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ルノー カングー 1.4新車試乗記(第219回)

Renault Kangoo 1.4

 

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2002年05月11日

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キャラクター&開発コンセプト

商用車「エクスプレス」の後継

フランスには昔から、小型乗用車の後ろ半分に屋寝付きの荷室をドッキングさせた「フルゴネット」と呼ばれるジャンルの商用車がある。ルノーの場合、ルノー・キャトル(R4)をベースにしたF4やF6があり、それに続くシュペールサンク・ベースの「エクスプレス」があった。日本で言えば軽ワンボックスやカローラバン(もしくは日産ADバン)などの役割を一手に引き受ける存在だ。

2002年3月27日に日本で発売が開始されたルノー・カングーは、その「エクスプレス」の後継と言えるモデル。実際、1997年から発売されているヨーロッパではすでに100万台を越えるベストセラーとなっている。

RVとしての機能・デザインも併せ持つ

カングーが「エクスプレス」と大きく違うのは、いかにも後から荷室を取って付けたようなデザインではなく、専用のボディが与えられたことだ。そしてリアにスライドドアを持つなど、ファミリー向け小型RVとしても十分使えるものとなっている。そういう意味で、カングーはエクスプレスの後継というだけでなく、小型の4ドアファミリカーだったキャトルの再来とも言えるだろう。

各種商用から乗用まで幅広いレンジをカバーするゆえ、フランスで販売されるカングーは豊富なバリエーションを持つ。エンジンはガソリン&ディーゼルがそれぞれ数種類。ドアは2ドア(パネルバン)や片側スライドドアがあり、リアゲートは観音開きも選択可能。またセニックRX4のような4輪駆動バージョンも存在する。今回日本に正規導入されたモデルはその中でも最もRV色の強い(=ビジネス色の薄い)タイプの一つだ。

名前もビジネスライクな「エクスプレス」から、ユーモラスな「カングー」へ。ちなみにKangooとは単なる造語だそうだが、見た目から何となく「カンガルー」をイメージしてしまうのはネーミングとデザインのうまさだろう。

価格帯&グレード展開

グレードは1種類。充実した安全装備を誇る

今回正規輸入されるカングーのグレードは1種類で、1.4リッター直列4気筒エンジン(SOHC・2バルブ)と学習機能付き4速ATとの組み合わせ。右ハンドルのみで価格は175万円だ。ルーテシア1.4RXTの186.5万円より11.5万円も安く、かなり買い得感が強い。

標準装備はマニュアル式エアコン、ラジオ+CDプレーヤー、パワーウインドー(フロントのみ)、リモコンドアロックなど。エアバッグはフロントに加えてサイドも装備(計4エアバッグ)。ABS+EBD+ブレーキアシスト、プリテンショナー+フォースリミッター付きシートベルトなどの安全装備も申し分ない。ちなみにEURO-NCAPでは4つ星を獲得しており、衝突安全性もトップクラスだ。

パッケージング&スタイル

食パンがモチーフ?味のある内外デザイン

ボディサイズは、全長3995×全幅1675×全高1810mm。ホイールベースは2600mm。ルーテシアより全長が185mm長く、ホイールベースも125mm長い。4メートルを切ったコンパクトな車体に、長いホイールベースが特徴だ。ちなみにフランス本国で「RVとしてのカングー」のライバルとなるのがトヨタ・ファンカーゴ(現地名ヤリス・バーソ)で、その全長は3860mm、ホイールベースは2500mmで、カングーより一回り小さい。

またカングーの全高は、ファンカーゴの1680mmはもちろん、エスティマの1770mmを越えてホンダ・ステップワゴンの1845mmにも迫る高さ。しかし不思議なことに、ボディデザインはそうした高さをあまり感じさせない。

外観デザインの大きな特徴はまるで山形パンのような角の丸まった長方形。このモチーフはボディ全体のシルエットに始まり、ヘッドライト、ウインドウ、ドアノブ、サイドミラーなどに徹底的に反復される。まさにパン屋の配達用? 窓を埋めて看板をつけて使うにはうってつけのクルマと言えよう。

