Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > 日産 ジューク 15RX

日産 ジューク 15RX新車試乗記(第601回)

Nissan Juke 15RX

(1.5リッター直4・CVT・FF・179万0250円)

デザインのキューキョクか?
日産のジョークか?
燃費はジューキューkmか!
ジュークにシジョー!

2010年07月03日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

奇抜なデザインが目を引く、新種のコンパクトカー


2009年3月のジュネーブショーに市販予定車として出展されたコンセプトカー「カザーナ(Qazana)」
(photo:日産)

2010年2月に欧州で市販バージョンが発表され、日本では2010年6月9日に発売された「ジューク」は、新しい“コンパクトスポーツクロスオーバー”。日産は「コンパクトカーの新しいスタイルを提案する新型車」と定義しており、ラインナップ上はデュアリスやムラーノが属する「SUV」カテゴリーではなく、マーチやキューブ等が属する「コンパクトカー」カテゴリーに分類される。

 

こちらは2009年10月の東京モーターショーに出展された時のもの。ドアはコンセプトカーらしく観音開きとなっている

ベースはルノー・日産の主力コンパクトカーでおなじみのBプラットフォームだが、ワイドトレッド化や剛性アップでスポーティなハンドリングを追求。エンジンは従来の1.5リッター「HR15DE」をベースに、1気筒当たりインジェクターを2個としたデュアルインジェクター等の採用によって中低速トルクを強化。またおなじみ「エクストロニック CVT」も、国内向け普通車で初となるジヤトコ製の副変速機付(2段変速)として、変速比のワイド化を図っている。その他、スイッチの表示が2パターンある新タイプの車両情報ディスプレイも目新しいところだ。

日・欧・米で販売するグローバルカー


日本に先行して、市販バージョンが発表された欧州仕様のジューク
(photo:日産)

日本国内での目標販売台数は月間1300台と控えめだが、受注は発売一週間(6/15時点)までに目標の4倍以上となる5296台を達成したという。これは同じく一週間で5000台を受注したデュアリス(月間目標2000台)に匹敵する好調な滑り出しだ。さらにメインマーケットとなる欧州では2010年10月に発売予定で、追って北米にも投入される。

生産拠点は、日本と米国向けが神奈川県横須賀市の追浜(おっぱま)工場。欧州向けは英国サンダーランド工場となる。

 

(photo:日産)

なお「ジューク(Juke)」とは英語で「フットボールなどのスポーツで、フェイントをかけるなどしてディフェンスをかわす」の意。そこから「このクルマのもつ機敏さと、乗る人が仕事やプライベートで日々チャレンジする前向きさをイメージして命名した」という。ちなみに語源は異なるようだが、ジュークボックス(Jukebox)のジュークも、スペリングは同じだ。

価格帯&グレード展開

今のところ1.5リッター・FFの2グレード


ボディカラーは全7色。試乗車はメテオライトブラウン
車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

今回発売されたのは1.5リッター直4+CVTのFF車で、グレードも2種類とごくシンプル。ベーシックグレードの「15RS」と上級グレードの「15RX」(試乗車)で、後者はアルミホイール、オートエアコン、売りの一つである「インテリジェントコントロールディスプレイ」等を標準装備し、レッド内装も無償で選べるほか、さらにオプションでキセノンヘッドランプ、インテリジェントキー、サイド&カーテンエアバッグ等が選べる。内容から言って、上級の「15RX」がだんぜんお買い得で、初期受注の98%が集中したのも納得できるところ。オーディオやナビ関係は全車オプションだ。

【ジューク】
 1.5リッター直4(114ps、15.3kgm) CVT・FF
 10・15モード燃費:19.0km/L / JC08モード燃費:17.2km/L

■15RS  169万0500円
■15RX  179万0250円  ★今回の試乗車

秋には直噴ターボ・4WDを追加予定

また2010年秋には、新開発の1.6リッター直噴ターボ「MR16DDT」搭載車を追加する予定。こちらはFFの他、リアデフにランエボの「AYC」のようなトルクベクタリング機構(左右輪の駆動力配分を電子制御する)を備えた「ALL MODE 4x4-i(トルクベクトル付)」仕様が用意される。言わば、「ミニGT-R」みたいなものか。

