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スズキ Kei ワークス新車試乗記(第249回)

Suzuki Kei Works

(5MT 124.2万円)

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2002年12月21日

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キャラクター&開発コンセプト

復活した「ワークス」

2002年11月12日にマイナーチェンジを受けたKeiの追加モデルとして登場した「Kei ワークス」は、アルトワークス以来、久々に「ワークス」の名を持つモデルだ。苗字は変わったが、「ワークス」のスピリットは新型にも受け継がれている。64psのハイプレシャー型DOHCターボ、アルトワークス以来の登場で、普通車を含むスズキ全車で唯一という4輪ディスクブレーキ、レカロシート、ヘリカル型LSDなど、スポーツ系装備を満載する。

目標販売台数はKei全体で3千台/月。ここ1年間の販売台数は昨年に比べて半分程度の2000~2500台程度。後輩アルトラパンにも大きく水を空けられており、ここで少し挽回したいところ。

「ワークス」の歴史

初代アルト・ワークスは軽カー初のツインカムターボを搭載して1987年にデビュー。翌年、2代目に進化した。軽自動車としては掟破りのハイパワー、ドッカンターボぶりで一躍人気車となった。

しかし'90年代半ば、トールワゴン台頭の影響をもろに受けて販売は激減。'98年の軽規格改定時に新型が出るも、その2年後ついにラインナップから消滅した。しかし経済性(主に維持費)に優れながら痛快な走りが楽しめるクルマは今や貴重。生産中止を惜しむ声は多かったようだ。

価格帯&グレード展開

マニュアル派はKeiに注目せよ!

グレードはお買い得仕様のEタイプ(71.7~89.2万円)、上級のN-1(90.3~109.5万円)、スポーツ系のワークス(124.2~141.4万円)、モータースポーツベース車のスポーツR(109.8万円)の4種類。エンジンはEタイプに3気筒NA(54ps)、N-1に3気筒低圧ターボ(60ps)、ワークスとスポーツRに3気筒高圧ターボ(64ps)。

いまどき全車!に5速マニュアルを設定するのがマニュアル派には嬉しい。フルタイム4WD仕様もあり。なお、Keiは'98年のデビュー当時は3ドアのみだったが、途中から5ドアを追加。現在は逆に5ドアのみだ。

ワークス以上に硬の「スポーツR」

面白いのは引き続き設定されたスポーツR。6点式ロールケージと4点式シートベルト(サベルト製)、牽引フックを組み込んだこのモデルは、スズキが主催するワンメークレース用車両だ。

でも、ちゃんとナンバーは付くし、エアコン/パワステも装備。普段一人で乗るには十分。普通のKeiから省かれた装備はエアバッグ、ABS、パワーウインドウ、パワードアロック、サンバイザーなど。その代わりに上記の競技パーツが付いて、14.4万円も安い! ただし、カタログには購入時の注意点として、「ワンメークレースでの使用を前提とした架装を行っているため、乗り心地、乗降性、静粛性など標準車と比べると不都合が生じる場合があります」

こんな風に書かれると、なおさら手に入れたくなるというのがマニア心。とはいえ、昨年のモデルとも競争するため、リアブレーキはドラムのまま。走りのスペック的にはワークスの方が上だ。

パッケージング&スタイル

ワークスならではの過激なエクステリア

デビューから4年経ったKeiのデザインはすでに見慣れた感じだが、ワークスの外観は目を引く。真紅の専用ボディカラーもさることながら、専用バンパーの大型フォグやリアの大型スポイラーなど、タダモノじゃない雰囲気。前後左右には「どうだ!」と言わんばかりに赤い「Works」のプラックが。さらに専用の15インチアルミホイールはデザイン、仕上げともKeiだけにはもったいない! と思ってしまうカッコよさ。スポークの向こうには前後ブレーキディスクが光る。

SUV風セミトールワゴン(結果的に)

全長×全幅はもちろん3,395mm×1,475mmと軽自動車枠いっぱい。ノーマルのKeiは全高1,545mmだが、ワークスとスポーツRは15mmローダウンされて1,530mm。