ボディ同色の鉄板むき出し

インテリアは外観に負けず劣らず個性的だ。ダッシュパネル自体はグレー系の硬質プラスチックで成型され、文字通りプラスチッキー。その他、細かいクオリティについて文句をつけるのはたやすい。しかしそれを逆手にとるような大胆なデザインは感動的で、圧巻はこれでもか! と言わんばかりに鉄板をむき出しにした前後ドアまわり。トゥインゴでも用いられた手法だが、これはもう「出来る限り鉄板を見せるようにしました!」言わんばかりの露出度。某イタリア製スポーツカーでは一見鉄板のように見えて実はプラスチックパネルだったりするが、こちらは正真正銘の鉄である。いずれにしてもカングーの場合、ボディカラー選び=インテリアカラー選びである。ちなみにボディカラーは5色用意される。

優れたシート。豊富な収納スペース

居住性については、まず座り心地の良い前席シートが印象的だ。国産小型車でもシートのレベルはかなり上がってきてはいるが、このルノーのレベルには依然達していない。詳しくは後述するが、ドイツ車と違って体格の小さい人にも良さが実感できるシートだ。

後席に座ると、高い全高を生かした広々とした空間が嬉しいが、「不必要に天井が高い」という感じがないのも良い。クッションは薄目で座面も少し短いが、ちゃんと長時間のドライブに耐えるものになっている。立派なヘッドレストも3つちゃんと装備されるのも良心的だ。ただしスライドドアの関係もあり、横方向の幅は不足気味。大人3人掛けはやや苦しいだろう。

収納スペースが豊富であることもポイントだ。最も便利なのは前席頭上にあるオーバーヘッドコンソール。足元に置くには大き過ぎてジャマなモノも、どんどん放り込める。リア天井左右の蓋付オーバーヘッドコンソールは、ちょうど旅客機の収納ボックスのような形状。容量は小さいが、長尺物が収納できる。また、さすがはヨーロッパ車、ドリンクホルダーは前席ドアポケットに「それらしきもの」があるだけ。後席には存在しない。フロントシートにバックポケットがあるため、ペットボトルなら何とかなるだろう。

自転車だろうと洗濯機だろうと

荷室の広さは圧倒的だ。なによりその使いやすさがスゴイ。リアゲート開口部の横幅は1.2メートル、地上高はわずか53cm。知り合いの酒屋さんにぜひ勧めたい。

後席を背もたれを倒してから跳ね上げるタンブルフォールディングによって折りたためば、奥行き約1.4メートルのほぼ真四角でフラットなラゲッジスペースが現れる。この辺りの見事なまでの実用性は日本の軽1ボックスに匹敵する。

嬉しいのは、フロア&ラゲッジカーペットの代わりに、黒のビニール製マットが使用されていること。サーフィンなどのマリンスポーツや各種アウトドアスポーツに、砂や泥は付きもの。この1点だけでも、カングーに魅力を感じる人がいてもおかしくない。

基本性能&ドライブフィール

低速での乗り心地はシートがカバー

試乗したカングーは1.4リッター、オートマチックの右ハンドル(正規モデルはこれしかない)。内外装のレモンイエローがまぶしい。

走り始めてまず目にはいるのは、ボンネット上に盛り上がったフェンダーの峰。外から見るとそれほど明瞭ではないが、運転席から見ると1世代前のポルシェ911をちょっとだけ思い起こさせる。いずれにしてもこれは見切りの良さに一役買っている。パワーステアリングも日本車から比べればかなり重く感じるが、これくらいが本来は適度な重さだろう。

低速での乗り心地には説明が必要だ。設定が人間&荷物を目一杯積んだ状態にあるせいか、1名ないし2名乗車時のサスペンションの動きはしなやかさに欠け、特に段差ではビシバシと衝撃を受ける。ところが、不思議とそれは人間の体には全く伝わってこない。理由は分厚く絶妙なクッションを持ったシートだ。試乗当日は風邪をひいており熱で体の節々が痛かったのだが、カングーのシートは明らかにドイツ系の固めのシートより体に優しかった。風邪をひいてるときはフランス車に限る。

瞬発力はないが、巡航は得意

1.4リッターにして75ps/5500rpm、11.9kgm/4250rpmと冴えないスペックのエンジンだが、心配は不要。特に速くはないが、カタログ値からは想像できない走りだ。回転が上昇しても騒音・振動レベルが大きく変化せず、スピードがのれば140km/hオーバーの巡航は「快適」で、これはなかなか。ちなみにメーターは250km/hまで刻まれる(もちろん、そこまでは出ないが)。