なお、欧州仕様車のエンジンはこの「MR16DDT」の他、1.5ディーゼルの「K9K」、1.6ガソリンの「HR16DE」の3種類だ。

パッケージング&スタイル

深海魚みたいな顔、昆虫みたいなシルエット、Zみたいな後ろ姿

今や「デザインの日産」と言っていいほど、斬新なクルマが次から次へと出てくる日産だが、「マジで市販車?」「ホントに売るの?」と思わせるインパクトでは今回のジュークが白眉だろう。

いちいち文字にするのは野暮なのだが、一通りポイントを挙げてゆくと、まずは深海魚?みたいなフロントマスク。いわゆる「前7:3」の写真をズーム気味に撮っても、広角レンズで撮ったように見えるのは、プロポーションが異様に「頭でっかち」だからだ。

また「フォグランプみたいに見える丸形ヘッドライト」と「ヘッドライトみたいに見えるポジションランプ」も面白い。丸形の方はレンズカット風のギザギザを内側に付けるなど、一見昔からある汎用タイプに似せてあるが、実際には微妙に異形のマルチリフレクターになっている。

 

ボディ側面には前後のフェンダーアーチがドアパネルまで巻き込んで大きく張り出し、うねりまくっている。ルーフラインはファストバッククーペ風に後ろ下がりで、サイドウインドウも小さい。リアのドアハンドルをCピラーに溶け込ませて2ドアクーペ風に見せたのはアルファロメオに対してバツの悪い部分だが、こうしたかった気持ちはよく分かる。

そして後ろ姿は、思い切り湾曲させた小振りのリアウインドウとブーメラン型のリアコンビライトで、まさに現行フェアレディZ風。車高が高いから、「Z クロスオーバー」風か。

 

ヘッドライト(ロー/ハイ)は、下の丸い方。上はポジションランプとウインカー

現行フェアレディZ (Z34型)
(photo:日産)

ショート&ワイド、SUVにしてはロー

ボディサイズは全長4135mm×全幅1765mm×全高1565m。全長はティーダより短く、全高も大差ないが、特異なのは全幅が1765mmもあること。これまで日産のBプラットフォーム車は全て全幅が1.7メートル以内の5ナンバーサイズ車だったから、デュアリス(格上のCプラットフォームを使用)の1780mmに迫る横幅はクラス破り。一方、ホイールベースは現行(2代目)キューブと同じ2530mmで、そのあたりにBプラットフォームらしさが残っている。

  全長 全幅 全高 ホイールベース
日産 キューブ(現行2代目) 3890mm 1695mm 1650mm 2530mm
トヨタ イスト(現行2代目) 3930mm 1725mm 1525mm 2460mm
日産 ジューク 4135mm 1765mm 1565mm 2530mm
日産 ティーダ 4250mm 1695mm 1535mm 2600mm
日産 デュアリス 4315mm 1780mm 1615mm 2630mm
BMW X1 4470mm 1800mm 1545mm 2760mm

インテリア&ラゲッジスペース

高めのアイポイントで、車両感覚がつかみやすい

フロントウインドウは小さめだが、アイポイントは高く、しかもAピラーが手前側にあるので、視界は良好。ボンネットやポジションランプ(空冷ポルシェ911にあったフェンダーの峰みたいにしっかり視界に入る)もあるので、車両感覚もつかみやすい。最小回転半径も5.3メートルとまずまず小さいから。女性でも「運転しやすい」と感じるはず。

 

マットな質感の樹脂パネルはウエットスーツをイメージしたとのこと。「15RX」のシート地もよく見ると、魚の鱗(ウロコ)っぽい幾何学模様でユニークだ。また、言われないと気付かないが、フィン(足ひれ)をイメージしたというドアアームレスト部のデザインも面白い。安っぽさを感じさせないデザインは最近の日産が得意とするところだが、今回もお見事。

モチーフはオートバイ


初期受注でも人気が高いというレッド内装
(photo:日産)

センターコンソールのモチーフは、オートバイの燃料タンク。よく見ると確かにシフトレバーのベース部分がタンク形状になっていて、ホンダやスズキのデザイナーは「やられた」と悔しがっているのでは?