発売当初は3ドアのみで、SUV風スペシャリティカーというイメージだったが、現在は4ドアハッチバックのみ。シフトレバーがフロアにあるところなど、クルマの成り立ちとしてはアルトに近い(ゆえにマニュアル仕様も可能なのだ)。10センチ近く高い車高を生かした室内空間は大人4人が無理なく乗れる。

乗降性重視のレカロシート

ワークスに装備されるレカロは標準のシートより一回りサイズが大きく、サポートも張り出す。何よりバックレストの「RECARO」の刺繍が誇らしい。ただし背もたれ調節はダイアル式ではなく普通のレバー式。ホールド性よりは、乗り降りのしやすさなど日常的な使いやすさを優先した造りだ。スズキによるレカロのライセンス生産といったところか。

リヤシートは全車リクライニング付き5:5分割。シートを前倒しすると、嵩上げされた荷室とフラットな床を作る。座面がスライドしながら沈み込むなどという芸当はなく、足元も狭めとなるが、クッションに厚みがあって座り心地は良い。シート地はちゃんと前席のレカロと同じになる。

基本性能&ドライブフィール

ヘリカルLSDにビックリ

試乗車はワークスの2WD、5MT仕様(124.2万円)。ボディの大きさに対して立派なサイズのレカロに座り、軽いクラッチを踏み込んで(踏まないとエンジンがかからないので)、エンジンスタート。セルモーターの音もエンジン音も、聞きなれたK6Aターボ。電動パワステは軽いが、レシオが速められており頼りなくはない。

走り出してビックリしたのはそのターボエンジンのパワー、ではなく、ワークス(2WD・MT車のみ)に標準装備のヘリカルLSD。交差点を加速しながら曲がるような状況(つまり低速)では、ステアリングを切った方向へ問答無用に曲がって行く感じで、慣れるまでちょっと怖い。後でドアポケットを見たら「この車両はヘリカルLSDを装備しており、コーナリングでの挙動が通常の車と違うのでご注意ください」という注意書きが入っていた。

コーナリング限界は高いが

ヘリカルLSDはトラクション(駆動力を路面に伝える能力)向上のため装着されたものだが、効果はてきめん。ワインディングでは天井知らずのコーナリングスピードを発揮。15mmダウンの専用足回りに165/60R15の大径ポテンザRE88を履くこともあって、限界は恐ろしく高い。リアの接地性も高く、タイヤが流れる素振りは一切ない。

しかし、トレッドが狭い上に重心が高く、山道で「楽しく」飛ばそうと思うと精神的にはちょっと大変だ。レカロと共同開発したというシートはサイドサポートが甘く、横Gについては頼りにならない。限界が高いだけに、それを越えた時の挙動には注意する必要がありそうだ。

ジャジャ馬ぶりは影をひそめた

64ps/6,500rpm、10.8kgm/3,500rpmを発揮するK6A型ターボをマニュアルで味わうのは今や貴重な体験。低速も十分粘るが、本格的パワーが出るのは4,000回転から上。そこからリミッターが作動する7,500回転まで一気に吹け上がる。相変わらず1万回転まで目盛られた回転計はご愛嬌。

しかし、軽規格改定前のアルト・ワークスのような刺激的ターボラグや、カンシャク玉のような勢いはない。理由は当時から100kg以上増えた車重のせいか。初期のアルトワークスはほとんど500~600kg台に収まるライト・ウエイト車だったのだ。おかげでエンジンに捕まってまっ裸で飛んでゆくような危なっかしさはなくなったが。

サスペンションはかなりハード。荒れた路面ではスポーツカーのようにグイグイと揺すられる。しかしボディのシッカリ感はまずまず。段差などのショックも難なく受け止める。

快適性は高いが、リミッターがわずらわしい

5速100km/h時の回転数は3,800回転。そのままアクセルを開けていけばあっという間にスピードリミッターが作動する(135㎞/hを越えたあたり)。以前書いたとおり、軽も100㎞/hが制限速度になったのだから、このリミッターももはや意味がないのでは。リミッターがなければ150km/h以上は楽に出そう。というわけでパワー的には余裕の高速巡航だが、やはりここでも重心や目線の高さが気になった。

