのは全幅が1765mmもあること。これまで日産のBプラットフォーム車は全て全幅が1.7メートル以内の5ナンバーサイズ車だったから、デュアリス(格上のCプラットフォームを使用)の1780mmに迫る横幅はクラス破り。一方、ホイールベースは現行(2代目)キューブと同じ2530mmで、そのあたりにBプラットフォームらしさが残っている。
| 全長 | 全幅 | 全高 | ホイールベース | |
|---|---|---|---|---|
| 日産 キューブ(現行2代目) | 3890mm | 1695mm | 1650mm | 2530mm |
| トヨタ イスト(現行2代目) | 3930mm | 1725mm | 1525mm | 2460mm | 日産 ジューク | 4135mm | 1765mm | 1565mm | 2530mm |
| 日産 ティーダ | 4250mm | 1695mm | 1535mm | 2600mm |
| 日産 デュアリス | 4315mm | 1780mm | 1615mm | 2630mm | BMW X1 | 4470mm | 1800mm | 1545mm | 2760mm |
インテリア&ラゲッジスペース
高めのアイポイントで、車両感覚がつかみやすい
フロントウインドウは小さめだが、アイポイントは高く、しかもAピラーが手前側にあるので、視界は良好。ボンネットやポジションランプ(空冷ポルシェ911にあったフェンダーの峰みたいにしっかり視界に入る)もあるので、車両感覚もつかみやすい。最小回転半径も5.3メートルとまずまず小さいから。女性でも「運転しやすい」と感じるはずだ。
マットな質感の樹脂パネルはウエットスーツをイメージしたとのこと。「15RX」のシート地もよく見ると、魚の鱗(ウロコ)っぽい幾何学模様でユニークだ。また、言われないと気付かないが、フィン(足ひれ)をイメージしたというドアアームレスト部のデザインも面白い。安っぽさを感じさせないデザインは最近の日産が得意とするところだが、今回もお見事。
モチーフはオートバイ
センターコンソールのモチーフは、オートバイの燃料タンク。よく見ると確かにシフトレバーのベース部分がタンク形状になっていて、ホンダやスズキのデザイナーは「やられた」と悔しがっているのでは?
上級の「15RX」ではブラック内装+メタリックグレーパネルのほか、目を引くブラック&レッド内装+レッドパネル仕様も選べる。下位グレードの「15RS」だと黒内装しか選べないので、その意味でも「15RX」がおすすめだ。フードの付いた2眼メーターもオートバイをイメージしたという。
スイッチ文字を2パターンで表示
新採用の車両情報ディスプレイ「インテリジェントコントロールディスプレイ」(「15RX」のみ)とは、センターコンソールの操作パネル一つで、エアコン操作とドライブモードの切り替え操作を行うもの。これが面白いのは、それぞれの操作時に合わせて操作スイッチの文字や絵文字まで変えてしまうことだ。
これは特定波長のみ透過する特殊フィルターと2つのLEDランプを使った2色切り替え機能によるもの。液晶タッチパネルと違って、スイッチ式ならブラインド操作が可能というのがメリットだ。
ドライブモードに切り替え、「ノーマル」を選べばカラー液晶のディスプレイにはエンジントルク&電圧を表示。「スポーツ」を選べばエンジンパワーを、「エコ」を選べばエコ運転度を表示する。またどのモードでも、エコ情報(平均燃費の履歴など)を呼び出すことが可能だ。日産GT-Rの多機能ディスプレイほど本格的なものではないが、ナビ画面との共用ではないという点がいい。
ただし弱点は、ディスプレイ自体がインパネ最下段という低い位置にあり、運転中に見ると完全によそ見になってしまうこと。日産もそれは自覚しているようで、一日単位や週単位の平均燃費を表示するエコ情報画面は、操作も表示も停止中にしか出来ない。
欧州Bセグメントカー並みか、それ以上の後席
フロントシートの座り心地は、特に不満なし。ドラポジに関しては、テレスコのないステアリングがやや遠めに感じられるが、チルトやシートリフターはあり、とりあえずOK。乗降性も良い。
リアシートは実車を見るまで「狭そうだな」と思っていたのだが、これが意外にも大丈夫。頭から足の先まで特に狭さは感じないし、乗車姿勢もちゃんとしているし、座り心地も乗り心地も悪くない。VWゴルフ並みとは言わないが、少なくとも一般的な欧州Bセグメントカー並み以上の居住性だと思う。
リアの乗降性に関しては、ドア開口部が小さく、開口角度も狭いため、決して良いとは言えないが、それを高めのヒップポイントと平板なクッション形状が中和して、(デザインのカッコ良さを思えば)許せるレベルになっている。
「狭くてもいい」と割り切った荷室
意外に実用的なキャビン(乗員空間)に対して、荷室は明らかに割り切った感じ。通常時の容量は251リッターで、Aセグメント(初代ヴィッツやMINIあたり)よりは広いけど、Bセグの平均には及ばず。リアゲートが寝た、クーペのような荷室空間だ。普段の買い物には、もちろん十分。
後席の背もたれを倒せば、フラットなフロアが広がるが、やはり天地は狭いので、自転車のような物を積むには適さない。床下には容量44リッターの収納ボックスがあり、その下にテンパースペアタイヤを収納する。