上級の「15RX」ではブラック内装+メタリックグレーパネルのほか、目を引くブラック&レッド内装+レッドパネル仕様も選べる。下位グレードの「15RS」だと黒内装しか選べないので、その意味でも「15RX」がおすすめだ。フードの付いた2眼メーターもオートバイをイメージしたという。

スイッチ文字を2パターンで表示


これはエアコンモード。下の写真ではスイッチの表示が異なるのに注目

新採用の車両情報ディスプレイ「インテリジェントコントロールディスプレイ」(「15RX」のみ)とは、センターコンソールの操作パネル一つで、エアコン操作とドライブモードの切り替え操作を行うもの。これが面白いのは、それぞれの操作時に合わせて操作スイッチの文字や絵文字まで変えてしまうことだ。

これは特定波長のみ透過する特殊フィルターと2つのLEDランプを使った2色切り替え機能によるもの。液晶タッチパネルと違って、スイッチ式ならブラインド操作が可能というのがメリットだ。

 

こちらはドライブモードで、「スポーツ」を選んだところ。パワーメーターが表示される

ドライブモードに切り替え、「ノーマル」を選べばカラー液晶のディスプレイにはエンジントルク&電圧を表示。「スポーツ」を選べばエンジンパワーを、「エコ」を選べばエコ運転度を表示する。またどのモードでも、エコ情報(平均燃費の履歴など)を呼び出すことが可能だ。日産GT-Rの多機能ディスプレイほど本格的なものではないが、ナビ画面との共用ではないという点がいい。

 

これはエコ情報画面で、一日単位の平均燃費を表示したところ

ただし弱点は、ディスプレイ自体がインパネ最下段という低い位置にあり、運転中に見ると完全によそ見になってしまうこと。日産もそれは自覚しているようで、一日単位や週単位の平均燃費を表示するエコ情報画面は、操作も表示も停止中にしか出来ない。

欧州Bセグメントカー並みか、それ以上の後席

フロントシートの座り心地は、特に不満なし。ドラポジに関しては、テレスコのないステアリングがやや遠めに感じられるが、チルトやシートリフターはあり、とりあえずOK。乗降性も良い。

 

リアシートは実車を見るまで「狭そうだな」と思っていたのだが、これが意外にも大丈夫。頭から足の先まで特に狭さは感じないし、乗車姿勢もちゃんとしているし、座り心地も乗り心地も悪くない。VWゴルフ並みとは言わないが、少なくとも一般的な欧州Bセグメントカー並み以上の居住性だと思う。

 

リアの乗降性に関しては、ドア開口部が小さく、開口角度も狭いため、決して良いとは言えないが、それを高めのヒップポイントと平板なクッション形状が中和して、(デザインのカッコ良さを思えば)許せるレベルになっている。

「狭くてもいい」と割り切った荷室

意外に実用的なキャビン(乗員空間)に対して、荷室は明らかに割り切った感じ。通常時の容量は251リッターで、Aセグメント(初代ヴィッツやMINIあたり)よりは広いけど、Bセグの平均には及ばず。リアゲートが寝た、クーペのような荷室空間だ。普段の買い物には、もちろん十分。

 

後席の背もたれを倒せば、フラットなフロアが広がるが、やはり天地は狭いので、自転車のような物を積むには適さない。床下には容量44リッターの収納ボックスがあり、その下にテンパースペアタイヤを収納する。

基本性能&ドライブフィール

デュアルインジェクター&副変速機付CVTで、低回転をキープ

エンジンは日産FF車でおなじみの1.5リッター直4「HR15DE」の大幅改良版。量産エンジンでは世界で初めて1シリンダーあたり2本のインジェクターを持つデュアルインジェクターを採用し、燃焼安定性を向上。また吸気側に加えて、排気側にも可変バルブタイミング機構を設けることで、中低速トルクや燃費も向上。最高出力は従来のHR15DEの109psから114psへ、最大トルクは15.1kgmから15.3kgmにアップしている。