ここがイイ

ミニバン系スペース重視の軽や、お遊び系ルックス勝負の軽ばかリの中、硬派の軽を唯一復活させたスズキの姿勢。もはや軽スポーツはこれ一台しかない状況ゆえ(コペンをお遊び系とすれば)、貴重なクルマだ。

ハイプレッシャーターボは低回転域でもトルクフルなため、街乗りでもラフに扱える。で、高回転を維持してワインディングを楽しめば、かなり安全な速度域で限界に近い挙動を味わえる。これは楽しい。

ここがダメ

エンジン音が官能的とはほど遠い。同様に、走りも官能的な方向には向いていない。速いし挙動も楽しめるけれど、面白みというか、「深み」みたいなものが感じられないのは残念。

ルックスも「お子ちゃま」っぽくなってしまい、大人が乗るには辛いクルマだ。むろん大人は買わないことが前提で作られているとは思うが。

総合評価

ワークスはあくまで街乗り用のクルマで、さらにスポーツしたいのならKei Sport Rを、というのがスズキの姿勢。http://www.suzuki-motorsport.comでワンメークレース、「スズキ Keiスポーツ カップ」のリザルトが見られるが、スポーツランドSUGO(宮城県)と筑波サーキット(茨城県)、セントラルサーキット(兵庫県)、オートポリス(大分県)の各サーキットで4戦ずつ行われているものの、デイズ(名古屋市)やスズキ本社(静岡県浜松市)のある中部地区で全く行われていないのは残念。中部にも手頃なサーキットがぜひ欲しいと思わずにいられない。とはいえ、スズキのモータスポーツへの取り組みは、高く評価したいところ。

さて、Keiワークスのカタログには小型車との経費比較表がついていたので、それを参考にほぼ同価格のヴィッツ1.3RS・Dパッケージ5MT(124.8万円)と3年間の経費を比較してみると、約24万円対約10万円と約14万円ほどの差がつくことになる。年間4.5万円、毎月3800円ほどKeiは安い。任意保険もかなり違うはずだし、軽自動車はやはり安く維持できる。軽スポーツカーならセカンドカーあるいはサードカーとして持てそうな気がしてくる。

で、スポーツRは、ロールケージ、牽引フック、サベルト4点シートベルト、エアコン付き(ABSレス)で109.8万円。これはちょっと欲しくなるが、スタイリングは大人のクルマにはつらい。クローズドボディのカプチーノみたいな、いかにもスポーツカーというルックスであればそこそこ売れるのではと思うのだが。

軽でもこれだけの性能のクルマを作れるのだから、スズキとしては軽リアルスポーツカーを出したいのだと思う。でも出して売れないのも分かっていると思う。で、その妥協点がワークスなのだろう。軽自動車のスポーツカーは今のところ、ここまで。この状況を破るのは、景気?、それとも企業の熱意?

時期セリカはもうない、という記事も何処かの雑誌に載っていたが、高額なスポーティカーでなく、安くて「プリミティブ」なスポーツカーなら必ず売れる。ぜひトライしてもらいたい。

≫関連サイト:SUZUKI MotorSport

試乗車スペック
スズキ Kei ワークス(2WD・5MT)

●形式:TA-HN22S●全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,530mm●ホイールベース:2,360mm●車重:780kg(F:490+R:290)●エンジン型式:K6A●658cc・DOHC直列3気筒横置き●64PS/6,500rpm、10.8kgm/3,500rpm●駆動方式:前輪駆動●10・15モード燃費:19.6km/L●タイヤ:165/60R15(ブリヂストン POTENZA RE88)●価格:124.2万円(試乗車:133.01万円 ※オプション:オーディオ 5.69万円。4スピーカー 1.6万円。アンテナ 0.46万円。フロアマット 1.06万円)

公式サイトhttp://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/kei_works/index.html

 
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