逆に弱点は、ここぞという時に中間加速が効かないこと。特に日本の混み合った高速道路で追い越しをかけるのはかなり苦手と思われる。ちなみに指定燃料はプレミアムだが、メーター読みでは10km/L程度の燃費なので、レギュラーだとうれしいところ。

学習機能付き4速オートマチックだが、高回転まで引っ張り気味のシフトプラグラムに感じられた。またアクセルオフしてもギアをキープしてエンジンブレーキを効かせたり、減速時にシフトダウンしたりもする。ルーテシアと同じATで、変速自体にショックはないものの、初めて乗る人にはお節介に感じられる場合もあるだろう。

静粛性だが、会話に不自由するほどではないものの、高速域ではそれなりにエンジン音は高まる。とは言え、不快なものではない。風切り音はスタイリングから懸念されるほど大きくはないが、小さくもない。相対的にロードノイズは最も気にならなかった。

しかし反対にスピードレンジが高いほど良くなるのが乗り心地。街乗りではゴトゴトしていたサスペンションが、ウソのように滑らかに路面を舐め始める。直進安定性は申し分なく、横風への弱さを除けばかなりの速度まで快適で、セダン並みと言っても良いだろう。

ワインディングでもハンドリングは正確で、かつ安定している。ロールをほとんど感じさせずボディを水平に保ったまま曲がっていく様は、フランス車の伝統に則ったものだ。けして楽しいものでないことはお分かりだろうが、この味に慣れると離れがたくなるのも事実。

ここがイイ

175万円という価格ならほとんど不満がないコストパフォーマンスだ。これが200万円を超えていたりすると、あちこち文句も言いたくなるが(それについては「ここがダメ」で)ひとまず全て許してしまえる。そして豪華でないくせに座り心地抜群のシート、フラットな乗り心地、パワーがないくせにそこそこ走る動力性能、トルクをうまく使いたがる独自のAT、慣れると離れられなくなるコーナリングフィーリングなど、伝統の「フランス車の味」を色濃く残している点は、好き者にはたまらない。もちろんスタイルの持つ粋も魅力だろう。

ここがダメ

単に工業製品であるクルマとしてみてしまえば、インテリアは見事にプラスチッキーだし、プラスチックのバリは削れていないし、スライドドアはギシギシいうし、試乗車固有の問題と思われるもののアクセルの動きが渋いし、内装の組付けが悪くて浮いているし、全体に実に安っぽいクルマだ。こういうクルマが嫌いな人には単にそう見えてしまうだろう。

総合評価

最近のフランス車は、記憶にあるフランス車らしさがどんどん薄れている。それがグローバリゼーションというものかもしれないが、フランス車オタクの人には寂しい限り。その点カングーは、97年とかなり前にデビューしたクルマであり、しかもフランス人の足そのもののクルマゆえ、幸いにも? フランス車の「臭さ」を十分残したクルマで、フランス車好きにはキャトルの再来と歓迎されるだろう。またフランス車オタクでなくともこの価格ならちょっと粋な足として十分楽しめるはずだ。リアドアが観音開きでないのはちょっと残念だが、それ以外は「完璧」とも言うべきまさにフランス車だ。

日産ディーラーが経営するルノーディーラーが増えており、今後のアフターサービスもこれまでのように心配する必要がなくなったと言えそうだ。マツダがシトロエンを売ったときはあくまで一商品にすぎず、ひどい目にあった人もいたはずだが、日産とルノーの関係を見る限り、今後の心配は要らないだろう。

それより老婆心ながら心配するのは、次期カングーが出るとすればマーチカーゴとでもいうべきクルマになることだ。そうなった時にはカングーのようなフランス臭さはもはや期待できまい。欧州に行ったことはないのでよくわからないが、EU諸国は同じ通貨を使い同じ味のクルマで満足するのだろうか。そしてドイツ車のような味がスタンダードになってしまうのだろうか。このクルマに乗りながら、フランス車の味を残せというような人が極右ルペンに投票したのかもしれない、などと想像してしまった。

蛇足だが、ゴールデンウィーク中に高速道路で、ルノー・トゥインゴの背面に自転車2台、屋根に荷物を満載してフランス流バカンス? を楽しんでいるとおぼしきカップルを見かけたが、微笑ましいというよりフランス車ビョーキの深刻さを見た思いだった(苦笑)。安全なカングーに乗り換えてくださいね。

 

公式サイトhttp://www.renault.jp/

 
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