デュアルインジェクターの効果がどれほどかは定かではないが、走りは十分に力強い。一昔前の1.5リッター・CVT車というと、アクセルを踏む度にエンジンとCVTベルトが唸っていたものだが、ジュークで印象的なのは「静かでスムーズ」ということ。街中でゆっくり走る分には1000回転台、せいぜい2000回転ほどしか回らず、それで加速には十分に事足りる。燃費対策もあるだろうが、とにかく低回転のトルクでユルユルと走れる、あるいは走ってしまうクルマだ。

これには、変速比が従来CVTより20%以上ワイドというジヤトコ製の副変速機付CVTも効いている。トルキーなエンジンの持ち味を活かすように、巡航時には副変速機のハイ側を使って徹底的に低い回転数を維持。100km/h巡航は(CVTゆえ負荷によって微妙に回転数は上下するが)、約1700~1800回転くらいでこなす。一昔前の1.5リッターではあり得なかった低さだ。風切り音やロードノイズも2リッタークラス並みに小さく、高速巡航はかなり静かだ。

ロールはしないが、少々テールハッピー


井桁型サブフレームが追加されたフロントサスペンション
(photo:日産)

シャシーはおなじみBプラットフォームで、走らせた印象にも現行キューブの面影があると言えばある。とはいえ、フロントサスペンションは上級クラス並みの井桁型サブフレームにマウントされ、それに合わせてリアもセレナ譲りのトーションビームで高剛性化。トレッドもかなりワイドだし、タイヤは標準で205/60R16、メーカーオプションでは215/55R17を履く。結果として、視点が高い割にロール感はほとんどなく、キビキビと動く「感じ」を出している。多少ゴツゴツ感があってもスポーティというところは欧州車っぽく、最近の例で言えば、シトロエンの新型C3/DS3とかに近い印象。表面的にはMINIなども意識していると思う。

 

そんなわけで、普通に走る分には不満のないシャシーだが、気になったのは段差や路面のうねりなどでドンッと大きな入力が入ると、リアのトーションビームに突き上げ感や曖昧な動きが出ること。またブレーキを残しながらステアリングを切り込むような操作に対して、容易にリアが流れてしまうのも気になった。試乗車はオプションの17インチ(ヨコハマのデシベル)で、標準の16インチだとどうなのかは分からないが……。VDCはなぜかオプションでも用意されないので、雨の高速道路で緊急回避、などという状況を考えると、もう少し挙動を抑えたいところ。ま、そんなに飛ばさなければいいのだが。

10・15モード燃費は19km/L。試乗燃費は10.6km/L

10・15モード燃費は日産の「低燃費系」(ノート、ティーダ、キューブなど)の20.0km/Lに迫る19.0km/L。また参考までに今回の試乗燃費は、「スポーツ」モードを試しつつ、いつもの高速・一般道の混じった区間(約90km)で10.6km/L。流れのスムーズな郊外の一般道で、空調まで省燃費運転する「エコモード」で走った区間(約60km)で約16km/Lだった。

指定燃料はもちろんレギュラー。タンク容量はこのクラスだと普通45リッターくらいだが、ジュークは52リッターと大きめだ。

ここがイイ

「カッコ命」の潔さ。ドライブモード切替の採用

なんだかちょっと新しいタイプのクルマが出てきたぞ、と思わせるワクワク感がいい。素晴らしく奇抜で、それでいてカッコいいデザインは、本当に秀逸。パッケージングで八方美人になるとカッコ良くはならないが、そこをすっぱりあきらめて「カッコ命」とした潔さの勝利。その割に運転しやすく、居住空間も犠牲になっていない。価格の割に内装も頑張っている。

スポーツ、ノーマル、エコという3モードの切り替えとか、インテリジェントコントロールディスプレイとか、新しいもの感がある。実際エコモードでは、なんじゃこりゃというほど、スロットルレスポンスがなく、空走感を感じるほどだが、そのかわりスポーツモードにすれば、結構走った気分にさせてくれる。走りを本当に求める人はターボがあるから(まだ未登場だが)、このNAに乗る人にはこれくらいがちょうどいい感じ。そういうモード切り替えの妙が味わえるのが最新モデルのいいところだ。

ここがダメ

「インテリジェントコントロールディスプレイ」の位置。VDCの未設定

やむを得なく、だろうが、運転中のよそ見を誘発する位置に「インテリジェントコントロールディスプレイ」を置いたのは、やはり良くない。かなり気を付けていないと、ついついモニターの方に気を取られてしまう。ナビに通常のスペースを占拠されるゆえであり、いっそPNDクラスの小さなナビモニターとこのディスプレイで全く新しいインパネデザインを提示してもらいたかった。

VDCの設定がないこと。本文でも触れたように、新型車にしては珍しく、リアのスタビリティが低い。それ自体はドライバーの方が学習すればいいし、振り回したいドライバーにとっては自由度が高くて面白いとも言えるが、万一のためのセーフティネットは欲しいもの。おそらく欧州仕様にはちゃんとVDCが用意されるはず。やはり価格の問題か。

総合評価

時給は大学生のわずか50倍?

ゴーン社長の報酬が8億9000万円。ちょっと衝撃だったこの数字について、まずは考えてみたい。この4年間、日産の決算は、

2008年3月期決算:売上高10.8兆円、経常利益7664億円、純利益4823億円、
2009年3月期決算:売上高 8.4兆円、経常利益1727億円の赤字、純利益2337億円の赤字
2010年3月期決算:売上高 7.5兆円、経常利益2077億円、純利益は423億円
2011年3月期予想:売上高 8.2兆円、経常利益3150億円、純利益1500億円

であり、2009年3月期は赤字だったものの、これだけの数字を作る企業のトップとしては、それくらいの報酬をとってもいいのではないか、とまずは思う。個人は9億も稼ぐと半分は税金でとられるから、その点では国に貢献しているともいえるし。

そもそも社長というものは事実上一日24時間がずっと仕事であり、休日は用意されていても精神的には365日勤務。ゴーン社長が純粋にプライベートでいられる時間など、ほぼないだろう。だから、年間8760時間働いている。つまり9億円もらっても時給換算したら約10万円。しかも高額所得は税金で半分取られるから、時給5万円にすぎない。大学生バイトでも時給1000円程度だから、ゴーン社長は大学生のわずか50倍。それでも年収1000万円という、多くの中小企業社長よりはだいぶんましだとは思う。年収1000万円の社長の時給はたった1141円。ここから税金を払ったら大学生並になり、しかも会社の保証人として借金のリスクを負っているのだから、社長は割があわない仕事なのではないか。

とはいえクルマ業界の場合、エコ減税等によって間接的にメーカーへは国からの金が入っているので、その点ではゴーン社長も、他の税金が投入された企業(特に銀行系)のトップ達も、もう少し控えめにすべきと思う。むろん高額の納税をして返しているという論理も成り立ちはするが。

しかし手取りで年4億円あったとしたら、例えばトヨタ社長並みの1億円だけ個人に残して、あとはクルマ業界に貢献する何かに使うこともできる。何らかの公共的な成果を上げた人に、クルマをプレゼントするとか、過疎などで必要な地域に、共同所有するクルマを寄付するとか。

いや、なにより、クルマの啓蒙活動に使いたい。例えばこれだけあれば、クルマ雑誌の一冊も作れる。いまさら雑誌でははなく、ネットでもいいが、手垢のついていないクルマメディアを作って、それをフリーメディアとしてどんどん配布し、クルマの楽しさを多くの人に伝えていく。さらにそこでは日産車もきっちり批評する。日産社長のスポンサードする雑誌が日産車に厳しい評価をしたとしたら痛快だ。そうした懐の深さを見せれば、9億円もらっていても世間は許すだろう。

小さくて安くてスタイリッシュな乗り物が欲しい

そんなメディアで、ジュークはどう評価されるのだろうか。先回の試乗記で紹介したアンケートの通り、今も昔もクルマはまずスタイルだ。その点、ジュークはOKだろう。多くの若者が、すでにジュークをかなりかっこいいツールとして認識している。特にSUV風であることは、単なるハッチバックより若者の琴線にふれるようだ。荷室が狭いなんてことは二の次。カッコよければ、すべてのネガは許すことができる。クルマは昔からそういう存在だったはず。

走りもある意味プリミティブだが、若者にはこれで十分。玄人ウケを狙うあまり、今のクルマはどれも過剰性能ともいえる。スタイリングの割に、走りに腰高感がないのもいい。3モードを備えることで、エコ走行もスポーティな走りも楽しめるのは、今風で喜ばしい。何より上級グレードで180万円を切る価格は安め。4WDなどいらない、小さくて安くてスタイリッシュなSUV的乗り物が皆欲しいのだ。

というわけで、ゴーン社長が金を出したメディアでも、ジュークはかなり評価が高くなるはず。とはいえあと少し、いや、もっともっと安くできないものだろうか。マーチのようにタイで作ってもいい。貧乏で、しかしクルマがなくては生きていけない若者に、新車が買えるかもしれないという夢を与えて欲しいものだ。先回紹介したアンケートで、多くの若者がクルマを買うなら150万円以下と答えているが、それに応えたカッコいい「安い」クルマを作ることこそ、今最も必要なことだろう。早くしないとそんなクルマが中国で作られてしまうような気がする。クルマ黎明期である昭和40年代の若者と今の若者に共通しているのはカネがないということだが、手の届きそうなところに魅力的な商品をぶら下げられれば、ひとつがんばってみようと思うこともまた、昔と今の共通した部分のような気がする。ジュークはかなりそんな商品になっているが、価格においてはもう一頑張りが欲しい。

 

今は低賃金だが、ジュークが買いたいと頑張る、というのは健全で、かつある意味では簡単なことだ。それに対して、高額の報酬を得ながら仕事に対するモチベーションを維持しつつ、未来に向かって新たな商品を産み出していくのは相当に大変なこと。年9億円もあれば、いつやめても生活に困ることはない。つまり仕事はもはや金のためではないのだが、それは誰にでもできることではない。結果、会社に利益を産み、仕事を未来へつなげていくことができる人になら、高額報酬もけして悪いことではない。ゴーン社長がこの先も優れた経営者であるならば、電気自動車と共に、デュークよりさらに安い超低価格ガソリン車(もちろんカッコいいヤツ)を現実のものとすべきだろう。

試乗車スペック
日産 ジューク 15RX

(1.5リッター直4・CVT・FF・179万0250円)
●初年度登録:2010年6月●形式:DBA-YF15
●全長4135mm×全幅1765mm×全高1565mm
●ホイールベース:2530mm ●最小回転半径:5.3m
●車重(車検証記載値):1170kg( 730+440 )
●乗車定員:5名●エンジン型式:HR15DE
●1498cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:78.0×78.4mm ●圧縮比:10.5
●114ps(84kW)/ 6000rpm、15.3kgm (150Nm)/ 4000rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/52L
●10・15モード燃費:19.0km/L ●JC08モード燃費:17.2km/L
●駆動方式:FF(前輪駆動)
●サスペンション形式:前 マクファーソン ストラット/後 トーションビーム
●タイヤ:215/55R17( Yokohama db Decibel E70 )※メーカーオプション。標準は205/60R16
●試乗車価格:234万1054円( 含むオプション:キセノンヘッドランプ 6万3000円、プッシュエンジンスターター+インテリジェントキー 13万6500円、215/55R17タイヤ+17×7Jアルミホイール 8万4000円、日産オリジナルナビゲーション<販売店オプション地デジ12セグ対応HDDタイプ HC510D-W> 28万2304円、バックビューモニター<カメラパック> 3万5000円 )
●試乗距離:180km ●試乗日:2010年6月
●車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